本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

60冊目

2007-07-29 07:57:59 | Weblog
■本
60 ランドマーク /吉田 修一

 今年4冊目の吉田修一さんの本です。個人的には、その4冊の中で一番残るものが少なかった気がします。登場人物のキャラ設定や読ませる展開はいつも通り非常に巧みです。また、神の視点からの描写や、たたみかけるような文体を導入して、崩壊しそうなビルや人生のイメージを喚起させるなど、これまでの吉田作品とは趣が異なる、実験的な試みをいろいろとされています。しかし、少なくとも僕には、あまり刺さりませんでしたので、この実験は必ずしも成功していない気がします。放り出されるような、象徴的なイメージばかりが残るエンディングなど、読後に妙な違和感やひっかかりはいつもどおり残るのですが、「悪人」などに比べて、少し深みが感じられませんでした。おそらく意図的にそうされているのだと思いますが、登場人物のいろいろな行動の動機があいまいなままに放置されていることが多いように思われたので、そのあたりが影響しているのかもしれません。心理描写よりも風景描写から不安感を煽る内容なので、ただ単に僕の好みに合わなかっただけかもしれませんが、吉田作品を初めて読まれるような方にこの作品はあまりお勧めしません。勝負作というよりも進化の過程の実験作という印象が残ります。


■CD
28 Planet Earth/Prince

 コンパクトにまとまった好盤です。ここ2作の復調振りが継続していることがわかる、ロック、ファンク、ヒップホップ、R&Bなどさまざまなタイプの曲がバランスよく配された充実した内容です。「Guitar」というキラーチューンもあり、PrinceファンはもちろんPrinceを初めて聴くような若い方にもお勧めのアルバムです。自己模倣に陥ることなく、一線のアーチストとしての同時代性を有しているところもすごいです。上で書いた吉田修一さんの「ランドマーク」とは正反対で、Princeにとっては、ここ数作の実験的な試みの成果を少し親しみやすいかたちでいったんまとめた作品といった趣ではないでしょうか? Prince一流の、痛いほどの先鋭性はないので、唖然とするほどの驚きはないですが、とてもリラックスして楽しく、心地よく聴ける作品です。
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シュレック3

2007-07-21 07:02:38 | Weblog
■本
59 2ちゃんねるはなぜ潰れないのか?/西村 博之

 ある意味でこの人は天才ですね。読んでいて頭がすごくよいと思いました。いろんなことを、深く強く考えているという印象です。本書の中の対談で佐々木俊尚さんがおっしゃっているように、梅田望夫さんの青臭いまでのポジティビティと対極にある身も蓋もない現実論を語ってくれます。しかし、ここまで力の抜けた一見情熱もなさそうな人が、あれだけ影響力のあるサービス(ご本人は影響力などないとおっしゃるでしょうが)を運営しているというのも変な感じがします。最後の小飼弾さんとの対談の内容は僕にはマニアックすぎて、3割くらいしか理解できませんでした。ついついいろいろと考えてしまい「思考の止め方がわからない」と語られているところは、いつも思考が堂々巡りする僕にとってはショックでした。この人たちは頭の回転という点で次元が違うと感嘆しました。


■CD
27 Zeitgeist/The Smashing Pumpkins

 かなり大好きなバンドですが、ひとこと「微妙」な作品といった印象です。普通のロックアルバムとしては、十分合格点だとは思いますが、スマパンの新作と思って聴くと少し平板な印象が否めません。原点回帰といった趣ですが、もう少しメロディアスで内省的な曲も少しは盛り込んで欲しかったです。あらためて「Mellon Collie and the Infinite Sadness」は偉大な作品だと思いました。


■映画
29 シュレック3/監督 クリス・ミラー

 今年公開された大作3作目(他はスパイダーマン3、パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド)の中で、実は一番期待していた作品。この3作の中では、一番好きですが、前作と比べると、少しこじんまりとうまくまとめたなという印象です。シュレック2にあった、ドタバタ、はちゃめちゃ感は減っています。一方、前2作のエピソードと、無理なくさりげなく連携しているところは、スパイダーマンやパイレーツよりもかなり優れています。個人的には、大好きなクッキーマンにもっと活躍して欲しかったです。クッキーマンがチャーミング王子に脅迫されて、人生の走馬灯が浮かびトリップするシーンは爆笑モノでした。相変わらずほどよい毒も効いていて、大人が見ても楽しめる作品だと思います。
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かにゴールキーパー

2007-07-14 07:41:53 | Weblog
■本
57 経営戦略の論理/伊丹 敬之

 タイトル通り、緻密に論理的に書かれた非常によい本です。丁寧な論理展開と興味深い実事例が絶妙に配分されていて、わかりやすくかつ読みやすいです。学問の世界ではなく実ビジネスの世界に生きている人にこそ読まれる本だと思います。経営戦略だけでなく、個人が人生を生き抜く上での戦略策定にも役立つと思います。僕は人生論としても読みました。自分の目指す方向に必要なノウハウを習得できる仕事には労を惜しまず取り組みたいと思います。

58 東京ノート/平田オリザ

 小津安二郎監督の映画の「東京物語」をモチーフにしているらしく、小津映画のようにしみじみした味わいの戯曲です。フェルメールの絵画が重要な小道具として何度か出てきますが、絵に例えると水墨画のような微妙な色彩(感情)の羅列でストーリーが展開していきます。特に大きな出来事はおきません。元家庭教師とその生徒の再会に象徴的なような、少々ベタ過ぎる淡い感情が何度も表現されています。ただ、背景にはヨーロッパの戦争の影がちらつき、不気味な印象が残ります。この戦争の影の設定が重要なテーマのような気もしますし、不必要な気がします。小津映画もそうですが、こういう作品は理解したような気になるのではなく、わからないものはわからないままにしておくのが正しいスタンスだと思います。個人的には、もう少し醜く荒々しい感情を持つ登場人物がいてもいいような気がしました。なんか、全体的に上品です。最後の「逆にらめっこ」のシーンは少しほろっときました。ウエルメイドな作品です。


■映画
28 かにゴールキーパー/監督 河崎実

 ひたすらくだらない内容で押しまくってきます。どういう思考回路と志で監督はこういう映画を撮ったのでしょうか?(ほめてます)。「東京ノート」と真逆の位置にある映画です。かにみそを取られるとバカになり、京味噌を補充すると京都弁になるなど本当にくだらないですが、なぜか魅力的です。セレッソ大阪の森島選手がどんな場面で出てくるか期待して観ていたのですが、演技も不要なそのままの出演だったので少し拍子抜けでした。俳優陣もヘタウマを通り越してまじで下手なところがいいです。竹中直人さん、藤岡弘さんといった大御所の不必要な怪演もいいです。映画にメッセージは不要だという気がしてきます。すべてをくだらないことだと笑い飛ばしたいときにお勧めです。
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CDちょい買いすぎ

2007-07-08 06:04:30 | Weblog
■本
56 「狂い」のすすめ/ひろ さちや

 現代は世の中の方が狂っているので、その狂っている世の中から狂って生きた方がかえってまともになれる、というのが主題です。おそらく、筆者は意識的に書いていると思うのですが、「目的意識を持つな!」とか「希望を持つな!」とかあえて極論に振っています。「頑張らねば!」と思いすぎて追い込まれている人にはこういう本は癒しになることも認めます。また、「本気で取り組めば目標は全て実現できる」といった類のビジネス書は勝者の戯言だとも思います。ただ、生きていくうえでの正しいスタンスはこのどちら側の極論にもなく、「人生は無意味だ」という開き直りと「せっかくこの世に生を受けたのだから何かを成し遂げたい」という前向きさの間を常に行ったり来たりしつつ、自分におかれた状況にあったその振幅の幅を見つけることだと個人的には思っています。逆にいうとその振幅の幅は自分で見つけるしかないので、この種の本はどこまで行っても参考にしかなりません。ただ、参考情報は多い方がいい、といった程度の認識で読むととても有意義だと思います。常々、「マスコミに人を裁く権利があるのか」、という疑問を持っている僕としては、この本の「人を裁くな!」という項目には反省させられました。僕自身も日常で結構、人を裁いているのですが、そんな資格はないということに気付かされました。

■CD
24 We Are the Night/The Chemical Brothers
25 遠距離恋愛は続いた!!/ホフディラン
26 Trans Canada Highway/Boards of Canada

24 テンション高いです。「Setting Sun」や「Star Guitar」のようなキラーチューンはないですが、特にインスト曲のクオリティが高くファンには楽しめます。歳をとったので、ちょっとこのテンションとひっかかりの多い音はお腹いっぱいになるときがありますが、朝出がけに聴くには最適です。

25 最初いまいちかなと思ったのですが3回聴いたら好きになりました。なんかふっきれたような突き抜けた明るさに満ちたポップさです。少しねじれたポジティブさも僕にとっては心地よいです。収録時間が短いことと過去の曲の焼き直しがあるのでもう少し聴きたいなあという感じはします。

26 長年の僕のベストユニットであった、My Bloody Valentineからここ数年、その地位を奪っているBoards of Canadaのミニアルバム。前作、The Campfire Headphaseの延長線上ですが、そんなことどうでもいいんです。Boards of Canadaとクレジットされていたら何でもいいという気分です。こんな気持ちになったのもMy Bloody Valentine以来です。通勤、読書、就寝時どんなときにでも効果抜群です。穏やかな美しいメロディラインと心地よいビートにかなりどっぷり浸れます(我ながらプワーな表現ですが)。本当に歳をとったんでしょうね。こういう穏やかなサウンドばかりを好むようになってきました。

 ちょっとCD買いすぎで聴く方が追いついてません。聴き込まねば。
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ワルツを踊れ

2007-07-01 06:35:03 | Weblog
■本
55 異人伝/中島 らも

 これまでエッセイで書かれている内容とダブるところはたくさんありますが、筆者の生い立ちを時系列に沿って追えるのでファンにとってはとても興味深い内容です。語り下ろしということで、会話調のところも今となってはぐっときます。らもさんがあの世から語っているかの錯覚に陥ります。死生観など、自分の最期を予期していたかのような表現も目立ちます。以前に友人と話たのですが、らもさんとナンシー関さんがいらっしゃらないのが、今の日本の大きな損失な気がします。リリー・フランキーさんがそのポジションを埋めつつありますが、良い悪いは別としてちょっと違いますね。関西からこのような才能がもっと出てきて欲しいです。


■CD
21 ワルツを踊れ/くるり
22 Dirt/Alice in Chains
23 Alice in Chains/Alice In Chains

21 先行シングル「JUBILEE」から期待しまくっていたのですが、その期待を裏切らない内容です。ストリングスを効果的に取り入れた実験的な作品の割には意外と力が抜けているところが良いです。飛びぬけてキャッチーなキラーチューンがあるわけではないですが、アルバム全体の完成度は圧倒的です。「「今、僕たちには喜びに溢れた音楽が必要だ。」というコピーがついていますが、その内容のとおり、ものを作るということに対する喜びが溢れている気がします。攻撃的なまでに、新しいものにチャレンジしていく、このバンドの姿勢は本当に信頼できます。デビュー当初は京都のちょっと変わったバンドってイメージだったのに、いつのまにか日本で一番好きなバンドになりました。ハムが食べたくなります。

22、23 ベスト盤をNapsterで聴いていたら打ちのめされて衝動買い。21とうって変わって「絶望に溢れた音」で満たされています。暗く重いけど美しくポップ。ヴォーカルとコーラスのハモリ方がすごく巧みで鳥肌が立ちました。「鬱病のビートルズ」と呼ばれたのも納得です。能天気なイメージのアメリカでこんなに暗いバンドが出てきてそれもヒットする一方で、比較的暗いとされている日本でこのようなポジションのバンドが出てこないのが不思議です。日本のこの種の「暗い」バンドは「ファッション」であって、「フィロソフィー」ではないですからね。くるりのようなスタンスで「暗い」音楽を突き詰めるバンドが日本でも出てきたらいいのにとも思いますが、そんなことしたら自殺者がもっと増えるかもしれません。音楽に人生をかけているって感じの音で、聴いていると背筋が思わず伸びてしまうような作品です。22の方が深く突き抜けた感が強いので代表作はこちらの方だと思いますが、23もヴァラエティ豊かで悪くないです。


■映画
25 スーパーマン リターンズ/監督 ブライアン・シンガー
26 イル・マーレ/監督 アレハンドロ・アグレスティ
27 プレステージ/監督 クリストファー・ノーラン

25 タイトルどおり、「スーパーマンが帰って来た」という内容。それ以上でも以下でもありません。確か僕が父親に一番最初に連れってもらった映画でそれなりに感慨深い作品なのですが、「普通」の作品です。ケヴィン・スペーシーが怪演していたレックス・ルーサーも意外とあっさりやられてしまいますし、なにより、ヒロイン(ケイト・ボスワース)が全く魅力的でないのが最悪です。ヒロインがスーパーマンとからむシーンは観ていてむかつきました。アクションシーンは魅力的なんですけど、あまり見せ場が多くなく、どちらかと言えば親子の愛情を描くことに力を入れている気がしますし。僕が楽天主義な映画が嫌いなだけかもしれませんが。

26 意外と(というか)かなりよかったです。脚本が本当に良くできています。2年間のタイムラグがミソですね。キアヌ・リーブスの下手な演技(突然雪が降ってきてくしゃみするシーンがあるのですが、カトちゃんばりのくしゃみをしてくれます)でもここまで引き込まれるのだからたいしたものです。ちなみに、キアヌ・リーブスの顔は好きです。少し残念なのは最初に韓国のオリジナル版を見たら、もっと感動できただろうに、って点です。そのうち是非観たいと思います。当たり前ですが脚本って大事ですね。

27 こちらも脚本が良くできています。その上、俳優の演技や監督のディレクションもかなり優れています。さすが、傑作「メメント」のクリストファー・ノーラン監督です。「映画を観たなあ」という満足感を得られます。「メメント」のように最後の最後まで結末がわからないといったタイプではなく、後半になるとある程度展開は読めてくるのですが、それまでに張られた伏線がぴたっと収束するところはなかなかの快感です。また、登場人物の心理描写も丁寧に描かれているので、映像だけでなくそのような行動をとった心情を想像すると恐怖感がかなり増すように作っています。結末がかなり現実離れしているので、リアリティを重視する人には合わないなどかなり評価は分かれそうな癖の強い映画ではあります。デビッド・ボウイのスターオーラと、スカーレット・ヨハンソンのいつものエロエロフェロモンが少なめなところが少し残念でした(デビット・ボウイはエンドロールを観て、初めて出演していたことに気付きました)。

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