■本
77 続 学校に行きたくない君へ/全国不登校新聞社
78 同調圧力 日本社会はなぜ息苦しいのか/鴻上尚史、 佐藤直樹
77 不登校経験者が、自ら会いたい人にインタビューをした内容を収録した本の続編です。前作と同様に、R-指定さん、谷川俊太郎さん、庵野秀明さん、宇多丸さん、糸井重里さん、荻上チキさんといった人選が個人的にツボでした。やはり、こういう言葉や表現を大切にする人々の話が、傷ついた経験のある人に対して、訴えかけるものがあるのかもしれません。谷川俊太郎さんが「詩人になるとは思っていなかった」とおっしゃっているのが意外でした。荻上チキさんの「大人は『行かなくていいよ』だけでは足りない。もう一歩ふみこんで、『行かなくてもこっちがあるよ』ということを提示しなければならないんです。」という言葉が個人的には印象に残りました。学校に適応できなかった子どもたちに、多様な選択肢を提示できる社会にしていかなければならないと思いました。それが結果的には、私たち自身の選択肢を増やすことにもつながる気がします。
78 タイトル通り「同調圧力」をテーマに、劇作家の鴻上尚史さんと「世間学」を専門にされている評論家の佐藤直樹さん(勉強不足のため私はこの本で初めてこの方を知りました)が対談された本です。私のように鴻上さんの書籍をこれまでに読んできた方には、これまでに何度も語られてきた、公的な「社会」の欠落と中途半端に影響力を持つ「世間」が、強い「同調圧力」を生み、日本の生きにくさの原因になっている、というお馴染みの主張の繰り返しに感じられるかもしれません。しかし、「自粛警察」など、新型コロナ後にますます日本における同調圧力が高まっている状況ですので、より切実な問題として伝わってきます。これまでの鴻上さんの主張に対して、佐藤さんが「世間を構成する4つのルール」として、「お返し(LINEメッセージが送られてきたら反応しないといけない気になる、など)」、「身分制(名刺などの肩書にこだわる)」、「人間平等主義(成功者に対する強いねたみ意識につながる)」、「呪術性(冠婚葬祭などの儀式にこだわる)」といった日本の世間に特有のルールを提示し、補強されている点が興味深いです。日本の美点とも取れる特徴を強く批判する内容ですので、日本に誇りを持っている人からの大きな反発が予想される内容ですが、閉塞感が増す新型コロナ後の日本社会の処方箋の一つとして、こういう考え方もあると寛容な姿勢で耳を傾けることは、「同調圧力」による生きにくさを軽減する一つのヒントになり得ると思います。
■映画
73 ドラフト・デイ/監督 アイヴァン・ライトマン
74 SUNNY 強い気持ち・強い愛/監督 大根 仁
73 アメリカプロフットボールのドラフト当日の模様を描いた作品です。なんだかんだ言って、ケビン・コスナーが結構好きなので観ました。日本のプロスポーツと異なり、翌年以降も含む指名権自体を取引できるところや、決められた時間内に指名しないと指名権が無効となるなど(そのため、指名直前までさまざまな交渉がチーム間で行われています)、ドラフト自体が知的な駆け引きが繰り広げられるショーとなっている点が興味深いです。大切な当日になってチーム内の方針に食い違いが生じたり、女性問題や父親との確執に主人公が悩まされたりと、このチームや主人公の危機管理能力が心配になりますが、それでも、人情味あふれる選択が最後に功を奏するなど、実にアメリカらしいです。若干ご都合主義過ぎますが、ケビン・コスナーの微妙な演技も含めたB級感溢れるテイストにより、ファンタジーのような味わいが感じられ、爽快感のあるエンディングまでシンプルに楽しめました。
74 こちらも大人のファンタジーですが、エンディングこそ見事に着地しているものの(ある程度予想通りでしたが、それでも実にクールな演出でした)、かなり苦い後味が残ります。コギャル全盛期に女子高校生だった仲良し6人組の現状を、過去のエピソードと行き来しながら描くという内容ですが、その6人の置かれている状況がかなりハードです。その状況がハードだからこそ、友情の尊さがより際立つという構造になっているのですが、それにしても救いがあまりありません(ある登場人物によりこれらの不幸が一気に解消されるのですが、あまりにも非現実的です)。私が今の高校生なら、この映画を観て未来に希望があまり持てないと思います(ある意味時代を的確に抉り出しているとも言えるのですが)。大根仁さんは大好きな監督ですが、「SCOOP!」あたりから、「バクマン。」までにあった、突き抜けた痛快さから苦みが増している気がして、その点は個人的には、まだ、うまく消化できていません(私の理解が浅いだけなのかもしれませんが)。逆に言うと、観る側の感情を良くも悪くも大きく揺さぶる力を持った作品です。繰り返しになりますが、エンディングからエンドロールに至る見事な演出には多くの人が唸らされると思います。
77 続 学校に行きたくない君へ/全国不登校新聞社
78 同調圧力 日本社会はなぜ息苦しいのか/鴻上尚史、 佐藤直樹
77 不登校経験者が、自ら会いたい人にインタビューをした内容を収録した本の続編です。前作と同様に、R-指定さん、谷川俊太郎さん、庵野秀明さん、宇多丸さん、糸井重里さん、荻上チキさんといった人選が個人的にツボでした。やはり、こういう言葉や表現を大切にする人々の話が、傷ついた経験のある人に対して、訴えかけるものがあるのかもしれません。谷川俊太郎さんが「詩人になるとは思っていなかった」とおっしゃっているのが意外でした。荻上チキさんの「大人は『行かなくていいよ』だけでは足りない。もう一歩ふみこんで、『行かなくてもこっちがあるよ』ということを提示しなければならないんです。」という言葉が個人的には印象に残りました。学校に適応できなかった子どもたちに、多様な選択肢を提示できる社会にしていかなければならないと思いました。それが結果的には、私たち自身の選択肢を増やすことにもつながる気がします。
78 タイトル通り「同調圧力」をテーマに、劇作家の鴻上尚史さんと「世間学」を専門にされている評論家の佐藤直樹さん(勉強不足のため私はこの本で初めてこの方を知りました)が対談された本です。私のように鴻上さんの書籍をこれまでに読んできた方には、これまでに何度も語られてきた、公的な「社会」の欠落と中途半端に影響力を持つ「世間」が、強い「同調圧力」を生み、日本の生きにくさの原因になっている、というお馴染みの主張の繰り返しに感じられるかもしれません。しかし、「自粛警察」など、新型コロナ後にますます日本における同調圧力が高まっている状況ですので、より切実な問題として伝わってきます。これまでの鴻上さんの主張に対して、佐藤さんが「世間を構成する4つのルール」として、「お返し(LINEメッセージが送られてきたら反応しないといけない気になる、など)」、「身分制(名刺などの肩書にこだわる)」、「人間平等主義(成功者に対する強いねたみ意識につながる)」、「呪術性(冠婚葬祭などの儀式にこだわる)」といった日本の世間に特有のルールを提示し、補強されている点が興味深いです。日本の美点とも取れる特徴を強く批判する内容ですので、日本に誇りを持っている人からの大きな反発が予想される内容ですが、閉塞感が増す新型コロナ後の日本社会の処方箋の一つとして、こういう考え方もあると寛容な姿勢で耳を傾けることは、「同調圧力」による生きにくさを軽減する一つのヒントになり得ると思います。
■映画
73 ドラフト・デイ/監督 アイヴァン・ライトマン
74 SUNNY 強い気持ち・強い愛/監督 大根 仁
73 アメリカプロフットボールのドラフト当日の模様を描いた作品です。なんだかんだ言って、ケビン・コスナーが結構好きなので観ました。日本のプロスポーツと異なり、翌年以降も含む指名権自体を取引できるところや、決められた時間内に指名しないと指名権が無効となるなど(そのため、指名直前までさまざまな交渉がチーム間で行われています)、ドラフト自体が知的な駆け引きが繰り広げられるショーとなっている点が興味深いです。大切な当日になってチーム内の方針に食い違いが生じたり、女性問題や父親との確執に主人公が悩まされたりと、このチームや主人公の危機管理能力が心配になりますが、それでも、人情味あふれる選択が最後に功を奏するなど、実にアメリカらしいです。若干ご都合主義過ぎますが、ケビン・コスナーの微妙な演技も含めたB級感溢れるテイストにより、ファンタジーのような味わいが感じられ、爽快感のあるエンディングまでシンプルに楽しめました。
74 こちらも大人のファンタジーですが、エンディングこそ見事に着地しているものの(ある程度予想通りでしたが、それでも実にクールな演出でした)、かなり苦い後味が残ります。コギャル全盛期に女子高校生だった仲良し6人組の現状を、過去のエピソードと行き来しながら描くという内容ですが、その6人の置かれている状況がかなりハードです。その状況がハードだからこそ、友情の尊さがより際立つという構造になっているのですが、それにしても救いがあまりありません(ある登場人物によりこれらの不幸が一気に解消されるのですが、あまりにも非現実的です)。私が今の高校生なら、この映画を観て未来に希望があまり持てないと思います(ある意味時代を的確に抉り出しているとも言えるのですが)。大根仁さんは大好きな監督ですが、「SCOOP!」あたりから、「バクマン。」までにあった、突き抜けた痛快さから苦みが増している気がして、その点は個人的には、まだ、うまく消化できていません(私の理解が浅いだけなのかもしれませんが)。逆に言うと、観る側の感情を良くも悪くも大きく揺さぶる力を持った作品です。繰り返しになりますが、エンディングからエンドロールに至る見事な演出には多くの人が唸らされると思います。