本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

小澤征爾さんと、音楽について話をする

2024-03-03 06:56:44 | Weblog
■本
17 小澤征爾さんと、音楽について話をする/小澤 征爾、 村上 春樹
18 デヴィッド・ストーン・マーティンの素晴らしい世界/村上 春樹
19 風間八宏の戦術バイブル /風間 八宏

17 2011年の発売と同時に購入したのですが、私にあまりにもクラシック音楽の知識がなく挫折しました。先日の小澤征爾の訃報を受けて、新聞に寄稿された村上春樹さんの文章を読んだのを機会に、再挑戦しました。前回の反省を活かし、サブスクでテーマとなっている作品のいくつかを聴きながら読みました。息継ぎなど人間の生理的な条件や技術的な問題など、演奏する側にもいろいろな制約があることがわかり興味深かったです。楽譜を理解し各楽器を統合して一つの作品を創り上げる、指揮者の役割が少しは理解できた気がします。小澤征爾さんが多くの巨匠から気に入られていたという事実が特に印象に残りました。やはり、天才は天才を見抜くのかもしれません。村上春樹さんの膨大な音楽的な知識にも圧倒されました。やはり彼は固有名詞の人なのだと思います。芸術論としても、組織マネジメント論としても、教育論としても、インタビュアーのケーススタディとしても参考になる点の多い本です。クラシック音楽をもっと聴いてみたいと思いつつ、その奥行きの深さに慄きもしました。

18 勢いづいて最近発売された村上春樹さんの音楽に関する著書を続けて読みました。こちらはジャズレコードのジャケットを多く手がけたデヴィッド・ストーン・マーティンのデザインを紹介しつつ、そのレコードの音楽についても解説された本です。私はクラシック音楽よりはジャズに関する知識は持っているつもりでしたが、それでも、知らないことが多く勉強になりました。この本も取り上げられているアーチストの音楽をサブスクで聴きながら読みました。確かに、デヴィッド・ストーン・マーティンの簡素ながらも独特のセンスが感じられるデザインは観ていて楽しく、収集したくなる気持ちがよくわかります。この本も村上春樹さんの音楽の膨大な知識と、各アーチストに対する興味の深さが印象的です。それでいて、人間的な魅力とは別に、「良い音楽」と「そうではない音楽」の仕分けが結構クールになされていて、個人の好みを超えたところに普遍的な音楽のクオリティを決定する要素が存在することを信じてらっしゃるような印象を受けました(それは音楽だけでなく文章にも当てはまるのだと思います)。優れたデザインと文章を目にしながら、良い音楽を聴くという素敵な経験ができました。

19 Jリーグの川崎フロンターレや名古屋グランパスの監督を経験され、現在はセレッソ大阪のアカデミー技術委員長に就任されている風間八宏さんのサッカー戦術論です。私がサッカー戦術論を読むのが好きなのとセレッソサポなので読みました。サッカーを「フォーメーション」で語るな、というサブタイトル通り、フォーメーションよりも個人の技術や考え方に焦点が当てられています。「止める・蹴る」の技術と考える力を高め、プレースピードを速めることの大切さが強調されています。攻撃面では、いかにセンターバックの背後を取るかと、相手を囲んで味方へのパスの選択肢を多く取ることの重要性が語られています。守備面では相手のパスコースを消す位置取りをして相手の選択肢を減らすことと、相手の意図を先読みすることが大切なことを教えてくれます。実際の海外のクラブやスタープレーヤーの事例を元に解説してくれるのでとてもわかりやすいです。風間さんの言語化能力の高さにも感心しました。ロティーナ監督時代のセレッソ大阪が、なぜ「ポジショニングがよい」と褒められていたのかの理由がよくわかりました。風間さんは相手DFに陣形を整える時間を与えるサイド攻撃のデメリットを強調されていますが、ここ数年のセレッソ大阪はサイド攻撃に偏重しているので、ユース年代の育成とトップチームの考え方は違うのかとも感じました。「世界で1人だけの選手を生み出す」という風間さんの人材育成の志の高さには共感するところが多く、セレッソ大阪や日本サッカー界の今後に期待したいと思いました。


■映画 
18 落下の解剖学/監督 ジュスティーヌ・トリエ
19 クイック&デッド/監督 サム・ライミ
20 LEGO ムービー/監督 フィル・ロード、クリストファー・ミラー

18 カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞し、今年のアカデミー賞でも作品賞など5部門にノミネートされている注目作です。人里離れた山荘での転落死事件の裁判を中心に話が進みます。妻がその容疑者として追及を受ける過程で様々な事実が明らかになっていきます。それでいて、第一発見者が盲目の息子であったこともあり、死亡シーン自体は最後まではっきりとは描かれず、一応は判決が下されるものの、事件の真相自体は少しモヤモヤとしています。これだけを聞くとよくある法廷サスペンスなので、実際私も観終わった直後は、「悪くはないがそこまで評価されるほどの作品か?」という印象でした。ところが、様々なレビューで語られているように、「主人公の性別が逆だったら?」という補助線を引くと、この作品は一気に深みを持ってきます。死亡したのが妻の方であれば、容疑者に対する嫌疑はより一層深まっていたと思う一方で、裁判過程でそこまで家事の分担や浮気などの普段の生活態度を犯行動機とからめて問題視されることはなかったと思います。事実が明らかになるにつれて、ジェンダーに対する無意識の偏見が、主人公もその夫も苦しめていたことが明らかになっていく構造は実によく考えられています。また、情報不足な状況下でも、与えられた情報からより適切な判断をしようと試みる、盲目の少年の姿は、不確実な時代でそれでもなんらかの意思決定をして生きていかねばならない我々を象徴しているかのようです。主人公を演じるザンドラ・ヒュラーが善人とも悪人ともとれる微妙な表情で演じていることも、不確実性を高める上で貢献しています。さまざまな解釈が可能な観る側が試される作品です。

19 シャロン・ストーンが女性の凄腕ガンマンを演じた1995年公開の西部劇です。「スパイダーマン」シリーズを監督する前のサム・ライミ作品なので、全体的にB級感が漂っています。ところが、出演俳優は名優ジーン・ハックマンに加え、当時は駆け出しだったラッセル・クロウやレオナルド・ディカプリオも名を連ねていて、今から観るととても豪華です。ストーリーは悪徳権力者が支配する町での早撃ち大会のトーナメント戦を通じて、それぞれのキャラクターの過去の因縁が明らかになっていく構造です。格闘技大会等であればもう少し技のバリエーションが考えられたと思いますが、早く相手の急所に撃ち込めば勝ちな競技なので、タフさや両手打ちくらいしか個性が発揮できず、大会が進むにつれて対決シーンが単調になっていきます。それを補うための各登場人物の過去シーンですが、どのエピソードもベタ過ぎて(B級テイストを出すためにあえてそうしているのかもしれませんが)なかなか感情移入ができませんし、先の展開も容易に予想することができます。とはいえ、豪華出演陣とB級テイストというアンマッチ感が、今となっては独特の印象を残し、不思議な魅力を放つ作品となっています。

20 レゴブロックで構築された世界でレゴブロックで作られた風の主人公が活躍するCGアニメ作品です。明るい独裁国家のマニュアル重視の世界に適応していた無個性な主人公が、ふとしたことから世界の崩壊を防ぐための戦いに巻き込まれます。さまざまなヒーロー映画のパロディ要素がふんだんに盛り込まれ、若干滑りがちなでブラックなギャグが満載です。スカしたボケのテンポ感がよく実に愉快です。終盤のメタ的な展開など、子どもがどこまでついてこられるかが少し心配ですが、逆に大人受けはしそうです。個人的には子ども向けなようで実はそうではない構成はあまり好ましくないと思いましたが、評価的にも興行的にも成功しているので、やはり大人には受けたのだと思います。小さい子どもがこの映画を観てどういう反応をするかを見てみたいと思いました。独特な動きをするアニメーションは素晴らしいので、その心地よさに浸るのがよい鑑賞方法なのかもしれません。考え抜かれた作品だとは思います。
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