ボクの奥さん

ボクの奥さんは、甲斐よしひろさんの大ファン。そんな彼女との生活をお話したいと思います。

春に散る4(ネタバレあり)

2023-09-07 14:25:00 | 日記
試合シーン第2弾、大塚と翔吾の対戦は翔吾の勝利に終わり、次はいよいよ中西との世界戦へ
となったものの、この東洋太平洋タイトルマッチを観戦に来ていた中西は
自分の対戦相手が翔吾に決まったことに、全く関心がない様子で
翔吾は、リング上から「スマホいじってんじゃねぇよ!」と一喝(汗)

まあ、この時点の翔吾に、WBAフェザー級世界タイトルマッチに挑戦する実力があるのか?
…と疑問視する声も少なからずあったのを、翼会長のショービジネス的発想で、ねじ伏せた感もあり
チャンピオン中西にとっては、翔吾と大塚のどちらが勝っても結果は同じという気分だったのかなあと…?(苦笑)

その「最もキャスティングが難しかった」というチャンピオン中西利夫役の窪田正孝さんは…
「オファーを頂いた時は、最近ボクサー役が続き過ぎてるかなと悩みましたが
瀬々監督とプロデューサーから、熱いエールを頂き
チャンピオンという役も、ボクシングがここまで主軸になっている作品も初めてだったので
覚悟を決めて、お受けしました

横浜流星くんの身体能力の高さには、本当に驚かされたし
面と向かった時に、武士と武士が刀を交える前に、
お互いの器量を感じるみたいな、そんな瞬間が沢山ありました
中西は、流星くん演じる翔吾の対岸にいる役で、どうしても『The敵役』になってしまうんです

でも、それを意識せず、佐藤浩市さん演じる(広岡)仁一さんに生意気な口を利いたり
山の子ジムに、いきなり顔を出したり、掴みどころのない中西でありたいと
僕も瀬々監督も、共通して思っていましたし
せめてボクシングだけは、孤独に自分と向き合って
本当に真剣に打ち込んでいるように
ただの『ふわふわした男で終わらないように』演じました」…とコメントなさってます

その世界戦に向けて、更に厳しいトレーニングに励まなければならない状況の中
翔吾は、母親のヒモ的な交際相手が、母親に暴力をふるっていることを知り、報復行為…って
さすがに、プロのボクサーが拳で殴る訳にはいかず
相手を押さえつけて、服を剥ぎ取るという辱しめを与えるんだけど
この行為が問題となり、世界タイトルマッチは取り止め寸前…(汗)

ちなみに、この「ヒモ男」役を務められた奥野瑛太さんは…
「真夏のシーンなのに、寒波が迫る凍える季節での撮影で
鳥肌や乳首が立たないかという心配ばかりしてました
シーンの段取りで、雑に牛乳を飲んでみたら、溢れて体中にかかったので
本番では、もっと溢れさせようと悩んでいたら
スタッフの皆さんが開け口の広い牛乳パックを沢山用意して下さいました

一登場人物のたった一瞬の下品さを、みんなで作っていると思ったら嬉しくて
その流れで、牛乳を愛でながら、乳首をポリポリかいたのを気に入ってくれた瀬々監督が
本番で、乳首ポリポリし忘れてたら『乳首、今、ポリポリした?乳首ポリポリ絶対やって!』と
ものすごい熱量で演出して下さって、本当に幸せな現場でした」…と明かされてました(笑)

ともあれ…ナンとか世界戦は行われることになったものの、今度は翔吾の目に異常が発生(汗)
ボクシングの試合で、顔を打たれたら失明するとの診断に
広岡が、まだ若い翔吾には、またチャンスは巡って来ると説得するも
翔吾は「今しかないんだ!」と耳を貸さず…(汗)

翔吾と「イイ感じ」になっている広岡の姪っ子が、翔吾の目を心配し
「ナンでボクシングやってるの?」と訊ねる場面は
奥さんお気に入りのドラマ「殴る女」を彷彿させ…
って、あのドラマでは、この映画の橋本環奈さんの立場の役を天海祐希さんが演じていらしたんだけど

大学時代からの長い付き合いの恋人(吹越満さん)が
一流商社を辞めて、ボクサーになったことに呆れながらも
試合のたびに、密かに応援に駆けつけていたのが
失明の恐れがあるにも関わらず、どうしても試合をやるという彼に
「そうまでしてやる価値のあるものなの?ボクシングって…」と、ついに別れを告げ

試合後、救急搬送され、手術を受けた彼を見舞ったあと
トレーナーである和久井映見さんに「なぜ試合をすることを許したの?
もし、失明したらどうするつもりだったの?」と訊ねると
和久井さんに「その時は、彼の目になろうと思っていました」と返されるシーンがあり
好きな人の「夢」を応援することの難しさみたいなことを考えさせられました

それはさておき…
そんな中、心臓発作が起こるたび、薬を飲んでしのいでいた広岡が、ついに緊急入院してしまい(汗)
慌てて駆けつけた翔吾とお互いに「一瞬だけを生きることに決めた」シーンに
一番こだわられたという佐藤浩市さんは…「若い世代に対して『人生とはこういうものだよ』と
背中を見せているような映画にはしたくない…と瀬々監督とは最初にそんな話をしましたね

脆さ、弱さ、そして、自分が経験していながら忘れてしまったこと…
『あ、そうか、俺は経験していたことを、どこかで引出しに仕舞っていたな』と…
その引出しを開けさせてくれたのが若い奴だった…そういうことだと思うんですよ

ボクシングは特にストイックなスポーツだから、もっと極端な師弟関係が定番だったところを
『もっと立ち位置をフラットにしてみようや』と…
現代性と言えばそうだけど、単に僕らが若者に迎合してやったかというと、そんな卑屈なものじゃない
それではナンの感動も得られませんからね。良い意味での喧嘩腰ではあったと思います

瀬々監督とよく話していたのは『これは教えるだけの話じゃない、俺も翔吾から教わるよ』ということ
師匠でもなければ、友達でもない。そこがスパーンと割り切れてないところが面白い
じゃあ、同胞(はらから)かと言えば、そうでもない
結局は全然違う他人同士。だけど、瞬間瞬間の交錯で、お互いをしっかり認識している

彼が気づかされたのは『自分は何かのせいにして来たよな』ということ
何かのせいにすることで、自分は決着をつけたけど、こいつ(翔吾)は、つけていない
そのことを最後の試合から感じとったんじゃないか
あの試合から、自分の最期の受け入れ方も定まったんだと思います

仁一という人は、自分に近くやって来るであろう終末、死期に対して腹が括れてないんです
だからこそ、日本に久々に帰って来て、自分が一番よかった時代の仲間たちと一緒に暮らし始める
あれは結局、エクスキューズ(言い訳)なんだと思います
そんな腹が括れてない奴が、最後に翔吾たちの戦いざまを見て、腹が括れるっていう話だなと…」…と話されてます

その最後の「試合シーン」について、瀬々監督は…
「熱を持って見守る観衆が、日頃の鬱憤を晴らしたり、自分の人生を取り戻したりできる
まさに、先日の侍ジャパンが世界一になった
WBCのような感動的な名勝負にしようと考えました」とおっしゃってます

また、ボクシング指導の松浦さんによれば…試合の構成と動きは、撮影前に10割かためられているそうで
俳優さん達は、それらを一旦すべて覚えて撮影に臨まれるものの
「役者の感情も監督の演出も、現場で生まれるものがあれば、その方が絶対に迫力が出るので
最初の10割は、いつでも忘れます」…とのことで

実際に、4日間に渡って撮影された世界戦のシーンの中で、第11ラウンドは、現場でアドリブに変更
…って「事前に決めた手を使わずに、約束事なしで挑戦してはどうだろう」とリスク面も含め
流星さんと窪田さん、お二人別々に相談なさったところ
「やりましょう」「流星くんなら大丈夫でしょう」と快諾されたんだとか…

ただ、松浦さんは「俳優たちの様子を逐一観察し、話しかけ
止められるのは僕だけだという責任感で見守りました
僕のすべてを出し切りましたし、やはり、流星くんと窪田くんだから挑戦できたことだと思います
当時は毎日ピリピリしてましたが、終わってみれば、幸せな環境でした」と振り返られてます

さて、いよいよその世界戦のシーンですが…
「入場シーンは絶対に入れて欲しいとお願いしました」と流星さん
「格闘家が試合に懸ける思いというのは、入場する時の表情や雰囲気に表れます
選手の内面が、思わず出てしまう場面でもあります
それを表現したいと思いましたし、単純に自分が『入場したい』という願望もありました」
…と、役者さんでなければ「格闘家の道に進んでいた」という方らしいコメントにナットク

その流星さんについて、瀬々監督は…「アグレッシブに意見を言ってくれます
自分がやってみたい芝居が、明確にある俳優ですね
また、体調管理を非常に重視していて、コンディションに影響するからと
撮影の順番についても、相談しながら進めました
自分にとって、心身が一つになることが重要だとよく判っている

そうやって、身体と表現が直結しているところが面白かったですね
俳優には、文科系のアプローチをする人が多いんですが
彼は体育会系と理系が融合した芝居なんです」…と分析なさってるんだけど
この瀬々監督の言葉は、甲斐さんにも通じるような気が…?(笑)

そして、撮影を担当された加藤航平さんは…
「緊迫感に満ちたリアルで重厚なボクシングシーンにするためには、画数が必要」
更に、流星さんの練習をご覧になり「彼の『本気』を肌で感じて、一瞬一瞬を絶対に逃したくない」
カメラの台数を増やすことを希望なさったそうで

世界戦の撮影では「豊かな映像にするために、BカメとCカメも同時にフル稼動し
セコンド、会場、観客席と細かく押さえています
あえて、テレビ中継のように、2階から望遠で撮っているカットもあります
メインのカメラでは、二人の魂のぶつかり合いを主観的に撮りたいと監督にお話しして
ギリギリのところまで入らせて貰いました

反射的に撮影した画も多々ありますが、横浜さんと窪田さんのスピードが速くて
カットの声がかかると、へたり込んでしまいました
本当にリアリティがあって、お二人にはしびれましたね
事前に、日本のボクシング映画をほぼすべて観ましたが
お二人の肉体も技も、どの作品にも負けてませんでしたので、良い画が撮れたと思います」と話され

瀬々監督は「人間に迫ろうとしている、まさに映画のカメラマンだと感じました
フレーム主義ではなく、お芝居を撮ろうとしている
そこが素晴らしいと思いました」と絶賛なさってるんだけど

お二人の対戦シーンは、パンチが顔に入ると、首がモゲるんじゃないか?と思うくらい
殴られた側とは反対側へ、顔が反りかえったりして
「ガチで殴ってる?」と心配になりました(笑)
ある意味、加藤さんがお撮りになったという
「孤狼の血 LEVEL2」のバイオレンスシーンより、ヒヤヒヤしたかも知れません(笑)

もっとも、それほど臨場感あふれるファイトシーンだったからこそ
チャンピオン優勢と思っていた観客たちや、真拳ジムの秘蔵っ子ボクサーを引退に追い込まれ
翔吾に対して複雑な思いを抱いていた会長(山口智子さん)が、翔吾を応援するために立ち上がったり

「殴られるところなんか見たくない」と言っていた翔吾の母親(坂井真紀さん)や
広岡に対するコンプレックスのせいで、試合に興味なさげだった元ボクサー(哀川翔さん)も
徐々にテレビ中継に引きつけられ、画面に向かって翔吾の名前を叫んだり
試合後の二人に惜しみない拍手を送ったりすることに説得力があったんじゃないかと…?

試合が終わったあと、広岡は真拳ジム会長と短い会話を交わし
路上に舞い散った桜の花びらを見て「近くに桜があるみたいなんで、ちょっと見て来ます」と告げ…
そのまま還らぬ人になってしまう訳なんですが

佐藤浩市さんは…「試写を観たある方が言ってたんですけど
『最後、仁一は薬を飲んでなかったんじゃないか?』と…
『薬を飲まずに旅立ったんじゃないか?』とおっしゃっていて
確かに、そうだったかも知れないなと思いました

そういう腹の括り方…『俺の人生、悪いもんじゃなかった』って思いながら逝けたのかな?と…
リアルで言うと、心臓を患って亡くなる方って
最期は苦悶の表情であることが多いんですよ。それを僕も瀬々監督も判っていたんだけど
『最期は穏やかに逝こう』と、あえて、ああいう形の死に顔にしたんです
そんな思いも伝わってくれたら嬉しいですね」と明かされてます

ラストシーンは、片目を失明したものの、スーツ姿で
今や妻となった広岡の姪っ子に見送られ出勤する翔吾が
「テスト」で走らされた河っ原の土手を眺めているカット
失った片目以上の何かを得たことが伝わって来る清々しい表情にヤられました
我が家は、横浜流星さんを全力で応援して行きます!(笑)
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