■本
39 女のいない男たち/村上 春樹
40 戦略読書日記/楠木 建
41 フラニーとズーイ/サリンジャー
39 女性に去られた(去られつつある)男性をテーマにした村上春樹さんの9年ぶりの短編集です。村上春樹さんの作品しては珍しく容姿があまりよくない女性が登場する作品がいくつか収録されてるのが興味深いです(もちろん、非常に魅力的な女性も多数登場しますが)。村上さんが描く大学生の主人公が好きなので、個人的には「イエスタデイ」という作品が一番好きでした。僕が大好きなウディ・アレンの映画でデートするシーンもありますし。また、村上さんらしい超現実的でハードボイルドなタッチの「木野」という作品も面白かったです。表題作のエンディングにあるように失ったものに対する「祈り」と「折り合い」がこの連作のテーマの一つのような気がしました。
40 書評と言うよりも、読まれた本を題材に、楠木さんが、「ストーリーとしての競争戦略」で展開した理論を手を変え品を変え、微に入り細に入り、繰り返し説明してくれる本で、彼の理論に対する理解が深まります。楠木さんの思考パターンというか好み(アウトプット自体よりもその過程のロジックに興味がある点とスキルよりもセンスを重視する点、そしてかなりの面倒くさがりや)が伝わってきて、楠木さんという人間に対する興味が増してきます。取り上げられる本(というかその著者自身)も魅力的で個性的もの(人)ばかりで読んでみたくなりました。結局自分の好きなこと、適したことにしかセンスは身につかないし、成果を上げられないということがわかります。
41 村上春樹さんによる新訳ということで、20年ぶりくらいに読みました。「フラニー」の方は読みやすいですが、「ズーイ」の方は、やはり宗教的で議論がしつこく難解です。以前に読んだときは、「フラニー」が単純に中2病をこじらせただけ、という印象を持ったのですが、そんなに単純なことではないことが再読して少しわかりました。教え諭す側のズーイの方の喪失感、欠陥と苛立ちのようなものが今回はよく伝わってきました。エゴの肥大という問題についてあらためて考えさせられます。
■CD
17 Great Escape Artist/Jane's Addiction
Amazonで激安だったので買いました。このバンドはもっと泥臭くごった煮サウンドというイメージでしたが、個性的なヴォーカルとパワフルさはそのままに、幾分洗練されて聴きやすくなっています。サウンド的には、Red Hot Chili Peppersと同じような進化を遂げていると思うのですが、そこまでブレイクしないのは、彼らに比べると若干かわい気と情緒に欠けているからという気がしました。いい作品なんですけどね。
■映画
27 そこのみにて光輝く/監督 呉 美保
28 桐島、部活やめるってよ/監督 吉田 大八
27 原作はバブル絶頂期に書かれた作品なのに、まるで今の日本の地方都市の状況を予言したかのように閉塞感漂う作品です。時代の方が作品に追いついたかのようで、映画化するタイミングとしても絶妙だったと思います。不遇な境遇におかれている二人の恋愛ストーリーというありきたりな構成ですが、原作小説に忠実に、それぞれが抱える問題を丁寧にリアルに描かれているので、登場人物に共感でき、作品世界にすっと入っていけます。エンディングの池脇千鶴さん演じるヒロインの表情で、救いのない悲劇にも、わすかな希望の残る後味のよい作品にもなり得る、演技にかかる比重がとても重い作品だと思いますが、池脇千鶴さんはそのどちらにでも観る側が解釈できるような、絶妙の表情をされていて、彼女の素晴らしい演技を観るだけでも価値があると思います。タイトル通り映像面でも光の使い方も巧みで、原作小説の魅力を増幅させることに成功しています。今年(といってもまだ4ヶ月ですが)観た作品の中では一番好きです。
28 原作より映画の方が面白い、という評判を聞いたので、原作を読んでいるのですが観ました(ちなみに原作もよくできた作品で結構好きです)。噂どおり素晴らしい作品です。同じ状況をさまざまな登場人物が視点を変えて描くという手法は原作と同じですが、同じ映像が視点を変えて繰り返し提示されると映像としてはやはりおもしろいです。神木隆之介さん演じる映画部員の視点が重視されている点(実際原作小説でも彼のエピソードが個人的には一番共感しました)や橋本愛さん演じる、かすみが原作よりかなりしたたかになっているなど、映画独自の脚色がかなりされていますが、その変更が非常にうまく作用しています。時間の制約があるので、小説ほど各登場人物の背景や心情が丁寧に描かれていませんが、逆にメインの登場人物の内面描写に絞ったことにより、「桐島」の不在に動じている側(運動神経が高いか美形でイケているとされている人たち)と動じていない側(映画部員やイケている側に表面上合わしている人たち)の対比が明確になってわかりやすかったです。なにより、イケてない側だった僕としては映画部員がイケている側に反旗を翻すシーンがとても快感でした。これまでの青春映画とは一風変わった厚みのある作品だと思います。
39 女のいない男たち/村上 春樹
40 戦略読書日記/楠木 建
41 フラニーとズーイ/サリンジャー
39 女性に去られた(去られつつある)男性をテーマにした村上春樹さんの9年ぶりの短編集です。村上春樹さんの作品しては珍しく容姿があまりよくない女性が登場する作品がいくつか収録されてるのが興味深いです(もちろん、非常に魅力的な女性も多数登場しますが)。村上さんが描く大学生の主人公が好きなので、個人的には「イエスタデイ」という作品が一番好きでした。僕が大好きなウディ・アレンの映画でデートするシーンもありますし。また、村上さんらしい超現実的でハードボイルドなタッチの「木野」という作品も面白かったです。表題作のエンディングにあるように失ったものに対する「祈り」と「折り合い」がこの連作のテーマの一つのような気がしました。
40 書評と言うよりも、読まれた本を題材に、楠木さんが、「ストーリーとしての競争戦略」で展開した理論を手を変え品を変え、微に入り細に入り、繰り返し説明してくれる本で、彼の理論に対する理解が深まります。楠木さんの思考パターンというか好み(アウトプット自体よりもその過程のロジックに興味がある点とスキルよりもセンスを重視する点、そしてかなりの面倒くさがりや)が伝わってきて、楠木さんという人間に対する興味が増してきます。取り上げられる本(というかその著者自身)も魅力的で個性的もの(人)ばかりで読んでみたくなりました。結局自分の好きなこと、適したことにしかセンスは身につかないし、成果を上げられないということがわかります。
41 村上春樹さんによる新訳ということで、20年ぶりくらいに読みました。「フラニー」の方は読みやすいですが、「ズーイ」の方は、やはり宗教的で議論がしつこく難解です。以前に読んだときは、「フラニー」が単純に中2病をこじらせただけ、という印象を持ったのですが、そんなに単純なことではないことが再読して少しわかりました。教え諭す側のズーイの方の喪失感、欠陥と苛立ちのようなものが今回はよく伝わってきました。エゴの肥大という問題についてあらためて考えさせられます。
■CD
17 Great Escape Artist/Jane's Addiction
Amazonで激安だったので買いました。このバンドはもっと泥臭くごった煮サウンドというイメージでしたが、個性的なヴォーカルとパワフルさはそのままに、幾分洗練されて聴きやすくなっています。サウンド的には、Red Hot Chili Peppersと同じような進化を遂げていると思うのですが、そこまでブレイクしないのは、彼らに比べると若干かわい気と情緒に欠けているからという気がしました。いい作品なんですけどね。
■映画
27 そこのみにて光輝く/監督 呉 美保
28 桐島、部活やめるってよ/監督 吉田 大八
27 原作はバブル絶頂期に書かれた作品なのに、まるで今の日本の地方都市の状況を予言したかのように閉塞感漂う作品です。時代の方が作品に追いついたかのようで、映画化するタイミングとしても絶妙だったと思います。不遇な境遇におかれている二人の恋愛ストーリーというありきたりな構成ですが、原作小説に忠実に、それぞれが抱える問題を丁寧にリアルに描かれているので、登場人物に共感でき、作品世界にすっと入っていけます。エンディングの池脇千鶴さん演じるヒロインの表情で、救いのない悲劇にも、わすかな希望の残る後味のよい作品にもなり得る、演技にかかる比重がとても重い作品だと思いますが、池脇千鶴さんはそのどちらにでも観る側が解釈できるような、絶妙の表情をされていて、彼女の素晴らしい演技を観るだけでも価値があると思います。タイトル通り映像面でも光の使い方も巧みで、原作小説の魅力を増幅させることに成功しています。今年(といってもまだ4ヶ月ですが)観た作品の中では一番好きです。
28 原作より映画の方が面白い、という評判を聞いたので、原作を読んでいるのですが観ました(ちなみに原作もよくできた作品で結構好きです)。噂どおり素晴らしい作品です。同じ状況をさまざまな登場人物が視点を変えて描くという手法は原作と同じですが、同じ映像が視点を変えて繰り返し提示されると映像としてはやはりおもしろいです。神木隆之介さん演じる映画部員の視点が重視されている点(実際原作小説でも彼のエピソードが個人的には一番共感しました)や橋本愛さん演じる、かすみが原作よりかなりしたたかになっているなど、映画独自の脚色がかなりされていますが、その変更が非常にうまく作用しています。時間の制約があるので、小説ほど各登場人物の背景や心情が丁寧に描かれていませんが、逆にメインの登場人物の内面描写に絞ったことにより、「桐島」の不在に動じている側(運動神経が高いか美形でイケているとされている人たち)と動じていない側(映画部員やイケている側に表面上合わしている人たち)の対比が明確になってわかりやすかったです。なにより、イケてない側だった僕としては映画部員がイケている側に反旗を翻すシーンがとても快感でした。これまでの青春映画とは一風変わった厚みのある作品だと思います。