本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

猫を抱いて象と泳ぐ

2012-02-26 15:03:44 | Weblog
■本
12 猫を抱いて象と泳ぐ/小川 洋子
13 死ぬことを学ぶ/福田 和也

12 久しぶりに小説を夢中になって一気に読みました。主人公は決して恵まれていないですし、ハッピーエンドとはとても言い難いのですが、読後は妙にやさしく穏やかな気持ちになります。自分に与えられたささやかな居場所の中で、自分の好きなことをできることに感謝できれば、どんな境遇であっても豊かな人生を送り得るということを教えてくれます。まあ、その自分の居場所と好きなことを見つけるのが難しいのですが。友人の数や体験の多さと言った量ではなくて、どれだけ集中して一つのものごとをやり遂げたか、といった質によっても人生の意味は見出し得るということを教えてくれ、静かな覚悟のようなものを与えてくれるよい本です。ワールドクラスの傑作だと思います。

13 福田和也さんお得意の明治から昭和初期あたりの文化人のエピソード集です。今回は死の間際のエピソードが中心です。読み物としては面白いのですが、帯にあるような「死に方読本」という面に期待しすぎると少し期待外れかもしれません。結局は生き方と同様、死に方も千差万別、自分の個性が発揮できる面もありますが、運任せの面もあるということがよくわかる本です。どんな立派な人も、どんな嫌な奴も、結局はみんな平等に死んでしまうという当たり前のことが再確認できる本です。


■CD
 9 Echoes Silence Patience & Grace/Foo Fighters
10 Wasting Light/Foo Fighters
11 2cellos/2cellos

 Foo Fightersが今年のロック部門のグラミー賞を獲得したので、円高で安くなっていたこともあり直近2作を購入しました。

9 Foo Fightersの通算6作目。この作品も2008年にグラミー賞の「最優秀ロック・アルバム」を獲得しています。作品としては悪くないのですが、The Pretenderに代表されるキャッチーな曲と地味目の曲のクオリティの差が激しくて、アルバム全体としては、10と比べるとちょっと散漫な気がします。

10 今年度のグラミー賞の「最優秀ロック・アルバム」他全5部門で受賞した作品。9と比べるとスケール感の大きい曲が多くて、アルバム全体の統一感もあり、かなりの完成度だと思います。何より7作目でまだ進化しているところが凄いです。静かでかつ激しくもあり、繊細でかつ荒々しく、若者から渋い大人まで幅広い年代に通用する、普遍的なロック作品だと思います。

11 何よりカバーしている曲が僕のツボです。これらの曲をチェロで演奏しようと発想した時点で勝負ありです。超絶テクニックももちろんのことですが、元々の楽曲のよさを改めて認識できます。当分読書のお供になりそうです。
 

■映画
6 ドラゴン・タトゥーの女/監督 デビッド・フィンチャー
7 レスラー/監督 ダーレン・アロノフスキー
8 ウルヴァリン:X-MEN ZERO/監督 ギャヴィン・フッド

6 ちょっと長かったですし、デビッド・フィンチャーらしいグロい映像が必要以上に多すぎる気もしましたし、調査対象の一族の関係もわかりにくかったですし、真相のどんでん返しも若干力技っぽかったですが、それらの欠点を補って余りあるほど面白い作品でした。冒頭の「移民の歌」のカヴァーがバックに流れるイメージ映像から一気に引き込まれました。特に本編とは関係ないイメージ映像ですが、作品の世界観をうまく表していて、うまいやり方だと思います。ダニエル・クレイグがスタイリッシュで優秀だけど、どこか隙のある主人公のジャーナリストを想像以上にうまく演じていてよかったです。しかし、何よりも「ドラゴン・タトゥーの女」(リスベット)を演じるルーニー・マーラの演技が素晴らしかった。「ソーシャル・ネットワーク」での可憐な演技とはうって変わって、リスベットの持つトンガリ加減と弱さとかわいらしさ、を見事に演技切ってました。観客がリスベットに感情移入できた時点でこの作品は成功だと思います。この主演2人の演技とデビッド・フィンチャー監督のスピーディーな演出で、難解で陰鬱なサスペンスが一流のエンターテインメントに仕上がっています。観て損はありません。

7 アメリカ映画によくある過去の栄光から転がり落ちた男の挫折とその再生を描いた作品です。他の作品と異なるのは実際に挫折から這い上がろうとしている俳優、ミッキー・ロークを起用しているところと、その再生が必ずしも成功に終わらないことを予感させているところです。「猫を抱いて象と泳ぐ」と同じく、「自分に与えられたささやかな居場所の中で、自分の好きなことをできること」をテーマにしていますが、その居場所(リング)以外の現実社会がより一層に救いがなく、また、その数少ない救いを主人公自身が好むと好まざるにかかわらず、台無しにしてしまっている点が切ないです。大味なストーリーですが、キャスティングと細かいストーリー上の仕掛けに凝ったことにより成功した映画だと思います。

8 X-MENの主要メンバー、ウルヴァリンの過去に焦点を当てた外伝的作品。アクションは見応えありますし、悪役も憎々しくて作品に引き込まれますが、それぞれの登場人物の行動の動機がよくわからないので(兄の方が何で悪の道に染まって、弟の方はそうならなかったのかがよくわからないし、そもそも悪の親玉っぽい人も小粒で何をしたいのかがよくわからないです)、どの登場人物にも今ひとつ感情移入できません。それなりに楽しめますが、X-MENシリーズの本編の方から観ることをお勧めします。
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For Emma, Forever Ago

2012-02-19 10:32:21 | Weblog
■本
11 クラウドの未来/小池 良次

 クラウドを技術的側面ではなく、マスメディアや製造業に与える影響と言ったビジネス面からとらえた本です。目新しい話はあまりないものの、「クラウド」という切り口で、電波政策や技術的な標準化についての各国・各企業の戦略を分析している点は新鮮です。クラウドを「超集中と超分散」(クラウド部分へのデータの集中とそれを活用するさまざまなデバイスでの分散処理)とする定義も納得感があります。一見、従来のただの「ホスティング」と大差ないと思われがちな「クラウド」のビジネスにおける意味を再整理する上では役に立つ本だと思います。


■CD
7 Nothing Safe/Alice in Chains
8 For Emma, Forever Ago/Bon Iver

7 アリス・イン・チェインのベスト盤。ベスト盤の宿命として、全体の統一感はなく雑多な印象ですが、各曲のクオリティは高いです。ダークさが強調されるバンドですが、意外と親しみやすいメロディです。ただ、各楽曲ではなく、アルバム全体を通してのクオリティで勝負するタイプのバンドだと思いますので、「Dirt」や「Alice in Chains」といったオリジナルアルバムから聴くことをお勧めします。

8 グラミー新人賞を取ったBon Iver のファースト。静けさとドラマチックさが絶妙にマッチしたセカンドアルバムと比較すると、穏やかな諦念感漂う世界観が強調されたシンプルな作品です。こういう地味目の作品が評価されるところが、アメリカの音楽業界の懐の深さを感じます。冬の朝のようなキリッと身が引き締まるような、心地よい緊張感が漂う作品です。

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Shine

2012-02-13 06:00:08 | Weblog
■本
9  本質をつかむ思考力/小宮 一慶
10 「応援したくなる企業」の時代/博報堂ブランドデザイン

9 論理的思考法についてコンパクトにわかりやすくまとめられているので、入門編や復習用には最適です。実際の事例に即した例題が多いところや、筆者自身の言葉で語られている点もよいです。「仮説思考」の大切さもよく理解できます。「関心」や知識の「引き出し」を整理する場合など、筆者自身が実践されている習慣やノウハウも紹介して下さっているのですが、ここは若干独特すぎる気がしますので、自分にあったものだけ真似していけばよいと思います。やはり、国内のGDPや自動車販売台数など、主要指標は覚えておいた方がよいですね。数字を覚えるのが苦手なのですが、主張に説得力を持たせるために努力してみたいと思います。

10 後半若干強引なこじつけっぽくなりますが(「アンケートの結果なんてテクニック次第でいかようにもなる」、と言っておきながら定義があいまいな調査結果で自身の主張を正当化しようとする点など)、相反する考え方を昇華させて解決法を見出す「弁証法」的切り口から、「ターゲット選定」や「差別化」など、ビジネス上常識とされている考え方に異を唱える構成は、なかなか興味深かったです。細かな差別化競争に陥っている日本企業の現状に対して、新たなイノベーションを生み出すために「ケースを参照するなら他業界を」という提言など、参考になる点もたくさんあります。ただ、この本の提言は全ての会社に当てはまるものではないとは思います(やはり、「勘」よりも「数値」ベースに経営した方がよい企業もあるとおもいますし)。無条件に信じるのではなく、自らの置かれた環境に適したものだけを選び取って参考にするのがよいと思います。あと、ちょっとタイトルと内容はあっていない気がします。このタイトルだとソーシャルメディアとの接し方について書かれた本のような気がしますが、その点には若干触れられているものの、もっと大きな経営戦略的視点から書かれた本です。


■CD
4 Shine/Daniel Lanois
5 For the Beauty of Wynona/Daniel Lanois
6 おるたな/スピッツ

4、5 Facebookで久しぶりにつながった大学の先輩に勧められてDaniel Lanoisの2作品を聴きました。U2の「The Joshua Tree」やピーター・ガブリエルの「So」のプロデューサーとしても有名ですが、これらの作品と比べて、派手さはないものの、渋い味わいの優れた作品です。「Shine」の方はU2のボノが参加している「Falling at Your Feet」だけはメジャー感が溢れていますが、全体を通して音数が少なく素朴な音の響きに重点が置かれている印象です。「For the Beauty of Wynona」は元The bandのロビー・ロバートソンのファースト(ダニエル・ラノアがプロデュースし、ボノやピーター・ガブリエルも参加しているので当然ですが)に似た、土の匂いがしつつも洗練された印象のあるセンス溢れる作品です。U2、ピーター・ガブリエル、ロビー・ロバートソンが好きな方にはお勧めです。

6 スピッツの他アーチスト作品のカバー曲&カップリング曲集です。奇をてらうことなく、普通に素朴に楽しそうに演奏していて幸せな気分になります。草野マサムネさんのヴォーカルの力とバンドの一体感が味わえる作品です。

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James Blake

2012-02-05 10:19:16 | Weblog
■本
7 ビッグデータビジネスの時代/鈴木 良介
8 体制維新―/橋下 徹、 堺屋 太一

7 最近のバズワード「ビッグデータ」(インターネット、モバイル、センサー技術の発達により、取得できるデータが莫大になった上に記憶媒体が安価になったため、蓄積された膨大なデータをさまざまなビジネスに活かそうという流れ、と私は理解しました)のビジネスへの応用について具体的に解説してくれる本です。システム・インテグレータや通信事業者向けに書かれている傾向があり、細かな技術的な解説が多く、若干読みにくい部分もありますが、これらの事業者のビジネスの可能性についての筆者の考察が具体的に書かれているので参考になります。データをためたり、買ってきたりすることまでは、今後ますます簡単になってくるので、結局はそこから競合が気づかない知見をいかに迅速に見出すか、の競争になりそうな気がします。

8 大阪都構想や教育改革など、橋下さんの考えの中心部分をわかりやすく語ってくれています。橋下さんの頭の中で、どのような問題意識があり、それが具体的な政策にどのようにつながっているのか、について筋道立って理解できます。好みの問題はさておき、橋下さんの主張の論理的整合性は高いと思います。ただ、大阪都や教育改革など、比較的万人に理解されやすい点だけが語られている気がして、「君が代」や「脱原発」など、より賛否が分かれそうな点についての記述が少ない点が、若干物足りなさが残ります。いち早く自らの給料などをカットし、迅速にものごとを決断していく、橋下さんのスタイルには共感を覚えつつも、橋下さんという人の評価よりも個々の政策について、冷静に評価していくことが、最も大切だと思いました。


■CD
3 James Blake/James Blake

 昨年を代表する1枚であると各方面で評価されていたので聴いてみました。音数は少ないものの響きまで計算されつくされた最先端のダブサウンドと若干古臭い声質のヴォーカルが奇妙にマッチして、独特の緊張感、存在感を醸し出します。Radiohead的な無機質な実験性と声に代表される肉体性への敬意のバランスがよいと思います。ただ、楽曲の閉塞感が強く、その意味では同時代的なサウンドだとは思うのですが、今後どのようにダイナミックなスケール感を獲得できるかが、単なるマニアックな一発屋から脱却できるポイントだと思います。並べて語られることの多いBon Iverのセカンドアルバムは世界への広がりというかつながり感という面で、本作より今後の可能性を感じます。とはいえ、中毒性のある素晴らしい魅力を持った作品です。
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