本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

ことば、身体、学び

2023-12-31 07:11:20 | Weblog
■本
105 心を鍛える言葉/白石 豊
106 ことば、身体、学び/為末 大 、 今井 むつみ

105 タイトルと著者の経歴(オリンピアンのメンタルコーチもされている大学教授です)から、トップアスリートの名言を集めたものだと勝手に思っていましたが、メンタルトレーニングの基本について語られた本でした。個人的にこの分野の本はこれまでも読んできたので、目新しい気づきはさほど多くありませんでしたが、シカゴ・ブルズのヘッドコーチだったフィル・ジャクソンさんや、元巨人軍監督の川上哲治さんのエピソードは興味深かったです。両者とも禅の影響を大きく受けていて、瞑想を取り入れ集中力を高めつつ、チームの全体最適を説く姿が印象的でした。よいパフォーマンスを発揮するためには、メンタル面と身体面双方の鍛錬が必要なことがよくわかります。

106 続けてトップアスリートの考え方をテーマにした本を。こちらは男子400mハードルの日本記録保持者であり、アスリートとしての学びについて情報発信を続けておられる為末大さんと、著書の「言語の本質」が話題になった言語心理学者の今井むつみさんの対談本です。各章とも、為末さんがアスリートとしてのお立場から考えられていることについて語られてから、為末さんの問いに今井さんが答えるというかたちで対談が進みます。冒頭いきなり、我々が身体の動きを学ぶ上で効率的だと思いがちな「映像で確認することの問題点」(たくさんある情報の中で、本当に見なければいけないところはどこなのかわからなくなってしまう)を指摘され、「大事なところにスポットライトを当てることができる」ことばで指導することの重要性について語られるなど、実体験に基づく新しい視点を次々と提供して下さる刺激的な本でした。その為末さんのお考えに、今井さんがことばや学びの専門家としてのお立場から考察を深めてくれます。「言語の本質」で語られていた、「記号接地問題」(記号を具体的に生活体験に根ざした例でイメージできるか否かという問題)についてもより理解が深まりました。学びについては、一定のレベルに達するまでは、ある程度定石に従った方が効率的だが、アスリートにおいても、学問においても、超一流になるためには、そこから自分に合ったやり方を試行錯誤しながら見つけないと到達できない、というような指摘はとても興味深かったです。結局は自分が好きなこと、得意なことも含めた、唯一無二の自分に対する理解を深め、それに適した方法で学び続けるしかないのだと思います。他者の教えに従う部分と、自分で探求する部分とのバランスが難しいとも感じました。超一流の域に達し、言語化能力にも秀でたお二人だからこそ語れる、重い言葉に溢れた良い本です。


■映画
93 ホワイトナイツ/白夜/監督 テイラー・ハックフォード
94 ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー/監督 アーロン・ホーバス、マイケル・イェレニック

93 挿入歌で当時大ヒットした、ライオネル・リッチーの「セイ・ユー、セイ・ミー 」や、フィル・コリンズとマリリン・マーティンの「セパレート・ライヴス」のプロモーションビデオで、観た気になっていましたが、映画の方はまだでした。ところどころ作りの粗いところはありますが(いくらなんでも当時のKGBがそこまで無能ではないはずです)、国家と個人の関係を、ソ連とアメリカのそれぞれの問題点(ソ連は自由がないですし、アメリカは格差と差別がひどい)を交えながら、緊張感たっぷりに描かれている点がよかったです。ロシアとアメリカとの関係が悪化している今となっては、この緊張感が妙にリアルです。音楽はもちろんのこと、主演二人のダンスも見事で、耳も目も楽しませてくれます。一方で、ストーリーが、あまりにも非現実的な点が残念でした。長編のミュージックビデオとして観るのがよいのかもしれません。

94 ずっと観たかったので、アマプラの配信開始日に観ました。すでにいろいろなところで語られていますが、本作もストーリーを楽しむというよりも、ゲームの世界観をよりダイナミックにした、各キャラクターの動きを楽しむ作品だと思いました。子どもの頃に夢中になった、「スーパーマリオブラザーズ」や「マリオカート」のキャラクターやその動きが、最新CGで解像度高く描かれているので、とにかく楽しいです。マリオのジャンプや、カーチェイスの動きにずっとワクワクしていました。あと、マリオシリーズの音楽のクオリティがとても高かったことを再認識しました。適切にアレンジされた音楽もとても心地よかったです。観客の感覚を快適にする工夫が行き届いている作品です。子どもが10歳未満のときに一緒に観たら大いに盛り上がれた気がします。そんなポジティブな世界観の中、「イカれた世界じゃ正気なんてクレイジー」など、一人だけネガティブな発言をし続ける、星のキャラクターが絶妙のアクセントとなっていて、個人的には大好きでした。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

笑い神 M-1、その純情と狂気

2023-12-24 07:25:19 | Weblog
■本
103 笑い神 M-1、その純情と狂気/中村 計
104 久米宏です。 ニュースステーションはザ・ベストテンだった/久米 宏

103 笑い飯を中心に、M-1初期の10年間を描いたノンフィクションです。今日のM-1決勝の予習も兼ねて読みました。笑い飯を中心にしていることから、どうしても大阪吉本興業芸人の描写が多くなっていますが(アンタッチャブルやサンドウィッチマン優勝の描写はほとんどないです)、大阪ローカル放送局のABC社員や吉本興業社員のコメントなど、芸人以外の視点も取り入れて、多面的にM-1という大会のユニークさ、熱量が表現されています。ダブルボケが象徴的なように、発想のユニークさを過度に重視する古い芸人タイプの笑い飯が、芸人界に与えた影響力の大きさが、良い面も悪い面も含めて理解できました。似たタイプの千鳥が、今のテレビ界を席巻している一方で、笑い飯が、まだ、全国的な大ブレイクにまで至っていない理由もよくわかりました。自分のやりたい笑いと、周囲が求める笑いとのバランス感覚が両者を分けたのだと思います(どちらが芸人として幸せなのかは、また、別だと思いますが)。個人的には、笑い飯に馬鹿にされていたNON STYLEが、笑い飯をも唸らせる漫才で優勝するシーンと、笑い飯と正反対(勢いとタイミングの妙で勝ち上がった)のスリムクラブが、笑い飯の優勝を脅かした描写に痺れました。また、「感覚」で勝負する笑い飯に対して、「クオリティ」の追求で勝利を収めたパンクブーブーのスタンスは、才能に劣る大半の人間が、努力で対抗してサバイブしていく上で参考になりそうです。プラス・マイナスなど、決勝に進むことなく参加資格を失ったコンビに対する熱い描写から、この大会が勝者以外に与えたもの(そして失わせたもの)が伝わってきました。何より筆者自身がこの大会に魅了されて、熱量のある文章で綴られているので抜群に面白いです。今日の決勝の放送も楽しみです。

104 久米宏さんが、ご自身のアナウンサー生活を振り返られた本です。私は、特に久米宏さんのファンではないと思っていたのですが、「ぴったしカン・カン」「ザ・ベストテン」「TVスクランブル」「ニューステーション」などの番組の熱心な視聴者であったことに気づきました。この本でも触れられている、「ニューステーション」で休養明けに、久米さんがイメージチェンジされて登場されたシーンや、最終回に手酌でビールを飲み干したシーンも覚えていました。若い時に病に倒れられるなど、決して順風満帆なキャリアではなかったにもかかわらず、これだけの大ヒット番組に関わり、アナウンサーとしての評価も確立されたのは、卓越した自己プロデュース能力と、細部に対するこだわり、そして、その背景にあるセンスにあるのだと思います。あと、基本的にこの方は、話すことが大好きだということも伝わってきて、結局は好きなことを職業にした人の強みが存分に発揮されたのだとも感じました。「ニューステーション」の立ち上げ時に、電通が果たした役割の大きさについての話も興味深かったです。日本という国とテレビというメディアにまだ勢いがあり、個人の自由の拡大にポジティブな期待感があった時代(そしてこのような期待感の醸成に久米宏さんが果たした役割も大きいと思います)を振り返った本でもあると思います。インターネットやスマホ全盛の世の中ですが、メディアと伝えられる表現との関係についても、改めて考える必要があるとも感じました。読み物としても面白かったです。


■映画
92 トランボ ハリウッドに最も嫌われた男/監督 ジェイ・ローチ

 マッカーシズムが強い影響力を持っていた1950年代に、共産党員である自分の主義を曲げなかったため、ハリウッドから干された天才脚本家ダルトン・トランボを描いた2015年公開の伝記映画です。最近のハリウッドの伝記映画は実在の人物に似せることに異常な執念を燃やしていますが、本作は、主演のブライアン・クランストンの個性も垣間見られて、個人的には好ましかったです。議会への召喚、矯正施設への服役などの苦難に会いながらも、家族や仲間の生活を守るために、名作「ローマの休日」や、アカデミー原案賞を獲得した「黒い牡牛」などの脚本を偽名で書きまくる姿が描かれています。家族や友人への支配的な態度など、完璧な人物ではないトランボが、したたかに信念を貫き、結果的に多くの人を救う姿に、学ぶところが多いです。その後、ハリウッドからも「スパルタカス」や「栄光への脱出」などの大作のオファーが入り、それらの映画に実名でクレジットをされて名誉を挽回していく姿が痛快です。数奇な運命に翻弄されながらも、筋の通った人生を送った人特有の気高さ、謙虚さが感じられて感銘を受けました。先週、仕事で結構嫌なことがありましたが、少し気持ちが楽になりました。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日本沈没

2023-12-17 06:49:15 | Weblog
■本
101 ホワイトラビット/伊坂 幸太郎
102 マーケティング・インタビュー/上野 啓子

101 旅のお供など、リラックスできるタイミングに伊坂幸太郎さんの作品を読みたくなります。本作はキャラクター造形やアクション描写の評価も高い、伊坂さんの作品の中で、シンプルにミステリー小説としても高く評価されている、2017年発表の作品です。籠城事件を軸に展開するので、「グラスホッパー」などの殺し屋シリーズ、「陽気なギャング」シリーズ、名作「ゴールデンスランバー」のようなダイナミックな「動」の要素よりも、心理戦や小説ならではのトリックを使った「静」の要素が強いです。登場人物の視点により、二転三転する複雑な展開も、筆者の神的な視点を入れる独特の文体で、説得力をもってわかりやすく伝えている点も見事です。伊坂さんの作品に共通する、不完全なハッピーエンドの感覚も、喪失感と希望のバランスがよく複雑な余韻に浸れます。不完全な人間が引き起こす、不完全な世界に生じる事件の、不思議な調和が描写された物語だと思います。

102 アンケートなどの定量、量的調査と対になる、グループインタビュー、デプスインタビューなど定性、質的調査の技術について解説された本です。仕事でたまにマーケティング・インタビューに関わる機会があるのと、傾聴などカウンセリングにも通じる技法が学べるのでは、と思い読みました。インタビュアーに必要な技術、心構えから、対象者の選び方、具体的なインタビューの進め方まで、実践に役立つ技術が多数解説されていて、このテーマを学びたい人にとっては有益な本だと思います。実際のインタビュー事例も豊富に収録されているので、わかりやすく参考になります。個人的には、他者になり切ってもらったり、雑誌などの画像を切り抜いてコラージュを作ってもらったりするなど、通常のインタビューとは異なる手法について学べたことが有益でした。カウンセリングにも応用できそうです。


■映画
89 ゴジラ-1.0/監督 山崎 貴
90 日本沈没/監督 森谷 司郎
91 ノートルダムの鐘/監督 ゲイリー・トルースデール、カーク・ワイズ

89 山崎貴監督作品はストーリーが甘すぎてあまり好きではないのですが、日本だけでなくアメリカでも評判がよかったので観ました。予想通り、ご都合主義的なストーリー展開と性善説で必要以上に単純化された人物描写にはあまり共感できませんでしたが、ゴジラを中心としたCG表現の迫力は圧倒的でした(ゴジラがシンプルに格好良く、かつ恐ろしいです)。わかりやす過ぎるシンプルなストーリーと人物描写により、かえって没入感のある映像体験に集中でき、その点がアメリカでもヒットした理由なのだと思います。また、特攻を美化していない点は良かったと思います。辛口の評価になってしまいましたが、あれだけ評価が高かった「シン・ゴジラ」の後で、その延長戦上ではなく、新たなゴジラ映画の魅力(自然災害を象徴するゴジラが、国家や組織に与える影響よりも、個々人に与える影響を強調されている点など)を提示したという意味では、素晴らしいチャレンジだと思います。

90 「ゴジラ-1.0」を観た勢いで、同じく日本の危機を描いたSFの傑作である本作を観ました。小松左京さんの小説やその映画化作品を体験するのは初めてなのですが、膨大な知識に基づく細部にこだわり抜いた描写や、視座の高いメッセージ性に打ちのめされました。日本政府が国民の移住先を各国と交渉する描写は、今のパレスチナ問題を予言しているかのようです。また、アメリカへの配慮や周辺国への面子を抜きに、今の日本政府がどれだけ、我々の生存権に配慮した危機管理をしているのか、を考えると暗い気持ちになりました。原作小説は続編として、難民となった日本人のその後を描く構想もあったそうですが、個人として自分が難民となった姿を想像することは、今の世界情勢をリアルに理解する上で有効だと思いました。パニック映画としてエンターテイメントとして成立しているだけでなく、世界と自分との関係を考える上で、新たな視点を提示してくれる素晴らしい作品だと思いました。ただ、男女関係の描かれ方は今となっては、浅すぎますね。特撮もCG全盛の現在から見ると技術的な古さは感じますが、作品の世界観にかえってマッチしていると思いました。

91 ヴィクトル・ユーゴーの原作を元に、ディズニーがアニメ映画化した1996年公開の作品です。ディズニー作品らしいコミカルさとポジティブな雰囲気が全編を貫いていますが、ジプシーを執拗に追い詰める最高裁判事のフロローを筆頭に残酷な描写も多いです。主人公のカジモトが市民からいじめられるシーンは陰湿ですし、ヒロインのジプシー、エスメラルダを追跡する際に、フロローが関係者宅に火を放つよう命じるシーンはかなり悲惨です。それだけに、エスメラルダが処刑される直前で、カジモトが奮起し、フロローに逆襲するシーンは実に痛快でした。そして、カジモト、エスメラルダ、そして正義感の強い護衛隊長のフィーバスとの三角関係のおさめ方も秀逸で、ルッキズムが批判される現代でも通じるバランスの良さに感心しました。得られる教訓が多く、音楽や映像も素晴らしい、ディズニー作品らしい安定感のある作品だと思いました。最近のディズニー作品のようにマーケティングが精緻過ぎない点も好ましく感じます(そのためか、本作は興行的にはあまり成功しなかったそうですが)。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

1973年に生まれて

2023-12-09 06:57:22 | Weblog
■本
99 1973年に生まれて/速水 健朗
100 新版 ITコンサルティングの基本/克元 亮

99 団塊ジュニア世代(ロスジェネ世代)の中心である1973年に生まれた人の視点から、1980年代以降の日本の出来事、話題、事件を振り返った本です。少し上の世代である私には、懐かしいことだらけでとても楽しめました。取り上げられる、出来事、話題、事件は、サブカルが中心でかなり偏りがあるような気もしますが(そしてその偏りは私にとってはとても心地よかったのですが)、その偏りが、よりこの世代を象徴しているとも感じました。この本の筆者も仰っていますが、技術というものは定着すると、それ以前のことがなかなか思い出せないものだという事実を、驚きとともに理解できました。私は学生時代の自宅は黒電話だったのですが、その時にどのような不便を感じていたのかは、ほとんど覚えていません。ビデオデッキや留守電、FAXが実家に導入されたのもずいぶん遅れていたと思うのですが、それ以前の記憶についてもあいまいです。そのような歴史をあらためて振り返ることは、変化がとても激しい現在に自分を保つ上では有益なのかもしれません。40代後半から50代前半の人にとっては、楽しみながらいろいろな気づきが得られる本だと思います。団塊の世代の人に比べると、いろいろと恵まれていない面もありますが(そして、それが現在の日本の少子化にもつながっているのだと思いますが)、結構楽しく刺激的な思い出も多いと感じました。

100 タイトル通り、ITコンサルタントとは何かから始まって、その基本的な内容について教えてくれる本です。仕事の流れから、取り組みテーマ、用いられるツール、必要とされるスキル、さらにはキャリアパスについても詳細に書かれています。取り組みテーマについては、IOTやAIなど若干流行りに流されていて、本当に需要の多いものが網羅されているのかが少し気になりました。また、キャリアパスや就職、転職ノウハウについて、より詳細に書かれていたので、タイトルは「ITコンサルタントになるには」の方がよかったかもしれません。とはいえ、この仕事に必要な要素が俯瞰的に見ることができ、自分の強みや強化ポイントがよくわかるので、近しい仕事をしている人は一度斜め読みしておくとよいと思いました。個人的にはSEとの違い(SEは役立つかどうかはさておき定義された要件をきちんと実現することに責任を負う、ITコンサルタントはビジネスに役立つ要件を実現させることに責任を負う、と私は理解しました)を理解できた点が有益でした。


■映画
86 探偵マリコの生涯で一番悲惨な日/監督 内田 英治、片山 慎三
87 花束みたいな恋をした/監督 土井 裕泰
88 決断の3時10分/監督 デルマー・デイヴィス

86 新宿歌舞伎町を舞台に、伊藤沙莉さんが探偵役を演じているという設定に興味を持って観ました。6つのエピソードが描かれているのですが、非常にリアルなものと、完全にファンタジーなものが混在していて、世界観がぶれている点が個人的には気になりました。幼少期のトラウマに満ちた悲惨極まりない話が描かれる一方で、宇宙人やゴルゴ13のような凄腕殺し屋が登場するので、なかなか感情移入しにくかったです。俳優陣の癖強めの演技と、作品全体の雰囲気は好ましかったので残念でした。創り手側のこだわりや熱い思いに、観客が置いてきぼりにされたパターンの作品だと思いました。

87 こちらも、リアルさとファンタジーさのバランスがちょっと歪(いくらなんでも恋人同士でここまで趣味や行動が一致することはないと思います)な作品です。にもかかわらず、まるでハリウッドザコシショウの誇張モノマネのように、ある種の本質を描いているような感動が味わえました。本作で言うと、「恋」というものの、喜びや切なさが、ある種の懐かしさとともに、ありありと伝わってきました。このあたりはさすが、坂元裕二さんの脚本と言えます。坂元さんの脚本は、複数の恋人を描くパターンが多いと勝手に思っていましたが、本作は一組の関係が徹底的に掘り下げられています。浮気が原因で破局に向かわなかった点がよかったです。人生のある時期に、最良の相手と出会えた奇跡が美しく描かれています。この美しいストーリーを、菅田将暉さんと有村架純さんがみずみずしく演じられている点も見事でした。あまり好きなタイプの作品ではないのですが、称賛せざるを得ません。

88 先日観た本作のリメイク作品「3時10分、決断のとき」がとても面白かったので、観ました。こちらも抜群に面白かったです。リメイク版が、ラッセル・クロウ演じる強盗団の頭目に焦点が当たっていたのに対し、本作は、彼を護送する生活苦の牧場主の方に焦点が当たっています。その分、派手なアクションシーンは控えめで、牧場主のお金を求める気持ちと、正義感との葛藤が巧みに描かれています。リメイク版と違ってハッピーエンドとなっている点もよかったです。やはり、こういう一本筋の通った男は報われないといけません。その分、先が読めないリメイク版のようなハラハラドキドキは少ないですが、シンプルにメインのストーリーが進んでいく展開は力強く、引き込まれるものがありました。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

コッホ先生と僕らの革命

2023-12-01 05:19:30 | Weblog
■本
97 AIの未来からビジネス活用術まで ChatGPTについて佐々木俊尚先生に聞いてみた/佐々木 俊尚
98 女性部下や後輩をもつ人のための1on1の教科書/池原真佐子

97 タイトル通り、ITに詳しいジャーナリストの佐々木俊尚さんが、今話題のChatGPTについて、いろいろと教えて下さる本です。2ページ見開きの一問一答形式で、図解も豊富でとてもわかりやすいです。回答自体は既にいろいろなところで語られている内容が多く、目新しさはそれほどないですが、徐々に専門的な内容になっていくので、初めてこのテーマを学ぶ人にもとっつきやすいと思います。ビジネスや実社会での活用方法についてのアドバイスも豊富で参考になります。個人的にはSNSの投稿内容を入力して、炎上リスクをChatGPTに事前に判定してもらう、という使い方が興味深かったです。

98 主にコーチング目的のメンターとしての立場で、1on1を行う上でのスキルや心構えについて教えてくれる本です。最近女性にカウンセリングをする機会が増えてきたので、読みました。入門的な内容なので、知っていることが多かったですが、コーチングとカウンセリングの類似点と相違点に気づくことができてよかったです。また、当事者の求めていない的外れな配慮はかえって逆効果になることや、仕事上の成功や昇進を自分の実力以上と感じて後ろめたく思う「詐欺師症候群」に陥るケースもあるなど、「女性ならではの組織の課題」について学べたことも個人的には有益でした。ケーススタディが豊富な点も参考になります。基本は、性別や属性を問わずバイアスを取り除いて、相手の話す内容に集中し、個々人にあった対応をすることに尽きるのだと思います。


■映画
85 コッホ先生と僕らの革命/監督 セバスチャン・グロブラー

 19世紀末期のドイツで「サッカーの父」とも言われる人物とその生徒との交流を描いた作品です。実話に基づく話にしては、ご都合主義的な脚色がなされ過ぎている気もしますが、シンプルに感動的な話でした。クライマックスのサッカーの試合の描かれ方も効果的です。当時のドイツで、戦前の日本と非常によく似た、厳格で閉鎖的な教育がなされていたことがよくわかり興味深かったです。資本家が労働者階級に対して差別的な態度を取っていた点も強調されています。そのような悪しき風習を、サッカーを通じて子どもたちが打破していく姿が痛快です。最近は少し低迷していますが、当時から100年程度で、ドイツがサッカー大国になったことを思うと、日本のサッカーの未来にも希望が持てます。人間の固定観念を崩すことの難しさと、だからこそ教育が大事だということにも気づかせてくれます。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする