■本
111 仕事は楽しいかね?/デイル・ドーテン
112 その悩み、哲学者がすでに答えを出しています/小林 昌平
113 これからの世界をつくる仲間たちへ/落合陽一
114 0才から100才まで学び続けなくてはならない時代を生きる 学ぶ人と育てる人のための教科書/落合 陽一
111 先日読んだ山中伸弥さんの本で、落ち込まれていた時に読んで参考にしたということが書かれていたので、手に取りました。もう少しポジティブシンキングに溢れたゴリゴリの自己啓発本だと勝手に思っていましたが、意外と地に足の着いた、着実な内容の本でびっくりしました。ささやかなことでもいいから、自分が関心の持てるいろいろなことを実際に試し、そのフィードバックを得る中で自分の行動を常に変革していくことが、失敗することも多いが結局は成功への近道であるという、実に納得感のある内容でした。不確実性の増す世界の中で、その教えの価値は増していると思います。まあ、試し続けるメンタリティをどのように保つかという別の課題はあるとは思いますが、勇気をもらうために読むべき本だと思います。
112 タイトル通り、現代人が日々感じるさまざまな悩みについて、過去の偉大な哲学者がすでに考えつくし、答えを出しているという内容の本です。哲学的な問いとその答えについて、わかりやすく解説してくれているので、哲学の入門書としてもかなり優れています。結局、先のことは誰にもわからないので、その瞬間瞬間に集中して生活することが重要という結論に、偉大な先人の多くも達したことがわかります。なぜ、最近マインドフルネスが注目されているのか、ということについても繋がっていると感じました。この本では、悩みに対する回答が切れ味鋭く提示されていますが、その回答に至るまでの思考プロセスが哲学の醍醐味ですので、やはり原著にも取り組まないといけないと思いました。作者の豊富な読書量とそれをわかりやすくアウトプットする能力には感嘆しました。
113、114 長男の教育について悩んでいるので、これからの教育について考察された落合陽一さんの本を続けて読みました。メディアでの挑発的な姿勢とは異なり、非常に高い視点から日本の教育を変えようと真剣に考察されている点に共感しました。また、英語やプログラミングの早期教育に関する考え方(どちらも必要だが、英語よりも母国語でロジカルに考えられる力、プログラミング技術よりもそもそもの数学力の方が重要)も私自身の肌感覚と近かったです。113では主に若年層の教育について語られていますが、114ではタイトル通り、生涯学習にまでその問題意識が拡張されています。二つの書籍とも、落合さんがどのような教育を受けて(また、選択して)育ってきたのかについても語られているので、興味深いです。誰もが落合さんが受けたような教育を選択できないとは思いますが、自分の興味関心を突き詰め、ささやかながらも「コピーのできな『暗黙値』を自分の中に貯めていく」という姿勢は、今後ますます意識しなければいけないと思います。願わくば、その「暗黙値」を抱え込むことなく、他人にも開示していく中でさらに深化できるような人間になりたいと思います(なかなか難しいですが)。あと、114で書かれていた、アート鑑賞で重要なのは「自分なりのコンテクストを持つこと」という指摘は、これまでそのように意識してアート作品を観たことがなかったので、とても参考になりました。
■CD
28 Everyday Life/Coldplay
環境に配慮したためか、1枚のCDに収録されているのに、2枚組の体裁を取っている大作です。最近、エレクトリックな方向に向かっていた印象のあるコールドプレイですが、本作では、ゴスペル的な雰囲気のある楽曲もあるなど、人間的な手触りのある作品となっています。作品を出す度にスケール感が増している印象でしたが、本作では、初期の作品を思わせるような狭い空間で語りかけられているような素朴な楽曲と、世界的なアーティストとなってからのスタジアムで共に合唱しているような楽曲とのバランスが非常によく取れていると思います。集大成的な作品です。
■映画
111 顔/監督 阪本 順治
112 マジック・イン・ムーンライト/監督 ウディ・アレン
113 不能犯/監督 白石 晃士
111 妹を殺した半引きこもり中年女性の逃亡劇なのに、不思議と観ていてワクワクとしますし、後味は爽快感さえ感じました。阪本順治監督の構成力と主演の藤山直美さんの演技の賜物です。逃亡中の主人公を働かせてあげる、スナックのママ役の大楠道代さんの演技も素晴らしかったです。どんな悲惨な境遇であっても外に出て人と交流すれば、よいこともあるという希望と、それでも、どうにもならない状況は誰にでも起こり得るという切なさが身に沁みます。動き出すことの大切さを感じることのできる、一級品のロードムービーでもあります。
112 ウディ・アレンお得意の神経質な男性と大らかな美女との、若干トリッキーな設定のラブ・ストーリーです。今回は魔術師と霊能力者が恋に落ちます。以前ならウディ・アレン自らが登場していた主人公も、コリン・ファースが演じるとエマ・ストーンが恋に落ちるのも説得力が増します。エマ・ストーンは、リラックスした適度にオーラが控えめの演技で、ちょうどよい感じに魅力的です。最後にちょっとしたどんでん返しもありますし、死についての深遠な考察も盛り込まれていて、脚本にも深みがあります。ウディ・アレンの代表作とは言いにくいですが、やはり彼一流のセンスに満ちていて、ファンにとっては観ておくべき作品だと思います。
113 松坂桃李さんは大好きな役者さんですし、彼が珍しく悪役を演じているという点と、沢尻エリカさんが主演なので、今後観られなくなる可能性もあると思い観ました。殺しの依頼があった相手に直接手を下すわけではなく、暗示をかけて過度なストレスによる病死や自殺に追い込ませる悪役と、それに対峙する警察という最近の日本映画で多い設定ですが、嫌いではありません。依頼した側も誤解や嫉妬により身を亡ぼすという皮肉な設定も、ありがちですが、まあ現代的です。ただ、心理戦を描いた作品の割には、主要登場人物の背景や内面がほとんど描かれていないので、単なる純粋な善と悪の戦いに陥っているところが物足りませんでした。また、これだけ万能な能力を持っているのに、ある警察署の関係者や管轄内でのみ事件が発生する点もご都合主義的です。ツッコミどころは多いですが、似たような設定の「デス・ノート」の方が、世界観としては納得感が高かったと思います。
111 仕事は楽しいかね?/デイル・ドーテン
112 その悩み、哲学者がすでに答えを出しています/小林 昌平
113 これからの世界をつくる仲間たちへ/落合陽一
114 0才から100才まで学び続けなくてはならない時代を生きる 学ぶ人と育てる人のための教科書/落合 陽一
111 先日読んだ山中伸弥さんの本で、落ち込まれていた時に読んで参考にしたということが書かれていたので、手に取りました。もう少しポジティブシンキングに溢れたゴリゴリの自己啓発本だと勝手に思っていましたが、意外と地に足の着いた、着実な内容の本でびっくりしました。ささやかなことでもいいから、自分が関心の持てるいろいろなことを実際に試し、そのフィードバックを得る中で自分の行動を常に変革していくことが、失敗することも多いが結局は成功への近道であるという、実に納得感のある内容でした。不確実性の増す世界の中で、その教えの価値は増していると思います。まあ、試し続けるメンタリティをどのように保つかという別の課題はあるとは思いますが、勇気をもらうために読むべき本だと思います。
112 タイトル通り、現代人が日々感じるさまざまな悩みについて、過去の偉大な哲学者がすでに考えつくし、答えを出しているという内容の本です。哲学的な問いとその答えについて、わかりやすく解説してくれているので、哲学の入門書としてもかなり優れています。結局、先のことは誰にもわからないので、その瞬間瞬間に集中して生活することが重要という結論に、偉大な先人の多くも達したことがわかります。なぜ、最近マインドフルネスが注目されているのか、ということについても繋がっていると感じました。この本では、悩みに対する回答が切れ味鋭く提示されていますが、その回答に至るまでの思考プロセスが哲学の醍醐味ですので、やはり原著にも取り組まないといけないと思いました。作者の豊富な読書量とそれをわかりやすくアウトプットする能力には感嘆しました。
113、114 長男の教育について悩んでいるので、これからの教育について考察された落合陽一さんの本を続けて読みました。メディアでの挑発的な姿勢とは異なり、非常に高い視点から日本の教育を変えようと真剣に考察されている点に共感しました。また、英語やプログラミングの早期教育に関する考え方(どちらも必要だが、英語よりも母国語でロジカルに考えられる力、プログラミング技術よりもそもそもの数学力の方が重要)も私自身の肌感覚と近かったです。113では主に若年層の教育について語られていますが、114ではタイトル通り、生涯学習にまでその問題意識が拡張されています。二つの書籍とも、落合さんがどのような教育を受けて(また、選択して)育ってきたのかについても語られているので、興味深いです。誰もが落合さんが受けたような教育を選択できないとは思いますが、自分の興味関心を突き詰め、ささやかながらも「コピーのできな『暗黙値』を自分の中に貯めていく」という姿勢は、今後ますます意識しなければいけないと思います。願わくば、その「暗黙値」を抱え込むことなく、他人にも開示していく中でさらに深化できるような人間になりたいと思います(なかなか難しいですが)。あと、114で書かれていた、アート鑑賞で重要なのは「自分なりのコンテクストを持つこと」という指摘は、これまでそのように意識してアート作品を観たことがなかったので、とても参考になりました。
■CD
28 Everyday Life/Coldplay
環境に配慮したためか、1枚のCDに収録されているのに、2枚組の体裁を取っている大作です。最近、エレクトリックな方向に向かっていた印象のあるコールドプレイですが、本作では、ゴスペル的な雰囲気のある楽曲もあるなど、人間的な手触りのある作品となっています。作品を出す度にスケール感が増している印象でしたが、本作では、初期の作品を思わせるような狭い空間で語りかけられているような素朴な楽曲と、世界的なアーティストとなってからのスタジアムで共に合唱しているような楽曲とのバランスが非常によく取れていると思います。集大成的な作品です。
■映画
111 顔/監督 阪本 順治
112 マジック・イン・ムーンライト/監督 ウディ・アレン
113 不能犯/監督 白石 晃士
111 妹を殺した半引きこもり中年女性の逃亡劇なのに、不思議と観ていてワクワクとしますし、後味は爽快感さえ感じました。阪本順治監督の構成力と主演の藤山直美さんの演技の賜物です。逃亡中の主人公を働かせてあげる、スナックのママ役の大楠道代さんの演技も素晴らしかったです。どんな悲惨な境遇であっても外に出て人と交流すれば、よいこともあるという希望と、それでも、どうにもならない状況は誰にでも起こり得るという切なさが身に沁みます。動き出すことの大切さを感じることのできる、一級品のロードムービーでもあります。
112 ウディ・アレンお得意の神経質な男性と大らかな美女との、若干トリッキーな設定のラブ・ストーリーです。今回は魔術師と霊能力者が恋に落ちます。以前ならウディ・アレン自らが登場していた主人公も、コリン・ファースが演じるとエマ・ストーンが恋に落ちるのも説得力が増します。エマ・ストーンは、リラックスした適度にオーラが控えめの演技で、ちょうどよい感じに魅力的です。最後にちょっとしたどんでん返しもありますし、死についての深遠な考察も盛り込まれていて、脚本にも深みがあります。ウディ・アレンの代表作とは言いにくいですが、やはり彼一流のセンスに満ちていて、ファンにとっては観ておくべき作品だと思います。
113 松坂桃李さんは大好きな役者さんですし、彼が珍しく悪役を演じているという点と、沢尻エリカさんが主演なので、今後観られなくなる可能性もあると思い観ました。殺しの依頼があった相手に直接手を下すわけではなく、暗示をかけて過度なストレスによる病死や自殺に追い込ませる悪役と、それに対峙する警察という最近の日本映画で多い設定ですが、嫌いではありません。依頼した側も誤解や嫉妬により身を亡ぼすという皮肉な設定も、ありがちですが、まあ現代的です。ただ、心理戦を描いた作品の割には、主要登場人物の背景や内面がほとんど描かれていないので、単なる純粋な善と悪の戦いに陥っているところが物足りませんでした。また、これだけ万能な能力を持っているのに、ある警察署の関係者や管轄内でのみ事件が発生する点もご都合主義的です。ツッコミどころは多いですが、似たような設定の「デス・ノート」の方が、世界観としては納得感が高かったと思います。