文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

書評:闘技場の戦姫 ~another story~ 下巻

2018-07-31 12:05:04 | 書評:その他
【フルカラー】闘技場の戦姫 ~another story~ 下巻 囚われの戦姫 (e-Color Comic)
クリエーター情報なし
TMEプラス

・わかつきひかる

 以前レビューしたわかつきひかるの「闘技場の戦姫」だが、ひょんなことからanother story があることを知った。下巻のみkindle用に購入してみたが、どうもビデオ版アニメの絵を集めてコミックス仕立てにしたもののようだ。ヒロインは、本編と同じ隣国で剣闘士奴隷にされている王女スカーレット。

 私のkindleでは色は分からないのだが、PCのkindleソフトで見てみると、なるほどフルカラーだ。ちなみに、以前紹介した「闘技場の戦姫」は、スカーレットの脱出に手を貸しているグスタフとのイチャイチャが目立ったが、こちらの方は、エロエロを追求した作りになっている。

 本編の方では、彼女たちは無事に関所を通過できているのだが、こちらではスカーレットは関所の役人に捕まり、いろいろとご奉仕させられるというのが基本的なストーリーである。

 娼婦に化けて関所を通過しようとしたスカーレットだが、結局関所の役人に王女だと見破られてしまう。下種びた関所役人の王女雌奴隷化計画により、スカーレットはいろいろと調教されてしまうのである。役人は、スカーレットを罪人として国に引き渡すより、雌奴隷にしてご奉仕させることにしたのだ。なにしろ王女さまを奴隷化してご奉仕させるチャンスというのは小役人にはそうあるものではない。

 そして媚薬漬けの奴隷調教。拘束されて、あんなことやこんなことも。全裸で吊り下げられて、鞭でビシバシやられることにも快感を感じるようになってしまう。誇り高く強かった戦姫も、体を拘束されていてはどうしようもない。いつしか自分の体の色々な部分で、小役人に恥ずかしいご奉仕をするだけのただの雌奴隷に。最後にはあることがきっかけで、自分を取り戻すのだが、それまで媚薬漬けにされてさんざん調教されていたお姫様のこと、後遺症とか依存症とかは大丈夫かとつい思ってしまうのだが。

 ちょっとドン引きな感じもしないではないのだが、高貴な王女が、いろいろ調教されるシーンに萌える人にとってはおススメかも? 18禁らしいから、そのつもりで。誰ですか、ハアハアしているのは(笑)。ただし、本編のようにハッピーなところはどこにもないということだけを付け加えておこう。
☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。


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書評:地理 2018年 07 月号

2018-07-29 10:44:58 | 書評:その他
地理 2018年 07 月号 [雑誌]
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古今書院


 すっかり嵌ってしまった月刊地理。今月号の特集は、「インド 変わる大都市圏」だ。インドというと多くの人は次のようなことを連想するのではないだろうか。仏教の古里。ヒンズー教とカースト制度、ヨガなど。インダス文明、ガンジス文明発祥の国。近年はIT大国として知られていることなどを思った人はかなり立派な人だ。インド出身の天才数学者ラマヌジャンを思い浮かべた人は稀有といってもいいだろう。かように私たちは、インドについて知っていることは少ないのである。

 そのインドは、近年経済成長によりその姿をどんどん変えている。本特集はインドの大都市圏が近年どのように変わっていくかについて述べたものだ。例えば、インドでは、近年の急激な経済成長に伴って、都市圏がどんどん拡がっている。例えば、首都のニューデリーを含む首都特別地域であるデリーは、最初は都市面積わずか43.3平方キロしかなかったものが、どんどん拡大して、現在の1483.0平方キロになった。

 消費市場も拡大しており、ショッピングモールなどの新しい流通システムも見られるようになった。eコマースも急拡大。かってはビジネス関係の講演会などに行くと、車の例がよく語られていた。日本は、インド向けのスペックで作らないから売れない。日本と同じように考えるとオーバースペックになってしまい高価なものになるからだと。しかし、今インドで一番車を販売しているのは日経企業のマルチ・スズキ社だ。時代はどんどん変わっている。

 「アーバンビレッジ」というものもなかなか興味深い。「アーバンビレッジ」というのは都市計画区域から除外された農村集落で上下水道や道路などが未整備ではあり、多くの地域問題はあるものの、大都市圏への安い住宅の供給地として重要な役目を果たしているという。

 ちょっと気にかかることがある。「デリー首都圏における市街地の形成と変化」では、同じ論文の中で、面積の単位に平方キロを使うだけでなく、エーカーを使ったり平方ヤードを使っているのはどうなのだろうか。普段からこの単位に馴染みがあれば、問題はないのだが、日本にはそれほど馴染みがないのではないだろうか(最も、ヤードはゴルファーなら馴染んでいるかも)また、インドの貨幣単位ルピーも分かりにくい。ここは注釈でも日本円で大体いくらくらいの記載をして欲しかった。(為替レートの変動があるので、正確にはできないが、〇月〇日で日付を限って換算すれば、不可能ではないと思う。)

 兵法の一つに遠交近攻というのものがある。近い国とは争って遠い国とは親交を結ぶというものだ。この時代に、戦争をするというのは論外だが、私たちはもっとインドのことを知ってもいいのではないだろうか。インドは対日感情もいいと聞く。アジアで国として最も親交を結ぶべきはインドだろうと思う。

 ところで、この号を読んでいる時に、たまたまテレビでインド版「巨人の星」を紹介していた。ただし野球ではなく、インドの国民的スポーツであるクリケットが対象だ。インドならではの変更点もいろいろとあるようだが、案外こんなところから相互理解が進んでいくのかもしれない。

☆☆☆☆




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「シミルボン」に私のインタビュー記事が掲載されました

2018-07-27 10:41:14 | その他


 書評専門サイトである「シミルボン」に昨日私のインタビュー記事が掲載されました。 ⇒ こちら


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書評:水戸黄門 天下の副編集長

2018-07-27 10:22:18 | 書評:小説(その他)
水戸黄門 天下の副編集長 (徳間時代小説文庫)
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徳間書店

・月村了衛

 天下の副将軍水戸の黄門さま(実際には江戸時代には副将軍という役職についた者はなかったようだが)が、「大日本史」の原稿が遅れている著者のもとに原稿取りに。ドラマのように世直し漫遊記ではなく、原稿取り漫遊記。つまりは一種のパロディもの。

 おなじみ助さん格さんも出てくるが、こちらは佐々介三郎、安積覚兵衛とモデルになった人物の実名。つまりは介さん覚さんというわけだが、どちらも学究肌の人物で、ドラマとは違って、腕の方はさっぱりという設定だ。

 腕が立つのは、ご老公一行と原稿取りの旅に同行する、かげろうお銀ならぬ鬼編集長である鬼机のお吟。その正体は、ご老公が一番信頼する甲賀流忍者だ。

 この机のお吟というのは、つまりは「デスク」ということなのだろう。なお、作品中においては「編集」とは言わずに一貫して「編修」という言葉になっている。デスクというのは必ずしもすべての会社で同じ扱いではないのだが、概ね編集長のようなものだろうか。

 風車の弥七らしきものは出てくるが、こちらは将軍からご老公一同を助けるように命じられた公儀隠密。その本名が公儀隠密小頭衆筆頭中谷弥一郎だったり(ドラマで風車の弥七を演じていたのは中谷一郎)とパロディ精神がこんなところにも発揮されている。ただし柘植の飛猿やうっかり八兵衛なんかは出てこない。

 ご老公一行に立ちふさがるのは、大日本史をパクリ、豊臣に有利な歴史をつくろうとしている真田の姫君真田月読と配下のくノ一4人。パクリやスランプなどの語源には民明書房ネタが使われている。ロミオとジュリエットのパロディなんかもある。果ては、月読と中谷が互いに魅かれあったりとなんだか思いもよらない展開に。

 ドラマのような予定調和的な活躍はないが、そこかしこで笑えるシーンが満載だ。黄門さまが自ら原稿取りに行くというアイディアがなんとも面白い。

☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。
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書評:明治日本の産業革命遺産 ラストサムライの挑戦! 技術立国ニッポンはここから始まった

2018-07-25 10:36:29 | 書評:学術・教養(人文・社会他)
明治日本の産業革命遺産 ラストサムライの挑戦! 技術立国ニッポンはここから始まった
クリエーター情報なし
集英社

・岡田晃

 2015年に、「明治日本の産業革命遺産」が世界遺産に登録されたが、これは全部で23資産で構成されている。このように複数の資産が同じテーマを持って一括で認定される方式を「シリアル・ノミネーション方式」と呼ぶようだ。本書によれば、「シリアル・ノミネーション方式」で登録された世界遺産は他にもあるようだが、東は岩手県釜石から西は鹿児島までという、地理的に広範囲で構成資産も内容的に別々に見えるものは、珍しいという。

 本書は、それらの構成資産についてそれに尽力した人の物語とともに一冊に纏めたものである。

 明治維新の勝ち組は、俗に薩長土肥というが、直接描かれているのは、薩長肥で、それぞれ章を割いて解説している。土佐が直接出てこないのは、四国にこの産業革命遺産として指定されたものがないからだろう。しかし、間接的には、三菱の創始者である岩崎弥太郎を通じて語られている。岩崎弥太郎は、元々土佐の郷士が郷士株を手放して没落した地下浪人だった。ただし、彼が関連した施設は長崎に多い。

 日本の近代化のため尽くしたのはなにも維新の勝ち組だけではない。幕臣である伊豆代官江川英龍やイギリス人でありながら長州ファイブや薩摩スチューデントなどを支援したグラバーの貢献を忘れてはならない。

 西洋列強の力がちらつく中、幕末から明治にかけては多くの人材が国を守るために活躍したのだ。表紙にあるようにまさにラストサムライの挑戦。近代日本の成立には、このように多くの人々が関わっているということが本書を読めばよく分かる。当時は、国の力がなければ、他の多くのアジア諸国のように欧米の植民地にされていたような時代だ。彼らの働きがあったからこそ、日本は欧米の植民地になることなく明治の世を迎えられたのだろう。

☆☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。


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書評:からかい上手の(元)高木さん 1

2018-07-23 09:36:48 | 書評:その他
からかい上手の(元)高木さん 1 (1) (ゲッサン少年サンデーコミックス)
クリエーター情報なし
小学館

・稲葉光史、(原作)山本崇一朗

 以前深夜アニメで放映されていた「からかい上手の高木さん」のその後を描いた作品の1巻目。続編と言えばいいのか、スピンオフと言えばいいのか。本編の「からかい上手の高木さん」というのは、美少女の高木さんが何かにつけ隣の席の西片君をからかい、西片君もそれに対抗意識を持つというラブコメだ。

 案の定というか予定調和というか、この作品では、高木さんは西片君と結婚して二人の間にはちーちゃんというとっても可愛らしい一人娘もいる。タイトルの(元)高木さんというのは、高木さんは西片君と結婚して苗字が西片に変わっているためだ。ちなみに、西片君は中学校の体育教師をやっているようである。

 西片くんが、(元)高木さんにからかわれているのは相変わらず。おまけに娘にまでからかわれ、腕立て伏せをする回数がどんどん増えているような。(西片君は中学生のころから、高木さんにからかわれると腕立て伏せをしていた) でも「好きだからからかう」と言われてまんざらでもないような。雰囲気はとってもいい感じ。読んでいてほのぼのしてくる。

☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。


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書評:闘技場の戦姫

2018-07-21 09:39:02 | 書評:小説(その他)
闘技場の戦姫
クリエーター情報なし
フランス書院

・わかつきひかる、(イラスト)HIMA
・美少女文庫

 ヒロインのスカーレット姫はバスティア王国の第一王女である。5年前に長く紛争が続いていた隣国ベルヌープに、和平のために王族交換でやってきたのだ。ところが自分と交換でバスティアに行っていたベルヌープのクロード王子が、鹿狩りのさなかに熊に襲われて死んだため、大衆迎合政治を行っていたベルヌープは、民衆に迎合して、姫を剣闘士奴隷に落としてしまったのである。ベルヌープの愚かな民衆は、姫が闘技場で無残に殺される場面を待ち望んでいるのだ。

 戦いの女神エリスの加護を持つ戦姫でもあるスカーレットは、闘技場で次々に敵を倒していく。しかしそれはベルヌープの民の望むところではない。このままだと、次の試合では素手で人喰い熊と闘い、万が一熊に勝っても、その次には象と闘うことになるという。

 スカーレットの美しさに魅せられたファクトルのグスタフは、彼女から自国へ送り届けることを依頼される。ファクトルとは、依頼されて色々なものを送り届けるのを仕事をしている者たちだ。物品から奴隷、娼婦まで依頼されればなんでも運ぶ。

 「着手金はわ♡た♡し♡」ということで、そこは美少女文庫。もちろん、ご期待の展開はある。実はちょっとスカーレットはフライング気味なところがあり、グスタフは着手金を取る気はなかったのだが、着手金をしっかりと前払いしてもらった後、娼婦に扮したスカーレットを祖国まで送り届けることになる。

 スカーレットの祖国に向かう様子は、まるで愛の逃避行。ベルヌープからの追手が迫る中を、二人は命がけでバスティアを目指す。その途中でやることはやっており、二人は次第に愛し合うようになる。つまり体の関係から入る心の関係というわけだ。しかしスカーレットは一国の姫。グスタフは祖国を持たない平民のファクトル。果たして身分違いの恋はどうなるのか。

 意外にスカーレットの両親(王と王妃)がいい人で、グスタフは命がけで姫を脱出させた英雄として扱われ、物語は結局ハッピーエンドになるのだが、二人が愛しあったのは、心理学でいえば、吊り橋効果じゃないかと思うんだけど。男女が共通の危険な体験をした場合に互いの好感度が増すというあれだ。この作品は、一種のボーイミーツガールものかな。いやもうグスタフの方は、ボーイ(スカーレット17歳、グスタフ22歳という設定)というような年齢じゃないけど・・・。

☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。


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書評:なんでここに先生が!? 4

2018-07-19 09:54:09 | 書評:その他
なんでここに先生が!?(4) (ヤンマガKCスペシャル)
クリエーター情報なし
講談社

・蘇募 ロウ

 今回成立するのは、4組目のバカップル。保健の先生で、生徒たちからは冷たい先生だと思われている絶対零度の立花と生徒会会長を引退した卒業間近の田中。

 舞台は、3巻目と同じ川沼東高。ただし、田中は、1巻目と2巻目の主人公で川沼西高に通う佐藤、鈴木と同じ中学出身という設定だ。

 立花先生は、巨乳で美人だが、無口で無表情。しかし表情が乏しいだけで、実際は生徒と仲良くしたいと思っている。そのためには感情豊かな田中を観察すればいいということで、なにかにつけ田中に接近してくる。

 一見氷雪系美女なのだか、実は可愛らしくポンコツ系の立花のことを次第に好きになる田中君。一方立花の方も田中のことをどんどん意識してくるのだ。

 一口で言えば、女教師と生徒の禁断の愛ということなのだが、そんな淫靡さはどこにもない。いわゆるラッキースケベなシーンはそこかしこにあるのだが、とにかく笑えることばかり。

 しかし、ラッキースケベで胸を揉んでしまうくらいならともかく、裸を見たり、色々なところをまさぐったり、指を大事なところに突っ込んだり・・・。これ完全にラッキースケベを超えていると思うのだが・・・。

 これが逆ならそう珍しい話ではない。私が通っていた田舎の高校は1学年3クラスしかない小さな学校だったが、元教え子と結婚したと噂の男性教師が3人くらいいたような記憶が・・・。だから女性教師と(元)教え子という組み合わせもそう不思議なことではないと思う。

 でも、こんな若くて可愛い女性教師が揃っている学校なんてそんなにないと思うのだが。

 巻末には、おまけ漫画があり、4組のカップルが、卒業旅行。どのカップルも、女性教師と(元)生徒の組み合わせだ。予約のトラブルで、立花と田中のカップルだけ別のホテルに泊まることに。そのホテルがまさかのラブホ。そこで立花は、私も経験ないけど保健の先生だから少しは教えられると、田中にまさかの保健の個人授業。いろいろ失敗しながらも、二人は他のカップルより一足先に大人の階段を上ったようだ。

 まだまだこのシリーズ続いているようだから、この後どう展開していくのかとっても楽しみだ。絵柄は書影の通りとっても綺麗。いま一番気に入っているものの一つだ。

☆☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。
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書評:妖談へらへら月―耳袋秘帖

2018-07-17 09:52:18 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)
妖談へらへら月―耳袋秘帖 (文春文庫)
クリエーター情報なし
文藝春秋

・風野真知雄

 元祖入れ墨奉行の根岸肥前守鎮衛が活躍する「耳袋秘帖」シリーズのうちの一冊。「耳袋秘帖」シリーズは、大きく分けて殺人事件シリーズと妖談シリーズに分けらられるが、この作品は、妖談シリーズの5巻目となる。描かれるのは、さんじゅあんという謎の人物との戦い。なお、妖談シリーズは、7巻目の「妖談うつろ舟」で完結している。さんじゅあんは、新興宗教の教祖のような存在で、その影響は一般庶民だけでなく幕閣にも及んでおり、殺人集団である闇の者とも関係があるようだ。

 江戸では、「神隠し」が頻発していた。例えば、印籠職人卯之吉の一家4人が忽然と姿を消している。手がかりは、子供が話していたという「へらへら月」。いったい「へらへら月」とは何なのか。

 もっとも、作中に出てくる神隠しは、みなが同じ原因という訳ではない。神隠しの裏には、「神隠しと日本人」(小松和彦:角川書店)で指摘されているように、色々な背景が隠されているのだ。本作でも、本筋のさんじゅあんに関係するものばかりでなく、その他のケースも示される。

 作中でちょっと気になった人物が一人いた。生駒左近という元旗本のこつじき。無外流の剣の達人で、旗本きっての奇人と言われ、いったん出家したが、堕落した既存の仏教に愛想をつかし、今は仏の道を求めて、桶の中に済んでいるという。巷では「桶のこつじき」と呼ばれている。なんだか、ギリシアで樽の中に住んでいたという哲人ディオゲネスを連想するではないか。彼に人殺しをさせたいと怪しい男が近づいてくる。こちらもどのような展開を見せるのか読んでみてのお楽しみ。

☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。

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書評:誰でもすぐ使える雑談術 ―初めのひとことがうまく言えるコツ

2018-07-15 09:32:33 | 書評:ビジネス
誰でもすぐ使える雑談術 ―初めのひとことがうまく言えるコツ
クリエーター情報なし
さくら舎

・吉田幸弘

 実は私は雑談というのが苦手である。元々口数は少ないが、何か話す目的があればともかく、あまり世間話というものはしない方だ。別にそれで困ったことはなかったが、職種によっては、雑談を行うためのテクニックは身に着けておいた方がいいだろう。例えば営業職などは、ある程度の雑談ができた方がいいと思う。

 本書は、「雑談は元々のセンスではなく、トレーニングと思考次第でうまくなれる」(p3)ということについて詳細に解説したものだ。雑談の糸口は色々ある。本書の教えるところによれば、例えば相手と交換する名刺でも雑談のネタになるのだ。その他雑談のための注意事項がいっぱい詰まっている。たかが雑談と軽んじてはいけない。雑談の内容ひとつで相手の受けとり方はかなり違ってくるのである。

 ただ、本書を読んで得られるのは、様々なヒントや注意事項である。雑談名人になろうと思えば、色々な場面で実践あるのみだろうと思う。一冊本を読んだからといって、すぐにその道の名人になれるというような虫のいい話はどこにももころがってないのだ。

 ただ、雑談も時と場合による。これは私の経験したことだが、郵便局の窓口で、待っている人がいるにも関わらず、延々と雑談のような話をしている。これなど、他の人の迷惑にしかならない。このような場合は、必要なことをさっさと済ませるべきだろう。

☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。

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