夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『四月になれば彼女は』

2024年04月07日 | 映画(さ行)
『四月になれば彼女は』
監督:山田智和
出演:佐藤健,長澤まさみ,森七菜,仲野太賀,中島歩,河合優実,ともさかりえ,竹野内豊他
 
老健に入所中のを連れて、入院中のの面会に行く。
車椅子で病室に入り、母の姿を見るや目に涙をいっぱい溜める父。
意識はちゃんとある母は「今日はもう駄目、死にそうやわ」と言っていました。
父は「俺より先に死んじゃダメだ」と言ったあと、母と握手。
それ以上言葉が出てこなくて、母に会えて気が済んだ父と共に介護タクシーに乗車して老健に帰る。
私は再び実家に戻って、あれこれ片付けた後、イオンシネマ茨木へ。
 
鑑賞前に原作は読了しています。川村元気の同名ベストセラー小説。感想はこちら
 
精神科医の藤代俊(佐藤健)は獣医の坂本弥生(長澤まさみ)と婚約中。
一緒に式場を見に行くなど、結婚式に向けて滞りなく進んでいたはずだったが、
実は長らくセックスレスのふたりは寝室も別。
 
4月1日は弥生の誕生日。たまたま起きていたふたりは午前0時を一緒に迎える。
夜は思い出のレストランで食事をする約束をして就寝。
朝目覚めると、弥生がいなくなっていた。電話をかけてもLINEを送っても応答なし。
 
何が原因で、何を思って弥生が姿を消したのか、俊にはまったくわからない。
ふと、俊の学生時代の恋人だった伊予田春(森七菜)から来た手紙を弥生に見せたときのことを思い出し……。
 
結論から言って、私の心に響いたのは、ラストシーンとエンディング曲だけ。
 
そもそも予告編を観たときからキャストに違和感ありありでした。
俊役の佐藤健は35歳。その今カノ弥生役の長澤まさみは36歳。これはいいとして。
俊の元カノ春役の森七菜は22歳なんですもの。
俊と春が大学生の恋人同士で、その恋愛を俊は引きずりまくっている設定。
それだけ年齢差がある役者を同世代として起用する理由は何ですか。
事務所の忖度があったのかと訝ってしまうほど。(^^;
 
また、原作には出てこない人物として、春の父親役に竹野内豊を起用。
好きですよ、竹野内豊。でもこの役は要らないと思う。何のためかさっぱりわからん。
 
10年ぶりに元カレに旅先から手紙を送ってくる女性。
その女性からの手紙を読みふける今カノ。
死を前にした春が(ネタバレ御免)俊の幸せを望んだゆえのことだったのは美談だし、
最後の手紙はそれなりにグッと来るものはあるけれど、なんだかなぁ。
とにかくこのキャストが私には受け入れられないせいで、冷めてしまいました。
 
世間では大人気の藤井風ですが、私は最初にラジオで耳にした曲の歌詞「青春はドドメ色」にドン引きして、
藤井風にはまったく興味を持てずにいました。でもこれはめちゃくちゃ良かった。
それだけで良しとします。

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『青春ジャック 止められるか、俺たちを 2』

2024年04月05日 | 映画(さ行)
『青春ジャック 止められるか、俺たちを 2』
監督:井上淳一
出演:井浦新,東出昌大,芋生悠,杉田雷麟,有森也実,田中要次,田口トモロヲ,田中麗奈,竹中直人他
 
の容態を気にしつつ、この日もとりあえず大丈夫そうだからとシネ・リーブル梅田へ。
そんなに久しぶりのつもりもなかったけれど、ひと月ぶりぐらいか
そやそや、ロビーで生東出昌大を見て以来ですね。
あのときはそんな兆しすらなかったのに、ロビーがいきなりゴージャスになっていてビックリ。
どーゆーことですかと思ったら、4月19日にテアトル梅田として生まれ変わるらしい。
梅田ロフト下にあったテアトル梅田が閉館して1年半。
テアトルグループなのに、テアトルと名の付く劇場が大阪にない状態が続いていましたが、
このたびシネ・リーブル梅田を改名してテアトル梅田の名を復活させるようです。
 
2012(平成24)年に76歳で亡くなった若松孝二監督。
型破りで多くの逸話を残す若松監督ですが、私は彼の作品をあんまり観ていないのです。
なんといっても『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』(2007)が強烈すぎたし、
その後に観た『キャタピラー』(2010)もえぐすぎて、なかなか食指が動かず。
 
だから、在りし日の若松監督を描いた『止められるか、俺たちを』(2018)もスルーしてしまいましたが、
彼が作った映画館の話と聞くと、観たくなるじゃあないですか。
 
監督は実際に若松プロで助監督を務めていた井上淳一。
彼自身と若松監督、そして彼らを取り巻く人々の姿に「青春」を見せてもらえます。
 
世の中にビデオが普及しはじめた1980年代。
劇場に足を運ぶ人は減る一方だというのに、若松孝二(井浦新)は名古屋に映画館を作ろうと思い立つ。
なぜ名古屋かというと、東京も大阪も高いから。
若松は、2階から上の店がノーパン喫茶やら覗き部屋やらの風俗ビルの1階を買う。
 
映画館を開業するにあたり、支配人にならないかと声をかけたのは、
ビデオカメラのセールスマンをしていた木全純治(東出昌大)。
木全は彼自身のお気に入り名画も上映することを条件に、支配人となることを承諾する。
 
アルバイトとして雇うことになったのは、映研に所属していた金本法子(芋生悠)ら。
定員50名のミニシアター“シネマスコーレ”は無事オープンしたものの、客は5人のことも。
その中には映画好きの高校生・井上淳一(杉田雷麟)も含まれていた。
 
赤字続きの経営に、このままではいかんと若松はピンク映画の上映を決める。
木全が必死の抵抗を見せ、1カ月のうち3週間はピンク、1週間は名画に落ち着くのだが……。
 
舞台が1980年代ですから、場所は違えどもいろいろと懐かしい。
街そのものの雰囲気だったり、バックに流れる音楽だったり。
『待つわ』が流れると一緒に歌っちゃいそうになりますね。あみんが歌っているのではなかったけれど。
 
木全役の東出昌大がとても良いです。
やっぱり声は好きじゃないわと改めて思ったものの(笑)、スキャンダル前の彼より断然いい。
コムアイ演じる彼の妻も、夫が少なからず安定した職業を辞めようとしているのに、
小言のひとつも言うことなく、積極的に夫を応援。できそうでできないこと。
 
女であり、才能がなく、在日である金本は、自身のことを「三重苦」と言い、
たいした苦労もなしに若松と出会って弟子になった井上への嫉妬を隠せません。
そんな彼女の心を見抜く木全がかける言葉には癒されます。
こういう「一見能天気」の役が東出昌大には合っているのかもしれませんね。
 
ふてくされている井上を叱りつつも息子の応援を惜しまない両親には田中要次有森也実
あの頃はよかった的な作品ではありますが、温かい人が多いからホッとさせられます。
 
こうなると、スルーした前作が気になって気になって。
Amazonプライムビデオで500円払って観ようかな。

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『ソウルメイト』

2024年03月12日 | 映画(さ行)
『ソウルメイト』(英題:Soulmate)
監督:ミン・ヨングン
出演:キム・ダミ,チョン・ソニ,ピョン・ウソク,チャン・ヘジン,パク・チュンソン,
   カン・マルグム,ナム・ユンス,ヒョン・ボンシク,キム・スヒョン,リュ・チアン他
 
仕事帰りにしんどいなぁと思いながらなんばパークスシネマまで車を飛ばしたのは、
前述の『キンキーブーツ』を観たかったということもあるのですが、最初に決めたのは本作でした。
レイトショーでこれを観たいがために前に『キンキーブーツ』を入れただけ。
 
『少年の君』(2019)のデレク・ツァン監督がそれよりも前に撮っていたのが『ソウルメイト/七月と安生』(2016)。
これがまた凄く良くて、私はこの監督に魂を射貫かれっぱなし。
その『ソウルメイト』の韓国リメイク版が上映されると数週間前に知り、これは絶対に観たいと思いました。
 
彼女はちっとも可愛いとは思えないのですが、映画の中では美人扱いされていますよね。
この顔は美人なんですか。誰か教えて。
でね、全然美人だとは私は思えないのですけれど、見ているうちになんか馴染むんです。
不思議な魅力のある女優だなぁと思います。
まぶたがバリバリ一重のところにも親近感が湧きますが(笑)。
 
韓国・済州島
コ・ハウンがかよっていた小学校にある日やってきた転校生アン・ミソ。
徹底的に無愛想なミソは、席に着く間もなく教室を飛び出してしまう。
ミソが放置した鞄を持ち帰ったハウンは、ミソを見つけて鞄を渡す。
そのままふたり一緒にハウンの家へ。ハウンの両親はミソをもてなす。
 
男運の悪い母親のせいで転校を繰り返していたミソが初めて打ち解けたのがハウン。
またどこかに引っ越すのだと母親が言い出した折、
済州島に残りたいというミソをハウン一家が引き取り、そのまま一緒に育つ。
 
物語はミソとハウンの出会いから別れまでが綴られていますが、
冒頭では鉛筆のみで描かれたミソの肖像画を前にして、
美術館の学芸員がこれは大賞を受賞した絵であることを告げ、
匿名で応募された絵のため、画家が誰なのかわからない、
モデルになっているあなたには誰が描いたかわかるのではないかと尋ねるシーンから始まります。
 
ハウンの恋人ジヌのことをミソも好きになってこじれたという見方もあるかと思いますが、
ミソはジヌのことなんてなんとも思っていなかったように感じます。
ミソが誰よりも守りたかったのはハウンだし、ハウンだってそうだった。
 
オリジナルでは匿名で書かれた小説を映画化したいという話だったところ、
このリメイク版では小説ではなくて絵に変更されています。
ミソの肖像画が画面いっぱいに映し出されるシーンでは、
『大河への道』(2022)で地図が広がるシーンを思い出して圧倒されました。
胸いっぱいに切なさが広がります。
 
平日の帰宅が午前0時近くなるのはきついのですけれど、良い映画を観ると心が洗われる。

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『ジャンヌ・デュ・バリー 国王最期の愛人』

2024年03月04日 | 映画(さ行)
『ジャンヌ・デュ・バリー 国王最期の愛人』(原題:Jeanne du Barry)
監督:マイウェン
出演:マイウェン,ジョニー・デップ,バンジャマン・ラヴェルネ,ピエール・リシャール,
   メルヴィル・プポー,パスカル・グレゴリー,ディエゴ・ルファー,ポーリン・ポールマン他
 
そろそろ上映終了になりそうで、見逃してももういいかと思っていましたが、
梅田までほかの映画を観に行くのも面倒になって109シネマズ箕面でこれを。
そうしたら、思っていたよりもずっと面白かった。観てよかった。
 
ジャンヌ・デュ・バリーといえば、『ベルサイユのばら』のイメージが強烈。
卑しい出自でありながらルイ15世を虜に。しかしマリー・アントワネットと激しく対立。
皇太子妃マリーに無視されつづけて苛立っていたジャンヌが、
ついに声をかけられて勝ち誇った顔をしていた漫画のシーンをよく覚えています。
徹底して嫌な女として描かれていた印象がありました。それが一転。
どれが本当の彼女の姿なのかはわからないとしても、見方ひとつでこんなに変わる。
 
貧しい家庭に私生児として生まれたジャンヌだったが、彼女の母親の雇い主が善人で、
将来ジャンヌが困らぬよう、知識欲を満たす十分な教育を授ける。
やがて雇い主の計らいで修道院に入ったジャンヌは読書をやめられない。
普通の本を読むだけならよかったが、エロティックな小説も読むようになったものだから、
ふしだらな女の烙印を押されて修道院から追い出されてしまう。
 
もとの屋敷に戻るも、美しく成長したジャンヌを見た雇い主の妻は、
自分の夫がジャンヌに誘惑されるかもしれないと嫉妬して追い出す。
どこへ行こうが男性との関係を怪しまれてしまうジャンヌは娼館へ。
そこで売れっ子の娼婦となり、デュ・バリー伯爵に見初められて彼の屋敷へ。
 
ルイ15世のもとへ女性を送り込んでいたリシュリュー公爵は、ジャンヌに白羽の矢を立て、
ジャンヌがルイ15世の目にとまるようさりげなく仕組んだところ、そのとおりになるのだが……。
 
10代のジャンヌを演じていた女優がめちゃめちゃ綺麗でしたが、彼女の名前がわからない。
この女優をずっと見ていたいぐらいだったのに、彼女の出番はすぐになくなり、
本作の監督でもあるマイウェンがそれ以降のジャンヌ役を務めます。
はっきり言って、彼女がそんなに美しいとは思えない。だいたいもう47歳ですし。
口元に品がないというのか、歯茎さがってるやん。ちょっとベアトリス・ダルを思い出す
 
ルイ15世役のジョニー・デップも化粧してつるつるの顔がなんか変だし、
キャストに乗れない作品だなぁなんて思いながら観ていたのですけれど。
 
しばらくするとマイウェンの顔にも慣れてきて、話が面白いおかげで容姿は気にならなくなる。
『ベルばら』であれほど嫌いだったジャンヌがこんなにもユーモア溢れる女性だったなんて。
 
古いしきたりに囚われているヴェルサイユ宮殿に彼女はさまざまな改革をもたらします。
国王に挨拶するときは目を合わせてはいけないとか、背中を向けてはいけないとか、なんやねんそれと、
微笑みを称えて目をしっかりと見つめながらルイ15世にお辞儀する。
デザインにストライプを取り入れたドレスを着たり、初の男装をした女性となったり。
顔をしかめて非難する人はもちろん多いけど、彼女を真似る人も出てくるわけで。
 
ルイ15世もそんなジャンヌのことが大好きだったようで、皆から守る。
いけずなことこのうえないルイ15世の娘たちがジャンヌをいじめ抜こうとするけれど、
王の側近ラ・ボルドは絶えず親身に優しく接してくれます。
ラ・ボルド役のバンジャマン・ラヴェルネの温かみある演技がとてもよかった。
 
ルイ15世の死後、追放されて、結局はルイ16世、マリー・アントワネットに次いで
ギロチン処刑されてしまったジャンヌ。
 
宮殿の風景なども併せて、この時代に想いを馳せることのできる良い作品でした。

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『その鼓動に耳をあてよ』

2024年03月02日 | 映画(さ行)
『その鼓動に耳をあてよ』
監督:足立拓朗
 
休日、北新地でのランチに向かう前に十三で下車、第七藝術劇場へ。
 
名古屋掖済会(えきさいかい)病院は、1948年に船乗り相手に名古屋港近くに開院。
当時から「断らない」を標榜していたそうです。
1978年に東海地方初の救命救急センターを設置して今日までずっと、「断らないER」。
本作は東海テレビのクルーがこの病院ありのままの姿をフィルムに収めたドキュメンタリー。
 
掖済会病院で受け入れる救急車は年間1万台とのこと。
保険に入っていない患者はごろごろいて、所持金もゼロ、会計を踏み倒されるのなんて日常茶飯事。
それでも断らずに目の前の命を救うことに専念しているスタッフたち。
 
専門医と救命医の間にはなんとなく格差があり、救命医は下に見られているそうです。
本作にメインで出演している蜂谷医師は、専門医か救命医どちらの道に進むかを考えたとき、
「何でも診られるのがいいな」と思って救命医を選んだとのこと。
そのときの「何でも」は、「どんな病気も、どんな年齢の人も」という意味の「何でも」だったけど、
いざ救命医となってみたら「社会的な問題の何でもも含んでいた」。
 
24時間365日、凄い仕事だと思いました。本当に、頭の下がる思い。
ただ、本作で映し出される掖済会病院の面々は皆明るい。
「チンピラ、クレーマー、最初からキレてる奴、いっぱいいる」と言って笑う。
体を診る以前に精神的に参ってしまうのではと思うし、
実際そうなってしまった医師もいるとは思うけれど、本作の彼らの表情には救われます。
 
「掖済会病院がなくなったらどうなると思いますか」という質問に対して、
「第二の掖済会が出てくるんじゃないですか」という答えを聞いて、
とにかく自分たちがなんとかしなきゃと思ってはいても、
自分たちがいなきゃ終わりだという傲慢さはないように感じました。
 
救命医がすべての命を救えればいいけど、専門医に引き継がなければどうしようもない時もある。
どんぐりが鼻の中に入って泣き叫ぶ少年。あまりにデカいどんぐりで、救命医が取り出すのは無理でした。
耳鼻科の専門医に治療してもらったあと、画面に映るどんぐり。
「餅は餅屋。どんぐりは耳鼻科」という蜂谷医師のコメントに笑った。

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