「文学はこういう芸のない正直とはちがう。こういう時には
嘘をつく人生を建前とするのが文学のもとめる真実です」
「諸君は上品です。私事に就ては礼儀をまもって人前で喋らず、
その上品さで、諸君の魂は真実ゆたがなのだろうか。真実高貴なのだろうか」
「すべて人間の世界に於ては、物は在るのではなく、つくるものだ。
私はそう信じています。だから私は現実に絶望しても、生きて行くことには、絶望しない。
本能は悲しいものですよ。どうすることもできない物、不変なもの、絶対のもの、
身についたこの重さ、こんなイヤなものはないよ。
だが、モラルも、感情も、これは人工的なものですよ。つくりうるものです。
人間の生活は、本能もひっくるめて、つくることが出来ます」
「真理が地上に実在し、真理が地上に行われる時には、
人間はすでに人間ではないですよ。人間は人間の形をした豚ですよ。
真理が人間にエサをやり、人間はそれを食べる単なる豚です」