夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『ブラック アンド ブルー』

2020年07月31日 | 映画(は行)
『ブラックアンドブルー』(原題:Black and Blue)
監督:デオン・テイラー
出演:ナオミ・ハリス,タイリース・ギブソン,フランク・グリロ,
   マイク・コルター,リード・スコット,ボー・ナップ他
 
同じくイオンシネマ茨木にて。
 
故郷であるニューオーリンズに戻って警官となったアリシア。
ある日の勤務終了後、コンビを組む警官ケヴィンのもとへ
夜勤に就いてほしいとの依頼が入る。
その日はケヴィンが終業後に妻と過ごすのを楽しみにしているのを知っていたから、
アリシアは彼の代わりに夜勤を引き受けると申し出る。
 
ベテラン警官のディーコンに連れられ、付近の巡回に出たアリシア。
廃墟に入るディーコンについていこうとすると、車内で待つようにと言われる。
しかし銃声が聞こえたため、廃墟に入ってみると、
そこにはディーコンと共に麻薬課の刑事テリーとボーの姿が。
 
息を潜めて様子を窺っていたところ、なんとテリーが売人を射殺。
アリシアが目撃したことに気づいたテリーたちは、彼女をも殺そうとする。
一部始終を撮影したカメラをアリシアが装着していたから、
彼女を抹殺しなければ、テリーたちは警察をクビになる。
 
なんとか逃げてカメラの中身をアップロードしたいが、
周囲にいるのはテリーの息がかかった警官ばかり。
しかも殺された売人は地元ギャングのボス、ダリウスの甥っ子ゼロで、
アリシアにゼロを殺されたと信じるギャングたちも彼女を追い……。
 
ノーマークでしたが、かなり面白かったです。
汚職警官の話って本当に多いですが、実際こんなにいるもんなんですかね。
いるんだろうなぁ。
 
テリーが見るからにずるそうなのに、それを信じるダリウスが阿呆に見えます。
元軍人のアリシアが孤立無援で奮闘。
そんな彼女の闘いぶりを見て協力する昔の知り合い、マイロの存在が心強い。
 
この町の出身だから、同じ黒人だからと言っても、一旦は出て行った人間。
しかも警官だなんてと、故郷の人間のアリシアを見つめる目は冷たい。
マイロのみが味方という状況からどうなるか。最後は胸がすく。痛快。

  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『アルプススタンドのはしの方』

2020年07月30日 | 映画(あ行)
『アルプススタンドのはしの方』
監督:城定秀夫
出演:小野莉奈,平井亜門,西本まりん,中村守里,
   黒木ひかり,平井珠生,山川琉華,目次立樹他
 
何気なくイオンシネマ茨木の上映スケジュールを眺めていたら、
なんだこれ、全然知らない映画が公開されているではありませんか。
野球好きとしてはこんなタイトルの作品をスルーなんてできません。
仕事が終わるのは17:15、17:35からの上映に間に合うか。
毎度のこんな無謀なスケジュール組み。今回も間に合いました。(^O^)
 
原作は第63回全国高等学校演劇大会で最優秀賞に輝いた戯曲
それを城定秀夫監督が映画化。
宣伝も聞いたことがないし、客おらんのではと思ったけれど、
意外にぽつぽつ入っています。
 
高校野球、夏の甲子園1回戦のアルプススタンド。
演劇部の安田あすは(小野莉奈)と田宮ひかる(西本まりん)は、
野球になどまったく興味がなく、ルールも全然知らない。
自分たちが通う高校が出場するからと応援を強制されただけ。
ほとんど最上段に座って遠巻きに観戦。
 
そこへ藤野富士夫(平井亜門)が現れる。
やたら野球に詳しい藤野に、そういえば彼は野球部だったなと思ったら、
野球部はもう辞めてしまったのだと言う。
 
そんな3人の後方、座りもせずに観戦しているのは、
ついこの間までずっと成績学年トップだった宮下恵(中村守里)。
彼女に替わって成績トップに立ったのは、
吹奏楽部トランペットを吹く久住智香(黒木ひかり)。
智香は野球部のエースで4番の選手とつきあっているらしく……。
 
野球のシーンはいっさい無し。
応援団の演奏やアナウンス、声援や拍手喝采、ボールを打つ音が聞こえるだけ。
スタンドにいる観客しか映りません。その構成が非常に面白い。
 
あれ誰だっけ、ほらほら、誰それさんだよ、あ〜そっか、
誰と誰がつきあってるんだよね〜とか、
野球とは関係ないそんな会話が大半を占めつつ進行。
思春期らしい悩みなんかもそれぞれ抱えているのがわかります。
 
野球を全然知らないふたりの会話がワラける。
捕球されたのに走って点が入ったってどーゆーこと!?みたいな感じで。
私の後方の席のおじさん客はウケまくっていました。
私はそこまでは笑えなかったけど、爽やかな小品です。
 
ちなみに、ロケ地は甲子園ではありません。
甲子園ということになっているけれど、どう見てもちゃうやろ。
そこも甲子園に通う者としては楽しいところ。
 
人生は空振り三振の連続か、はたまた送りバントか。

  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『グッド・ワイフ』

2020年07月29日 | 映画(か行)
『グッド・ワイフ』(原題:Las Niñas Bien)
監督:アレハンドラ・マルケス・アベジャ
出演:イルセ・サラス,カサンドラ・シアンゲロッティ,パウリナ・ガイタン,
   ジョアンナ・ムリージョ,フラビオ・メディナ他
 
京都シネマで3本ハシゴの3本目。
ドイツ作品と韓国作品の後はメキシコ作品です。
 
1982年のメキシコが舞台って、なんでそんなにピンポイントなのかと思ったら、
この年、メキシコが経済危機に襲われたのですね。
1970年代にメキシコで石油投資ブームが沸き起こり、
製造業の工場もどんどんメキシコへ移転。融資もバンバンおこなわれました。
当時の金利はメキシコのほうがアメリカより高く、儲かる儲かる。
誰も国家が破産するなんて考えないよなぁ。
その状況が急に変わり、債務危機に陥ったそのときが本作の舞台。
 
1982年、メキシコシティの高級地区ラスロマス。
実業家の妻として大豪邸に暮らすソフィアは、
セレブ妻たちの中にあってもとりわけ富裕で美貌を誇る女王的存在。
 
そんな彼女がどうしても好きになれないのがアナ。
化粧といい服装といい、野暮ったすぎるくせして、
セレブの仲間に入りたがっている様子。
実際、アナはすでにセレブで、夫は著名人らしく、
ソフィアの友人アレハンドラにはアナのことを認めるように言われているが、
どうあろうとアナのことは受け入れたくない。
 
アナを無視したって何の問題もない、そう思っていたが、
このところ、買い物に行くとクレジットカードが止められていたり、
邸宅の使用人たちから給料が未払いだと催促されたりして……。
 
イルセ・サラス演じるソフィアが、不安はいっさい口に出さないけれど、
輝くばかりだった容貌に影が差し、疲れた顔になってゆく。
顔色と行動に焦りがあらわれていて非常に面白い。
 
ソフィアが小馬鹿にしているアナ役のパウリナ・ガイタン。
エリザベス・テイラーやソフィア・ローレンを気取って
カラーコンタクトを入れていることも揶揄されたりするけれど、彼女はたくましい。
ソフィアにビシッと「どうしていつもそんなに偉そうなの」と言うシーンには拍手。
「女なら誰でもお姫様を夢見るものよ」とアナが言い切るシーンにも迫力があります。
 
使用人たちの姿が『チャンス! メイドの逆襲』(2009)とかぶります。
中南米の国って、どこもこんな感じなのでしょうか。
セレブはお金がなくなってもそれを認めず、ずっとセレブ。
メイドや運転手に対してこんなにも偉そうで、自分にお金を使い続ける。
 
意味深な表情のシーンいろいろ。何かあったかなかったか。

  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『マルモイ ことばあつめ』

2020年07月28日 | 映画(ま行)
『マルモイ ことばあつめ』(英題:Malmoe: The Secret Mission)
監督:オム・ユナ
出演:ユ・ヘジン,ユン・ゲサン,キム・ホンパ,ウー・ヒョン,キム・テフン,キム・ソニョン他
 
京都シネマで3本ハシゴの2本目。
 
韓国の作品。
史実を基にしたフィクションです。
 
1940年代、日本統治下の京城
日本語教育が進められ、朝鮮語を話すことができない子どもたちが増えている。
生まれながらの名前も日本式の名前に改名することを推奨される。
 
朝鮮語学会代表のリュ・ジョンファンは、失われゆく朝鮮語を守るため、
朝鮮語の辞書を作ることを決意。
自らが営む書店を隠れ蓑にして事務所を設け、
志を同じくする学者や記者たちと共に日々ことば集めに尽力している。
 
ある日、辞書作りに携わる学者チョ・ガプインが助っ人だと言って男を連れてくる。
男は数日前にジョンファンの鞄を盗もうとしたキム・パンス。
泥棒を雇うつもりはないと憤るジョンファンをガプインがなだめて言うには、
パンスが盗みを働こうとしたのは息子の学費を工面しようとしてのこと。
生真面目なジョンファンとお調子者のパンスはまったく相容れないが、
パンスは雑用係として学会事務所に出入りするように。
 
相変わらずちゃらんぽらんなパンスに呆れていたジョンファンは、
あるときパンスが非識字者であることに気づく。
パンスに1カ月で文字を覚えるように約束させると、
最初は渋面を見せていたパンスがやがて文字を読み書きできる楽しさを知り……。
 
辞書作りの映画といえば『舟を編む』(2013)。
原作と共に大好きな作品ですが、それとこれとでは背景がまるで違う。
辞書なんて売れないと出版社が経費を削減することはあっても、
自分の国にいるのに自分の国の言葉を話すことが許されず、
辞書を作っていることがバレれば殺されるかもしれないわけで。
 
反韓思想を持つ人が観れば腹を立てるだろうし、
反日思想を持つ人が観れば、より日本を嫌いになることでしょう。
でも、そういう問題ではないと思うのです。
普通に、自分の国の言葉を守ろうとした人たちの物語として観たい。
 
私たちは日本で日本語を取り上げたことはないのですから。

  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『お名前はアドルフ?』

2020年07月27日 | 映画(あ行)
『お名前はアドルフ?』(原題:Der Vorname)
監督:ゼーンケ・ヴォルトマン
出演:クリストフ・マリア・ヘルプスト,フロリアン・ダーヴィト・フィッツ,カロリーネ・ピータース,
   ユストゥス・フォン・ドナーニー,ヤニナ・ウーゼ,イリス・ベルベン他
 
緊急事態宣言発令前も解除後も、この劇場がいちばん客が入っている気がします。
上映時間と上映時間の間には、スタッフがひとつずつ座席を拭いていらっしゃいます。
京都シネマで3本ハシゴの1本目。
 
こんな内容だからてっきりもともとドイツで生まれた話だと思っていたら、
オリジナルは2010年にパリで初演された人気舞台劇
それをゼーンケ・ヴォルトマン監督が映画化してドイツで大ヒット。
 
哲学者文学教授のシュテファンと国語教師の妻エリザベトは、
エリザベトの弟夫婦のトーマスとアンナ、
エリザベトとトーマスの幼なじみで姉兄弟のように育ったレネを招き、
ホームパーティーを始めるところ。
 
まずレネとトーマスがやってきて、妊娠中のアンナのお腹の中にいる子どもの話に。
男の子だということで、トーマスはすでに名前を決めているらしい。
それをみんなで当てようと、口々に名前を挙げはじめるが全部ハズレ。
トーマスから正解を聞いて唖然、「アドルフ」だと言うのだ。
 
アドルフ? あのアドルフ?
ヒトラーの忌まわしき名前を息子に付けるなんてどうかしている。
ありえないことだと全員が非難するのだったが……。
 
もとが舞台劇なので、夫妻の家の中だけで事は進み、
登場人物も彼ら以外は電話で話すエリザベトの母親のみ。
この雰囲気は『おとなの事情』(2016)に似ています。
 
最初はアドルフという名前について議論していたのに、
次第に彼らのあれやこれやが明らかになる。
母親の恋人って、え、そうだったの!?とか、
良き妻のはずのエリザベトが実はそんなに鬱屈した思いを抱えていたのかとか。
 
日本人とはちょっと笑いのツボが違うのでしょう、大笑いにはならない。
まぁ、妻の不満というものは全世界共通なのかなと思うぐらいで。
 
「アドルフ」という名前について、法律で語られているところが面白かった。
禁止されているだろうそんな名前はとシュテファンがスマホで調べたら、
基本的には禁止ではない、その名前を付ける理由が納得できるものであれば、なんですって。
「アディダス」の創始者の名前がアドルフだということも初めて知りました。
アディダスのアドルフはまさか後にヒトラーが出てくるなんて思いもしなかったでしょうけれど。(--;
そんなこんなで、いろいろと物知りになれます。

  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする