忝(かたじけ)くも観世音、無間(むげん)三途(さんづ)の中にても、代(か)わりて苦患(くげん)を受けたまふ。 真言宗経典「観世音和讃」より
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代受苦(だいじゅく)をなさっておられるのが観世音菩薩である。そういうことができる方を観世音菩薩とお呼びする。代受苦とは、<苦しむべき人に代わって己が苦しみを受ける>」ということである。他者の引き受けるべき苦しみをみずからに引き受けて、わたしが受けていいよろこびを他者に与えるという利他の修行である。これは行である。修行である。観世音菩薩であるための修行である。それでみずからが観世音菩薩を貫徹するのだから、それはひいては自利の行でもある。