本、CD、映画日記

目標は年間読書100冊。その記録と目標管理をかねたブログです。

そこのみにて光輝く

2014-04-27 07:52:24 | Weblog
■本
39 女のいない男たち/村上 春樹
40 戦略読書日記/楠木 建
41 フラニーとズーイ/サリンジャー

39 女性に去られた(去られつつある)男性をテーマにした村上春樹さんの9年ぶりの短編集です。村上春樹さんの作品しては珍しく容姿があまりよくない女性が登場する作品がいくつか収録されてるのが興味深いです(もちろん、非常に魅力的な女性も多数登場しますが)。村上さんが描く大学生の主人公が好きなので、個人的には「イエスタデイ」という作品が一番好きでした。僕が大好きなウディ・アレンの映画でデートするシーンもありますし。また、村上さんらしい超現実的でハードボイルドなタッチの「木野」という作品も面白かったです。表題作のエンディングにあるように失ったものに対する「祈り」と「折り合い」がこの連作のテーマの一つのような気がしました。

40 書評と言うよりも、読まれた本を題材に、楠木さんが、「ストーリーとしての競争戦略」で展開した理論を手を変え品を変え、微に入り細に入り、繰り返し説明してくれる本で、彼の理論に対する理解が深まります。楠木さんの思考パターンというか好み(アウトプット自体よりもその過程のロジックに興味がある点とスキルよりもセンスを重視する点、そしてかなりの面倒くさがりや)が伝わってきて、楠木さんという人間に対する興味が増してきます。取り上げられる本(というかその著者自身)も魅力的で個性的もの(人)ばかりで読んでみたくなりました。結局自分の好きなこと、適したことにしかセンスは身につかないし、成果を上げられないということがわかります。

41 村上春樹さんによる新訳ということで、20年ぶりくらいに読みました。「フラニー」の方は読みやすいですが、「ズーイ」の方は、やはり宗教的で議論がしつこく難解です。以前に読んだときは、「フラニー」が単純に中2病をこじらせただけ、という印象を持ったのですが、そんなに単純なことではないことが再読して少しわかりました。教え諭す側のズーイの方の喪失感、欠陥と苛立ちのようなものが今回はよく伝わってきました。エゴの肥大という問題についてあらためて考えさせられます。


■CD
17 Great Escape Artist/Jane's Addiction

 Amazonで激安だったので買いました。このバンドはもっと泥臭くごった煮サウンドというイメージでしたが、個性的なヴォーカルとパワフルさはそのままに、幾分洗練されて聴きやすくなっています。サウンド的には、Red Hot Chili Peppersと同じような進化を遂げていると思うのですが、そこまでブレイクしないのは、彼らに比べると若干かわい気と情緒に欠けているからという気がしました。いい作品なんですけどね。


■映画
27 そこのみにて光輝く/監督 呉 美保
28 桐島、部活やめるってよ/監督 吉田 大八

27 原作はバブル絶頂期に書かれた作品なのに、まるで今の日本の地方都市の状況を予言したかのように閉塞感漂う作品です。時代の方が作品に追いついたかのようで、映画化するタイミングとしても絶妙だったと思います。不遇な境遇におかれている二人の恋愛ストーリーというありきたりな構成ですが、原作小説に忠実に、それぞれが抱える問題を丁寧にリアルに描かれているので、登場人物に共感でき、作品世界にすっと入っていけます。エンディングの池脇千鶴さん演じるヒロインの表情で、救いのない悲劇にも、わすかな希望の残る後味のよい作品にもなり得る、演技にかかる比重がとても重い作品だと思いますが、池脇千鶴さんはそのどちらにでも観る側が解釈できるような、絶妙の表情をされていて、彼女の素晴らしい演技を観るだけでも価値があると思います。タイトル通り映像面でも光の使い方も巧みで、原作小説の魅力を増幅させることに成功しています。今年(といってもまだ4ヶ月ですが)観た作品の中では一番好きです。

28 原作より映画の方が面白い、という評判を聞いたので、原作を読んでいるのですが観ました(ちなみに原作もよくできた作品で結構好きです)。噂どおり素晴らしい作品です。同じ状況をさまざまな登場人物が視点を変えて描くという手法は原作と同じですが、同じ映像が視点を変えて繰り返し提示されると映像としてはやはりおもしろいです。神木隆之介さん演じる映画部員の視点が重視されている点(実際原作小説でも彼のエピソードが個人的には一番共感しました)や橋本愛さん演じる、かすみが原作よりかなりしたたかになっているなど、映画独自の脚色がかなりされていますが、その変更が非常にうまく作用しています。時間の制約があるので、小説ほど各登場人物の背景や心情が丁寧に描かれていませんが、逆にメインの登場人物の内面描写に絞ったことにより、「桐島」の不在に動じている側(運動神経が高いか美形でイケているとされている人たち)と動じていない側(映画部員やイケている側に表面上合わしている人たち)の対比が明確になってわかりやすかったです。なにより、イケてない側だった僕としては映画部員がイケている側に反旗を翻すシーンがとても快感でした。これまでの青春映画とは一風変わった厚みのある作品だと思います。
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Paracosm

2014-04-20 07:39:00 | Weblog
■本
38 新聞社 破綻したビジネスモデル/河内孝

 特に目新しい視点はありませんが、毎日新聞の元常務が書かれた本なので、新聞というメディアのビジネスモデルが制度疲労を起こし、厳しい環境におかれていることが生々しく伝わってきます。新聞社の中でも特に立場が微妙な毎日新聞の視点から論じられている箇所が多いのでその危機感も大きいですが、それにもかかわらず、改革が進まない現状に対する筆者の苛立ちも強く伝わってきます。筆者なりの処方箋が書かれているのが好感が持てますが、2007年に書かれたこの本の提案が、現時点で全く実現されていない点にこの業界の問題の深さを感じます。


■CD
15 Paracosm/Washed Out
16 Dusty in Memphis/Dusty Springfield

15 多幸感溢れるキラキラしたサウンドです。前作はもう少しゆるーい感じで、寝る前に聴くのに最適でしたが、本作はドライブなどもう少し活動的なシチュエーションで聴く方がよいかもしれません。ドリーミーなサウンドですが、がっつりした夢というよりも「白昼夢」という印象が強いです。「Boards of Canada」あたりがお好きな方にお勧めです。

16 ローリングストーン誌が選ぶオールタイムベストアルバムで100位内に入るほど評判の高い作品なので購入しました。Dusty Springfieldは、ペットショップボーイズと競演した「What have I done to deserve this?」くらいのイメージしかなかったですが、洗練された歌のうまさが堪能できます。Dusty Springfieldの持つスタイリッシュな雰囲気とMemphisの土臭い力強さがいい感じに融合された作品です。


■映画
25 グリーン・ホーネット/監督 ミシェル・ゴンドリー
26 ファイヤーウォール/監督 リチャード・ロンクレイン

25 アメリカのコメディアンにありがちな悪乗りしすぎな演技で、主人公がただの嫌なやつにしか見えないところが興ざめでした。日本人にはあまり向かない作品かもしれません。カトーという日本人っぽい名前の、技術に武道に万能なパートナー役をやっているのもなぜか台湾人ですし。主人公を演じるセス・ローゲンは「40歳の童貞男」でブレイクした人気コメディアンらしいですが、その出世作での演技は観てないのでなんとも言えませんが、本作は全く魅力に欠けています。カトーが制作する改造車や武器の細かいこだわりと、悪役の切れっぷりは、なかなかおもしろかったです。

26 ハリソン・フォードが老体に鞭打ってアクションに頑張っている姿を観られるだけで感涙ものです。主人公の緩慢な動きにより、緊迫感が増していました。でもこの作品は「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」より前の作品なんですね。誘拐犯に徹底的にやられまくってから、最後の最後で逆襲に転じるストーリー展開は爽快感がありました。主人公の秘書役のメアリー・リン・ライスカブが適度にコミカルなよい演技をしていました。もちろんハリソン・フォードも安定の演技で格好いいです。
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塔の上のラプンツェル

2014-04-12 10:03:49 | Weblog
■本
35 アドラー心理学入門/岸見 一郎
36 NTTはどこへ行くのか 小池良次
37 ウェブとはすなわち現実世界の未来図である/小林 弘人

35 「嫌われる勇気」を読んでから「アドラー心理学」に興味をもったので読みました。「嫌われる勇気」が対話形式で、「アドラー心理学」のエッセンスを伝えてくれたのに対して、こちらは入門書らしく、アドラーの人となりから、この心理学が誕生した背景、そして、基礎理論までを丁寧に説明してくれて、体系的に頭を整理するのに役立ちます。読む順番としては適切だったと思います。最後に筆者自身の体験も踏まえてたポジティブなメッセージが伝わってきて、「嫌われる勇気」と同様に読後に勇気が沸いてくる本です。

36 「NTTを好意的に書こうとしたものではなく」と「おわりに」に書かれていますが、取材対象との密接な関係構築に成功した反動か、やはりかなりNTT側の視点にたった本だと思います。にもかかわらず、NTTが現状打てる選択肢がクラウド・ソリューションの提供とグローバル化など、非常に限られている結論となっており(そのどちらもレッドオーシャン的な戦略のような気がします)、その置かれている環境の厳しさがより切実に伝わってきます。リーダー企業なので仕方がないのかもしれないですが、王道のガチンコ勝負だけでなく、機動力のある子会社をたくさん作り、「素早く失敗していく」ことによりノウハウを蓄積し、イノベーティブな領域を切り開いていく(当然NTTグループにそのようなグループ会社も多数あると思うのですが)という考え方もあると思うのですが、そのような視点からの記述がなかったのが少し残念でした。

37 大前研一さんと伊藤穰一さんが帯で絶賛されていたので期待値が高かったのですが、意外と普通の本でした。タイトル通り、インターネット誕生当初は、ウェブは現実世界を模倣することにより(ECやバナー広告など)進化してきたが、いつしか現実世界を追い越し、ソーシャルグラフの重視やオープンソース的発想など、逆に現実世界がウェブを参考に変化しつつある、という主張に納得感はありますが、特に目新しさは感じませんでした。どちらかと言うと、新しい知見が得られるタイプの本ではなく、「フリー」、「シェア」、「パブリック」、「メーカーズ」といった本の主張にグーグルグラスなどの最新の事例を加えて、現状を整理したというタイプの本だと思います。現状理解に役立つよい本ですが、大前さんがおっしゃるような「新・ウェブ進化論」というような衝撃的な内容ではないと思います。


■CD
14 Supermodel/Foster the People

 ポップでキャッチーながらも引っかかりのあるメロディーで最近の新しいバンドの中で一番好きです。2作目の本作は広がりのあるスケール感の大きいパワフルな楽曲が増えていてて、前作のこじんまりとした職人技からの進化を感じます。3曲目の「Coming of Age」が前作の「Pumped Up Kicks」に匹敵するキラーチューンで、何度も聴いています。


■映画
24 塔の上のラプンツェル/監督 バイロン・ハワード、ネイサン・グレノ

 勝手にもっと悲惨な話だと思っていましたが(冷静に考えると生まれてすぐ誘拐され18年も閉じ込められていたヒロインの境遇は不幸ですが、性格がとても明るいのでそれほど重く感じませんでした)、意外とシンプルな純愛冒険ドラマで楽しめました。ヒロインが恋に落ちる泥棒、フリン・ライダーが、男前過ぎず、強すぎず、性格がよすぎず、いい意味で中途半端でこれまでと違ったヒーロー像で新しいと思いました。代わりに白馬のマキシマスがどの人間よりもスーパーな活躍を見せてくれて、とても格好いいです。ディズニーらしいおとぎ話のフォーマットを用いながら、キャラクター設定はとても現代的で、緻密にマーケティングがなされた秀作だと思います。
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キャズム

2014-04-06 10:36:15 | Weblog
■本
33 第五の権力/エリック・シュミット、ジャレッド・コーエン
34 キャズム/ジェフリー・ムーア

33 Google会長のエリック・シュミットさんの著作と言うことで読みましたが、ビジネスの話よりも天下国家の視点からの未来予測が中心なので、思っていた内容と少し違っていました。おおまかな趣旨は、安価なスマートフォンとインターネットコネクティビティの普及により、2025年には世界人口80億人のほとんどがインターネットに接続可能となり、その80億人のつながりによる新たな権力(立法、司法、行政、報道に次ぐ「第五の権力」)が生まれるというものです。我々は現実世界、仮想世界の双方で生活をすることになり、その2つの世界で暮らすことのメリット(現実世界ではつながれないような人との交流や草の根レベルの正確な情報の取得、など)、デメリット(未成年時代の不用意なネット上の書き込みの痕跡が永遠に残り、現実世界にまで悪影響を及ぼす、など)が論じられています。市民が2つの世界に暮らすようになることにより、国家もその両面での対処が求められるようになることについても詳しく論じられています。いくつかの書評で書かれているように、そのような未来でGoogleがどのような役割を果たすのか(もしくは脅威となり得るのか)についての考察が乏しい点がもの足りませんが、仮想世界との適切な対処方法を我々個々人も常に考えていく必要があるということがよくわかります。

34 「キャズム」はただのバズワードと思っていましたが大きな間違いでした。コアなユーザーに受け入れられたハイテク関連企業がメインストリーム市場で成功する(キャズムを超える)ための考え方を、極めて緻密な論理構成で描かれていて、とても参考になります。ハイテク関連企業のバイブルと言われているのも納得の良書です。顧客を「イノベーター」、「アーリー・アドプター」、「アーリーマジョリティー」、「レイト・マジョリティー」、「ラガード」の5つに分類するおなじみの波型の図を元に、その顧客ごとの対処方法を事例を元に丁寧に解説してくれるのでとてもわかりやすいです。特に、他社に先んじて新技術に投資して成功を収めようとするビジョナリー(アーリー・アドプター)から、他社に出し抜かれないために最もコストパフォーマンスの高い技術を採用したいと考える実利主義者(アーリーマジョリティー)に顧客ステージが変わることを「キャズム」と定義し、その「キャズム」を乗り越えるための、社内外での対処方法が具体的でいろんな局面で参考になると思います。行動につながるよい本です。


■CD
13 Uno!/Green Day

 「American Idiot」、「21st Century Breakdown」とこの2作は非常に硬派でクオリティの高いコンセプトアルバムだったので、その路線を期待すると拍子抜けするかもしれませんが、シンプルで勢いのあるロックをたたみかける原点回帰的な作品だと思います。この作品を皮切りに3作続けてリリースされており、その残り2作はまだ聞いていませんが、もし同じような路線なら、深みがない分、少し飽きてしまうかもしれません。この作品単独の評価で言えば、ポップな楽曲満載で楽しく聞けます。いったん、自分たちのやりたいことを出し尽くして、次に進むための位置づけの3部作なのかもしれません。


■映画
23 新しい人生のはじめかた/監督 ジョエル・ホプキンス

 こじんまりとした大人向けの佳作です。主演のダスティン・ホフマンも悲哀がこもった独特のユーモアが感じられる素敵な演技をしていますが、なにより、ヒロインのエマ・トンプソンが魅力的でかつ落ち着いた素晴らしい演技をしています。中年女性の新しい恋愛に対する期待と恐れが見事に表現されています。ストーリーの方は、かなりご都合主義的ですが、二人の演技力でねじ伏せていきます。ロンドンの風景が美しく描かれているところもこの作品の魅力です。こういうくたびれた中年男女のラブストーリーが成立するところに、なんだかんだ言ってもアメリカ映画界の懐の深さを感じます。
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