文理両道

理系文系両面で90以上の資格試験に合格。
専門は電気工学だが、経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。

書評:・アイヌ学入門

2016-06-26 07:58:15 | 書評:学術・教養(人文・社会他)
アイヌ学入門 (講談社現代新書)
クリエーター情報なし
講談社

・瀬川拓郎

 本書は、アイヌの歴史、文化を通じて、彼らがどのような人々であるかを知ってもらうために書かれたものだ。

 アイヌとは、ユーカラを語り、自然と共生してきた人々だというイメージを持っている人もいるかもしれない。そうだとすれば、本書を読んで、そのイメージは大きく変わることだろう。かって彼らは、日本と大陸をむすぶ中継貿易者であり、異民族や中国王朝と戦ってきた北東アジアのバイキングだったのだ。

 世界のどの民族とも異なった特徴を持つというアイヌの人々。彼らは縄文人の血を色濃く留めているという。かってアイヌ白人説というものがあった。アイヌの人々はモンゴロイドではなく、コーカソイドだというのだ。しかし、1960年代に行われた調査で、コーカソイドという積極的な証拠が見つからなかったため、結局はモンゴロイドであると結論された。しかし、モンゴロイドとも異なる特徴を多く持っているという。

 アイヌの方で直接知っている方はいないし、たまにテレビなどで見るアイヌの方も、いわゆる和人とどのような違いがあるのかはよく分からないのだが、本書に載っているアイヌ女性の写真は、スペイン辺りの人だと言われても、それほど違和感はないだろう。もっとも、和人の中にも、顔の濃い人は見られるので、単に個体差だということなのかもしれないのだが。

 アイヌと和人は古くからの交流があったようだ。マタギの言葉にはアイヌ語の影響がみられるし、アイヌ文化にも、古代や中世の日本文化の影響が見られるようだ。例えば、アイヌの呪術には、陰陽道や修験道の影響を受けていると思われるし、アイヌ社会には、蘇民将来と似た伝説が伝わっている。茅の輪くぐりと似た草の輪くぐりのという呪術も存在するのである。

 もちろんこれ一冊で、豊かなアイヌ文化のすべてがわかるわけではないのだが、日本には異なる文化・風習を担ってきた人々が住んでいる。日本は決して単一文化からなる国ではないのだということを理解するための最初の一冊にはなるだろう。また、日本とは何かを考えるうえでも、多くの示唆を与えてくれるのではないだろうか。

☆☆☆☆

※本記事は、書評専門の拙ブログ「風竜胆の書評」に掲載したものです。
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書評:ぶらり東京・仏寺めぐり

2016-06-24 09:33:03 | 書評:学術・教養(人文・社会他)
ぶらり東京・仏寺めぐり
クリエーター情報なし
幻冬舎

・長田幸康

 本書は、気負わずふらりと立ち寄れる寺をめぐる入門書だという。すなわち東京の寺巡りのガイドブックである。収録されているのは、17区にわたる39寺院。

 各寺の歴史、寺に関するエピソード、本尊、文化財やアクセス、見所、ご利益などが簡単に解説されているので、寺に興味がある人にとっては便利な本だろう。

 ただ、2点ばかり注文したい。私は、「中川翔子のマニアまにある」というテレビ番組が好きでよく見ている。それによると、最近は「御朱印女子」という人たちもいるらしい。私自身も古寺に行った際には朱印をもらうことが多いが、朱印のもらえる寺についてはそれに関する情報があったほうが、この手のガイドブックとしてはうれしい。

 もう一つ、寺の場合は、「○○宗大本山」といったように宗派と寺格はセットとなる情報である。宗派は書かれているが寺格がある特別な寺の場合は、それも書いた方が親切だろう。例えば浅草寺なら聖観音宗総本山浅草寺、寛永寺なら天台宗別格大本山寛永寺といった具合だ。

 私も東京には何度も行き、本書に収録されている寺のいくつかは訪れた記憶がある。しかし、東京には、まだまだ訪れてみたい寺が沢山あることが分かった。もしまた東京に行く機会があれば、本書片手に東京の寺を廻ってみたいものだ。

 京都だと、ほとんどの寺で拝観料という名の入場料を徴収されるが(おまけに結構高い)、本書によれば、東京ではほとんど無料だということだ。さすがに江戸っ子は気っ風がいいと感心したというのは余談(笑)。

☆☆☆☆

※本記事は、書評専門の拙ブログ「風竜胆の書評」に掲載したものです。
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書評:一瞬で心をつかむ文章術

2016-06-22 08:37:55 | 書評:ビジネス
一瞬で心をつかむ文章術 (アスカビジネス)
クリエーター情報なし
明日香出版社

・石田章洋

 人を引き付ける文章を素早く書くためにはどうしたら良いのだろう。

 本書はそのような悩みを持っている人の疑問に答えようとするものだ。ビジネスにおいて文章を書かなければならない人、趣味でブログなどを書いている人。あなたは自分の書いた文章が人の心を掴むようなものだという自信があるのだろうか。

 もし自信があるというのなら本書を読む必要はないだろう。しかし、一人でも多くの人に自分の書いた文章を喜んでもらいたいと考えていれば、一度目を通しておいても損はないと思う。

 本書で解説されているのは、人に読んでもらうための文章をどのように書けばよいのかということに対する数々の留意点だ。

 例えば、文章を素早く書くためには、いきなり書き始めるのではなく、構成や内容などをしっかり考えてから書くのがコツだということや、文章を書く上では「テーマ」、「ターゲット」、「目的」が3種の神器といったようなことである。

 後者について若干補足すれば、まず「テーマ」としては、人の心を掴みやすい訴求ポイントがあるということで、アメリカの著名なコピーライターであるジョン・ケープルズの示した12種類のポイントが紹介されている。

 「ターゲット」については、どのような人に読んでほしいかを明確にするということだ。文章には読者がいる。誰に読ませるかによって、書き方も変わってくる。つまりは人に読ませる文章を書くためには、一種のマーケティング戦略も必要だということなのだ。また何のために書くのか、目的を明確にしておかないと一本筋が通ったような文章は書けない。

 また、文章は「起承転結」だと言われることが多い。しかし本書では、論文などで使われる「序論」→「本論」→「結論」という流れの方を勧めている。「起承転結」型は混乱を招きやすく、論文スタイルの方が広範囲に応用が効くというのだ。確かに、「起承転結」型だと「転」をうまく行うにはかなりのセンスが必要である。下手に「転」をしてしまうと文章の論旨がよく分からなくなってしまうだろう。

 この他、文章を書くための材料の集め方、推敲することの大切さなどについてもよく分かる。

 本書に書かれていることを実践していけば、あなたの文章力は知らない間に格段に向上しているに違いない。頭の中で考えていてばかりではまったく効果はない。大切なのは、本書にもある通り、書くことを「習慣化」させるということなのだ。

☆☆☆☆

※本記事は、書評専門の拙ブログ「風竜胆の書評」に掲載したものです。


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書評:20億の針【新訳版】

2016-06-20 10:22:26 | 小説(SF/ファンタジー)
20億の針【新訳版】 (創元SF文庫)
クリエーター情報なし
東京創元社

・ハル・クレメント、(訳)鍛冶靖子

 宇宙船から犯罪者(ホシ)を追ってやって来た捜査官(捕り手)。彼らは他の生物に入り込んで生きるゼリー上の不定形生物だった。彼らの乗った宇宙船が南太平洋に墜落。捕り手は、ロバート(ボブ)という15歳の少年を宿主に、ホシを追う。ホシも捕り手と同様に、人間になかに潜りこんでいるはず。果たしてホシは誰の中に潜んでいるのか。

 本書の大きな特徴は、宇宙人が、地球での活動のために、地球人と共生をするというところだ。円滑な移動や食物や酸素の供給を宿主が行う代わりに、宇宙人の方は、宿主を怪我や病気から出来るだけ守るのである。宇宙人と地球人の共生を描いた本書の初刊は1950年。その後の共生生命SFに大きな影響を与えたという。本書の帯には、「寄生獣」や「ヒドゥン」が例として挙げられているが、考えてみれば「ウルトラマン」だってそうだし、このほかにも思い当たる作品は多いのではないだろうか。

 ところで、タイトルの「20億の針」についてはどうかなと思う。この20億というのは、作品発表当時の世界の人口である。すなわち、誰の中に入り込んでいるかわからないので、操作の対象が最大20億人もいるというわけだ。しかし、世界の人口が70億人を超えた現代社会で、この数字がピンとくる人はどれだけいるのだろう。

 またこのタイトルは原題に照らすと正確ではない。英語には、「To look for a needle in a haystack」という言い回しがある。乾草の山から一本の針を探すということで、不可能なことの例えだ。そして 原題は「NEEDLE」。つまりは干し草の中に混じっている針のことだ。だから、20億あるのは、針の方ではなく干し草の方だということになる。「NEEDLE」は単数形なので、本来なら「一本の針」というのが正確なタイトルだろう。

 巻末の牧眞司氏による解説ではこのタイトルを「日本語の響きを重視」したものとして誉めちぎっているが、多くの同質のものに混じっているたったひとつの異質なものを探そうというのが本書のキモなのだから、やはり針が20億本あってはおかしい。語呂がよければ、タイトルが内容を表していなくとも良いのだろうかという疑問がわく。

 なお、この20億というのは最大の見積もりということで、実際にボブと捕り手が捜査しているのはボブの周囲の人たちだけである。消去法でリストにあげられた人物たちがみなシロだということになったとき、捕り手は意外な人物にたどり着く。

 何しろ捕り手が同族を見つけ出す術は、宇宙船が墜落した時に失われてしまったというのだ。ホシを退治する手段もない。そのような中で、ボブと捕り手がいかにホシにたどり着きこれを退治するのかというところが、本書の見どころの一つである。

 そしてもう一つの見どころは、生物学的な描写にリアリティがあるというところだ。例えば、捕り手が、宿主の体に入り込んで身体中に触手を伸ばしていくようなところなどは生物学に関する知識がなければ書けないのではないだろうか。著者は、理学の修士号を持っているというから、この描写のリアルさもうなずける。

 このほか、バイオ燃料のことが描かれていたり、人はモラルハザードに陥りやすいということが書かれたりしており、なかなか興味深い作品である。

(参考)
 ここでいう「モラルハザード」とは、よく間違って使われる「倫理観の欠如」といった意味ではなく、本来の使い方である、どうせ宇宙人が怪我や病気に対応してくれるのだからと、つい危険なことをやってしまうということです。


☆☆☆☆

※本記事は、書評専門の拙ブログ「風竜胆の書評」に掲載したものです。

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書評:流されて八丈島~おたくマンガ家のテンパり島生活~

2016-06-18 09:38:25 | 書評:その他
流されて八丈島~おたくマンガ家のテンパり島生活~ (ぶんか社コミックス)
クリエーター情報なし
ぶんか社

・たかまつやよい

 ひょんなことから八丈島に移住した漫画家たかまつやよい(二人組漫画家なので、移住したのはそのうちのやよいさんの方)が、驚きの八丈島ライフを愉快な漫画で綴ったシリーズの第二弾。

 愉快な八丈島ネタが満載だが、特に笑えるのは「くさや」ネタ。あの強烈な臭いの魚の干物のことだ。単行本販促のため島を訪れた担当編集者が、この「くさや」を初めて食べた時に思ったのが、なんと「うんこ」(笑)。でも、ほぐしてマヨネーズをつけて食べると、とても美味しいらしい。でも、「うんこ」の臭いはちょっと・・・(笑)。

 「あぜ道」かと思うようなワイルドな自動車練習場。 転勤で島を出ていくとき、「ご赦免」ということ。島の人が大好きな島焼酎の歴史と製法。八丈島名産の黄八丈についての蘊蓄等々。読んでいると、笑いながらも、八丈島のことがよく分かったような気になってくる。 

 やよいさんのプロ根性にも脱帽だ。なんと、自分がノロウィルスに感染して、ひどい目にあったことまで漫画のネタにしてしまうのだから。ちなみに、八丈島には総合病院がちゃんとあるそうなのでご安心を。

 のんびりとしたとってもいい場所のようだが、誰にでも合うというわけではないようだ。夫の転勤に付いてきたが、島に馴染めず帰ってしまう奥さまもいるらしい。しかし、うまく楽しめる人には、こんな楽しい場所は無いという。
 
 ゆるゆるとした雰囲気の中にも八丈島の魅力がよく描かれており、島暮らしに興味がある人は、ぜひ読んでみることを勧めたい。

☆☆☆☆

※本記事は、書評専門の拙ブログ「風竜胆の書評」に掲載したものです。




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