夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『ステキな金縛り』

2011年10月31日 | 映画(さ行)
『ステキな金縛り』
監督:三谷幸喜
出演:深津絵里,西田敏行,阿部寛,竹内結子,浅野忠信,
   中井貴一,小日向文世,KAN,木下隆行,生瀬勝久他

先週末に公開されたばかりだというのに、某レビューサイトには数百件の口コミ。
賛否両論ではありますが、やはり注目度は高そう。

私の勝手な推測ですが、三谷幸喜作品を好きな人は、
ウディ・アレン、それから宮藤官九郎の作品も基本的にOKでは?
この3人、私は好きなんですが、
まわりを見渡すと、3人とも好きか嫌いかのどちらかなもので。

『12人の優しい日本人』(1991)以来、三谷幸喜はお気に入り。
『THE 有頂天ホテル』(2005)にはガックリでしたが、
『ザ・マジックアワー』(2008)で私の気持ちは復活し、
そして本作、これは文句なく楽しかったです。

ツキに見放された若手女性弁護士の宝生エミ。
失敗続きのエミに対し、弁護士事務所の所長・速水は、
これが最後のチャンスだと、ある仕事を任せることに。

それは資産家の妻殺しの容疑で捕まった男、矢部の弁護。
エミが面会に行くと、矢部はアリバイを主張する。
事件当夜、山奥の旅館に宿泊した矢部は、
犯行時刻には金縛りに遭っていたため、動けなかったと言うのだ。

幽霊を証言台に立たせるしかないな。
冗談交じりの速水の言葉を真に受けたエミは、早速旅館へ。
すると本当に、落ち武者・更科六兵衛の幽霊が現れる。

突然エミにすがりつかれて逃げ腰の六兵衛だったが、
無実の罪を着せられようとしている矢部の話を聞いて足を止める。
六兵衛も濡れ衣で打ち首になった身。
矢部に同じ運命を辿らせてはならぬと、証言することを誓うのだが……。

前代未聞、幽霊が証言台に立つ裁判。
厄介なのは、幽霊の姿が見える人と見えない人がいるということ。
裁判長をはじめ、見えない人にはどう説明すりゃいいのか。
ほぉ~と唸るこの方法、愉快です。
また、なぜ見えるのか。この共通項の解明もとても楽しい。

三谷幸喜が駄目な人は、おそらく「嘘っぽい」のが嫌いじゃないかと。
だいたい、こんなのあり得ない話すぎで、現実味はまるでなし。
共通項にしたって、3つめはかなりアホくさいです。
でも、何から何まで芝居がかっているのが楽しくて。
旅館の名前は「しかばね旅館」、金縛りに遭うのは「耳鳴りの間」。
こんなネーミングも含めて。

ちょい役で出演のキャストが豪華なのはいつも嬉しいところ。
コケにされる時代劇役者に佐藤浩市、
メニューの向きを意地になって変えるウェイトレスに深田恭子、
幽霊が見えて絶叫する通行人に篠原涼子、死亡宣告する医師に唐沢寿明。
とどめは「勝訴を掲げる男」、大泉洋。

いっぱい笑って、ちょっぴりウルッ。
役者がみんな楽しそうで、こっちまで幸せな気分に。
検事役の中井貴一、相変わらず凄いです。惚れちゃいそうなくらい。
彼のテーブルマジックも必見ですので、ぜひ。

あの世の公安委員が六兵衛を連れ戻しにやって来て、
エミの部屋で見つける1本のDVD。
そのときの小日向文世演じる公安の言葉に同感。
フランク・キャプラ監督作品なら、
私も『素晴らしき哉、人生!』(1946)がオールタイム・フェイバリット。

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『カンパニー・メン』

2011年10月28日 | 映画(か行)
『カンパニー・メン』(原題:The Company Men)
監督:ジョン・ウェルズ
出演:ベン・アフレック,クリス・クーパー,ケヴィン・コスナー,マリア・ベロ,
   ローズマリー・デウィット,クレイグ・T・ネルソン,トミー・リー・ジョーンズ他

梅田ロフトの駐車場は機械式で、出庫に時間がかかるから、
そこには入れずに60分まで駐車可能なロフトの真ん前、パーキングメーターを利用。
これも『蛍火の杜へ』が上映時間44分の映画だからできたこと。
車を出したら60分ジャストの表示。なんだか嬉しい。
即、新梅田シティのシネ・リーブルへ向かえば、数秒の無駄もないハシゴでニヤリ。

さて、もともと観るつもりにしていたのは本作でした。

アメリカ、ボストンの大手総合企業GTX。
まだ若手の部類でありながら販売部長を務めるボビーは、
年収12万ドル、高級住宅街に居を構え、愛車はポルシェ。
妻と子どもに囲まれて、いわゆる勝ち組の人生を送っている。

ところが、リーマンショックを受けて、数千人が解雇されることに。
花形だったはずなのに余剰人員と言われ、突然クビを宣告される。
解雇手当は給料の3カ月分。再就職のための支援センターに通うなら、
当面はその経費をGTXが負担してくれるらしい。

広域にわたる営業できちんと結果を出してきた俺。
あちこちからすぐに声がかかるに決まっている。
もう長く支援センターにいるらしい失職者たちにそう息巻いてみたものの、
再就職先はまったく見つからず……。

ボビーを演じるベン・アフレックのほか、主要な男性陣の配役が豪華。
GTXの造船部門のトップで、副社長でもあるジーンにトミー・リー・ジョーンズ。
造船部門の溶接工からのたたき上げで役員となったフィルにクリス・クーパー。
そして、ボビーの義兄で小さな工務店を経営するジャックにケヴィン・コスナー。
どの役者を見ても主役級なのに、いや、主役級だからこそなのか、
みんな引きどころをわかっているようで、いい感じの力の抜け具合。

夫がリストラに遭ったとき、妻の取る態度がさまざまで興味深いです。

家も車もゴルフの会員権も手放そうとしないボビーに対し、妻は非常に現実的。
スパッとすべて売り払い、再就職が決まるまでは舅姑を頼ることに決めます。
妻の進言をなかなか聞けないボビーが同意したきっかけは、
息子が買ったばかりのゲーム機をこっそり店に返品したことでした。

フィルの妻は、リストラされてからも同じ時間に夫を送り出します。
スーツを着せ、ブリーフケースも持たせ、
近所の人にバレないよう、時間を潰して帰って来いと。
贅沢三昧だったジーンの妻は、夫が無職になればとっとと離婚。

この中では唯一ちがう仕事に携わってきたジャック。
顎にも腹にも肉のついたケヴィン・コスナーが、職人気質で魅せてくれます。

初心に戻って一念発起。一発逆転までは見せません。
世の中そう甘くないやろと突っ込まれそうなところまでは行かない程度の、
観た人が前向きになって心地よく帰れるぐらいのラスト。

しかし、いくつになってもラブシーンは撮りたいものなんでしょか。
トミー・リー・ジョーンズの裸はどうでもいいんだよぉ。

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『蛍火の杜へ』

2011年10月25日 | 映画(は行)
『蛍火の杜へ』
監督:大森貴弘
声の出演:内山昂輝,佐倉綾音他

のっけからこんな話題もどうかと思いますが、
わりと代謝がいいのか、便秘知らずです。
そして、毎朝、おなかがすっきりしてからでないと、出かける気になりません。
平日はもとより、休日もそのための時間を見込んで何時に起床するかを決定します。

先週末は、11:40からの映画を1本だけ観るつもりで起きましたが、
おなかがすっきりしたのが9:00頃。
今から観られる映画はあるはずもないと思いつつ調べたら。
10:30からテアトル梅田で44分間のアニメが。終映時刻が11:20。
そこからダッシュしてシネ・リーブル梅田へ11:40に間に合うのか。
これはもしや可能かも~と、急ぎ、出かける用意を始めました。

って、みなさまにお知らせするようなことでもないんですが、
おなかがすっきりしたうえに、素晴らしく効率的な映画のハシゴができたので、
誰かに聞いてほしくなったのでした。すんません。

ひと月近く前に友人親子から観に行ったと聞いていた作品です。
まだ上映中とは思ってもみませんでした。結構なロングランのようで。

緑川ゆきの短編漫画。TVアニメ『夏目友人帳』の製作陣による映画化です。

まだ幼い女の子、竹川蛍は、夏休みに田舎の祖父の家を訪れる。
ひとりで付近を散策中、“山神の森”に迷い込んでしまう。
その森には妖怪たちが棲んでいるとの噂。

静まり返った森の中、次第に夕暮れが近づき、
涙ぐむ蛍の前に現れたのは、狐の面をかぶった少年ギン。
人間の姿をしているが妖怪だというギンは、
人間に触れられると消えてしまうらしい。

妖怪に動じない蛍に、逆にギンのほうが驚くが、
助けてもらえて、しかも妖怪に会えて、蛍は大喜び。
嬉しさのあまり何度も飛びつこうとする蛍に、ギンは大慌て。
他の妖怪たちにもおちょくられながら、なんとか森の入り口までたどり着く。

以来、夏休みになると、毎年毎日、蛍はギンに会いにやって来る。
ギンに恋心を抱きながら、成長してゆく蛍。
対するギンは一向に年を取らない。
いつしかギンを追い越してしまうのだと蛍は悟るのだが……。

蛍とギンが過ごす夏、夏を待ちわびて蛍が過ごす秋、冬、春。
夏の間だけを見ても、ミンミンゼミからヒグラシに変わることで、
過ぎ行く季節を感じられます。

触れたいのに触れられない。
木切れの端と端を持って歩くさまは切なくて美しい。
何を考えているのかわからないギンが、
「本望だ」とつぶやくシーンには胸がキュンとなりました。

ところで、“山神の森”とまでは行きませんが、うちは大阪では緑は多いほう。
バッタやカマキリが車に張りついていることがしょっちゅうあります。
この日もバッタと共に梅田まで。
あんな時速に耐えるんですね、バッタちゃん。
必死のぱっちでボンネットに張りつく姿が涙ぐましい。
梅田ロフト前で停車したさいに飛び立って行きました。お疲れさん。

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『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』

2011年10月20日 | 映画(さ行)
『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』(原題:Rise of the Planet of the Apes)
監督:ルパート・ワイアット
出演:ジェームズ・フランコ,フリーダ・ピント,ジョン・リスゴー,
   ブライアン・コックス,トム・フェルトン,アンディ・サーキス他

ジェームズ・フランコといえば、口元のせいなのか、
それともちょっと下がり気味の目尻のせいなのか、
その笑顔が爽やかというよりは、にやけている印象があります。

それでも、口をピシッと閉じているときは
ジェームズ・ディーンの再来といわれたのもうなずけるし、
TV映画でディーン役を演じた彼を見たロバート・デ・ニーロが、
『容疑者』(2002)では自分の息子役に抜擢したというのも納得です。

そのままシリアス路線を行くのかと思いきや、
『スモーキング・ハイ』(2008)とか『デート&ナイト』(2010)とか、
ヤク中やチンピラのほうがどうも似合っていて、
優男ぶりを正統に発揮できる作品はないものかと思っていたところ。

これはピッタシ、はまっています。

サンフランシスコの製薬会社の研究所。
アルツハイマー治療の研究をするウィルは、
開発中の新薬を投与したチンパンジーに驚異的な知能の発達を見る。
所長たちは会社始まって以来の大発明だと色めき立つが、
その成果発表の日、突然チンパンジーが暴れ出す。
凶暴化したチンパンジーは射殺され、プロジェクトも即刻中止に。

翌日、そのチンパンジーが妊娠中であり、
お腹の赤ん坊を守りたいがゆえの行動だったと
ウィルは飼育係から知らされる。
赤ん坊を処分することなんてできないと涙目の飼育係。
ウィルは赤ん坊をこっそり連れ帰ることに。

アルツハイマーの症状が出ているウィルの父親は、
生まれたばかりのチンパンジーを見るとニッコリ。
父親がつぶやいた言葉から、シーザーと名付けられたチンパンジーは、
ウィルの家族の一員として愛情深く育てられる。

ところが、おそらく遺伝によって並外れた知能を受け継いだシーザーは、
隣人からなじられているウィルの父親を見て、隣人を激しく攻撃。
危険な動物とみなされたシーザーは、類人猿保護施設へと送られるのだが……。

モーションアクターとして名高いアンディ・サーキス。
モーションキャプチャーという、人の動きをデジタル化する装置をつけて演技し、
“ロード・オブ・ザ・リング”シリーズのゴラムや、
『キング・コング』(2005)でもおなじみ。
素顔をわかる人が少ないというのもどうかと思いますが、(^^;
人間以外を演じていながら哀切な表情を出せるのが凄いです。

こりゃとびっきりのファンタジーだ!と思った『スラムドッグ$ミリオネア』(2008)で
ヒロインを演じていたフリーダ・ピント、相変わらずめちゃくちゃ綺麗。

ま、とにかく私が嬉しかったのは、
ジェームズ・フランコのあの笑顔が真っ当に使われたことですけれど。(^o^)

エゴと愛情がいっぱい詰まった作品。
『猿の惑星』シリーズを全然知らない人も楽しめますので、ぜひ。

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『ミケランジェロの暗号』

2011年10月17日 | 映画(ま行)
『ミケランジェロの暗号』(原題:Mein bester Feind)
監督:ヴォルフガング・ムルンベルガー
出演:モーリッツ・ブライブトロイ,ゲオルク・フリードリヒ,ウーズラ・シュトラウス,
   マルト・ケラー,ウーヴェ・ボーム,ウド・ザメル,ライナー・ボック他

前述の『ゴーストライター』の1時間後、同じ劇場で。

第二次世界大戦下のウィーンを舞台にしたオーストリアの作品。
原題は“Mein Bester Feind”で、英語タイトルは“My Best Enemy”。
この邦題は客の興味はそそりますが、内容とは合致していません。
謎とか暗号とか言われたら観たくなるものだけど、ちょっとずるいど。

1938年のウィーン。
画廊を営む裕福なユダヤ人、カウフマン家の一人息子ヴィクトルは、
毎日丹念に画廊の手入れをしているが、
ユダヤ人ゆえに嫌がらせを受けることも増えてきた。

そんな折り、兄弟同然に育った使用人の息子ルディが久々に現れる。
ヴィクトルがルディを自宅に連れ帰ると、両親もルディとの再会に大喜び。
昔話に花が咲き、上機嫌のヴィクトルは、一家の秘密をルディに明かす。

その秘密とは、国宝級の逸品であるミケランジェロの素描を持っているということ。
世間にその存在は知られているが、数百年前にローマ法王のもとから消えたまま、
どこにあるのかわからない、もはや幻の作品。それがこの家にあるというのだ。

他言一切無用と両親から言われていたにもかかわらず、
ルディに見てみたいと懇願され、隠し部屋へとこっそり案内するヴィクトル。
その様子を知って、「欲は人を変えてしまう」と悟りきった顔の父親。

父親の予想は的中し、ルディはナチス親衛隊に密告。
ヒトラーからムッソリーニにミケランジェロの素描を進呈すれば、友好の証となる。
密告が事実だと判明したあかつきの昇進を確約され、自ら入隊したルディを従え、
ただちにカウフマン家と向かう親衛隊。

わずかながら良心の呵責があるルディは、
素描と引き換えにカウフマン一家をスイスへ亡命させることを上司に約束させていたが、
見事にその約束は破られて……。

悲惨であるはずの話にユーモアを交えて、テンポよく見せてくれます。
監督は、クエンティン・タランティーノから多大な影響を受けているらしく、
確かに本作にはタランティーノの『イングロリアス・バスターズ』(2009)の色が見え隠れ。
親衛隊の上官は『イングロリアス』の大佐をちょっとおとなしくした感じ。
オチはかなり早いうちから読めてしまい、スリルという点でもいまひとつ。

それでもコンパクトにまとまっているため、退屈はしません。
ラストシーンのウィンクはお茶目で小気味良く、
ざまぁみろ!と喝采を送りたくなるのでした。
そのときのヴィクトルとルディの表情を見れば、原題がしっくり来ます。

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