探偵部への挑戦状 放課後はミステリーとともに (実業之日本社文庫) | |
クリエーター情報なし | |
実業之日本社 |
・東川篤哉
本書は、恋ヶ窪にある鯉ヶ窪学園高等部を舞台にした「鯉ヶ窪学園探偵部シリーズ」の一冊であり、直接的には「放課後はミステリーとともに」の続編に当たる。
ヒロインは、二年生の霧ヶ峰涼。探偵部副部長、一人称は僕だが、ヒロインなのだから男でも男の娘でもない。ましてや決してエアコンなどではない。16歳の花も恥じらう乙女である。
美少女名探偵を自認するが、推理のほとんどはミステリマニアの探偵部顧問である生物教師に丸投げ。特技は、野球部の1年生を相手にした「鯉の滝登りノック」のようだ。
彼女が副部長を務めている探偵部は、教師も生徒も変な人が多いこの学園でも一際ユニークな存在だ。ミステリの研究などを行うのではなく、実際に探偵活動をするのだから。ただし、部室なしの流浪の部らしい。部員は、霧ヶ峰の他には3年の多摩川部長、八橋先輩、そして同級生の赤坂君。
探偵部があるくらいだから、この学園ではヘンな事件がよく起こる。だから、本が何冊も書けるくらい、探偵部の出番があるのだ。
今回霧ヶ峰が挑む事件は、大きくは、誰かが襲撃されて、その時に使われた武器を解き明かすものと、密室トリックの解明との2通りに分けられる。
前者の被害者は、「鯉ヶ窪学園の陸の王者」を自称する桁外れの天狗男・足立俊介。三年男子の中でも有数のモテ男、大島敦史。強面体育教師の柴田幸三。そして学園関係者ではないが、恋ヶ窪教会の神父さん。神父さんはともかく、後はあまり関わりあいになりたくない人ばかり(笑)。
後者は、探偵部へのミステリ研究会からの挑戦である密室殺人事件2件と映画部の部室のテレビが、実質密室状態の部室から持ち出され壊された事件。
この巻の最大の特徴は、霧ヶ峰涼にライバル出現というところか。ミステリ研究会部長の大金うるると、その双子の妹で出来がいいため早実に通っているというさらら。そう「ダイキン工業」のエアコン「うるるとさらら」である。つまりは霧ヶ峰v.s.うるる&さららのエアコン娘の対決が一つのテーマなのだ(なんのこっちゃ!?)。
コミカルでテンポよく話が進んでいくので、とても読みやすく面白い。ただし、著者が広島出身のため、「どれだけカープ好きなんや!?」と思うくらい関係する話題がそこかしこに出てくるのはちょっと・・・(野球まったく興味ないねん)。
それにしても、この学校、3月1日が卒業生の御礼参り解禁日らしい。いったいどんな学校や(笑)。
☆☆☆☆☆
※本記事は、「風竜胆の書評」に掲載したものです。