夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『実りゆく』

2020年10月31日 | 映画(ま行)
『実りゆく』
監督:八木順一朗
出演:竹内一希,田中要次,田中永真,橋本小雪,三浦貴大,
   鉢嶺杏奈,小野真弓,島田秀平,爆笑問題,山本學他
 
予告編の上映時間がいちばん長いのはTOHOシネマズ。
15分間たっぷりあります。
TOHOシネマズ梅田で16:00から上映開始の映画を観ることは可能です。
それをやりました。入口すぐの端っこ席を確保して。
 
テレビを観る時間がほとんどないもので、お笑い芸人もあんまり知りません。
それにお笑いならやっぱり関西のほうが好きだから、
別に好きでもない爆笑問題が関わっている作品を観るつもりもなかったけれど、
時間が合うのがこれしかなくて。
 
八木順一朗監督は、その爆笑問題が所属する芸能事務所タイタンのマネージャー。
“MI-CAN 未完成映画予告編映画大賞”というものがあるそうで、
つまりは予告編を作って応募し、大賞を獲ったら制作費が得られるらしい。
そこで堤幸彦賞とMI-CAN男優賞の受賞作『実りゆく長野』に本編を望む声が高まり、
タイタンの代表・太田光代がエグゼクティブプロデューサーを務めて映画化したそうです。
と言われてもピンと来ないまま鑑賞。なのに泣いちゃったよ〜ん(笑)。
 
長野県下伊那郡松川町。
リンゴ農家の跡取りとして生まれた実(まんじゅう大帝国・竹内一希)。
小学生の頃に母親が病死し、父親(田中要次)が男手ひとつで実を育てた。
まもなく実が一人前として認められる祭祀がおこなわれる予定。
 
そんな実は吃音症。幼い頃はそのせいでよくいじめられた。
しかしなぜかステージに立つとどもらずに喋れる。
そのことに気づいてから実はお笑い芸人を目指し、
週末毎にバスに乗って東京まで出かけてはステージに立っている。
同じくピン芸人の永真(まんじゅう大帝国・田中永真)と切磋琢磨し合いながら。
 
ある日、大きなコンテストが開催されるのを知り、出場しようとするが、
なんとその日は松川町の祭祀と同じ日。
町中が実のために準備を進めてくれているなか、祭祀に出ないとは言えず……。
 
ここには書きませんが、実がお笑い芸人を目指す理由が泣けます。
それにやられて気づけば涙。こんなはずじゃなかったのに(笑)。
 
これも爆笑するところまでは行かなかったけれど、
本物のお笑い芸人、本当の漫才コンビがネタを披露しているだけあって、テンポがいい。
 
あと、リンゴって美しいなぁ。
果物の中でいちばん好きです。そんなリンゴが美しく撮られているのは嬉しい。
 
出戻りのスナックの姉さん役の人、綺麗というには怖い。
と思ったら、日本エレキテル連合の橋本小雪でした。
町民役の三浦貴大が綺麗だと称えるホステス役で、かなり違和感(笑)。
白塗りじゃないから誰かわからなくて、エンドロールを見て知りました。
道理で演技も硬いけど、ま、よろしいんじゃないでしょか。
 
ご当地ムービーは応援したくなります。

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『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』

2020年10月30日 | 映画(ら行)
『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』(原題:The Last Black Man in San Francisco)
監督:ジョー・タルボット
出演:ジミー・フェイルズ,ジョナサン・メジャース,ティチーナ・アーノルド,ロブ・モーガン,
   マイク・エップス,フィン・ウィットロック,ダニー・グローヴァー他
 
梅田ブルク7にて、『82年生まれ、キム・ジヨン』の次に。
 
これが長編デビューとなるジョー・タルボット監督。
幼なじみのジミー・フェイルズの実体験を基にしたフィクションで、
主演もそのジミーが務めています。
サンフランシスコなんて行ったこともないのに、なぜか郷愁を誘われる。
 
黒人青年ジミーは、親友モントの家に居候中。
ジミーはかつて自分が暮らしていたフィルモア地区の豪邸に執着している。
その一軒家は「サンフランシスコで最初の黒人」と呼ばれるジミーの祖父が建てたもの。
父親が税金を滞納して追い出されたが、ジミーはどうしてもまたそこに住みたい。

フィルモア地区は昔と様変わりして、住人には富裕な白人しかいない。
その豪邸にも今は白人夫婦が住んでいるが、庭も壁も手入れが行き届いていないのが許せない。
ジミーは夫婦の留守中を狙って忍び込み、勝手にペンキを塗ったりしている。
帰宅した夫婦にそれを見つかって通報されそうになることもしばしば。
 
ある日、その夫婦が家を出て行くことになったとジミーは知る。
家族と遺産相続で揉めたらしく、当分この家には誰も住まないだろう。
ジミーはモントを誘い、空き家となった豪邸に移り住むのだが……。
 
不思議な話です。
細かいことを言えば、ジミーは定職に就いている様子もなく、
居候させてもらえる家があるとはいえ、金をどう工面しているのか謎。
豪邸で寝泊まりするようになったって、食費すらないやんと思ったりも。
 
ネタバレになりますが、祖父が建てたと聞かされていた家が実はそうではなかった。
あれだけ固執していたのに、それだけがジミーの心の支えであるように思えたのに、
事実は違うと知ったとき。やるせない気持ちが伝わってきます。
 
何が事実であろうと、ジミーはジミー。父親や祖父をとっくに飛び越している。
それをわからせてくれた友人、モントの存在がとても大きい。
 
たいして面白いとは思わずに観ていたはずなのに、
鑑賞後しばらく経ってからのほうが映像が頭に蘇ります。

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『82年生まれ、キム・ジヨン』

2020年10月29日 | 映画(は行)
『82年生まれ、キム・ジヨン』(英題:Kim Ji-young: Born)
監督:キム・ドヨン
出演:チョン・ユミ,コン・ユ,キム・ミギョン,コン・ミンチョン,
   キム・ソンチョル,イ・オル,イ・ボンリョン他
 
絶対観たかった作品です。梅田ブルク7にて。
原作は1年ちょっと前に既読、レビューはこちら
 
結婚を機に仕事を辞めたキム・ジヨン、1982年生まれ。
夫デヒョンと可愛い娘に囲まれ、育児と家事に追われる日々だったが、
ある日、理不尽なことばかり言う義理の家族を前にして、
実母が憑依したかのようなことをジヨンは口走る。
 
その後も誰かが憑依したとしか思えない言葉を発することがあり、
しかもそのことをジヨン自身はまったく覚えていない様子。
心配したデヒョンは、まずは精神科にひとりで行って相談するのだが……。
 
「キム」は韓国に非常に多い姓のひとつ。
そして「ジヨン」は1982年頃に生まれた女性に最も多い名だそうです。
原作は精神科医カルテに記された彼女の話という形で進みます。
精神科医の無意識の内の最後のひと言が薄気味悪くて、酷く読後感が悪かった。
女が生きづらいのはこの先も変わらないであろうことが示唆されていました。
 
映画版はまず精神科医が女性である点が大きく違う。
原作では夫以外の男性には名前すら与えられていませんでしたが、
映画版ではどの人もちゃんと名前で呼ばれています。
 
ま、夫役がコン・ユである時点で原作とは違うエンディングが予想できます。
だって彼がそんな嫌な人の役を演じるわけもない(笑)。
原作を読んで暗澹たる気持ちに沈んだ人には特に鑑賞をお勧めします。
女性が観れば、夫実家でのシーンなどでは、「あるあるある!」と言いたくなることでしょう。
 
クスッと笑ってしまうシーンもいっぱいあります。
ジヨンの家族や同僚がとてもいい味。
姉貴の好きなものを知らないことに気づいた弟が、父親に尋ねたら父親の言ったことが間違いで(笑)。
そのときの弟の台詞もよかったなぁ。
 
今の韓国は、そして日本も、原作のほうに近いのか。
それとも映画版のように明るい未来を期待してもよいのか。

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『トロールズ ミュージック★パワー』

2020年10月28日 | 映画(た行)
『トロールズ ミュージック★パワー』(原題:Trolls World Tour)
監督:ウォルト・ドーン
声の出演:上白石萌音,ウエンツ瑛士,新垣樽助,仲里依紗,宮野真守,樋浦勉,
     近松孝丞,吉野裕行,宝亀克寿,きそひろこ,松本梨香,平田広明他
 
TOHOシネマズ伊丹にて、前述の『浅田家!』とハシゴ。
 
『トロールズ』(2016)の続編らしいのですが、前作の存在すら知らず。
これだけ映画を観ているというのに、不覚。(--;
 
洋画はアニメであっても字幕で観たいと思っています。
『2分の1の魔法』は字幕版を上映している劇場を見つけたけれど、
これは私の行動範囲内だとTOHOシネマズ梅田だけ、
しかも上映回数は1日1回でレイトショーのみ。無理っ。
あきらめて吹替版を鑑賞しました。
と思ったらなんばパークスシネマでもやってるやん。時すでに遅し。
まぁいいや、TOHOシネマズのポイント使ってタダで観たから。
 
トロール(=主に北欧の伝承に登場する妖精)が暮らすポップ村。
女王ポピーや幼なじみのブランチらは、ポップな曲を歌って踊る楽しい毎日。
トロールが暮らす村はここしかないと信じ込んでいたが、
実はこの世にはロック村やテクノ村など、別の村が存在することを知る。
 
きっかけは、ロック村の女王バーブからパーティーへの招待状が届いたこと。
ポピーの父親である王やブランチから止められるも、
ポピーはほかの村のトロールたちと音楽の融合ができるではないかと大興奮。
ただちにロック村へと向かうのだが……。
 
トロールの村は6つあり、それぞれ異なる音楽のルーツを持っています。
ポップ、ロック、テクノ、ファンク、クラシック、カントリー。
各々の村には魔法の弦があり、トロールたちに力を与えているのですが、
ロック村の女王バーブはそれらの弦をすべて集めることを画策。
ロック以外の音楽を破壊しようとしているんですねぇ。
 
ロックと言うけれど、これは明らかにヘヴィメタを指しています。
みんなメロイックサイン出してるし(笑)。
なんか、ヘヴィメタが世の中を仕切ろうとしていて、
それをポップスが改めようとしているみたいな図式、どうよ。
 
主人公のポピーもどうも鼻につきます。
「私がバーブを正してみせる」とか、何様やねん!てな感じで。
あ、これは私がひねくれているからです(笑)。
当然最後はポピーも自分本位であったことに気づいて改めますから、
教育的に良い映画であることは間違いありませんが、
こういうのがヘヴィメタに先入観を与えてしまうってことはないですか。
 
致し方なく吹替版を観ましたが、字幕版ではオジー・オズボーンが出演しています。
ポピー役はアナ・ケンドリックだし、怪しいヒッコリー役がサム・ロックウェル
オジーがロック村ではなくポップ村の王様の声を担当しているのがワラける。
やっぱり絶対観たいやん、字幕版。

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『浅田家!』

2020年10月27日 | 映画(あ行)
『浅田家!』
監督:中野量太
出演:二宮和也,妻夫木聡,平田満,風吹ジュン,黒木華,菅田将暉,
   渡辺真起子,北村有起哉,野波麻帆,池谷のぶえ,後藤由依良他
 
TOHOシネマズ伊丹にて。
 
監督は『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016)、『長いお別れ』(2019)の中野量太。
写真界の芥川賞といわれる木村伊兵衛写真賞を受賞した写真家、
浅田政志氏の実体験を原案に、中野監督本人が書いた原作を映画化。
原作を読んだときのレビューはこちら
 
三重県津市に暮らす浅田家は両親と長男次男の4人家族。
一家の稼ぎ頭は看護師である母親・順子(風吹ジュン)、父親・章(平田満)が家事を担当。
常識的な長男・幸宏(妻夫木聡)に対してハチャメチャな次男・政志(二宮和也)。
 
写真を撮るのが好きな章から小学生のときにカメラを贈られた政志は、
写真家になる夢を胸に大阪の専門学校へ。
しかしろくに学校に通わず、卒業が危うくなる。
「一生であと1枚しか写真を撮れないとしたら何を撮るか」という課題を出され、
まともな写真を提出できなければ卒業不可だと言い渡される。
 
あと1枚だけ撮るとしたら。それはほかならぬ家族写真。
実家に戻った政志は、家族を収めた写真で見事卒業を決めて……。
 
順風満帆な人生ならば映画になるはずもなく、紆余曲折。
学校を卒業してからは職に就かず、パチンコか釣りか。
それでもパチンコで稼ぎまくって家に15万円も入れていたのですからたいしたものですが(笑)。
 
黒木華演じる幼なじみの若奈から叱咤され、それでもしばらくボーッ。
息子を心配して気遣う章と話すうち、
自分が撮りつづけるべきものは家族だとあらためて考えます。
 
彼の撮る家族写真の楽しいこと。
自然体の人物を撮ることがいいとなんとなく思っていましたが、
こうして状況設定をして作り込んだ写真がこんなに楽しいものだとは。
 
前半はクスッと笑ってしまうシーンの連続ですが、後半は一転。
東日本大震災に見舞われた被災地で、写真の整理をするボランティア青年に出会います。
その青年役が菅田将暉
今はもう主演で見るばかりの菅田くんが、こうして脇役に回っているのも新鮮。
彼を手伝う隣町のスナックのママさん、渡辺真起子もすごくいい。
 
涙を誘われるだろうとは予想していたけれど、
まさかいちばん泣かされたのが北村有起哉だとは(笑)。
写真整理の場に現れてイチャモンをつけるのが彼。
再登場のシーンはもうどうしようもないぐらい泣けてきます。
 
被災地で拾い上げられた写真の数8万枚。
そのうち6万枚が無事に返却されたそうです。凄い。
そして10年が経とうとしている今も、返却会は開かれているそうです。

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