『ドッグマン』(原題:Dogman)
監督:マッテオ・ガローネ
出演:マルチェロ・フォンテ,エドアルド・ペッシェ,アダモ・ディオニージ,
フランチェスコ・アクアローリ,アリダ・カラブリア他
テアトル梅田にて、『あなたの名前を呼べたなら』とハシゴ。
イタリア/フランス作品です。
マッテオ・ガローネ監督の作品を初めて観たのは『リアリティー』(2012)。
その後『五日物語 3つの王国と3人の女』(2015)を観ました。
どちらも好きだったわけではないのに、かなり記憶に残っています。
本作も衝撃的で、好きじゃないけどたぶん一生忘れない。
イタリアの寂れた海辺の町。
犬のトリミングサロンを営むマルチェロは、犬をこよなく愛する男。
妻とは離婚したものの関係は良好。
パパ大好きな愛娘と定期的に会って楽しい時間を過ごしている。
近隣の住民とは一緒に食事をしたりサッカーをしたり、
皆とほどよい距離でつきあっているマルチェロだが、
町の厄介者シモーネとの腐れ縁も断つことができない。
ガタイがよくてヤク中で乱暴者のシモーネはしょっちゅうトラブルを起こし、
住民の誰もが彼を殺したいと思っているほど。
なのにお人好しのマルチェロはシモーネの誘いを断れず、悪事にも手を貸してしまう。
それでもなんとか上手くやりすごしていたはずが、
あるとき取り返しのつかない事態に巻き込まれてしまい……。
イライラします(笑)。
お人好しの男が犬を傷つけられてキレる、そんな作品なのかなと思っていました。
伝説の殺し屋が愛犬を殺されてキレる、『ジョン・ウィック』(2014)を想像しながら。
でもそうじゃなかった。
マルチェロはシモーネに犬を傷つけられても怒れない。
シモーネたち悪党が豪邸に盗みに入ったとき、
邸の外に停めた車の中で待機させられていたマルチェロは、
うるさく吠える室内犬を冷凍庫に入れてきたとシモーネらが笑うのを聞き、
ひとりでのこのこ現場に戻ると、荒らされた邸の中を歩き回って犬を探す。
やっと冷凍庫の在り処を見つけて凍った犬を取り出し、
静かに水をかけながら「がんばれ、がんばれ」と声をかけ、
息を吹き返した犬がスタスタと歩くのを確認すると安心して邸を立ち去る。
日常生活には問題がないし、トリミングサロンの仕事も完璧だけど、
知能的にはおそらく問題があるだろうと思われる。
そんなやりとりだらけです。
マルチェロはものすごいお人好しなのですが、究極の善人でもない。
ドラッグの売人を副業にしているのですから。
それも断れずに続けている部分が大きいけれど、それゆえシモーネにつきまとわれる。
とっとと関係を断っておけばよかったのに、共依存的なところもあるのか、
どうしてもシモーネのことを切れない。
頭もあまりよくないから、ずるいことなんて考えられないんですねぇ。
悲惨です。
どうにかマルチェロに幸せになってほしいと思いましたが、駄目。
つきあう相手は選ばないと、こんな結末が待っている。
犬だけは彼の味方でいてほしい。