本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

ラブレス

2021-06-26 07:36:20 | Weblog
■本
51 お前なんかもう死んでいる プロ一発屋に学ぶ50の法則/有吉 弘行
52 炎上CMでよみとくジェンダー論/瀬地山 角

51 元猿岩石の有吉さんによる人生論です。再ブレイクはされていたものの、まだ、冠番組がさほどない2012年に出版された本なので、現時点ではおっしゃることが異なっているような気がしますが、一度絶頂からどん底に落ちたご経験があるだけに、無常観漂う内容となっています。謙虚さ、質素さを毒舌でコーティングする、現在の有吉さんの芸風にも通じる文体が個人的には大好きです。お金と自分のポジショニングについての大切さが、繰り返し強調されている点が印象に残りました。ポジティブ一辺倒の成功者による人生訓が苦手な方には是非お勧めしたい本です。

52 炎上CMのどのような点が問題なのかを、訴求対象が女性か男性か、と炎上ポイントが外見・容姿か性役割か、による4つの象限に分けて具体的に説明されています。CMはその性質上ある程度のターゲットの絞り込みが必要だとは思いますが、そもそもその対象に伝えるべきメッセージではなかった場合と、これまたCMの性質上ターゲット以外の人に触れる機会があるので、その対象以外の人に過剰に嫌悪感を抱かせる内容であった場合に、炎上が発生するということがよくわかります。どのケースも注目を集めるための方向性が間違っており、インパクト重視で刺激的な表現を採用するよりも、性役割等の既成概念の半歩先を行く、ハッとするような気付きを与える表現にすべきだったということを教えてくれます。大前提として「個人差は性差を必ず超える」という指摘に特に共感しました。と言いつつ、実は途中までこの作者を女性だと勝手に思い込んでいて、前半に記載のあった炎上CMスポンサーの他商品購入をボイコットする下りを読んで、「女性の粘着質なところが出ている」と思ったりしていたので、まだまだ、私も反省と精進が必要だと痛感しました。


■映画
48 ゴーストバスターズ /監督  ポール・フェイグ
49 ラブレス/監督 アンドレイ・ズビャギンツェフ

48 1984年に主題歌ともども大ヒットした映画のリブート版です。女性を主人公にし人種的なバランスも取り、マーケティング上の配慮がなされていますが、過激でブラックなギャクは健在です。主要登場人物の癖が強め(特に、受付係の美形男性の電話応対もまともに応対できない無能振りはなかなかのインパクトです)なので、それを許容できるかによって好みがわれるかもしれませんが、楽しいコメディ作品に仕上がっています。一方、人間に焦点を当てるあまり、ゴーストの方は、おなじみのマシュマロマンなどが登場するものの影は薄めです。頭をからっぽにして、リラックスして観るには良い作品だと思います。

49 タイトルが大好きなマイ・ブラッディ・バレンタインの傑作アルバムと同じなので観ました。とはいえ、ロシアの映画なので原題の意味をネットで調べると「嫌悪」や「反感」と出ていました。原題通り母親役の夫や息子に対する嫌悪感丸出しの表情が印象的です。離婚する両親の自分を押し付け合う喧嘩を立ち聞きした少年が失踪する、という救いのない話ですが、演出がが巧みなので嫌悪感よりも先の展開を知りたいという興味の方が勝ってしまいました。普段なかなか知ることのできない、現代ロシアの恐らく中の上くらいの生活レベルにある人々が描写されているのも興味深かったです。また、失踪した子どもの捜索には、警察よりもボランティア団体の方が頼りになるという事実も勉強になりました。両親それぞれが、必ずしも恵まれた子ども時代を過ごしたわけではないことを描きつつも、それでも、両親の冷淡さ、身勝手さ、そして弱さ、を執拗に描写する姿勢が見事です。親であることの難しさを考えさせられました。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画には「動機」がある

2021-06-19 07:01:51 | Weblog
■本
49 映画には「動機」がある/町山 智浩
50 教養脳 自分を鍛える最強の10冊 /福田 和也

49 アメリカ在住の映画評論家、町山智浩さんによる『「最前線の映画」を読む』シリーズ第二弾です。前作が面白かったのと、大好きな「スリー・ビルボード」と「シェイプ・オブ・ウォーター」が取り上げられているので読みました。作品が発するメッセージを、監督の生い立ちや過去の作品まで詳細に調べ、できるだけ客観的に読み解こうとする緻密な姿勢が新鮮です。結構ネタバレを含む解説ですが、それでも、未視聴の作品を観てみたいと思わせる点が、映画評論として成功していると思います。もちろん、観たことのある作品については、「こういう観方もあるのか!」という気付きが多く得られます(例えば、「スリー・ビルボード」と「シェイプ・オブ・ウォーター」の両作品とも、ゲイの登場人物の描かれ方の意図について私は理解できていませんでした)。この本で紹介されていてまだ観ていない、「ラブレス」や「アンダー・ザ・シルバーレイク」といった作品を観てみようと思います。

50 福田和也さんが、ヒトラーの「わが闘争」や福澤諭吉の「文明論之概略」などの古典を、それぞれの著者の生い立ちも含めて解説して下さりながら、教養について考える内容です。文学、哲学、評論と幅広い(というよりも思いつくままに)教本が選ばれている点がユニークです。正直とてもよく理解できたものもありますし、ちんぷんかんぷんな箇所もありました。『よりよく社会を発展させるためには、人が広く学問、芸術、宗教に触れて自分の人格を養い育てていくことが必要であり、そうした努力や成果がそもそもの「教養」の意味』と歯切れよく定義づけて下さっています。確かにビジネスで役立つという視点以前に、自分の人格を高めるために教養を身につけるという心構えが必要だと感じました。「神曲」や「存在と時間」などはハードルが高いですが、「万葉集」や「論語」あたりから解説本を片手に読んでみたいと思いました。


■映画
46 ファンシイダンス/監督 周防 正行
47 ヴィジット/監督 M・ナイト・シャマラン

46 「Shall we ダンス?」で有名な周防正行監督が、僧侶の修行について描いたコメディです。1989年に公開された作品なので、バブル期全開の世界観と、修行僧のストイック(かつ俗世間にまみれた)生活の対比が面白いです。それまで成人映画を撮られていた周防正行監督のはじめての一般向け作品いうこともあってか、禁欲的な世界を描いているにもかかわらず、どこかエロティックなところも印象的です。主演の本木雅弘さんは頭を剃っての役作りで、煩悩にまみれた現代っ子が、山寺での修行でしたたかに苦闘しつつ成長する姿を見事に演じられています。アイドル時代の彦摩呂さんや、ふざけていない竹中直人さんの演技も今となっては新鮮です。原作漫画の映画化ということですが、テーマ選定に卓越したセンスを感じる作品です。

47 一時の低迷期を脱して、この作品以降の「スプリット」や「ミスター・ガラス」といった快作へと連なる、シャマラン監督の「復活の狼煙」的な文脈で取り上げられることの多い作品です。「シックス・センス」のような精巧な完成度の高さはありませんが、まるでインディーでのデビュー作のような粗削りなパワーに満ちています。シャマラン監督特有の大どんでん返しのインパクトこそ弱いものの、それまで思わせぶりな、いったりきたりの展開が続くので、「結局そのオチなんかい!」と突っ込んだときの爽快感が大きいです。伊藤潤二さんのホラー漫画を読んでいるかのような、過剰な恐怖が笑いに転化しています。クリエーターが自らに課した制約から解き放たれた瞬間を感じられる、ある意味清々しい作品です(内容はひたすらグロテスクですが)。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

amazonのすごい会議

2021-06-12 07:17:07 | Weblog
■本
47 amazonのすごい会議/佐藤 将之
48 まほろ駅前狂騒曲/三浦 しをん

47 最近パワーポイントでの資料作成に疲れてきたので、amazonの会議ではパワーポイントではなくワードでの1ページの資料が使われているという記事を見て読みました。実際には、資料は1ページだけでなく6ページの場合があり、かつ、添付資料の分量は自由ですし、パワーポイントの否定というよりも、文章で行間も含めてきちんとロジカルに書き切るということがポイントでしたが、有益な知見が得られるとても良い本でした。特に、参加者全員がこのワード資料を黙読することから会議を始めるという点は、コロナ禍でリモート会議が増えた状況ではとても有効だと感じました。リモート会議で発言が被って気まずい思いをした人は多いと思いますが、この方法だと全員が早合点することなく議論を進めることができるので、とても効率的だと思います。単なる会議の方法論だけでなく、前例に囚われることなく、何が本質的であるかを考え抜くことの大切さについても気づかせてくれます。パワポ資料を作って仕事をした気になることが多いので、目的は資料作成ではなく、よりよい意思決定とそれに基づく実行であることをより意識したいと思います。


48 「まほろ」シリーズの完結作です。ストーリーを忘れる前に結末を知りたいと思い読みました。タイトル通り、これまでに登場したキャラクター総出演での、まほろ駅前の混沌とした事件がメインに描かれています。この事件を通じて、これまでの全ての伏線がこれでもかと回収され、それぞれのキャラクターが持っていたわだかまりが次々と解消されていくのが、あまりにも過剰で最後は少ししんどくなってくるものの、その労力に見合う爽快感が最後には得られます。やはり、この作品のキャラクターと世界観の設定は絶妙だと思いました。これだけの人気作品にもかかわらず、引き伸ばさずにきちんと終結させた潔さも見事です。絵に描いたようなハッピーエンドが照れくさくもあり、心地よくもあります。現実世界もこうあって欲しいものです。


■映画
44 ゴジラ キング・オブ・モンスターズ/監督 マイケル・ドハティ
45 シャザム!/監督  デヴィッド・F・サンドバーグ

44 ハリウッド版ゴジラの続編です。マーベル作品のように世界観を共通にして、ゴジラやキングコングなどの個々の作品を制作する「モンスターバース」というシリーズの3作目だそうです。1作目の「GODZILLA」は観たはずなのに、なんか話がわかりにくいなと思ったら、このシリーズの前作にあたる「キングコング: 髑髏島の巨神」という作品を観ていないためでした。主要登場人物に全く感情移入ができないのと(自分の息子が怪獣の犠牲になったからと言って、その復活の原因となる環境汚染を引き起こした人類を怪獣に襲わせるという発想自体が理解できません)、彼らによる人災で世界が危機に陥るので嫌悪感しかわきませんが、ゴジラだけでなくモスラやキングギドラという懐かしい怪獣が豪快に暴れる姿はやはり迫力があります。ひどいストーリーのために、大迫力の映像が爽快感に繋がらないのが残念でした。ヒューマンドラマは全く不要だとは言いませんが、もう少し怪獣をメインにした映画にして欲しかったです。

45 こちらもワーナーブラザースがマーベルに対抗して立ち上げた、スーパーマンやバッドマンのDCコミックスの共通世界観に基づく「DCエクステンデッド・ユニバース」に属する作品です。この作品は、ふとしたことから超人的な能力を手にした14歳の少年が主人公なので、スーパーマンやバッドマンのような堅物ではなく、その能力を見世物にして小金を稼ぐなど、少しゆるい倫理観が好ましいです。一方で、DCコミックスのキャラクターに共通する、子ども時代のトラウマを抱えていてツボも押さえられています。マーベルのシリーズで言うと、「スパイダーマン」(トム・ホランドが主演の学園ドラマ風テイストのシリーズの方です)に位置するキャラクターだと思うのですが、シャザムに変身したあとの外見が完全に大人なので(そのギャップが面白くもあるのですが)、思春期を代表するキャラクターに完全にはなり得ていない点が少し中途半端な気がしました。そういう意味では、さまざまな属性を持つ人々が共感できるキャラクターを満遍なく配した、マーベル作品はやはりよくできていると思います。DCコミックスのシリーズでいうと「ワンダーウーマン」はこの作品と同様によくできていたので、変に世界観を共通させずに、独自のヒーローもの路線を追求してもらいたいです。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

メディアの闇

2021-06-05 15:49:28 | Weblog
■本
45 メディアの闇 「安倍官邸 VS.NHK」森友取材全真相/相澤 冬樹
46 星の王子さま/サンテグジュペリ

45 先日読んだ「2016年の週刊文春」でも取り上げられていた、森友事件にライフワークとして取り組まれている相澤記者がNHK退社にまでに至った経緯と、彼が取材したこの事件の背景について書かれた本です。もう少し客観的にこの事件についての詳細が描かれた本だと勝手に想像していましたが、相澤さん一人称としての描写が満載だったので少し驚きました。また、相澤さんのことを正義感に基づく善意の記者とも勝手に想像していましたが、それ以上に特ダネを取りたいという野心がむき出しに書かれている点も意外でした。しかし、その分、相澤さんの人間性や取材テクニックが詳細に描かれていて読み物として抜群に面白かったです。仕事に取り組む上での考え抜くことの大切さ、相手との信頼関係、そして、それらの行動のベースとなる職業人としての誇りについても学ばせていただきました。記者という仕事の喜びや大変さについても余すことなく書かれています。また、組織で働くことの悲哀や、私人としては善人であっても組織人として権力者が下す判断の非情さについても生々しく理解することができます。記者を志す人にはお勧めしたい本です。まだまだ森友事件については解明されていない事実がたくさんありますので、相澤記者の今後のご活躍に期待したいです。

46 先週読んだブルボン小林さんの書評集でこの本が結構酷評されていたのと、子どものときに母親から勧められていたにもかかわらず、これまで何度も挫折していたので(無意識にブルボン小林さんと同じような嫌悪感を抱いていたのかもしれませんが)、いい機会だと思い一気に読みました(それほど長い話ではないので、実はすぐに読み終われるのですが)。池澤夏樹さんによる訳の方です。大人の行動に対する辛辣かつ表面的な批判については、ブルボン小林さんほどの嫌悪感は感じなかったです。しかし、星の王子さまの、自分に対する質問には答えないが、自分がした質問については相手が答えるまで繰り返すという態度は、それが子どもの特徴として描かれているにしても、あまり好きにはなれませんでした。余白の多い読み手の解釈に委ねる描写は企みとしては理解できます。読む年齢や体調によって評価が分かれる作品だと思いますし、それだけに再読する度に新たな発見もありそうです。ただ、やはり、そこまで絶賛すべき作品ではないと思います。構造としては、スヌーピーでおなじみの「ピーナッツ」と同じですし、毒や哲学的な考察の深さは明らかに漫画のこちらの方が上です。でも、谷川俊太郎さんの詩と同様の、生まれてきたことに対する漠然とした悲しみは良く描写されているとは思いました。

■映画
42 ジオストーム /監督 ディーン・デヴリン
43 ヘイル、シーザー!/監督 ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン

42 気候変動に伴う自然災害をテーマにしたパニック映画です。自然を人間の力でコントロールできるようになった後の近未来を舞台にしている点が新しいです(たいていはそのコントロールに失敗したあとのディストピアものが多いですので)。そのコントロール可能になった自然を悪用しようとする陰謀に立ち向かう兄弟を中心に話が展開します。その陰謀の動機の小ささと危機の大きさが釣り合わないので、かなりリアリティに欠けます。主人公の恋人が凄腕の大統領のシークレットサービスという設定もあまりにもご都合主義的です。それでも、レビュー等で酷評されているほどには悪い作品ではなく、個人的には楽しめました。自然災害や宇宙ステーションの映像はインパクトがありましたし、主人公兄弟の確執の描かれ方があまりクドくない点もよかったです。自然をコントロールすることに無反省な点も気になりますが、エンターテイメント作品なのである程度は仕方がないと思います。各国が協力して地球規模の問題に取り組むポジティブな未来像の提示としてとらえることもできますし。

43 映画制作現場を舞台にしたコーエン兄弟による群像劇です。有名俳優が続々と登場してとても豪華ですし、ジョージ・クルーニーやスカーレット・ヨハンソンといったスター俳優を雑に扱っていて贅沢です。ところどころに挿入される架空映画の撮影シーンのクオリティがとても高くて楽しめます。コーエン兄弟の作品は、過剰に描写する部分とそうしない部分とのメリハリとそれによる不気味さ特徴だと個人的には思っていますが、この作品は情報が過剰で整理されていないことによりわかりにくくなっている気がします。まるで三谷幸喜監督作品のような過剰さを感じます(そこまでクドくはないですが)。名を上げた脚本家や映画監督はこういう複雑な群像劇を描きたくなるのかもしれません。必ずしも成功しているとは言えませんが、映画愛に満ちたきらびやかな作品です好感が持てました。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする