夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『アメリカン・フィクション』

2024年03月31日 | 映画(あ行)
『アメリカン・フィクション』(原題:American Fiction)
監督:コード・ジェファーソン
出演:ジェフリー・ライト,トレイシー・エリス・ロス,エリカ・アレクサンダー,レスリー・アガムズ,
   スターリング・K・ブラウン,イッサ・レイ,マイラ・ルクレシア・テイラー,ジョン・オーティス他
 
Amazonプライムビデオにて独占配信中。
第96回アカデミー賞では、受賞を逃したものの5部門にノミネートされていました。
作品賞のほか、主演男優賞にジェフリー・ライト、助演男優賞に主人公の弟を演じたスターリング・K・ブラウン
脚色賞と音楽賞にもノミネートされていた作品です。
日本では劇場未公開、アカデミー賞直前の2月末に配信がスタートしたばかり。
 
モンクことセロニアス・エリソンは、アフリカ系アメリカ人の作家。
彼の著作は学術的には非常に高い評価を受けているが、大衆受けがよくないため、売れ行きはイマイチ。
新作を書き上げても出版社は発売に難色を示すばかり。
作家としてだけでは食べていけずに教鞭を執るロサンゼルスの大学では、
学生にも同僚にもついつい辛辣な言葉を放ってしまい、問題視されている。
 
そんな口が災いして、しばらく休職するように言い渡されたモンクは、
久しぶりに故郷ボストンへ帰って家族と過ごすことに。
妹のリサに迎えられ、実家に行くと、母親のアグネスに認知症の兆候が出ている。
弟のクリフはかつて結婚していたが、ゲイであるのが妻にバレて離婚。
以降は開き直って男性のセフレをつくっては日々を謳歌している。
 
母親の世話をリサとメイドのロレインに任せていたのに、ある日リサが急逝。
このままでは身動きが取れないと、アグネスを施設に入れようとするが、利用料があまりに高額。
自分の給料だけではどうにもならず、クリフに援助を頼むが、
きょうだいで両親から目をかけられていたのはモンクだけだったことから、クリフはつれない態度。
 
ふと思い立ち、世間が望む黒人のイメージで小説を書き、エージェントのアーサーに見せる。
セロニアス・エリソンの名ではなく、スタッグ・R・リーというペンネームを用い、
逃亡中の囚人という設定でアーサーが出版社に送りつけたところ、驚くべき反応があり……。
 
くだらないゴミ小説に大金を払いたいという出版社が現れ、それを映画化する話まで出てくる。
冗談で書いたものがどんどん話題になって行きます。
タイトルを『ファック』にしなければこの契約は白紙にすると言ってみたら、それでも話は進む。
モンクが唖然とする展開はブラックな笑い満載で、ニヤニヤしてしまいます。
 
役者陣が皆よかった。
ただ、アマプラの日本語字幕の末尾にいちいち「?」が付くのはなぜですか。
それに、クリフがモンクの兄だと翻訳されていますが、どう見てもモンクより若い。
弟の間違いだろうと思って鑑賞後に調べたら、ジェフリー・ライトは58歳、スターリング・K・ブラウンは47歳でした。
実年齢とは逆の配役の場合もありましょうが、本作に関しては絶対弟でしょ。
 
母のことが気になって劇場に足を運べない日もあるけれど、たまには家で観るのもいい。

  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『変な家』

2024年03月30日 | 映画(は行)
『変な家』
監督:石川淳一
出演:間宮祥太朗,佐藤二朗,川栄李奈,長田成哉,DJ松永,瀧本美織,
   根岸季衣,高嶋政伸,斉藤由貴,石坂浩二他
 
公開初日、TOHOシネマズ伊丹にて2本ハシゴの2本目。レイトショーを鑑賞。
8割ほどの客の入りで、隣席にも誰かが座っているのって久しぶり。
そしてそれから2週間経った今、予想の遥か上を行く集客で大ヒット上映中となっています。
 
原作はウェブライターでありYouTuberである雨穴のデビュー小説。覆面作家です。
文庫化されたのを機会に購入、読みました。その感想はこちら
監督は『エイプリルフールズ』(2015)や『ミックス。』(2017)の石川淳一。
 
オカルト専門の動画クリエイター・雨男こと雨宮(間宮祥太朗)は、
最近動画の再生回数が伸びないことを悩んでいた。
マネージャー(DJ松永)からもバズるネタを見つけたほうがいいと言われる。
 
そんなマネージャーが購入を検討している一軒家があると言う。
駅近の中古で築たった1年、日当たりなども申し分ない。
しかし間取り図の違和感が払拭できず、雨宮の知人・栗原(佐藤二朗)の意見を聞きたいと言うのだ。
 
栗原は設計士でミステリー愛好家。
雨宮が間取り図を見せて相談すると、「自分ならこの家は買わない」と即答する。
その訳を問うと、「あくまで妄想に過ぎないが」と言いつつ、
まずは2枚の壁に仕切られた謎の小部屋について推察してみせる。
 
ちょうど雨宮と栗原がそんな話をしていた折、マネージャーから連絡が入る。
現地のすぐそばの林の中で、左手首だけがないバラバラ死体が発見されたらしく、
あまりに気味が悪くて購入をやめたとのこと。
 
殺人のために建てられた家ではないのだろうか。
栗原はこの家に関してはこれ以上深入りしないほうが良さそうだと言うが、
これほどのバズりネタをそのままにしておくことはできない。
 
売りに出されたままのこの家を見に行った雨宮は、場所などを伏せて動画をUP。
すると、発見されたバラバラ死体の男性の妻だという柚希(川栄李奈)が連絡してきて……。
 
原作よりもかなりビビらせ要素多めです。
暗い表情で雨宮のもとを訪ねる川栄李奈の姿がすでに怖い(笑)。
 
左手首を切断された遺体について調べるとき、原作では間取り図を見てあれこれ考えますが、
映画版では雨宮と柚希と栗原が現地まで行っちゃいますからね。
玄関を開けると正面、廊下のドン突きにどデカい仏壇があるという家の様子は、
ビジュアル化されるとさらに異様でおぞましい。
 
呪われた本家の当主夫妻に石坂浩二根岸季衣。誰だかわからないほど異様。
親族のひとりを演じる高嶋政伸は言わずもがなの壊れ方だし。(^^;
 
原作も映画版も、安心の最後かと思いきや、とっても嫌な終わり方。
『マッチング』に続いて今回も斉藤由貴に震え上がらせられるのでした。
 
あー、やだやだ(泣)。

  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『恋わずらいのエリー』

2024年03月29日 | 映画(か行)
『恋わずらいのエリー』
監督:三木康一郎
出演:宮世琉弥,原菜乃華,西村拓哉,白宮みずほ,藤本洸大,綱啓永,小関裕太他
 
母の容態が変わらないので、やっぱり映画を観に行く。
公開初日、TOHOシネマズ伊丹にて仕事帰りに2本、その1本目。
 
原作は講談社の月刊少女漫画雑誌『デザート』で連載されていた藤ももの同名漫画とのこと。
高校生の青春ラブコメにはハマれない場合も多々出てきたこの頃ですが、
意外とキュンキュンできる可能性も考えながら、期待控えめで観に行きました。
 
存在感が薄すぎてまるで自分が透明人間のようだと感じている女子高生・市村恵莉子(原菜乃華)。
学校一のモテ男子・オミくんこと近江章(宮世琉弥)に想いを寄せるも口には出せず、
“恋わずらいのエリー”の名前でオミくんと甘い日々を送る妄想をSNSにつぶやくのが楽しみ。
 
ところがある日、教師の汐田澄(小関裕太)を訪ねて国語科教室に入ろうとしたところ、
オミくんが女子からもらったお手製のクッキーを前に暴言を吐いているのを見てしまう。
誰に対しても優しく笑顔で接するオミくんの裏の顔を知って大ショック。
慌てて立ち去ろうとして音を立て、汐田先生とオミくんに気づかれる。
さらに慌ててその場から逃げ出したせいで落としたスマホをオミくんに見られるという事態に。
 
オミくんは、自分の裏の顔を内緒にしていてくれるならエリーの妄想を叶えてもいいと言い……。
 
この手の作品はこんな歳になると観ているのがかなり恥ずかしいですねぇ。
ニヤニヤしながら観ている自分のこともどうかと思いますし(笑)。
 
いじめなどはないけれど、友だちはいない。
誰からもあだ名で呼ばれることはなくて、みんなは常に「市村さん」と呼ぶ。
自分の妄想に返信をくれる唯一の誰かが心の支え。
 
そんなエリーがオミくんと一緒に過ごすようになって少しずつ変わって行く。
完璧だと思われていたオミくんも実は相当な努力家だけどそれを見せない。
どうせ誰も自分のことなどわかってくれないと思っていたのに、
エリーをからかいつきあううちに、どんどんエリーに惹かれてゆきます。
 
本作に関してはいじめなどがないから、気持ちよく観ていられます。
ありがちでしょ、地味で目立たぬ女子がモテ男子といるのを見ただけでいじめられるとか。
そういうのがいっさいないからホッとする。
また、モテないと思っていたエリーに想いを寄せる男子がほかにいっぱいいるとかもなくて、
話がややこしくないのは好き。
 
宮世琉弥のことはほとんど知りませんでしたが、『映画 マイホームヒーロー』の彼はよかった。
でも彼よりもエリーの親友・三崎沙羅(白宮みずほ)の幼馴染を演じる綱啓永のほうがタイプ。
って、こんなのは役によってイメージがすぐ変わるから、
どちらも次に見るときは彼らだとわかる自信はありません。(^^;

  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『ヴィクラムとヴェーダ』【ヒンディー語版】

2024年03月28日 | 映画(は行)
『ヴィクラムとヴェーダ』(原題:Vikram Vedha)
監督:ブシュカル,ガーヤトリ
出演:リティック・ローシャン,サイーフ・アリー・カーン,ラーディカー・アープテー,ロヒット・サラフ,
   ヨギタ・ビハニ,シャーリブ・ハーシュミー,サティーヤディーブ・ミシュラ他
 
驚異の回復力を見せたかと思ったでしたが、癌に覆い尽くされて肝不全を起こしているせいで、
夢と現実の間を往き来しているような状態がしばらく続いています。
ずっと付き添えればと思うものの、コロナの再流行でそれは許されず、30分の面会のみ可能。
本当にもう最期という時にならなければ病室に呼んでもらえません。
家にまっすぐ帰っても落ち着かないだけだから、やっぱり映画を観に行く。
 
2017年製作のタミル語作品『ヴィクラムとヴェーダー』がヒンディー語でリメイクされました。
リティック・ ローシャン主演なら観たいじゃあないか。塚口サンサン劇場へ。
 
犯罪の撲滅を目指して偽装襲撃をかけては悪人を一掃してきた警視ヴィクラム(サイフ・アリー・カーン)。
上司や同僚、部下の信頼も厚く、妻のプーリヤは優秀な美人弁護士で、公私ともに絶好調。
 
そんなヴィクラムが長年追い続けているのが伝説の犯罪者ヴェーダ(リティック・ローシャン)。
ヴェーダの居場所だけは掴むことができずに苛立っていたところ、
ある日、ヴェーダのほうから警察に出頭、自首すると言う。
誰が聴取に臨もうが口を開こうとしないヴェーダだったが、ヴィクラムが現れると話し始める。
 
話を聴くうち、以前の偽装襲撃でヴィクラムが殺した丸腰の青年シャタクがヴェーダの実弟であることがわかる。
ヴェーダが姿を現したのは、ヴィクラムへの復讐だとばかり思っていたが、
プーリヤを弁護人として雇ったヴェーダを保釈後に追うと、そう単純な話ではないことに気づき……。
 
ボリウッドのご多分に漏れず、157分の長尺。
ダンスシーンもてんこ盛りかと思いきや、90分経った頃に1シーンのみしかありません。
もっとダンスもほしかったけれど、なくてもめちゃめちゃ面白い。
 
最初はヴィクラムが汚職警官なのかと思いましたが、そうではない熱血漢。
しかしこの手のボリウッド作品で警察など権力者が黒幕に決まっていると思ったら、やはりそう。(^^;
パターンといえばパターンですが、ヴィクラムとヴェーダが手を組んで、
本当の悪を一掃するのはわかりやすくて気持ちいい。
 
でもオチは珍しく観客に委ねられるのですよ。
この後ふたりはどうするのか。この先もふたりで闘ってよと思わなくもない。
 
余談ですが、サイーフ・アリー・カーンってジル・ルルーシュに似ているな~と思いながら観ていました。
ちょっとマッチョすぎやしませんか。
リティック・ローシャンが多指症と知ってからというもの、ついつい手を見てしまいます。
右手の親指が2本あるって、豊臣秀吉もそうだったとか。なんだか神秘的。

  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『DOGMAN ドッグマン』

2024年03月27日 | 映画(た行)
『DOGMAN ドッグマン』(原題:Dogman)
監督:リュック・ベッソン
出演:ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ,ジョージョー・T・ギッブス,クリストファー・デナム,
   クレーメンス・シック,マリサ・ベレンソン,ジョン・チャールズ・アギュラー,グレース・パルマ他
 
イオンシネマ茨木にて、2本ハシゴの2本目。前述の『映画 マイホームヒーロー』の後に。
 
『ドッグマン』(2018)というイタリア/フランス作品を観たのが4年半ほど前だから、
5年の間にすでに世にある名前の映画の別作品を撮るのね、リュック・ベッソン監督、と思いました。
あっちはイタリア出身のマッテオ・ガローネ監督作品。
本作とは全然違うけれど、主人公が犬をこよなく愛している点は同じです。
 
批評家の意見としては賛否両論あるようですが、私は好きでした。
最近のベッソン監督の作品の中ではいちばん。
 
ある晩、検問で停められたトラックを運転していたのは女装した男性
荷台を開けてみると、そこには数え切れないほどの犬が積まれていた。
 
シングルマザー精神科医エヴリンは、夜中に拘置所から連絡を受ける。
逮捕した人物を「彼」か「彼女」か決めかねて、エヴリンに指示を仰ぎたいらしい。
 
エヴリンが面会に行くと、異様な相貌の相手はダグラスだと名乗り、
淡々と自分の生い立ちについて話しはじめるのだが……。
 
フランス語作品なのかと思っていましたが、舞台はアメリカ・ニュージャージー州で全編英語。
何が凄いって、ダグラス役のケイレブ・ランドリー・ジョーンズの演技。
だけどそれより驚いたのは、ダグラスが少年時代に受けた仕打ちの告白内容です。
 
闘犬を育てていた父親の暴力は日常茶飯事。それに追随する兄。
優しい母親は父親に抵抗できず、ダグラスが虐待を受けても見過ごすしかありません。
ある日、父親はダグラスの態度に腹を立て、犬の檻にダグラスをぶち込むのです。
 
犬たちはダグラスのことが大好きだから、噛みついたりなんかしない。
犬のことは怖くないけれど、父親はダグラスを犬と一緒に檻に入れたまま。
この状況を映像で観るのは本当におぞましい。よくぞ生きていてくれたものだと思う。
 
隣の納屋の隙間に手を入れれば届く雑誌を読むことでダグラスは勉強します。
読んで読んで、どんどん賢くなる。だけど檻からは出られない。
 
ダグラスがどうやって檻から出たのか。車椅子に乗っているのはなぜなのか。
百匹近くいるかと思われる犬を飼いつつ、どのように生活を成り立たせてきたのか。
エヴリンと共に聴き入ってしまいました。
 
「規格外のダークヒーロー」、本当にそうだと思います。
彼が幸せに満ちた顔をしていたのが救い。切ない。

  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする