goo blog サービス終了のお知らせ 

自然日誌 たかつき

自然についての問わず語りです。

カヤネズミの地表巣 2

2016年12月21日 | 研究など research
 これだけある地表巣がなぜこれまで見つからなかったのでしょう。調査が不十分だったからでしょうか。
 実は植原さんは動物にも植物にも詳しく、乙女高原の自然に精通しています。しかも20年以上にわたってほぼ毎週、乙女高原に通って綿密な観察をしている人です。ほかの場所でわかっていることでも、鵜呑みにしないで、乙女高原ではどうであるかを確認し、しかもわからないことはわからないとする科学的態度で自然に接している人です。その植原さんをしてなぜ気付かなかったのか。その大きな理由は、カヤネズミは茎上巣だけを作るのであって、地表巣を作るということを知らなかったことにあるようです。実際植原さんは10年以上前にカヤネズミに興味をもって茎上巣を発見することで生息を調べ、標高800mよりも上にはいないことを確認していたそうです。それで「1700mの乙女高原にはいない」と思い込んでいたそうです。しかも、実際には乙女高原で地表巣を見ていたのです。植原さんの2003年のブログにまちがいなく地表巣の写真がのっています。しかし彼は「鳥の巣ではないが、ハタネズミかもしれない、でもわからない」という内容を書いています。
 それが今回確認されたのですが、本当にカヤネズミの地表巣であることは今後、センサーカメラで撮影するなどによってさらなる確認が必要だと思います。ただ、ほぼ間違いないので、それを前提に考えることとしますが、カヤネズミが乙女高原にいてまわりの草原にいないとは考えられません。おそらくカヤネズミは茎上巣しか作らないと思っていたために「見逃し」たり「見落とし」たりしてきたものと思われます。今後調査が進めば、おそらく中部地方、関東地方の各地で発見されるものと予想されます。さらにいえば、私は北限とされる宮城県だけでなく、牧場の多かった岩手県の北上山地にもきっといるのではないかとふんでいます。
 小さい哺乳類は寒さに弱く、だからヤマネやジリスなどは冬眠をするというのは哺乳類学の教科書に書かれたことですが、カヤネズミの世界分布をみれば、シベリアにもスカンジナビアにもいます。アムールのマイナス28度にもなる極寒の地にも生息することが確認されています。そうであれば日本の東北地方にいないほうがむしろ不思議です。いずれにしても今後、調査が進むことが期待されます。


カヤネズミの分布域

 今回の発見は、カヤネズミが山梨県の1700mもの高地にもいたという事実確認という意味だけでなく、私たちは自然をみるときに思い込みによってその目が曇ることがあるということを知る好例だと思います。
 自然は知れば知るほど、知らないことが多いことに気付かされます。だからこそ、知るための不断の努力が必要であり、そのことによって小さくても新たな発見をしたときの喜びが大きいのだと思います。
コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« カヤネズミの地表巣 1 | トップ | 鎌倉橋 »
最新の画像もっと見る

2 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

コメント日が  古い順  |   新しい順
乙女高原の巣 (bluetittit)
2016-12-21 13:37:44
初めまして。

高槻先生の「動物を守りたい君へ」「野生動物と共存できるか」などの著作、興味深く拝読いたしました。

乙女高原での発見例、今後の展開にわくわくしています。

すでにご存じだったかもしれませんが、秋田県で確認されたこちらの巣なのですが、高槻先生はどう思われますでしょうか。管理人さんは化石収集で有名な方で、田沢湖の近くにお住まいだそうです。

ttp://blogs.yahoo.co.jp/keifu_goya/11565294.html
ttp://blogs.yahoo.co.jp/keifu_goya/11569629.html
返信する
ありがとうございました  (高槻成紀)
2016-12-23 03:28:24
bluetittit様

情報をありがとうございました。ブログを拝見しました。私の目にはまぎれもなくカヤネズミの地表巣にみえます。すげに北限は更新されていたのですね。管理人さんに連絡はとれないでしょうか。
返信する

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

研究など research」カテゴリの最新記事