体の内と外は繋がっているんじゃないかなあ。ネットワークみたいなもので。通じ合っているんじゃないのかなあ。両者が発信したり受信したりする。心が発信し、体が受信する。体が発信し、心が受信する。どちらかが内務大臣をし、もう一方が外務大臣をする。気が合った2者がタイアップして共同事業をやる。心が体をリードしたり、体が心をリードしたりする。そのために心が外に出て行ったりする。でも外回り専門ということもない。内にも出入りが自由だ。
寂しいねえ。生きているのは寂しいねえ。お爺お婆も父も母も弟もいなくなってしまった。気が付いてみると一人になっている。どうやってここを忍べばいいのだろう。
今夜は月が出ている。半輪だ。うっすらと白い。それがどうなんだ? どうにもならないじゃないか。一人が二人になるわけじゃない。酒を飲んで己を慰めた。温めの熱燗にして。肴の鰯の塩焼きが、脂がのっていた。大根を擦ってこれにのせた。
今日はまた文字通りの秋晴れだ。空が澄み渡っている。青い空の何処かからひょいと蜂が飛んで来る。よく飛んで来る。そして透明硝子にぶち当たる。バチンという音がする。小さいアシナガバチは小さな音、スズメバチは中ぐらいな音、クマバチは大きな音。頭から突き込んでくる。脳震盪でも起こしそうに。どうしてなんだろう。僕の部屋を目指して急ぎ足で飛んで来るのはどうしてだろう。まさか部屋の中の僕が見えているはずはあるまい。女王蜂の伝令が飛んで「アイツ ガ ジャマ ダ。アイツ ヲ ヤレ」ということにでもなっているのだろうか。あんなのに刺されたらひとたまりもなく怯え上手な僕は正体不明になってしまうだろう。もうしばらく蜂の巣分かれの放浪の季節が続く。外へ出ていると危ない。お昼からずっと部屋に籠もっている僕にとっては透明硝子は守り神になっていてくれている。そういうことになる。畑が手招きして呼んでいるが、しばらくは此処にいた方がよさそうである。
さみしい。やっぱりさみしい。アカママの花の穂があんなにやさしく赤く咲いて垂れているというのに。ジャズを聴いているというのに。季節の柿を剥いて食べたというのに。あの人のせいだ、これは。こころの中に森があって、森の奥に湖があって、そこだけはまだ夏になっている。そこで逢おうと言ったままになっている。湖面に秋の風は吹けないので、この一月風はさぞかし困っているだろう。こころの中の森だから、あの人の影絵だっていいのだ。それに似せた吊り人形だってよかったのだ。
百舌鳥が渡って来ている。相変わらずけたたましい鳴き声だ。空気が紙のように破けてしまう。尖った嘴のせいだ。昨日は目白の声も聞いた。役者が揃ってきた。秋が来たのはほんとうだったのだ。
冬瓜の藪を払った。ふうふう息を荒くした。払ったら畑の上に4個の冬瓜がお目見えした。細長い。青い。中型の。夏中、そこには頑丈な夏草が生えに生えてとうとう分け入るにも分け入れなかった。4個の冬瓜はその間中藪の奥でごろんごろんしていたことになる。人を見ないで寂しかったのではあるまいかと思った。見なくて悠然としていたかもしれないが。藪を分けると虫たちが次々に勢いよく飛び立った。朝8時から2時間藪払いに格闘した。憐れむべからず。夏中怠けた罰だ。
昼間、落花生を掘り上げた。10株ほど。千葉産の種を頂いていたので、それを発芽させ、畑に移して育てていた。施した肥料が合わなかったのか、茎だけが長々とのびてしまっていた。土寄せをしてあげるべきなのに、怠った。で、収穫した実は予想を下回った。ゴシゴシ何度も洗って日に干しあげた。塩を多めにして茹でてみた。缶ビールのツマミにしたら、それはそれでおいしかった。新鮮なので、プリッとして。
もうやすみます。眠れるかどうか心配だけど。眠れなかったら、文庫本の朗読をしてみよう。寂しさはやわらいでいるみたい、幾分か。なぜ? さっきこころに響く答を目にしたから。
どうしてこんなに寂しいんだろうね。しんとしといるしかない。草の葉を夜露が濡らしている。朝空が寒くて白くなっている。どうしてこんなに寂しいんだろうね。やわらげるための漢方薬なんてのが有れば、行って買って来るのだが。それとも自分で調合が出来るんだろうかね。様々な秋の草や木の実を摘んできて、燻して干して。やさしくしてくれる人に会うまでは癒されることはないのかも知れない。甘ったれ。甘ったれはさみしさに耐えられないのだ。朝を迎えた夕顔のよう。凋んでやがて落ちて行くまでのさみしさ。
お誘いがあった。いそいそ出掛けて行った。3時間半して無事生還した。気心の知れた仲間と旨い酒を飲んだ。仲間の家に上がって、たらふく飲んだ。日頃口にしない贅沢な酒を飲んだ。飲んだ後は、所望されてその気になって、ボーイソプラノの音域でロシア民謡やカンツォーネを歌いに歌った。奥様がピアノを弾いて下さった。日本の秋の唱歌も歌った。いい気なもんだ。互い互い、聞いてくれる人がいるから、歌えるのだろう。代行運転で帰り着いた。腹が減っていて、我が家の夕食のカレーライスを皿一杯がつがつ食べた。風呂にゆっくり浸かった。半分は目が潰れていた。言うことはない。これから眠る。
秋日が射している。気温26度。風がややある。これからプランターで種蒔きをした白菜がちょうどいい位に育っているので、畑に行って移植することにする。こうやってこそこそ一人で土遊びをして過ごしているのが楽しい。
朝からずっと締め切りが迫っている短歌の作品を書き上げて、やっと投稿に漕ぎ着けた。書いては消し書いては消ししてもう嫌になるほどだった。合計4作品。大きな全国大会だから、勝ち目はない。結果は問うまい。老いの身がこうやって意欲を起こして挑戦していることそれ自体に意味があるのだから。郵便局に入って今日の消印を打ってもらった。ほっとした。82円x4=328円で1日の半分を過ごし得たことになる。温泉に浸かっているよりも安く上がった。