■本
60 ランドマーク /吉田 修一
今年4冊目の吉田修一さんの本です。個人的には、その4冊の中で一番残るものが少なかった気がします。登場人物のキャラ設定や読ませる展開はいつも通り非常に巧みです。また、神の視点からの描写や、たたみかけるような文体を導入して、崩壊しそうなビルや人生のイメージを喚起させるなど、これまでの吉田作品とは趣が異なる、実験的な試みをいろいろとされています。しかし、少なくとも僕には、あまり刺さりませんでしたので、この実験は必ずしも成功していない気がします。放り出されるような、象徴的なイメージばかりが残るエンディングなど、読後に妙な違和感やひっかかりはいつもどおり残るのですが、「悪人」などに比べて、少し深みが感じられませんでした。おそらく意図的にそうされているのだと思いますが、登場人物のいろいろな行動の動機があいまいなままに放置されていることが多いように思われたので、そのあたりが影響しているのかもしれません。心理描写よりも風景描写から不安感を煽る内容なので、ただ単に僕の好みに合わなかっただけかもしれませんが、吉田作品を初めて読まれるような方にこの作品はあまりお勧めしません。勝負作というよりも進化の過程の実験作という印象が残ります。
■CD
28 Planet Earth/Prince
コンパクトにまとまった好盤です。ここ2作の復調振りが継続していることがわかる、ロック、ファンク、ヒップホップ、R&Bなどさまざまなタイプの曲がバランスよく配された充実した内容です。「Guitar」というキラーチューンもあり、PrinceファンはもちろんPrinceを初めて聴くような若い方にもお勧めのアルバムです。自己模倣に陥ることなく、一線のアーチストとしての同時代性を有しているところもすごいです。上で書いた吉田修一さんの「ランドマーク」とは正反対で、Princeにとっては、ここ数作の実験的な試みの成果を少し親しみやすいかたちでいったんまとめた作品といった趣ではないでしょうか? Prince一流の、痛いほどの先鋭性はないので、唖然とするほどの驚きはないですが、とてもリラックスして楽しく、心地よく聴ける作品です。
60 ランドマーク /吉田 修一
今年4冊目の吉田修一さんの本です。個人的には、その4冊の中で一番残るものが少なかった気がします。登場人物のキャラ設定や読ませる展開はいつも通り非常に巧みです。また、神の視点からの描写や、たたみかけるような文体を導入して、崩壊しそうなビルや人生のイメージを喚起させるなど、これまでの吉田作品とは趣が異なる、実験的な試みをいろいろとされています。しかし、少なくとも僕には、あまり刺さりませんでしたので、この実験は必ずしも成功していない気がします。放り出されるような、象徴的なイメージばかりが残るエンディングなど、読後に妙な違和感やひっかかりはいつもどおり残るのですが、「悪人」などに比べて、少し深みが感じられませんでした。おそらく意図的にそうされているのだと思いますが、登場人物のいろいろな行動の動機があいまいなままに放置されていることが多いように思われたので、そのあたりが影響しているのかもしれません。心理描写よりも風景描写から不安感を煽る内容なので、ただ単に僕の好みに合わなかっただけかもしれませんが、吉田作品を初めて読まれるような方にこの作品はあまりお勧めしません。勝負作というよりも進化の過程の実験作という印象が残ります。
■CD
28 Planet Earth/Prince
コンパクトにまとまった好盤です。ここ2作の復調振りが継続していることがわかる、ロック、ファンク、ヒップホップ、R&Bなどさまざまなタイプの曲がバランスよく配された充実した内容です。「Guitar」というキラーチューンもあり、PrinceファンはもちろんPrinceを初めて聴くような若い方にもお勧めのアルバムです。自己模倣に陥ることなく、一線のアーチストとしての同時代性を有しているところもすごいです。上で書いた吉田修一さんの「ランドマーク」とは正反対で、Princeにとっては、ここ数作の実験的な試みの成果を少し親しみやすいかたちでいったんまとめた作品といった趣ではないでしょうか? Prince一流の、痛いほどの先鋭性はないので、唖然とするほどの驚きはないですが、とてもリラックスして楽しく、心地よく聴ける作品です。