──「いまぁじゅ/なんばあ10」より
遮断機の
右と左が交わらない
わずか身ひとつの空間
そこに
私は
私の位置を選ぶ
鉄道列車が
みるまに
鉄路を砕いて通りすぎる
待たされ
焦らされた人々が
我先にと
わきたつほこりに吸い込まれていく
それから
そろりと
私も歩き出す
*
自分を破局に立たせることが
恐くなったら
おしまいだから
うまくやるのは
やめました
捨てて
捨てて
どうにも捨てきれないものが
あるはずだから
妥協や安逸に
卑怯な心が居すわってしまわないうちに
捨てて
みようと
うまくやるのはやめました
わかったふりはやめました
*
愛しているか?
──生きてきた ということを
──生きている ということを
愛さなければと
思っている
なければ
と思う人間の苦しさは
言っても始まらないか
もうだいぶ生きてしまった
人に裏切られたが
その分だけは裏切った
裏切ったり裏切られたり
それが
世のあたりまえの営みだと
気づいた時は
少しまいった
だが
どうした
初々しく
喜びに満ちたはずの
この春を
どこへ
投げすてたか
愛しているか?
せめて
愛さなければと思っているか