文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

リーダーの一流、二流、三流

2017-04-26 09:07:06 | 書評:ビジネス
リーダーの一流、二流、三流
クリエーター情報なし
明日香出版社

・吉田幸弘

 ビジネスの世界で求められるリーダーとなるために必要なものは何だろう。ここで、企業などに勤めている人は、自分の周りを見渡してみると良い。若手の方なら、上司となる人は沢山いるだろうが、リーダーと呼べるような人は何人いるのか。

 もちろん、リーダーと呼ばれるためには、それなりの役職が伴っていなくてはならない。本書でいう「リーダー」とはどうも課長クラスを想定しているようだ。明記はされてないものの、本書の中で、リーダーが相談するのが部長だったり、部下からの「課長も私が忙しいのはわかりますよね」(p109)といった発言が書かれていたりすることから読み取れるだろう。

しかし、単にその役職についているだけでは十分ではないのだ。できるリーダーになるためにはどのような行動をすべきか。本書にはそのためのヒントが多く詰まっているだろう。

 ただ、著者が想定しているのは主に営業畑だと思われが、社内の体制や役職などは、会社や部門によって千差万別であるため、必ずしも自分の置かれている立場には当てはまらない場合もあると思う。

 例えば本書中に、部長と相談してフレックスタイム制を設けたような記載がある(p31)。最初からそのような制度が設けられているのなら良いが、これをゼロから作ろうとすると、労使対応なども必要となり、普通の会社では、とても部長程度の権限ではできない。(もっとも制度として変形労働時間制度や勤務時間のシフト制のようなものが存在していれば、課長権限くらいで勤務時間は変えられると思うが。)そういったようなところは、自分の頭で考えてうまくアレンジしていく必要があるだろう。

 私も、課長やマネージャーという職位を長い間経験してきたが、果たしてリーダーとして何流だったのだろうか(笑)。

☆☆☆☆

※初出は「風竜胆の書評」です。

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クララ殺し

2017-04-24 19:39:54 | 書評:小説(SF/ファンタジー)
クララ殺し (創元クライム・クラブ)
クリエーター情報なし
東京創元社

・小林泰三

 実家近くの図書館に置いてあった本書。同じ作者による「アリス殺し」の続編に当たる作品だ。この作品の舞台はホフマン宇宙という並行世界。不思議の国の住民だった蜥蜴のビルは、世界の障壁を越えてこの世界にやってきている。

 この世界の住民には、地球に対応するアーヴァタールと呼ばれる対応する人間が存在することがある。夢を通して記憶を共有し、ホフマン宇宙の住人が死ねば、対応する地球の人間も死んでしまう。逆に地球の人間が死んだ場合は、その死はリセットされ、なかったことになってしまう。

 ビルはホフマン宇宙でクララという少女と上級裁判所の判事だというドロッセルマイヤーという男と出会う。一方ビルのアーヴァタールである大学院生の井森健は、彼の通う大学で露店くららという美少女とその義理の叔父だという大学教授のドロッセルマイヤーと出会った。ところがクララとくららに脅迫状が届いて、くららが死んでしまう。そして、ホフマン宇宙のクララも行方不明に。

 いったいくららを殺した犯人は誰かということを追及していくというのがこの作品の本筋なのだが、この作品は基本的には並行世界を扱ったSFだろう。だから、最後に明かされるトリックは、普通のミステリーとはかなり異なり、いかにもSFチックである。いうなればSFミステリーとでもいうところか。かなり込み入った種明かしとなるが、SFチックであるというところを了解していれば、普通のミステリーとしても楽しめるだろう。

 最後を締めくくる「合言葉」の場面、何のことかよく分からなかったのだが、調べてみると「アリス殺し」の方に出てくるようだ。機会があればこちらも読んでみたい。

 この作品のモチーフとなっているのは19世紀初頭のドイツの小説家であるエルンスト・テオドール・アマデウス・ホフマンのいくつかの小説だという。私は読んだことはないが、興味のある方はこれらも読んでみるのもいいかもしれない。

☆☆☆☆

※初出は「風竜胆の書評」です。

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広島大学は世界トップ100に入れるのか

2017-04-22 17:44:48 | 書評:学術・教養(人文・社会他)
広島大学は世界トップ100に入れるのか (PHP新書)
クリエーター情報なし
PHP研究所

・山下柚実

 よく世界大学ランキングなるものが話題になる。これは、イギリスのタイムズ・ハイアー・エデュケーション(Times Higher Education:THE)という雑誌が毎年秋に発表しているもので、本書に収められている2015のデータによると、東大43位、京大が88位だそうだ。これが、2016-2017のデータでは、東大39位、京大91位になっている。

 もっともこのランキングに問題がないわけではないようだ。本書によれば、「評判」という要素がランキングに大きく影響するため、普段から付き合いのある欧米や英語圏の大学が有利になるというのである。

 しかし、我が国における高校や大学の偏差値と同じで、くだらないと思っても、なかなか無視できない存在になっているようだ。安倍政権は、2013年に打ち出した「日本再興戦略」において、今後10年間で、我が国の大学を世界大学トップ100以内に10校以上入れるという目標を掲げた。

 国は、その可能性のある13大学について「トップ型」大学としているが、旧帝大や首都圏の大学を除けば、地方大学として広島大学が唯一その中に入っている。

 昔私が通っていた田舎高校では、ちょっと勉強のできる子は広島大学を目指していた。考えてみれば、中四国地方には旧帝大がないので、その分広島大学に期待が集まったのではないかと思う。

 ただ、昔広島市内にあった頃と比べれば、東広島市に移転した今の広島大学はなんとも不便だ。しかし、本書によれば色々と魅力的な研究も行われているようである。もし進路に迷っている受験生がいれば、一読しておいても損はないだろう。でも、私がもう一度受験生に戻ったら、やっぱり自分の出身大を受けるだろうなあ・・・。

☆☆☆☆

※初出は「風竜胆の書評」です。


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ぼくが死んだ日

2017-04-20 10:07:38 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)
ぼくが死んだ日 (創元推理文庫)
クリエーター情報なし
東京創元社

・キャンデス・フレミング、(訳)三辺 律子

 16歳のマイクは、真夜中に自宅に向かって車を走らせていた。何しろ12時までに帰らないと、ママゴンのこわーいお仕置きが待っているのだ。その途中ずぶぬれで歩いていたキャロルアンという少女を拾い、家に送り届けることになったのだが、彼女は56年前に湖でおぼれ死んでいるというのだ。

 マイクは、キャロルアンが置いていったサドルシューズを、彼女が眠っている若者専用の墓地に持っていくが、そこで少年少女の幽霊たちから彼ら、彼女らの死に関する奇妙な話を聞くことになる。

 その死に方はどれも普通のものではなかった。女教師から呪文により、彼女の死を移し替えられたり、廃墟となった病院でガーゴイルの石像に襲われたり、コミック誌の広告に載っていた即席ペットに殺されたりと、そんな不思議な話ばかりが続くのである。

 幽霊たちは、毎年キャロルアンが連れてきた人間に順番に自分たちの死の物語を語ってきたという。別にその人間に祟ろうという訳ではない。幽霊たちはただ自分たちの話を誰かに聞いて欲しかったのだ。
 
 いったい幽霊たちは、自分たちの死を語ることにより、何を訴えかけたかったのだろうか。彼ら、彼女たちの死の原因は、どれも想像もつかないようなものばかりだ。

<おれたちはみんな、ある意味でモンスターに出くわしたんだ。邪悪でおそろしくて説明のつかない怪物に>(p276 幽霊の一人スコットの言葉)

そんな不思議な話は、生きている人間の口から聞かされても誰も信じないだろう。それが幽霊というあちら側の存在から聞かされるとなると、話の信ぴょう性が上がるのではないだろうか。幽霊たちは、世の中にはこんな危険もあると、誰かに警告しなくてはいられなかったのだろう。また、自分たちの死を語ることにより、忘れられていく自分たちのことを誰かの記憶に留めたいということもあるのかもしれない。

 実はマイクは、幽霊たちに祟られるどころか、逆に命を救われていたのだ。幽霊たちと別れるとき、マイクの心には何らかの余韻が残ったようだ。

☆☆☆☆

※初出は「本が好き!」です。
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ふるさと萩・長門・美祢―生活感あふれる写真でつづる決定版写真集! 保存版

2017-04-18 08:04:19 | 書評:学術・教養(人文・社会他)
ふるさと萩・長門・美祢―生活感あふれる写真でつづる決定版写真集! 保存版
クリエーター情報なし
郷土出版社

・森本文規


 たまたま実家の近くにある図書館で見つけた本書。戦前から戦後にかけての萩・長門・美祢地方の様子を多くの写真で記録したものだ。

 ただ、カラーは最初の8ページのみで比較的新しいものを写している。ほとんどの写真はモノクロであるが、紹介されているのは、この地方の風俗、風景、行われたイベント、郷土芸能、学校の様子など。今は失われてしまったようなものもあり、なんとも懐かしい思いがする。

 昭和2年ごろには、秋芳洞の中に渡し舟を使って渡る場所があったとか、昭和24年には大三島にイルカの大群が迷い込んだことがあったとか初めて知るようなことも多い。

 提灯ブルマの女児や丸坊主の男児が写った写真があったり、ボンネットバスが走っている写真があったりするのも時代を感じさせ、読む者をノスタルジックな気持ちにさせるだろう。 

 余談だが、ネットで調べてみると、本書を出版した会社は長野県にあったが、2016年2月末で閉業しているようだ。このような本はなかなか売れなくなっているのだろうが、少し寂しい気がする。

☆☆☆☆☆

※初出は「風竜胆の書評」です。

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