本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

リメンバー・ミー

2020-02-29 09:38:55 | Weblog
■本
20 はじめてのサイエンス/池上 彰

 引き続き、池上彰さんの新書でお勉強です。今回のテーマはサイエンスです。池上さんが「現代のサイエンス六科目」とおっしゃる、「物理」、「科学」、「生物」、「医学」、「地学」、「環境問題」の六つのテーマについて、これらの学問の日常生活へのインパクトも交えながら、手際よく解説して頂けます。「疑問や問いを持って物事を見」て、「仮説と検証を繰り返して、真理に少しでも近づこうとする」科学の姿勢の大前提を学べます。この本で取り上げられているのは「自然科学」ばかりですが、文系の私が学んだ「人文科学」にもこの姿勢が必要なことを、いまさらながら実感しました。昨今新型コロナウイルスが話題ですが、そのニュース読み解く上での知識を得られたことが、個人的には有益でした。


■映画 
19 リメンバー・ミー/監督 リー・アンクリッチ
20 ハナレイ・ベイ/監督 松永 大司

19 グロテスクな展開になりがちな死者との交流という題材を、子どももたくさん観に来るCGアニメ作品のテーマとして取り上げた勇気に、まず敬意を表します。それでいて、「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」などのティム・バートン作品のようなキモかわいい路線とは異なり、ピクサー作品の系譜に連なる王道の作品として、カラフルに描き切ったところも素晴らしいです(もちろん、ティム・バートン作品も大好きですが、誰もピクサー作品にそのテイストは求めていないと思いますので)。嫌みなく自然にメキシコ文化を取り入れている点もセンスを感じます(芸風の違いもありますが、ドリームワークスの「カンフーパンダ」は中華的要素を誇張し過ぎな印象を持っています)。ストーリーの方も、家族の絆と主人公の少年の成長いう定番のテーマを、若干のどんでん返しを盛り込みつつ手際よく描き、適度なカタルシスも得られて爽快感たっぷりです。ハリウッドの才能の豊かさとチャレンジ精神にあらためて圧倒される作品です。

20 村上春樹さんの短編小説の映画化作品です。村上ファンとしては見逃せません。ハワイのハナレイ・ベイでのサーフィン中に命を落とした青年役の演技は、個人的にはあまりしっくりきませんでしたが、その母親を演じた主演の吉田羊さんの演技は圧巻でした。主人公とハワイで出会う青年役の村上虹郎さんの演技も不思議なリアリティがあってよかったです。もちろん、ハナレイ・ベイの風景の美しさは素晴らしいです。原作はもう少しファンタジー的な要素があった記憶がありますが、吉田さんの演技力もあり、かなりリアリスティックな作品になっています。ハナレイ・ベイの風景を描きたかったのだとも思いますが、個人的な感情が強調された演出なので、演劇で観た方がより心に響くものがあったかもしれません。
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フォードvsフェラーリ

2020-02-22 11:23:47 | Weblog
■本
18 接待の一流/田崎 真也
19 欲望の資本主義/丸山 俊一 、NHK「欲望の資本主義」制作班、安田 洋祐

18 「おもてなしは技術です」というサブタイトルの通り、飲食店で人をもてなすための様々なノウハウについて教えてくれます。ホストが指示を出し、店などのサービススタッフのプロの技術を借りて、ゲストをもてなすという「もてなしのトライアングル」という関係性を学べたのはとても有益でした。私自身も、もてなす側である場合も、つい、店員さんなどに対しては、もてなされる側であると勘違いすることがあるので、反省させられることが多かったです。田崎さんが一流ソムリエということで、フレンチの事例が多いですが、フレンチでの接待の難易度が最も高いので、他の飲食店でも通用するマナーも学べます。接待だけでなくデートにも応用できる、おもてなしの考え方が多く書かれていて、ビジネスパーソン以外にも参考になる内容です。結局は、主催者としての当事者意識が重要なのだと思います。

19 海外の3人の知識人へのインタビューを通じて、グローバル資本主義や市場原理主義の問題点やその対処方法を考察する、NHKのテレビ番組の書籍化です。ノーベル賞受賞歴のある大物経済学者、チェコ大統領の経済アドバイザー経験のある若手経済学者、数多くの案件を手掛けるベンチャー投資家といった、世代や立場が異なる人の意見がバランスよく取り上げられています。個人的には、イノベーションや経済成長に対するスタンスの違いが興味深かったです。日本ではこれらの概念、特にイノベーションが否定されることはあまりないですが、人を幸せにする成長、イノベーションと人を不幸にする成長、イノベーションがあるということを、きちんと区別して議論する必要があると個人的には感じました。
UberやAirbnbは確かに利用する側にとっては様々な選択肢を提示する素晴らしいソリューションだと思いますが、そのソリューションに使われる側の人間に取って本当に幸せなのか(就業形態の多様性というメリットと、テクノロジーに支配される単なる労働力となり得るデメリットは常に考えないといけないと思います)ということは重要な論点だと思います。無限に増大する人々の欲望にどのように歯止めをかけるか、成長とは別のモチベーションの源泉をどこに求めるか、など、他にもいろいろと考えさせられる内容でした。


■CD
8 Dookie/Green Day

 新作も発表されたグリーン・デイの1994年に発表されたメジャー・デビュー作です。「American Idiot」といった中期のコンセプチュアルな作品もいいですが、この時期のカラッとした爽快感が溢れる作品も素敵です。シンプルなロックにとって、最後の黄金期のサウンドだと思います。当時、新入社員だった私にとって、この作品は青過ぎて熱心なリスナーではなかったですが(Beckとかを愛聴していました)、ここ数年のグリーン・デイの作品が原点回帰路線なので、この作品もじっくりと聴いてみたいと思います。


■映画 
17 太陽はひとりぼっち/監督 ミケランジェロ・アントニオーニ
18 フォードvsフェラーリ/監督 ジェームズ・マンゴールド

17 アラン・ドロンが出演しているということ以外はよく知りませんでしたが、ザ・コレクターズの名曲と同じタイトルだったので(と言うよりもこの曲の方がこのタイトルにインスパイアされたのだと思いますが)観ました。久しぶりに観終わってから頭の中に?マークが出まくった映画でした。ラスト数分の登場人物と無関係な映像の羅列は、核戦争による世界の終末を暗示しているのかとも思ったのですが、他の人のレビューを観ると必ずしもそういうわけではないのかもしれません。多様な解釈ができるという意味では、奥の深い映画とも言えますが、個人的には恋愛映画の結末としてはある種の逃げのような印象を持ちました。恋愛映画を超えた人間の持つ虚無感のようなものを描きたかったのかもしれませんが(「愛の不毛三部作」の最終作ということらしいので、おそらくそうなのだと思いますが)、あまり共感はできませんでした。1960年代のアナログな証券取引所のシーンと株価の暴落による人々の悲喜こもごもの描かれ方は興味深かったです。

18 ベタなタイトルから公開当初はあまり関心がなかったのですが、アカデミー賞にノミネートされるなど結構評判がよかったので、公開終了間際に慌てて観に行きました。カーレースシーンの迫力ある映像と音響を堪能でき、映画館に観に行って正解でした。クライマックスのレースシーンはテンションが上がりました。ストーリーの方も、挫折から這い上がる二人の男の友情が真っ向から描かれていて感情移入しやすく、その王道の展開をマット・デイモンとクリスチャン・ベールが見事な演技で支えていて観応え十分でした。それだけに、シンプルに勝利の余韻に満ちたハッピーエンディングではなく、若干苦みの残るエンディングだった点は個人的には少し残念でした。フォードの硬直した官僚主義に翻弄されながらも、したたかに立ち向かう二人の姿は、多くのビジネスパーソンに勇気を与えると思います。良質なエンターテイメント作品です。
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母なる証明

2020-02-15 09:56:35 | Weblog
■本
15 売れる広告 7つの法則 九州発、テレビ通販が生んだ「勝ちパターン」 /香月勝行、妹尾武治、分部利紘
16 デジタルトランスフォーメーションで何が起きるのか/西田 宗千佳
17 水底の女/レイモンド チャンドラー

15 通販テレビ広告の構成要素の違いを細かく分解し、その要素の違いにより注文数にどのような影響があるかを精緻に分析された上で、「呼びかけ&問いかけ型導入」、「小公女型商品説明」(いったん不安を煽っておいてから最後に大団円を迎える構成)、「煽り型CTA」(販売数や注文時間が限定であることを煽る)、「トリプルリフレイン」、「答え合わせ型街頭インタビュー」、「中2でも分かる特徴紹介」、「感覚刺激型BGM&テロップ」(注文されやすいテロップの色やフォントがある)といった、7つの法則を具体的に解説してくれています。それだけでなく、心理学者と共同でその心理学的意味についてもわかりやすく考察されている点が、とてもユニークで面白いと思いました。購買心理モデルとして提示されている「A・I・D・E・A(×3)〈アイデアスリー〉」モデル(テレビ通販に限らず、情報が溢れる現代社会では、消費者に「Awake(気づき)」、「Identify(認識)」、「Discussion(対話)」、「Emotion(感情・感覚)、「Action(行動)」を3回繰り返してもらって初めて購入行動を起こしてもらえるというモデル)のパートは少し掘り下げが浅い気がしましたが、レビューや街の人の声に影響されやすい我々の特性を「Discussion(対話)」として整理された点は鋭い着眼点だと思いました。

16 「デジタルトランスフォーメーションで何が起きるのか」というよりも、「フォトショップ」や「イラストレーター」といったソフトウエアで有名なアドビさんが提供するデジタルマーケティングツールを使うと「何ができるのか?」という内容なので、タイトルは少し盛り過ぎな気がします。それでも、アドビ自身が、パッケージソフトの売り切りのビジネスモデルから、月額定額課金のサブスクリプションモデルへと転換し、見事に成功された事例が詳しく書かれているので、その分野に関心のある方には参考になると思います。また、アドビのデジタルマーケティングツールで何ができるのか、を知る上でも当然役に立ちます。

17 村上春樹さんの翻訳によるレイモンド・チャンドラー長編作の7作目かつ最終作(長編は7作しかないため)となります。訳者あとがきで村上春樹さんもおっしゃっている通り、ストーリーは若干わかりにくい点がありますが、最後まで先の読めない展開やキャラクターの設定が巧妙で、楽しい読書体験でした。レイモンド・チャンドラーの文体に慣れてきたということもありますが、「ロング・グッドバイ」は別格にしても、村上さんがおっしゃるほど劣る作品ではないと思いました。フィリップ・マーロウの権力に媚びず、金や女性に対して若干の葛藤はありつつも汚くはなく、自分の筋を通す姿勢は相変わらず格好良いです。7作全部読んだ達成感はありますが、これで終わりかと思うと少し寂しくもあります。


■CD
6 Daydream/The Lovin' Spoonful
7 Who's Better Who's Best/The Who

6 大学生のときに音楽誌で、「スプーン一杯分の愛」というバンド名を褒めていたコラムを読んでから、なぜか、ずっと心に引っかかっているバンドです。「Daydream」というタイトル曲に象徴的なように、古き良きアメリカといった、ほのぼのとした牧歌的なサウンドが心地よいです。ハーモニカや口笛のアクセントも効果的です。「Didn't Want To Have To Do It」の幻想的な雰囲気と、絶妙なハーモニーもいつ聴いても色あせない魅力があります。

7 The Whoのベスト盤です。アルバム未収録の代表曲を聴きたいと思い購入しました。中期以降のアルバムに象徴的なように、緻密に考えつくされた構成の作品群ももちろん魅力的ですが、初期の切れ味のよい短編小説のような疾走感溢れるシングル曲も素敵です。アルバムを聴いているときはさほど感じないのですが、この作品のようにヒット曲を続けて聴くと、ビートルズの影響を強く感じます。


■映画 
13 翔んで埼玉/監督 武内 英樹
14 母なる証明/監督 ポン・ジュノ
15 ザ・ビートルズ EIGHT DAYS A WEEK/監督 ロン・ハワード
16 ジョジョ・ラビット/監督 タイカ・ワイティティ

13 シンプルに面白い快作です。似たようなテイストの多い日本映画で、異彩を放っています。GACKTさんを隠れ埼玉県人の洗練された高校生役としてキャスティングした時点で勝負ありですが、その上、GACKTさんがおふざけではなく、ひたすら真面目に真摯に演じた上で、笑いに繋がっている点が素敵です。ここで過度に大きな演技をされても興ざめなので、そのギリギリのラインをキープしたセンスが素晴らしいです。それに呼応するかのように、二階堂ふみさんも持ち前の演技力を存分に発揮されています。キワモノっぽい雰囲気を纏いながらも、役者さんを含む各スタッフの高度な技術が、作品のヒットと評価につながったのだと思います。

14 にわかファンとして、ポン・ジュノ作品を続けて観ております。「スノーピアサー」もそれなりに面白かったのですが(たぶん資本に入っていたアメリカ人かフランス人が余計な茶々入れをして混乱させた気もします)、こちらはさらに圧倒的でした。殺人容疑をかけられた知的障害のある息子を助けるために、真相究明に向けて奔走する中年の母親という、日本やハリウッドの映画としてはまず成立しえない設定で、かつエンターテイメント作品として高い完成度に到達しているところがまず驚きです。さらに、イノセンスをここまで残酷に描いて、さほど嫌悪感を抱かせない手腕にはただただ感嘆するだけです。先の展開が読めそうで読めないストーリーが抜群に面白いのも「パラサイト」と共通します。エンディングでの母親のダンスシーンが冒頭のシーンと結びつくところも見事です。ポン・ジュノ監督の迸る才能を堪能できる傑作です。

15 ロン・ハワード監督により、2016年に制作されたビートルズのドキュメンタリー映画です。いろいろな技術を駆使されているのか映像がとてもきれいです。デビュー当初から、1966年にライブ活動を中止した時期までの映像を中心に描かれています。ブレイク後のビートルズの凄まじい人気ぶりと(身の危険を感じるほどの異常な熱狂ぶりと、音響よりも収容キャパを優先するライブ会場選定などに嫌気がさしライブ活動を中止します)、その人気ぶりが一時のものと周囲から捉えられていたことがよくわかります。作品のインターバルが5年を超えることも珍しくない昨今の大物アーチストの状況を鑑みると、10年未満の活動期間で、これほどの多くの(しかも優れた)作品を量産し続けたビートルズの偉大さと異常さ、そしてその代償としての消耗振りを思うと改めてこのバンドの偉大さを感じます。ラストシーンのビルの屋上でのゲリラライブの楽しそうなメンバーの姿が感動的です。

16 惜しくも6部門でノミネートされたアカデミー賞での受賞は脚色賞のみでしたが、評判が高かったので観に行きました。アドルフ・ヒットラーを空想上の友人として崇拝する少年を主人公とする、ありきたりな設定でありながら、ナチス時代のドイツをコメディとして描き切ったところが新しいです。随所に戦時下の現実のシビアなシーンを描きつつも、そこに引っ張られ過ぎず、少年の日常(と空想)そして、ユダヤ人少女との交流(と恋心)が淡々とユーモアに描かれています。アカデミー助演女優賞にノミネートされたスカーレット・ヨハンソンは、進歩的な母親をとても魅力的に演じていましたが、それにも増して、とぼけたナチスの大尉を演じたサム・ロックウェルのゆるくも一本筋の通った演技が素晴らしかったです。個人的には「リチャード・ジュエル」での弁護士役と合わせ技で、アカデミー助演男優賞をあげたいくらいです(今年は、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」でのブラッド・ピットの演技も圧倒的だったので彼の受賞に異論はないのですが)。タイカ・ワイティティ監督は、「マイティ・ソー バトルロイヤル」で監督、出演もされているんですね。ニュージーランド出身の監督にも才能があれば大きな機会を与えるところに、アメリカの懐の深さを感じます。

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予想どおりに不合理

2020-02-08 10:03:42 | Weblog
■本
12 予想どおりに不合理/ダン アリエリー
13 教養としてのロック名盤ベスト100/川崎 大助
14 50歳すぎたら「まあ、いいか」「それがどうした」「人それぞれ」でいこう/弘兼 憲史

12 「行動経済学」という学問を一躍有名にした本です。ずっと読みたいと思っていました。予想以上に面白い本です。まず、仮説を説明するための実験の数々がぶっとんでいます。「性的刺激が意思決定にどんな影響を与えるか」を調べるために、ヌード写真を見ながら質問に答えさせる調査など、その発想の豊かさと実際に実施する行動力にひたすら感心しました。それでいて、そこから証明される説は、「興奮した状態では、冷静時には予想もできないような意思決定をし得る」(なので、感情が自分の意思決定に与える影響を甘く見過ぎない方がよい)という、よりよく生きていくために有益な知見ばかりです。個人的には、私たちが「社会規範」(社交性や共同体を重んじる規範)と「市場規範」(費用対効果を重んじる規範)という2つの規範の中で生きているという指摘(なので、楽しみでやっていた趣味が報酬をもらう仕事となったとたん面白くなくなることがある)が印象に残りました。自分も含む人間の思考の限界や癖を知ることができる、とても有益で素晴らしい本だと思います。

13 個人的にも「ローリング・ストーン」誌が発表した、「500 Greatest Albums of All Time」というリストを参考にして音楽を聴いてきたので読みました。このアメリカ人が選んだリストと、NMEというイギリスの雑誌が発表した「500 Greatest Albums of All Time」のリストの順位を元にポイント化し、その上位100のロックアルバムを解説するというアイデアに感心しました。このリストが名盤の全てではないですが、聴くべきものであるということは間違いありません。日本でも人気の高い「クイーン」がなぜこのリストに入っていないかをコラムで解説するなど(ざっくり言うと、良くも悪くもわかりやすい音楽性が、評論家受けしにくいため)、このリストの欠点について述べられている点も、この本の内容をより知的なものにしています。リストに入っているアルバムを聴きながらこの本を読むと至福の時間でした。

14 引き続き50歳を目前にして、50代の生き方を指南してくれる本を読んでいます。終盤ネタ切れになった点(「万年筆にこだわれ」というアドバイスはあまりに雑だと思いました)や定年後の60歳以上の人をターゲットにしたアドバイスが多かった点が少し物足りませんでしたが、来るべき老後を好きなことをして充実して生活するために、50代から準備していくことの重要性が強調されていて、参考になります。タイトルにある「まあ、いいか」「それがどうした」「人それぞれ」でいこう、というアドバイスはシンプルながらも、的を射ているので、今後も心に刻んでいきたいと思います。

■CD
5 十/中村一義

 デビュー当初の神がかったかのような天才性こそ薄れたものの、中村一義というアーチストが、やはり安定感抜群の才能を持っていることを証明する堂々とした作品です。人生経験の深みを感じさせる歌詞とドラマチックな展開のメロディが印象に残ります。独自の世界観の完成度の高さにこだわっていた初期とは異なり、外部への広がりを感じさせるスケールの大きさも感じられます。


■映画 
12 臨場 劇場版/監督 橋本 一

 ドラマ版を観ていなかったので、主演内野聖陽さんの大きな演技に最初は面食らいましたが、キャラ設定に慣れると普通に楽しめました。テレビ版は「相棒」と同じ枠で放送されていたというのも納得の、ある種のお約束に満ちた刑事ドラマです。検視官が主役だと、霊的な方向に行きがちですが、職務のリアリティを追求していたので個人的には好感を持ちました。ただ、謎解きの過程はご都合主義的なものが多く、ストーリー的には、内野聖陽さんの演技程のインパクトはなかったです。高嶋政伸さんも含めた周囲の大きな演技に惑わされない、松下由樹さんの安定感と、通り魔犯を演じた柄本佑さんの熱演も印象に残りました。
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東大の先生! 文系の私に超わかりやすく数学を教えてください!

2020-02-01 07:01:09 | Weblog
■本
10 東大の先生! 文系の私に超わかりやすく数学を教えてください!/西成 活裕
11 次のテクノロジーで世界はどう変わるのか/山本 康正

10 タイトル通り、東大の先生がわかりやすく中学校レベルの数学(最後に微分・積分のさわりの説明もありますが)について教えてくれる本です。中学数学のゴールを、代数では二次方程式、解析では二次関数、幾何ではピタゴラスの定理と円周角と相似、と明確に設定して、数学の知の全体像をあらかじめ示してから説明してくれるので、見通しよく理解することができます。また、「負の数を引くとプラスになる」は文法と同じくルールとして覚える、というアドバイスなど、適度に開き直って記憶する部分と、定理の成り立ちまで遡って理解する部分との説明のバランスもよいです。微分は「細かく分けて調べること」、積分は「細かく分けたものを、改めて積み上げて全体に戻すこと」、「関数の線は、傾きの集合体」という説明も、高校数学でつまづいた私にも納得感のあるものでした。数学は「思考体力を鍛えるのに役立つ」というメッセージも含め、学生時代にこの本に出会っておきたかったと思える良書です。

11 ハーバード大学で学び、ニューヨークの金融機関やグーグルで働いた経験もあり、ベンチャー投資も手掛ける筆者による、現在のテクノロジーが世界に与える影響を解説された本です。AI(データを使った分析・判断)、5G(通信速度の高速化による円滑なデータ伝送)、クラウド(大量データの保存とその処理)の組み合わせで、今後、世界が劇的に変わるという内容です。筆者の華やかな経歴から、読む前の期待値が高かったので、目新しい知見がさほど得られなかったのが少し残念ですが、最新技術とその関係性を俯瞰的に理解する上では役に立ちました。また、ビジネス視点でテクノロジーを理解するという姿勢も(いかに技術的に優れていてもオーバースペックなど、受け入れられないケースも多々ある)参考になりました。


■CD
3 Today!/The Beach Boys
4 Summer Days (And Summer Nights!!)/The Beach Boys

3,4 先週のキンクスと同様にビーチ・ボーイズにも近年はまっています。私自身が歳を取った影響もありますが、やはり、時間が経っても評価され続ける作品は一聴の価値があると思います。こちらは、不朽の名作「ペット・サウンズ」発表1年前の、1965年に発表された2作品です。フロントマンのブライアン・ウィルソンが精神に問題を抱え始めたのが1964年末なので、内面はそう穏やかではなかったかもしれませんが、ビーチボーイズらしい美しいハーモニーが堪能できる多幸感に満ちた作品です。それでいて、音楽的な洗練度も増していて、ティーンがビーチで能天気に聴くだけの作品から一線を画した深みもあり、「ペット・サウンズ」に向けて、着実に進化している過程が垣間見られて興味深いです。


■映画 
9 真昼の死闘/監督 ドン・シーゲル
10 スノーピアサー/監督 ポン・ジュノ
11 リチャード・ジュエル/監督 クリント・イーストウッド

9 クライマックスの戦闘シーンは夜間なのに「真昼の死闘」という邦題には違和感しかありませんが(有名な「真昼の決闘」に便乗したんでしょうが)、そのタイトルも含めて、いい意味で全体にB級感が漂っています。フランス占領下のメキシコというシリアスな舞台で、結構たくさんの人も死ぬのに、なぜか気楽に観ることができます。クリント・イーストウッドとシャーリー・マクレーンとの掛け合いも軽妙で、後に「ダーティー・ハリー」シリーズでもコンビを組むドン・シーゲルが監督ということもあってか、強面ながらもどこかコミカルなクリント・イーストウッドの持ち味をうまく引き出していると思います。この時期のシャーリー・マクレーンも、こういうキュートでコミカルな演技をさせると抜群です。ヒロインの二面性の描き方の詰めが甘く、脚本のレベルはあまり高くないですが、この二人の演技を観るだけでも価値はあると思います。

10 「パラサイト」が抜群に面白かったので、引き続きボン・ジュノ監督作品を観ました。地球温暖化施策に失敗し、氷河期化した世界で生き残った人類を乗せた、格差社会を象徴する1台の列車「スノーピアサー」を舞台にした、権力者層と貧困者層との対決を描いた作品です。フランスの資本も入っているためか、リュック・ベッソン監督の「フィフス・エレメント」を思わせる、よくあるハリウッド映画とは一線を画する屈折した世界観が印象的ですが、「フィフス・エレメント」と同様にSFとしてのその世界観に今一つ入り込めないところが残念でした。格差社会を痛切に批判しつつどこかコミカルなところや、ファンタジックな後味が残る点は「パラサイト」に共通し、この点はボン・ジュノ監督の手腕が光りますが、いわゆるディストピアもので、現実社会との距離が遠すぎる点が、「パラサイト」ほどは共感できなかった理由だと思います。とはいえ、アジアの監督が、クリス・エヴァンスというバリバリのハリウッドの俳優を主演に起用して、世界に真っ向から勝負している点は素直に敬服します。ソン・ガンホの抜けた感じでも迫力のある演技もさすがです。

11 毎回毎回書きますが、クリント・イーストウッドを人間的には全く尊敬していませんが、その創る作品には全幅の信頼を寄せているので、タイミングが合えば、過去も含めて全ての作品を観たいと思っています。最新作は、FBIやメディアから、アトランティック・オリンピックの爆弾テロ犯であるという嫌疑をかけられた警備員と、そのサポートをした弁護士を描いた、実話を元にした作品です。主人公は、FBIの面子と特ダネを過剰に求めるメディアの犠牲者なのですが、そのFBIやメディア側の人間の背景も丁寧に描くことにより、単純な二元論としていないところは、さすが、クリント・イーストウッドです。伊坂幸太郎さんの作品を思わせるような、弱い立場に置かれた人々が修羅場で見せる勇気や気高さの描き方も爽快感があります。経歴的にも見た目にもいかにも疑われそうな主人公の警備員を演じたポール・ウォルター・ハウザーも見事ですが、それ以上に弁護士を演じたサム・ロックウェルのだらけ切った正義感に満ちた演技が素晴らしかったです。アカデミー助演男優賞を受賞した、「スリー・ビルボード」での演技に匹敵する出来だと思います。
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