本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

2019-11-30 11:06:05 | Weblog
■本
111 仕事は楽しいかね?/デイル・ドーテン
112 その悩み、哲学者がすでに答えを出しています/小林 昌平
113 これからの世界をつくる仲間たちへ/落合陽一
114 0才から100才まで学び続けなくてはならない時代を生きる 学ぶ人と育てる人のための教科書/落合 陽一

111 先日読んだ山中伸弥さんの本で、落ち込まれていた時に読んで参考にしたということが書かれていたので、手に取りました。もう少しポジティブシンキングに溢れたゴリゴリの自己啓発本だと勝手に思っていましたが、意外と地に足の着いた、着実な内容の本でびっくりしました。ささやかなことでもいいから、自分が関心の持てるいろいろなことを実際に試し、そのフィードバックを得る中で自分の行動を常に変革していくことが、失敗することも多いが結局は成功への近道であるという、実に納得感のある内容でした。不確実性の増す世界の中で、その教えの価値は増していると思います。まあ、試し続けるメンタリティをどのように保つかという別の課題はあるとは思いますが、勇気をもらうために読むべき本だと思います。

112 タイトル通り、現代人が日々感じるさまざまな悩みについて、過去の偉大な哲学者がすでに考えつくし、答えを出しているという内容の本です。哲学的な問いとその答えについて、わかりやすく解説してくれているので、哲学の入門書としてもかなり優れています。結局、先のことは誰にもわからないので、その瞬間瞬間に集中して生活することが重要という結論に、偉大な先人の多くも達したことがわかります。なぜ、最近マインドフルネスが注目されているのか、ということについても繋がっていると感じました。この本では、悩みに対する回答が切れ味鋭く提示されていますが、その回答に至るまでの思考プロセスが哲学の醍醐味ですので、やはり原著にも取り組まないといけないと思いました。作者の豊富な読書量とそれをわかりやすくアウトプットする能力には感嘆しました。

113、114 長男の教育について悩んでいるので、これからの教育について考察された落合陽一さんの本を続けて読みました。メディアでの挑発的な姿勢とは異なり、非常に高い視点から日本の教育を変えようと真剣に考察されている点に共感しました。また、英語やプログラミングの早期教育に関する考え方(どちらも必要だが、英語よりも母国語でロジカルに考えられる力、プログラミング技術よりもそもそもの数学力の方が重要)も私自身の肌感覚と近かったです。113では主に若年層の教育について語られていますが、114ではタイトル通り、生涯学習にまでその問題意識が拡張されています。二つの書籍とも、落合さんがどのような教育を受けて(また、選択して)育ってきたのかについても語られているので、興味深いです。誰もが落合さんが受けたような教育を選択できないとは思いますが、自分の興味関心を突き詰め、ささやかながらも「コピーのできな『暗黙値』を自分の中に貯めていく」という姿勢は、今後ますます意識しなければいけないと思います。願わくば、その「暗黙値」を抱え込むことなく、他人にも開示していく中でさらに深化できるような人間になりたいと思います(なかなか難しいですが)。あと、114で書かれていた、アート鑑賞で重要なのは「自分なりのコンテクストを持つこと」という指摘は、これまでそのように意識してアート作品を観たことがなかったので、とても参考になりました。


■CD
28 Everyday Life/Coldplay

 環境に配慮したためか、1枚のCDに収録されているのに、2枚組の体裁を取っている大作です。最近、エレクトリックな方向に向かっていた印象のあるコールドプレイですが、本作では、ゴスペル的な雰囲気のある楽曲もあるなど、人間的な手触りのある作品となっています。作品を出す度にスケール感が増している印象でしたが、本作では、初期の作品を思わせるような狭い空間で語りかけられているような素朴な楽曲と、世界的なアーティストとなってからのスタジアムで共に合唱しているような楽曲とのバランスが非常によく取れていると思います。集大成的な作品です。

 
■映画
111 顔/監督 阪本 順治
112 マジック・イン・ムーンライト/監督 ウディ・アレン
113 不能犯/監督 白石 晃士

111 妹を殺した半引きこもり中年女性の逃亡劇なのに、不思議と観ていてワクワクとしますし、後味は爽快感さえ感じました。阪本順治監督の構成力と主演の藤山直美さんの演技の賜物です。逃亡中の主人公を働かせてあげる、スナックのママ役の大楠道代さんの演技も素晴らしかったです。どんな悲惨な境遇であっても外に出て人と交流すれば、よいこともあるという希望と、それでも、どうにもならない状況は誰にでも起こり得るという切なさが身に沁みます。動き出すことの大切さを感じることのできる、一級品のロードムービーでもあります。

112 ウディ・アレンお得意の神経質な男性と大らかな美女との、若干トリッキーな設定のラブ・ストーリーです。今回は魔術師と霊能力者が恋に落ちます。以前ならウディ・アレン自らが登場していた主人公も、コリン・ファースが演じるとエマ・ストーンが恋に落ちるのも説得力が増します。エマ・ストーンは、リラックスした適度にオーラが控えめの演技で、ちょうどよい感じに魅力的です。最後にちょっとしたどんでん返しもありますし、死についての深遠な考察も盛り込まれていて、脚本にも深みがあります。ウディ・アレンの代表作とは言いにくいですが、やはり彼一流のセンスに満ちていて、ファンにとっては観ておくべき作品だと思います。

113 松坂桃李さんは大好きな役者さんですし、彼が珍しく悪役を演じているという点と、沢尻エリカさんが主演なので、今後観られなくなる可能性もあると思い観ました。殺しの依頼があった相手に直接手を下すわけではなく、暗示をかけて過度なストレスによる病死や自殺に追い込ませる悪役と、それに対峙する警察という最近の日本映画で多い設定ですが、嫌いではありません。依頼した側も誤解や嫉妬により身を亡ぼすという皮肉な設定も、ありがちですが、まあ現代的です。ただ、心理戦を描いた作品の割には、主要登場人物の背景や内面がほとんど描かれていないので、単なる純粋な善と悪の戦いに陥っているところが物足りませんでした。また、これだけ万能な能力を持っているのに、ある警察署の関係者や管轄内でのみ事件が発生する点もご都合主義的です。ツッコミどころは多いですが、似たような設定の「デス・ノート」の方が、世界観としては納得感が高かったと思います。
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クワイエット・プレイス

2019-11-23 07:33:27 | Weblog
■本
108 しないことリスト/pha
109 マインド・コントロール 増補改訂版/岡田 尊司
110 催眠術の教科書/林 貞年

108 思春期の息子たちに、固定観念に囚われない生き方もあるということを知って欲しくて、買いました。他の作品を読んだ時にも感じましたが、筆者の地頭の良さと、意欲や体力がないという発言とは裏腹の行動力が印象的に残りました。世間の空気に流されずに、自分にとって何が快適で大切かを考え抜き、少しでも行動に移していくことでしか、閉塞感のある状況からは脱することができないことに、改めて気づかされます。口当たりは優しい内容ですが、実は厳しい現実と向き合い、ある種の決断を迫ってくる本でもあります。

109 人の心の不思議さについて最近興味があるので読みました。「マインド・コントロール」という言葉からよく連想される、テロリストや新興宗教の問題だけでなく、戦争や諜報機関でどのように研究され、実際に活用されてきたかの事例も豊富でとても興味深い内容でした。マインド・コントロールをかける方法や逆にそこから脱するテクニックまで細かく説明されていて、脳科学や行動心理学を背景にした、非常に奥行きの深い技術であることが理解できました。また、マインド・コントロールとそこからの救出カウンセリングに対する社会の評価の変化からは(洗脳者を拉致などの強制的方法により脱洗脳する行為への非難がアメリカでは高まっているそうです)、「自己責任」についての考え方の変化も垣間見れます。脳は刺激の極端な不足や過剰さに極めて脆い、操作されやすい基幹であるというはもっと知られるべき知識だと思います。

110 「マインド・コントロール」の流れで、その一技法とも取れる「催眠術」についても興味があったので読みました。「人の心は95%あやつれる」という極めてうさんくさい帯に対して、内容は意外と抑制的です。被験者と催眠者との間での信頼関係が再三強調されるなど、「マインド・コントロール」よりも、むしろ「カウンセリング」に近いという印象を持ちました。とはいえ、被験者の無意識にある「ありたい姿」を引き出すというよりも、暗示により被験者の無意識に「ありたい姿」を刷り込む手法なので、やはり催眠者側には一定のモラルが必要なのだと思います。催眠術のかけ方についての具体的な方法についても非常に細かく説明されていますが、正直私がこの通りできる気は全くしませんでした。極めてグレーな手法だと思いますが、カウンセリングを行う上では知っておいてもよい知識だと感じました。


■CD
27 So kakkoii 宇宙/小沢 健二

 小沢健二さんの13年ぶりの新作です。フリッパーズ・ギター時代から、ソロに至るまで、新作を出すごとに新機軸を提示してきた、小沢健二さんですが、本作は代表作「LIFE」の延長線上にある、イノセンスと幸福感に溢れた作品です。古くからのファンの期待に応えるには十分なクオリティですが、ひねくれた私としては、もう少しサプライズ的な要素も欲しかったと思います。「ヘッド博士の世界塔」でサンプリングを、「球体の奏でる音楽」でジャズを取り込んだように、新たな要素を貪欲に吸収した野心的な新作も、近々に聴いてみたいです。

 
■映画
108 太陽の季節/監督 古川 卓巳
109 ターミネーター:新起動/ジェニシス/監督 アラン・テイラー
110 クワイエット・プレイス/監督 ジョン・クラシンスキー

108 石原慎太郎さんのデビュー小説の映画化作品です。そういえば、原作も映画も触れたことがなかったので観ました。21世紀の今となっては、ありふれた話ですが、戦後10年でこの小説が発表されて、その翌年に映画化されたということを考えると、その挑発的な姿勢とその先見性は、石原慎太郎という人物の好き嫌いは別として、感嘆せざるを得ません。逗子の富裕層が、この当時でもかなり裕福な生活をしていたことが描かれている点も興味深かったです。日本版「グレート・ギャツビー」というとほめ過ぎな気もしますが、以降のいろいろな小説やドラマへの影響が垣間見られます。倫理観を徹底して排除した姿勢は、現代よりもはるかに自由を感じさえします。

109 「ターミネーター」シリーズの続編です(4までナンバリングされていたので、たぶん5作目)。世界観がしっかりとした作品ですし、アーノルド・シュワルツェネッガーもキャラクターを習熟し尽しているので、アクションシーンはもちろんのこと、キャラクターを逆手に取ったコミカルなシーンも楽しく、それなりに楽しめます。ただ、回を重ねたシリーズものの宿命として、過去作品でやっていない設定を見つけないといけないため、どうしても展開が複雑かつトリッキーなものとなってしまいます。ネタバレにになるので書きませんが、本作では、主要人物の設定をここまで変えると問題では、という箇所と、タイムパラドックスのわかりにくさで、なかなか作品世界に入り込めませんでした。せっかく、ナンバリングを外した別シリーズ化を意図しているのであれば、過去作品で登場していない人物を新たな主人公として、再出発してもよかったのかもしれません。

110 一方、こちらは、物音を立てると異星人に殺される、というシンプルな設定で最後まで押し通した傑作です。人類の英知を結集すればもう少し対策を立てられたのでは、とか、このタイミングでこの行動を取る?などの細かなツッコミどころは多いものの、音が過剰に少ない世界で、その希少な音により恐怖心を掻き立てる手法が本当に見事です。個人的にはホラー映画は苦手なものの、先週観た「IT」と同様に、ヒューマンドラマとしてもとてもよくできているので抵抗感はなかったです。細かい説明やセリフは省き、一家族とエイリアンとの戦いに絞って90分で一気にエンディングに至る潔さも含め、引き算の美学が貫かれた作品です。1アイデアを研ぎ澄ます方法論として、いろいろと参考にできそうです。
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IT/イット “それ”が見えたら、終わり。

2019-11-15 09:51:52 | Weblog
■本
105 くらげが眠るまで/木皿 泉
106 山中伸弥先生に、人生とiPS細胞について聞いてみた/山中 伸弥、緑 慎也
107 おとなの教養 2/池上 彰

105 1998年から1999年に放送された、木皿泉さんの脚本による、イッセー尾形さん、永作博美さんの二人芝居のシナリオブックです。ずっと観たかった作品なので、今回読めてよかったです。木皿さんらしい、コミカルさと一期一会観のバランスが抜群です。初期の作品だけあって、二人の会話が最近の作品より軽やかなところが印象的です。あとがきにあるように「どんな状況でも人は幸せになれるということを証明するために」、木皿さんが書き続けられている点に共感しますが、この時代は、まだ「幸せ」が今より身近だったのかもしれません。逆説的に、現在の方が木皿さんの作品の価値は増していて、それだからこそ、20年以上前の脚本が文庫化されたのだと思います。もちろん、ファンにとっては喜ぶべきことなのですが、少し複雑な気持ちにもなりました。

106 タイトル通り、ノーベル賞学者の山中伸弥先生が、「人生とiPS細胞について」語られた本です。当たり前のことですが、様々な挫折を乗り越えて、偉大な発見へと繋がったことがわかり読んでいて励まされます。人間として成功するためには「ビジョン」と「ハードワーク」が必要という恩師の教えを忠実に守り、IPS細胞を用いた難病治療という壮大なビジョンを、ハードワークで一歩一歩進められている姿勢に感銘しました。その一方で、アメリカから日本に帰国された際に、マウスの世話などの雑務に追われて、プチうつ(山中さんは、アメリカ後うつ病「PAD」と言われていますが)状態になられたり、自己啓発書「仕事は楽しいかね?」に励まされたり、決してスーパーマンではないこともわかり親しみが持てました。生物学的知識もわかりやすく解説してくれていて参考になります。iPS細胞入門書としてもビジネス書としても人生論としても読める素晴らしい本です。

107 池上彰さんによる、「私たちはいま、どこにいるのか?」を意識するために必要な教養を教えてくれる本です。今回は「AIとビッグデータ」、「キャッシュレス社会と仮装通貨」、「想像の共同体」(民族紛争の背景です)、「地政学」、「ポピュリズム」、「日本国憲法」をテーマに、それぞれの基礎的な知識から、そもそも何が問題なのかについてわかりやすく解説してくれます。また、このテーマの説明順序も考え抜かれていて、例えば「民族もお金と同じように共同幻想なのです」と喝破されるなど、それぞれのテーマの関係性を知ることができて、知的好奇心が大いに刺激されます。個人的には、最近、佐藤優さんも「地政学」を強調されていることが多いので、一度、専門書を読んで、学生時代で止まっている地理の知識をアップデートしたいと思いました。


■CD
26 Heartworms/The Shins

 2017年に発表された、オルタナ・ロックバンド、ザ・シンズの現時点での最新作です。Amazonで輸入盤の価格が下がっていたので購入しました。ちょっと旬が過ぎたかな、という感じは否めませんが、相変わらずの抜群のメロディセンスで、聴いていて心地いです。こういう、真っ当で良心的なロックバンドが、最近本当に減った気がします。カントリー、ヒップホップ、ラテン、ダンス、エレクトリックのどれかの要素を強調しないと、商業的に成功するのは難しくなっているのかもしれません。そういう意味では、もうすぐ発売される、コールドプレイやベックの新作のチャートアクションや評価が気になります。

 

■映画
106 IT/イット “それ”が見えたら、終わり。/監督 アンディ・ムスキエティ
107 パシフィック・リム: アップライジング/監督 スティーヴン・S・デナイト

106 基本的にホラー映画はあまり得意ではないのですが、この作品は公開時に評判がとてもよかったのと、なんだかんだ言って、スティーブン・キング原作映画化作品は、「ショーシャンクの空に」や「スタンド・バイ・ミー」など外れがないので観ました。途中、悪役ペニーワイズの残虐性よりも、学校の生徒や親の虐待描写のえげつなさの方に戦慄しましたが、スクールカースト下位のこども達の、苦悩や葛藤、そしてそれでも保ち続けられる純粋さや友情がわかりやすく描かれていて、良い作品だと思います。単なる心理的恐怖だけではなく、アクション要素もあり、観ていても飽きませんでした。ヒューマンドラマやアクション映画が好きな人も楽しめる作品だと思います。

107 いろいろツッコミどころ多いものの、一作目がそれなりに楽しめたので、その続編も観ました。こちらもツッコミどころはさらに増えてますが、イェーガーと呼ばれるロボットに対する細部に至るまでのこだわりも含め、いい意味でのB級感が独特の個性となり、「トランスフォーマー」シリーズとは、また違った魅力となっています。ただ、「トランスフォーマー/ロストエイジ」を観たときにも思いましたが、中国資本が入っているためか、中国が無視できないマーケットとなったことの配慮からか、この種のロボットアクション映画で中国が舞台になると、とたんに、キャラクターが紋切り型になってしまっている点が興ざめでした。もっとも、第一作の菊地凛子さんの役も、他国の人から見たら、浅いキャラクターと見なされていた可能性もあるのでお互い様なのかもしれません。一方、ドイツ人学者2名のキャラクターは本作でもぶっ飛んでいて魅力的でした。
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リラックスのレッスン

2019-11-09 09:21:24 | Weblog
■本
101 マチネの終わりに/平野 啓一郎
102 50代から強く生きる法/佐藤 伝
103 リラックスのレッスン/鴻上 尚史
104 祝祭と予感/恩田 陸

101 アメトークの「読書芸人」で取り上げられていて、ずっと気になっていた本でした。映画が公開されるといろいろとネタバレしてしまうので(「たった三度出会った人が誰よりも深く愛した人だった」というコピーもかなりのネタバレだと思うのですが)、慌てて読みました。個人的には難解だというイメージが強かった平野啓一郎さんですが、とても読みやすく、エンディングまで一気に読めました。読後感も非常によく、ウエルメイドな作品です。意図されてのものだとは思いますが、都合よく人が出会い過ぎるところと、あまりに稚拙な嘘に騙される点が、歪み切った性格の私には不自然に感じましたが、それも含めての美しい話なのだと思います。会話中に巧みに挿入される「正義」についての考察や、登場人物の中年期特有の悩みについても、考えさせられることが多く、いろんな意味での「大人」の恋愛小説だと思いました。

102 というわけで、まだ、50代ではないですが、中年期特有の悩みに対してアドバイスしてくれる本を読みました。仏教をベースに、筆者特有のスピリチュアルな味付けがなされているものの、特段目新しい発見はありませんでしたが、人生の折り返し地点を過ぎてからの心構えをまとめて読むと、今後の人生に対して備えておくべき事項について考えが整理できました。とりあえず、若者に面倒くさい人と思われないようにすることと、会社以外のコミュニティを作ること、は意識していきたいと思いました。

103 「ほがらか人生相談」を読んでスイッチが入ったので、引き続き鴻上尚史さんの本を読みました。タイトル通り、プレゼン等、人前で話す場でリラックスするための方法について教えてくれる本です。演劇のメソッドに基づき解説してくれているので、単なる精神論にとどまらず、方法論として体系立っているのでとてもわかりやすく、理解もしやすいです。身体と精神の関係について冒頭に持ってこられている点も鴻上さんらしいです。「与えられた状況に集中する」、「今ある状況に集中する」など、近年流行りの「マインドフルネス」にも通じるアドバイスもあり、いろんなことが繋がっているということも感じました。リラックスするためだけに限らず、できるだけ細部まで具体的に考え抜くことが、人に何かを伝える上では大切だということを学べました。

104 「蜜蜂と遠雷」のスピンオフ的な連作短編小説集です。個性的ないろいろな登場人物の、過去や後日談が描かれていて、元ネタのファンとしては楽しめました。個人的には、高島明石というキャラクターが大好きだったので、彼についてのエピソードがなかったのが少し残念です。主要人物はもちろんのこと、脇役までその過去が詳細に考えられている点に驚嘆します。作中で描かれている様々なピアニストの才能と同じく、恩田陸さんの作家としての凄まじい能力と努力にも感動します。


■映画
104 ナイト ミュージアム/エジプト王の秘密/監督 ショーン・レヴィ
105 スノーホワイト/氷の王国/監督 セドリック・ニコラス=トロイアン

104 「ナイト ミュージアム」シリーズの完結編です。このシリーズは設定とそれを活かす映像がとても独創的で大好きです。他の作品では、日本人にとって辛く感じることの多い、ベン・スティラーやオーウェン・ウィルソンのベタで大げさなギャクも、博物館の展示物が動き出すというそもそもの設定が破天荒なので、不思議とこのリリーズでは受け入れることができます。舞台を大英博物館に移しているものの、さすがに3作目なのでマンネリ感があることは否めないですが、やはり楽しい作品です。最晩年のロビン・ウィリアムズが、コメディを演じている姿が見られるところも、切なくもあり、うれしくもあります。

105 テレビで放送されていて、「マレフィセント」っぽい大作の佇まいだったので観ました。よく知らなかったのですが、3部作予定の2作目だそうです。1作目は観ていませんが、よく知られた「白雪姫」をベースにしているので、それほど苦労なく世界観を理解できました。予想通り、「マレフィセント」とよく似たダークファンタジーで(制作時期を見ると一作目はこのシリーズの方が先に制作されているようですが)、「マレフィセント」でアンジェリーナ・ジョリーがしていたような仰々しい演技を、本作ではシャーリーズ・セロンがしています。地位を確立した大物女優は、こういう豪華な衣装を纏った、強面の美女をやりたがるのでしょうか?アンジェリーナ・ジョリーの方が強面に加えて、どこかコミカルさもあるので、個人的には好感が持てます。
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楽園

2019-11-02 06:31:19 | Weblog
■本
98 発達障害グレーゾーン/姫野 桂
99 言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか/塙 宣之
100 それって、立派な「うつ」ですよ/安部 結貴

98 ご自身も当事者である筆者による、発達障害について書かれた本です。明確に診断されていなくても近い症状を持つ、グレーゾーンの人が多いということ、また、その人たちが職場でもカミングアウトできず、自分の苦手な作業を陰での多大な努力により、なんとか乗り切っていることがわかりました。「発達障害もそれぞれの個性として受け入れよう」という単なる絵に描いた餅で終わらせるのではなく、その人たちが少しでも快適に生活できるように共通の悩みに対する対策を、「ライフハック」としてテクニックとして教えている点が秀逸です。全ての問題がテクニックで解決できるとは思いませんが、こういうしたたかにサバイブしていくための技法について考えることは、この問題に限らずとても重要だと思いました。

99 「アメトーク」のツッコミ芸人の回での、熱いトークが印象的だった、ナイツ塙さんによるお笑い論です。番組での発言と同様に熱くも論理的な分析に、塙さんに対する印象が変わりました。漫才に対する深い愛情と、非常に緻密に考え抜かれた上でのネタであることが伝わってきます。他の芸人やM1決勝でのネタに対する分析も的確で、それぞれの芸人のウケた理由、スベった理由が言語化されていて、納得度が高いです。個人的には、「中川家」の舞台を観たときに、15分以上の時間を全く飽きさせない話芸にいたく感動したことがあるので、その理由がわかってスッキリとしました。「ヤホー漫才」のような新しいフォーマットを発明する発想力と、それだけに頼らない地道な芸の鍛錬の重要さがわかりました。

100 こちらも当事者による「うつ」について書かれた本です。強調されている内容は、早めに専門医に受診することや休養の大切さなど、目新しい内容は少ないですが、当事者の方だけあって切実に内容が伝わっています。また、ノンフィクション・ライターの経歴もある方なので、様々なうつの事例の描写も生々しく、よりリアリティを持ってこの問題の悲惨さが理解できます。当事者の方が読むと余計に気分が落ち込みそうなので、予防のためや周囲の人が理解を深めるために読むべき本だと思います。


■映画
102 億男/監督 大友 啓史
103 楽園/監督 瀬々 敬久

102 W主演の佐藤健さん、高橋一生さん、だけでなく、脇を固める北村一輝さん、藤原竜也さんも含めた演技合戦のような作品です。それぞれの個人技を観る上では、とても面白いのですが、それが相乗効果を上げているかというと少し疑問です。誇張され過ぎたキャラクターによる、コント集を観ているような印象も残りました。原作小説を読んでいたので理解できましたが、情報量の多い展開に、ついていけなかった観客も多かったかもしれません。モロッコの砂漠や街並みの美しい映像や緊張感を煽る音楽など、映画ならではの表現を巧みに使われていて、原作小説が気に入った方は楽しめると思います。

103 吉田修一さんによる短編集「犯罪小説集」の中の二作品を映画化した作品です。この小説集から、地方集落の閉鎖性という共通のテーマを持ち、かつ、完成度も高い、「青田Y字路」と「万屋善次郎」を選んだところと、原作では無関係だったこの二つの小説をつなぐ存在として、被害者少女と直前まで一緒に遊んでいたため罪悪感を感じている杉咲花さん演じる主人公と、柄本明さん演じる被害者少女の祖父を違和感なく配している点が秀逸だと思います。こちらも原作小説を読んでいたのですが、随所にオリジナルのストーリーがあり、全く別の作品として入り込めました。杉咲花さんはこういう抑えた演技も非常に巧みですし、綾野剛さんは嫌みにならないギリギリのところで個性的な役柄を見事に演じられています。この二人が並んで立って道路を振り返るシーンがあるのですが、その立ち姿の見事さに惚れ惚れとしました。柄本明さん、佐藤浩市さんは当然のことですが、抜群の安定感です。終盤、主人公や被害者の祖父が、原作にはない激白をいささか冗長気味にする場面は少し興ざめでしたが、エンディングは原作同様、謎を残しつつもさほど後味の悪くない余韻を残し、地味ながらもいい映画を観たという満足感に浸れました。
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