本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

浅田家!

2022-05-28 07:19:45 | Weblog
■本
42 生涯投資家vs生涯漫画家/村上 世彰、西原 理恵子
43 うつ病の脳科学/加藤 忠史

42 「村上ファンド」で有名な投資家の村上世彰さんと漫画家の西原理恵子さんとの連載対談をまとめた本です、こういうお金に関するテーマの本では、西原さんが身体を張って実践し大損するというのがお約束ですが、途中経過は怪しかったものの、最後はプラスで終わっているのは村上さんのアドバイスが効いているのかもしれません(シンプルに株価上昇局面が続いていたためだと思いますが)。投資に関する話に目新しい発見はなかったですが、西原さんの長男さんがソフトバンク系のロボットに関する会社に就職された話や、西原さんが品質の良いものを作っている生産者に配慮し「一番安い品を買わない」ようにされているというエピソードが、ファンとしては興味深かったです。いろいろなものの価格が上昇傾向にある中、我々の消費行動も一種の投資であると考える視点が必要になってくるのだと思いました。

43 うつ病と脳との関係を知りたくて読みました。うつ病の場合、死に至る最悪の結果となる理由の大半は自殺であるため、他の病気のようにその死体から解剖(うつ病の場合その原因として最も可能性の高い部位は脳であるため脳解剖が必要)して原因を解明するということがなかなかできず、根本原因がよくわからない中で、治療方法を模索しているという状況がよくわかりました。原因究明に必要なうつ病患者の脳を死後に保管する仕組み(脳バンク)など、研究に必要な環境整備の重要性を訴えかけている筆者の姿勢が印象的です。どのようなメカニズムでうつ病の治療薬が脳に働きかけているのか、など、現状わかっている範囲で、私の知りたい知識もわかりやすく説明してくれて有益でした。脳の部位に関する知識が希薄な素人の私には少しわかりにくいところもあったので、もう少し図示による解説があればよかったと思いますが、筆者の思いを伝える方が優先されたいわゆる啓蒙書なので、仕方がないのかもしれません。


■映画
30 ドラゴンボール超 ブロリー/監督 長峯 達也
31 浅田家!/監督 中野 量太

30 原作漫画は連載時からずっと読んでいましたが、映画版は追いかけていませんでした。本作は、アメリカの興行成績で一位になるなど、世界中でヒットしたという記事を読んだことがあるので観ました。新キャラ以外の説明はほとんどなく、一見さんお断り的な感じでテンポよくストーリーが展開し、上映時間の半分以上をバトルシーンに割いた潔さに、まず驚きです。悟空やトランクスのバトルシーンをとにかく観たいというファンの期待のみに集中したシンプルさが、全世界で成功した理由なのだと思います。悟空がバトルジャンキーにしか見えなくなっているのと、トランクスがいじられキャラになっている点が少し心配ですが、ドラゴンボールのファンなら楽しめる内容だと思います。逆に、初めてドラゴンボールという作品に接する人がどの程度この世界観に入れるのかが少し心配ですが、極めてシンプルなストーリーですので(悪役に唆された強い敵と、主人公たちがひたすら闘っているだけなので)、たぶん大丈夫なのでしょう。

31 「湯を沸かすほどの熱い愛」でその才能に圧倒された、中野量太監督作品ということで観ました。家族をテーマにした作品を創り続ける中野監督らしい、風変わりな家族の一人一人の感情を丁寧に拾い上げた心温まる作品です。主人公がプロカメラマンになるまでと、それ以降とでストーリーが二つに分断されている点が少し気になりますが、重くなりがちなテーマを、不謹慎にならない範囲でコミカルに描いた手腕は見事です(エンディングのネタバレは予想していたとはいえ、個人的には少し不謹慎に感じましたが)。主演の二宮和也さんは、ただのダメ人間にしか見えかねない主人公を、可愛げたっぷりに好演されています。しかし、圧巻は脇を固める妻夫木聡さんと菅田将暉さんの抑制の効いた演技です。特に、菅田将暉さんはエピローグシーンまでは菅田さんと気づかないほど役と一体化されていました。妻夫木聡さんは我を押さえた、役に合った演技のできる素晴らしい俳優さんだと前から思っていましたが、菅田さんがそのレベルに既に達していることに驚きました。優れた役者さんは、自分のオーラの量も調整できるのだと感動しました。中野量太監督の最高傑作ではないと思いますが、オリジナリティのあるとてもよい映画です。
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リオ・グランデの砦

2022-05-21 05:43:03 | Weblog
■本
40 森田療法/岩井 寛
41 佐藤優の裏読み! 国際関係論/佐藤 優

40 「森田療法」というタイトルではありますが、その詳細な解説というよりも、神経質(症)患者に対応する中で感じた気づきを、筆者の人生とも絡めて語られた本という印象です。神経質(症)のメカニズム、諸症状、そして、その治療法については詳細に書かれているので参考になります。「とらわれ」(人がなにものかに心をとらえられること)や「はからい」(自分の強迫観念に基づいて、物事を勝手に処置すること)など、日本人にしっくりとくる表現で、心理学上重要な概念を説明して下さるところも印象的です。一方で、「あるがまま」(物事をそのままにしておくこと)や「目的本位」(自分自身の人間としての目標に向かって「あるがまま」を実現していく方向)など、わかりにくい表現もあるので、引き続き考察していきたいと思いました。特に「自分自身の人間としての目標」が明確になった時点で、ある程度神経的な疾患は解消されそうな気もするので、そのあたりの関係性を腹落ちできるように学んでいきたいと思います。

41 タイトル通り、佐藤優さんが国際関係についての重要トピックスを思うがままに綴った本です。2021年7月に出版された本なので、ロシアを専門とされていた佐藤さんが、現在のウクライナ状況をどのように予想されていたのかも知りたくて読みました。結果としては、アメリカ、中国、ミャンマーに関する話題の方が多く、ロシア外交については、ナワリヌイ氏と絡めた民主化問題と北方領土問題が中心で、ウクライナに関する記述はほとんどなく拍子抜けしました。「言論の自由が、意外と認められているロシア」など、今となっては疑問に感じる記述もあり、佐藤さんであっても、不確実性が増す世界情勢を完璧に予想することは難しいのだと、あらためて思いました。地球の温暖化が進むことによって、シベリアの永久凍土地帯が解け、その地域の資源開発や北極海の通年航行も可能となるため、ロシアにとってはメリットが多い、という意見は若干トンデモなような気もしましたが、地球温暖化は各国共通の課題だという視点しか私にはなかったので、新たな気づきが得られました。それでも、佐藤優さんの本にしては考察が浅く雑な印象です。佐藤さんが、ウクライナ問題についてじっくり考察された本が出版されたら読んでみたいと思います。


■映画
28 リオ・グランデの砦/監督 ジョン・フォード
29 君の名前で僕を呼んで/監督 ルカ・グァダニーノ

28 ジョン・フォード監督による「騎兵隊三部作」の最終作と位置付けられる作品です。「アパッチ砦」と「黄色いリボン」は既に観ているので、これで三部作制覇です。三部作の中では、最もアクション的な見せ場が多く、エキサイティングです。主人公の子や妻との葛藤や和解についても丁寧に描かれていて、ヒューマンドラマとしても優れています。一方、アパッチ族の扱いは最も雑で、これまでの作品では彼らへの共感的な視点もありましたが、本作では単なる凶暴な敵として描かれています。わかりやすい構造となっているため、エンターテイメント性は高いですが、作品的な深みとしては若干の瑕疵があります。それでも、友情や家族愛という普遍的なテーマと、躍動感ある戦闘シーンとを巧みに融合させて、観客の様々な感情を喚起しつつ、心地よい余韻を残すジョン・フォード監督の手腕は見事だと思います。

29 北イタリアの美しい風景を舞台に、17歳の少年と24歳の大学院生とのひと夏の儚い恋を描いた切ない作品です。男女ではなく、男男の関係を描いている点も今となっては目新しい要素ではないのですが、周囲がこの二人の関係をとても温かく受け止めている点が斬新です。特に、少年の父親の大学教授が、この二人の関係を知ってからも、否定することなく、その経験を大切なものとして抱え続けることを勧めているシーンが感動的でした。こういう父親になりたいと強く思いました。少年に振られた少女が、罵倒することなく、一生の友人であることを伝えてくるシーンも印象的です。修羅場のない恋愛映画という意味でユニークですし、作り物っぽくなるリスクを冒しても、既成のフォーマットに従わない監督の野心を強く感じました。もう少し大きな盛り上がりがあってもよかったのでは、という気がしないでもないですが、少年の表情のみを長回しでとらえたラストシーンに象徴的なように、監督の静かな美学を感じる素敵な作品です。
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モテる構造

2022-05-14 07:06:43 | Weblog
■本
38 大人のADHD/岩波 明
39 モテる構造/山田 昌弘

38 タイトル通り、大人の「ADHD」(注意欠如多動性障害)について解説してくれる本です。似たような症状が出ていても、処方する薬や対応によって、患者のその後の人生に大きな影響があることに驚きました。適切な処方をすると劇的に改善する一方で、「双極性障害」など間違った診断をされると、なかなか改善しなかったり、悪化したりするという事実に恐怖を感じました。素人ながら、精神疾患の診断は、なぜわずかな差異にこだわるのかと常々疑問に思っていましたが(病名や障害名がとにかく多いです)、この本を読んでその重要性がよく理解できました。個人的には、薬で改善できるものであれば、コントロールできる範囲で積極的に飲めばよいと最近になって思うようになったので、こういった知識はもっと知られるべきだと思いました。特に、ADHDは、多かれ少なかれ誰でも思い当たる節がある点が多いと思います。社会生活上、問題を抱えていなければ、鷹揚に構えてよいと思いますが、生きにくさを強く感じているようであれば、積極的に対処すべきだと思いました。それにしても、薬で注意力や気分が変化する人間は、不思議な存在だと改めて感じました。

39 「パラサイト・シングルの時代」や「希望格差社会」といったインパクトのあるタイトルの本で、日本の若者が抱える構造的な問題をわかりやすく解説してくれる社会学者、山田昌弘さんの本です。シンプルな論理展開ながらも、いろいろな気づきを与えてくれるので、山田さんの本は定期的に読みたくなります。この本は男性のモテる条件(仕事ができる人がモテる)と女性がモテる条件(仕事ができなくてもモテないわけではない、ただし、細やかな気配りなどその他の要素が影響されがち)との違いの非対称性を、自己の性認識のジェンダーごとの発達過程の違いに着目しながらわかりやすく解説してくれます。女性は母親や保育士など、幼少期から身近で世話をしてくれる人に女性が多いので、ロールモデルが多く、女性的アイデンティティを形成しやすいが、男性は父親が不在がちで男性の保育士もまだ少ないので、男性的アイデンティティ形成に努力が必要という指摘も納得感が強かったです。男性が有利な社会構造の中で、男性は仕事上の競争に勝ち抜けた人は大きなリターンを得られるが、仕事上競争に勝ち抜けなかった人は大きな失望を感じ、一方で女性の方は、その不利な状況下で仕事上の競争に勝ち抜けたとしても男性ほどのリターンは得られないが、逆に仕事上の競争に勝ち抜けなくても、他の評価基準があるので、男性ほどはダメージを受けにくい、ということだと理解しました。もちろん、このように単純に男女間で線を引くことは不適切な場合もありますし(男女間の差よりも個体差の方が大きいというのが私のスタンスです)、山田さんもそのあたりの配慮はされています。それでも、ジェンダーにかかわらず生きやすい社会を考える上では有益な知見だと思います。特に、男性は親密になりたい女性には性的関係も求めがちな一方で、女性は必ずしも親密な相手に性的魅力を感じるわけではないなど、男女間の傾向の違いを知っておくことは、「勘違いしたおじさん」にならないために必要だと強く思いました。


■映画
27 鋼の錬金術師/監督 曽利 文彦

 大好きな漫画の実写映画化作品です。よく言われるキャラクターが原作のイメージと異なる点(日本人俳優が無理に金髪にするとどうしてもコントっぽくなります)は仕方がないにしても、ストーリーが結構原作に忠実に作られているにもかかわらず、この期待外れ感は逆の意味で驚きです。予算の制約上、CGや西洋風街並みのシーンがしょぼいのも仕方がないですし、こちらはむしろ善戦していると思います。原作が結構グロいので、その抑制に苦労したのか、キャストだけは妙に豪華なので、出演時間のバランスに苦慮したのか、とにかくメリハリのつけ方がいびつな印象が強いです。これで続編が2作連続で公開されるというのは、なかなか勇気のある決断だと思います。「るろうに剣心」や「キングダム」の実写映画化作品の出来の良さを再認識しました。まあ、原作が素晴らし過ぎるのが、失望の最大の要因なのですが。
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花の命はノー・フューチャー

2022-05-07 07:21:50 | Weblog
■本
36 はじめてのアメリカ音楽史/ジェームス・M・バーダマン、 里中 哲彦
37 花の命はノー・フューチャー/ブレイディみかこ

36 タイトル通り、建国以来のアメリカの音楽史を対談形式でわかりやすく説明してくれる本です。取り上げられる楽曲をサブスクで聴きながら楽しく読みました。ゴスペル、ブルース、ジャズから、ソウル、ファンク、フォーク、カントリーを経て、R&B、ロックンロール、ヒップホップなどへと行きつ戻りつ発展する過程が興味深いです。このようなアメリカ音楽の発展に、南部と黒人が多大な貢献をしていることがよくわかります。音楽という表現手段と、抑圧された人々の鬱屈した思いの発散と変革への意志との相性が良かったのだと思います。ケンドリック・ラマーなどの、これらの歴史の延長線上に生まれた最近のアーチストにも目配りされている点も素晴らしいです。本で紹介されている音楽をすぐに聴ける時代になったので、引き続き、音楽の歴史について学んでいきたいと思います。

37 ブレイディみかこさんの幻のデビュー作と称される、2005年前後のブライトン(イギリス)での生活と、文庫化に伴い10年くらいたってから加筆された後日談からなるエッセイ集です。今では多様性の代名詞的存在であるブレイディみかこさんの、日々の生活から強かな学びを抽出する繊細な視点はそのままに、今よりもさらに荒々しい、パンクの影響を受けた文体が新鮮で抜群に面白い本です。セックス・ピストルズやザ・クラッシュといったパンクに対する文章が多数収録されている点も、音楽好きとしては楽しかったです。こちらもサブスクで音楽を聴きながら読みました。不条理な人生に唾を吐きつつ、逃げることなく立ち向かっていく姿に憧れます。当時は子どもをかなり嫌っていた(そしてそんな自分が親になることに恐怖感さえ感じていた)ブレイディみかこさんが、後に保育士や親となり「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」という名著を生み出されたことも興味深いです。こういう才能のある人が、市井にいるということが同じ日本人として誇らしいとともに、日本でずっと生活されていたら、その才能が開花することがなかったような気もして、複雑な思いも持ちました。とはいえ、自分の思考の枠組みが広がるような得難い経験ができるので、引き続き、ブレイディみかこさんの本を読んでいきたいと思います。


■映画
25 アパッチ砦/監督 ジョン・フォード
26 アネット/監督 レオス・カラックス

25 最近、ジョン・フォード監督作品に、はまっています。本作は、「黄色いリボン」などへとつながる、「騎兵隊三部作」の一作目です。有名な作品ではありますが、いまひとつ盛り上がりに欠け(そういう面ではやはり「駅馬車」は素晴らしい作品です)、ジョン・フォード監督作品の中で、最良のものの一つとは言い難いです。それでも、アクションの荒々しさと、砦生活のコミカルさ、そして、抒情的な切なさのバランスがよく、最後まで飽きさせません。功を焦った無能な指揮官のせいでアパッチ族に大敗した騎兵隊を描いた、基本的には悲劇なのですが、後味も悪くないです。アパッチ族を一方的な敵として描かず、白人側の腐敗や高慢さが描かれている点も、時代を考えるとその志の高さに感銘を受けます。ベストな作品ではないにもかかわらず、このレベルの作品をコンスタントに生み出した、ジョン・フォード監督の力量に圧倒されました。

26 レオス・カラックス監督の9年ぶりの新作。ミュージカルということで嫌な予感しかしなかったのですが、好きな監督さんでもありますし(「汚れた血」は何と言っても名作です)、アダム・ドライバーが主演ということで(「ローガン・ラッキー」の演技が好きです)、映画館に足を運びました。カラックスの強い作家性を前面に出して、ミュージカルで「チャイルド・プレイ」を撮ったかのような作品です。冒頭から2時間以上は、観に来て失敗したと思っていたのですが、その長大なネタフリを最後の10分で回収する力技がさすがです。さまざまな実験的な試みが微妙に使い古されたやり方で(メタ的なパロディとしてあえてやっているのかもしれませんが)、決して成功しているとは言えませんが、不思議と観終わったあとに失望感はなかったです。カラックスならこういう作品を撮るよなあ、という妙な説得力がありました。万人にはお勧めできませんが、マーケティングが行き届いたハリウッド映画に飽きた方には、こういう誰をターゲットにしたのかわからないような破天荒な作品が新鮮に映るかもしれません。私もなんだかんだ言って嫌いではないです。
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