■本
15 33地域の暮らしと文化が丸わかり! 中国大陸大全/ヤンチャン
16 猫組長と西原理恵子のネコノミクス宣言 コロナ後の幸福論/猫組長、 西原 理恵子
15 在日中国人のユーチューバー(私は動画を見たことはありませんが)が、中国の省や自治区などの33の地域の特徴、名所、名物料理などを解説してくれる本です。日本でさえ、各都道府県で個性が異なるのに、より広大な中国だと各地域ごとに、まるで別の国であるかのような大きな違いがあるという、当たり前の事実に気づかせてくれます。「中国」や「中国人」と一括りで議論することの乱暴さを感じました。その一方で、中国という国家自体が、これだけの広大な領土の住民に対して、「中国人」というアイデンティティを植え付けることに、ある一定の成果(それも外から見ているほどは単純ではないでしょうが)を上げているという事実が、まさにヤンチャンさんの語り口から垣間見える点も興味深かったです。もう少し詳細な地図をつけて紹介してくれたらよかったと思いましたが、Google Mapで各地域を検索しながら楽しく読むことができました。私は海南省に行ってみたくなりました(このエリアも複雑な事情を抱えているでしょうが)。
16 元経済ヤクザの猫組長の経済をテーマにしたエッセイと、それとあんまり関係のない西原理恵子さんのイラストが掲載された、雑誌連載の書籍化シリーズ続編です。本作はコロナ禍当時の考察がたくさん収録されていますが、とくに目新しい視点はなかった気がします。一方、カルロス・ゴーン事件の解説はユニークで、この問題をマネーロンダリングの視点から触れられた考察はあまりなかったと思いますので、経済ヤクザならではのブラックなノウハウも含めてとても興味深かったです。教養と現場のたたき上げの知識が融合することで、オリジナルな価値が出ることに、あらためて気づかせてくれました。
■映画
11 底抜け大学教授/監督 ジェリー・ルイス
12 ジェシー・ジェームズの暗殺/監督 アンドリュー・ドミニク
11 エディ・マーフィがリメイクした「ナッティ・プロフェッサー」の元ネタ(原題も”The Nutty Professo”です)となった作品です。虚弱体質の冴えない大学教授が、自ら発明した薬を飲んで、魅力的で強引な才気に満ちた男性に変身します。1963年の作品なので、今となってはいろいろとコンプライアンス的に問題がありますが、終始ドタバタコメディながら、最後の最後で「自分自身を愛する」というメッセージを打ち出し、美女までゲットして、後味よく終わらせる力技が見事です。日本のコメディアンもかなり影響を受けたであろう、細部に至るまで小ネタで満たしたボケの多さも印象的です。吉本新喜劇がお好きな方にはお勧めです。
12 ブラッド・ピット主演の西部劇大作です。私はよく知らなかったのですが、ジェシー・ジェームズというアメリカで人気のある強盗団の首謀者の生涯を、その暗殺者との交流を交えつつ描いた作品です。レオナルド・ディカプリオの「レヴェナント」のように、あえて汚れ役を重々しく演じて、賞レースを狙う気満々だった作品だという気がします。ブラッド・ピットは好きな俳優ですし、この作品の演技も悪くはないと思いますが、単なる感情の起伏の激しいサイコパスにしか見えず、このダーティー・ヒーローが、なぜアメリカで人気があるのかの説得力はあまり感じませんでした(労働者と女性からは金品を奪わなかったそうですが、そのような描写はありませんでした)。暗殺者役のケイシー・アフレックも、可愛げとウザさが絶妙に入り混じった名演でしたが、それでも作品の格を上げるまでには至っていません。批判されるべきはやはり監督で、ジェシー・ジェームズの魅力が描き足りない一方で、暗殺者側の描写は妙に冗長で、これなら主役を暗殺者側にして、ブラッド・ピットを脇に配置した方が、作品の奥行きが広がった気がします。暗殺者の兄役のサム・ロックウェルも、小心かつ狡猾なとても印象的な演技をしていて、名作になる要素はたくさんあっただけに残念でした。
15 33地域の暮らしと文化が丸わかり! 中国大陸大全/ヤンチャン
16 猫組長と西原理恵子のネコノミクス宣言 コロナ後の幸福論/猫組長、 西原 理恵子
15 在日中国人のユーチューバー(私は動画を見たことはありませんが)が、中国の省や自治区などの33の地域の特徴、名所、名物料理などを解説してくれる本です。日本でさえ、各都道府県で個性が異なるのに、より広大な中国だと各地域ごとに、まるで別の国であるかのような大きな違いがあるという、当たり前の事実に気づかせてくれます。「中国」や「中国人」と一括りで議論することの乱暴さを感じました。その一方で、中国という国家自体が、これだけの広大な領土の住民に対して、「中国人」というアイデンティティを植え付けることに、ある一定の成果(それも外から見ているほどは単純ではないでしょうが)を上げているという事実が、まさにヤンチャンさんの語り口から垣間見える点も興味深かったです。もう少し詳細な地図をつけて紹介してくれたらよかったと思いましたが、Google Mapで各地域を検索しながら楽しく読むことができました。私は海南省に行ってみたくなりました(このエリアも複雑な事情を抱えているでしょうが)。
16 元経済ヤクザの猫組長の経済をテーマにしたエッセイと、それとあんまり関係のない西原理恵子さんのイラストが掲載された、雑誌連載の書籍化シリーズ続編です。本作はコロナ禍当時の考察がたくさん収録されていますが、とくに目新しい視点はなかった気がします。一方、カルロス・ゴーン事件の解説はユニークで、この問題をマネーロンダリングの視点から触れられた考察はあまりなかったと思いますので、経済ヤクザならではのブラックなノウハウも含めてとても興味深かったです。教養と現場のたたき上げの知識が融合することで、オリジナルな価値が出ることに、あらためて気づかせてくれました。
■映画
11 底抜け大学教授/監督 ジェリー・ルイス
12 ジェシー・ジェームズの暗殺/監督 アンドリュー・ドミニク
11 エディ・マーフィがリメイクした「ナッティ・プロフェッサー」の元ネタ(原題も”The Nutty Professo”です)となった作品です。虚弱体質の冴えない大学教授が、自ら発明した薬を飲んで、魅力的で強引な才気に満ちた男性に変身します。1963年の作品なので、今となってはいろいろとコンプライアンス的に問題がありますが、終始ドタバタコメディながら、最後の最後で「自分自身を愛する」というメッセージを打ち出し、美女までゲットして、後味よく終わらせる力技が見事です。日本のコメディアンもかなり影響を受けたであろう、細部に至るまで小ネタで満たしたボケの多さも印象的です。吉本新喜劇がお好きな方にはお勧めです。
12 ブラッド・ピット主演の西部劇大作です。私はよく知らなかったのですが、ジェシー・ジェームズというアメリカで人気のある強盗団の首謀者の生涯を、その暗殺者との交流を交えつつ描いた作品です。レオナルド・ディカプリオの「レヴェナント」のように、あえて汚れ役を重々しく演じて、賞レースを狙う気満々だった作品だという気がします。ブラッド・ピットは好きな俳優ですし、この作品の演技も悪くはないと思いますが、単なる感情の起伏の激しいサイコパスにしか見えず、このダーティー・ヒーローが、なぜアメリカで人気があるのかの説得力はあまり感じませんでした(労働者と女性からは金品を奪わなかったそうですが、そのような描写はありませんでした)。暗殺者役のケイシー・アフレックも、可愛げとウザさが絶妙に入り混じった名演でしたが、それでも作品の格を上げるまでには至っていません。批判されるべきはやはり監督で、ジェシー・ジェームズの魅力が描き足りない一方で、暗殺者側の描写は妙に冗長で、これなら主役を暗殺者側にして、ブラッド・ピットを脇に配置した方が、作品の奥行きが広がった気がします。暗殺者の兄役のサム・ロックウェルも、小心かつ狡猾なとても印象的な演技をしていて、名作になる要素はたくさんあっただけに残念でした。