李登輝(著)/中嶋峯雄(監訳)『李登輝実録』
(産経新聞社)を読む。
副総統時代の李登輝と蒋経国総統との談話記録に、
李登輝自身が詳細な説明を加えたものです。
「○月○日 午前×時、総統ご引見。指示は以下の通り。」
という簡潔な備忘録に詳細な解説と注釈がついています。
ある時は総統の代理として外遊や台湾国内を訪問する。
ある時は総統から指示を受けた問題を処理する。
「総統見習い」としての修業をしているようにも見えますし、
蒋経国総統の指示を忠実に実行するだけの存在にも見えます。
蒋経国の指示や談話を読むと、独裁者のイメージとは異なる
抑制のきいた合理的思考の持ち主であったようです。
それだけではなく部下や懇談に訪れた人々をねぎらうなど、
細やかな配慮のできる人物でもあったことがうかがえます。
一国の指導者としては当然のことなのですが、
軍事・外交・経済・民生など、蒋経国の指示は多岐にわたり、
時事的な問題にも関心を向けています。
李登輝は副総統時代に大量の本を読んで研鑽を積んだと
回顧しており、ヒマとまでは言わないものの、
読書に充てる十分な時間があったことがわかります。
副総統として大所高所から国政を見る経験を積んだからこそ、
李登輝は総統としても上手くやっていけたのでしょう。
この本は李登輝自身の記録であると共に、
蒋経国政権の内側を描いたものでもあります。
「リーダーとは何を考えるべきか」を示す
モデルケースとして読みました。
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