最高裁判所裁判官の暴走を許さない

最高裁判所裁判官の国民審査は、衆議院選挙の時の「ついでに」ならないようにしましょう。辞めさせるのは国民の権利です。

罹災証明のミス、支援金返せ

2021-07-27 07:39:19 | 日記
令和2(行ヒ)133  被災者生活再建支援金支給決定取消処分取消請求本訴,不当利得返還請求反訴,不当利得返還請求事件
令和3年6月4日  最高裁判所第二小法廷  判決  破棄自判  東京高等裁判所
 被災者生活再建支援法に基づき被災者生活再建支援金の支給決定をした被災者生活再建支援法人が支給要件の認定に誤りがあることを理由として当該決定を取り消すことができるとされた事例

時事通信の報道です。
判決によると、仙台市は震災後、同市太白区にある9棟のマンションのうち1棟を支援金支給対象外の「一部損壊」と判定。しかし、住人の要望を受けた再調査で「大規模半壊」に変更され、2011年9月以降に支援金が支給された。
 他の8棟が大規模半壊と認定されなかったため、市は改めて調査。一部損壊が適正と見直され、支援金支給を担当する都道府県センターが13年4月、住人に返還を請求した。
 小法廷は、マンションの被害程度は客観的に一部損壊にとどまり、「支給決定は認定に誤りがあった」と指摘。住人の負担感は小さくないものの、返還が認められなければ被災者間の公平性が確保されず、支援金制度自体への国民の信頼を害するとし、返還が妥当と結論付けた。


では、事実関係から見ていきます。

(1)支援法2条2号は,この法律において,「被災世帯」とは,政令で定める自然災害(同条1号)により被害を受けた世帯であって,同条2号イからニまでに掲げるものをいう旨定義している。
(2)ア 被災者生活再建支援法施行令4条1項(令和2年政令第341号による改正前のもの)は,支援法5条の委任を受けて,支援金(支援法3条2項各号に定める額等に係るものを除く。)の支給の申請は,所定の日までに,当該世帯が被災世帯であることを証する書面等を添えて,申請書を提出してしなければならない旨規定する。本件各支給決定の当時,市町村が交付する罹災証明書は,上記書面に当たるものと扱われていた。
イ 仙台市のり災証明等取扱要領(平成16年3月25日助役決裁)は,罹災証明書は,地震,風水害その他これらに類する災害による住家の被害について,その事実が確認できる場合に限り,その被害の程度を証明するものとして交付する旨定めていた。

そのための被害を証明するものは自治体で出すことになっているから、そこで証明をもらって自分で申請してねという趣旨です。

ウ 判断基準は
① 住家の被害の程度は,全壊,大規模半壊,半壊及び半壊に至らない(以下「一部損壊」という。)の4区分とし,地震による被害については,部位別損害割合の合計が40%以上50%未満の場合を大規模半壊,20%以上40%未満の場合を半壊,20%未満の場合を一部損壊とする,
② 集合住宅は,原則として1棟全体で判定し,その判定結果をもって各住戸の被害として認定する,
③ 地震による被害の調査は,原則として外観目視調査により実施する
旨定めていた。


建築学会だか分かりませんが、そういうところでどこを細かく見ろという指針があるのでしょう。とはいっても、実際には外壁を壊してみないと分からない部分もありますし、人が最終判断する以上、客観化するのは難しいところでしょう。

仙台市は、その方針として
ア 支援法4条1項は,都道府県は,支援金の支給に関する事務の全部を支援法人に委託することができる旨規定する。
イ 上告人は,支援法人の指定を受け,宮城県から上記事務の全部の委託を受けている公益財団法人である。


市職員ではやり切れませんね。
(5)ア 本件マンションの管理組合からの申請により,平成23年5月11日,前記調査票を用いる方法により本件マンションの被災状況を調査し,部位別損害割合の合計が16%であり一部損壊に該当すると認定した。a区長は,この認定に基づき,同月27日付けで,本件世帯主らを含む本件マンションの住民に対
し,東日本大震災による本件マンションの被害の程度が一部損壊である旨の罹災証明書を交付した。
イ 共用部分の階段底部と梁の接合部分に剥離が認められるとして,部位別損害割合の合計が46%であり大規模半壊に該当すると認定した。a区長は,この認定に基づき,同月30日付けで,本件世帯主らに対し,東日本大震災による本件マンションの被害の程度が大規模半壊である旨の罹災証明書(以下「本件証明書」という。)を交付した。
(6)上記申請に係る本件各支援金(37万5000円~150万円)を支給する旨の本件各支給決定をし,その後これを支給した。


ここまではきちんと手続きをとっているように思えます。

(7)ア a区は,同月22日に本件マンションを調査した一級建築士から,梁にひび割れは存在せず,本件調査で認めた剥離による構造耐力上の影響はほとんどないことが明らかである旨の報告を受けた。
イ そこで,a区は,平成23年12月15日,職権により,前記調査票を用いる方法により本件マンションの被災状況を調査した結果,部位別損害割合の合計が16%にとどまることが確認されたため,一部損壊に該当すると認定した。a区長は,この認定に基づき,本件マンションの住民を対象とする説明会を開催した上,平成24年2月10日付けで,本件世帯主らに対し,東日本大震災による本件マンションの被害の程度が一部損壊である旨の罹災証明書を交付した。
(7)上告人は,平成25年4月26日付けで,本件世帯主らに対し,本件各世帯が大規模半壊世帯に該当するとの認定に誤りがあることを理由に,本件各支給決定を取り消す旨の本件各取消決定をした。


一度大規模破壊と診断されて支給されましたが、調査した建築士から躯体はそれほど壊れてないとの診断を出され、大規模からから小規模破壊に変更され支給金額の取り消しになりました。これは他の被災者と不平等になるから、返しなさいと市が訴えました。

最高裁は
(1)支援法2条2号イからハまで所定の全壊等か同号ニ所定の大規模半壊に当たるかの別と,一人のみの世帯か否かの別,及び居住する住宅を建設,購入,補修又は賃借する場合の定額加算により一律に定まるのであって(本件各世帯については37万5000円~150万円と定められた。),実際の損失額や今後の住宅の建替えや補修等に必要となる額に応じて支援金の額が決定されるものではない

この書き方だと支援法2条のように思えますが、3条に金額が記載されています。

(2)a区長が交付した本件証明書の認定に誤りがあったことにある。この誤りについては,罹災証明書の交付が市町村の自治事務(地方自治法2条8項)に属すると解されることや本件の事実経過,当時の多数の被災状況等に照らせば,上告人と本件世帯主らのいずれか一方の責めに帰すべき事由によって生じたものであるということはできない。・・・本件証明書の内容が変更されるリスクを上告人が負担すべきということはできない。

どうなんですかね。第一義的に区長が責任を取るべきじゃないですか?むしろ、区長が支援法人と一級建築士に請求すべきだと思いますが。

イ 本件各支給決定の効果を維持することによって生ずる不利益を更に検討すると,その効果を維持した場合には,支援金の支給に関し,東日本大震災により被害を受けた極めて多数の世帯の間において,公平性が確保されないこととなる。このような結果を許容することは,支援金に係る制度の適正な運用ひいては当該制度それ自体に対する国民の信頼を害することとなる。

そっちを優先します?詐欺を働いたわけでもなく、自治体がボケをかましたのですから、そっちが原因でしょう。

さらに,支援金の支給には迅速性が求められるところ,本件のような誤った支給決定の効果を維持するとした場合には,今後,市町村において,自然災害による被害の認定をして罹災証明書を交付するに当たり,その認定を誤らないようにするため,過度に慎重かつ詳細な調査,認定を行うことを促すことにもなりかねず,かえって支援金の支給の迅速性が害されるおそれがある。

緊急事態に対応するためには、多少の間違いはあるもんだ。詳細な調査をやれば支援が遅れるから、大雑把になるのは我慢しろよということでしょうか。


(4)以上に加え,本件各支給決定を取り消すまでの期間が不当に長期に及んでいるともいい難いことをも併せ考慮すると,前記瑕疵を有する本件各支給決定については,その効果を維持することによって生ずる不利益がこれを取り消すことによって生ずる不利益と比較して重大であり,その取消しを正当化するに足りる公益上の必要があると認められる。
したがって,上告人は,本件各世帯が大規模半壊世帯に該当するとの認定に誤りがあることを理由として,本件各支給決定を取り消すことができるというべきである。


第二小法廷判決全員一致です
裁判長裁判官 菅野博之
裁判官 三浦 守
裁判官 草野耕一
裁判官 岡村和美

煮え切りませんね。緊急避難の原則モドキとでも言いたいのでしょうか。ならばそう書きましょうよ。
しかしですね、どこで間違いが起こったのか全く原因が明らかになっていませんよね。最初の支援法人の調査が悪かったのか、一級建築士の書類の書き方が悪かったのか、市役所の担当者のミスなのか。なぜここを明らかにしないのでしょうか。そこから過失割合を出すべきじゃないですかね。給料をもらっている、ギャラを貰っている以上プロとしての仕事をしなさいよ。またそれを求めなさいよ。

しかし、1世帯高くて350万円の支援金、低くて100万円程度ならさっさと返還しておけばよかったのに。


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