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『行き止まりの世界に生まれて』

2020年10月13日 | 映画(あ行)
『行き止まりの世界に生まれて』(原題:Minding the Gap)
監督:ビン・リュー
 
TOHOシネマズ梅田からシネ・リーブル梅田へ移動して。
 
サンダンス映画祭ではブレイクスルー映画製作米国ドキュメンタリー部門特別審査員賞、
第91回アカデミー賞では長編ドキュメンタリー部門にノミネートされた作品です。
オバマ元大統領が2018年のお気に入りの1本として本作を挙げています。
これがデビュー作とは、凄い新人がいたもんだ。
 
アメリカ・イリノイ州ロックフォード“ラストベルト(錆びついた工業地帯)”と呼ばれる地域。
ここで生まれ育った3人のスケートボード仲間の12年間を
3人のうちのひとりであるビン・リューがカメラに収めています。
少年時代からずっと撮りつづけていたものがこうして1本の長編作品になりました。
 
仲良し3人組だけど、ザックは白人、キアーはアフリカ系アメリカ人。
監督のビンは中国系アメリカ人。人種も生い立ちも違う。
 
ザックは交際中の彼女との間に子どもができ、息子のことは可愛くてたまらないけれど、
ザックも彼女もまだ遊びたいさかり。
ふたりとも働かないと生活できないから、その日仕事のないほうが息子の世話をする。
仕事の後は友だちと1杯飲みたくなったりもして、毎日お互いを責めて喧嘩ばかりしています。
 
母親と暮らすキアーは、すでに亡くなっている父親との確執を払拭できない。
父親のことが怖くて仕方なくて、墓参りに行くこともできず。
そんなキアーにカメラを向けるビンも、継父から酷い暴力を受けていた過去があります。
 
イリノイ州では家庭内暴力の起きている家が異様に多いそうで、驚愕。
映像で見るかぎりは廃れた雰囲気もなく、スラムのようでもないし、
わりといい環境に見えましたから。
 
本作を観る前、私が不思議だったのは、なぜみんなスケボーをするのかということでした。
最近観たばかりの『mid90s ミッドナインティーズ』もそうだったし、
本作では、その理由がちょっとわかった気がします。
ボードの裏側にはさまざまな言葉が書き込まれていて、その言葉を支えに皆生きている。
スケボーさえしていれば、つらいことを忘れて生きていける。
 
瑞々しさに溢れたドキュメンタリー作品でした。

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