文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

旅日記03 昭和14年

2020-08-30 15:19:49 | 書評:その他

 

 放浪の俳人、種田山頭火の3つ目の旅日記だ。昭和14年の春に、広島から近畿、中部を旅したときの記録である。

 山頭火はこの年に松山に移り、翌年には鬼籍に入っている。四国に渡ったのがこの年の9月、松山に一草庵を結んだのが12月で、亡くなったのが次の年の10月だから、この日記の書かれたのはまだ彼が湯田温泉の風来居にいたころとなる。

 彼には生活能力はまったくといっていいほどなかったのだが、人には好かれたのだろう。日記を読むと、彼が旅の先々で知り合いに歓迎され、割と気楽に旅をしていたことが読み取れる。中には初対面の人もいた。この点山頭火と並び称される自由律俳句の俳人尾崎放哉の偏屈さとは対照的だ。山頭火の句を読んでみても、放哉の句と比べると軽快であり、中にはユーモラスなものもある。

風のなか野糞する草の青々(4月21日)

若葉を分け入りてうんこすること(4月26日)



 どれだけ野糞が好きなんだと思わないでもないが、あの時代公衆トイレなんて整備されていなかっただろうし、もよおしたら出さないと旅が続けられない。

 山頭火も放哉と同じく酒におぼれていたが、おそらく飲んで陽気になる酒だったのだろう。そうでなくては、これだけ色々な人の厄介になれるわけがない。しかし、おそらくアルコールが彼の寿命を縮めたのだろう。享年58、幾らあの時代でも、結核などを患ってもいないのに、少し早い死だと思われる。

 最後に本書にある山頭火の言葉を引用しよう。難しいことを言っているが、その実態は・・・。おそらくこういった理屈をつけないと、自分で納得できなかったのだろう。

色即是空、 空即是色、 いひかへると、現象と実在とが不即不離 になつて、私の身心其物として表現せられる境地、その境地に没入することが私の志である。
☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。

 

 

 

 

 

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放送大学の成績通知が来た

2020-08-29 10:12:43 | 放送大学関係

昨日の夕方郵便受けを見ると、放送大学から2020年度1学期の成績通知が来ていた。といってもシステムWAKABAで確かめた通りなので、特に付け加えることはない。2学期は「データベース」1科目だが、これに合格すれば、6回目の卒業となる。ここまでくれば、いまのところ、残りの「生活と福祉コース」も卒業して放送大学をコンプリートすることも考えているが果たしてどうなることやら。しばらくは秋田大学の通信教育に力を入れようか。それとも膨大な積読本を少しでも片づけるのにがんばるか・・・。

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「紅藍の女」殺人事件

2020-08-28 09:59:26 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 


 一昨年、作者の内田康夫さんが他界されたが、本棚からこの本がたまたま出てきたので再読してみた。読んだのはかなり昔になるので、内容はすっかり記憶から消去されており、新たな気持ちで読むことができたといってよい。ちょうどテレビで冤罪事件の特集をやっていたが、この作品の核となっているのは35年前の冤罪事件。この作品も浅見光彦シリーズの一つだ。ヒロインはピアニストの三郷夕鶴。

 夕鶴は、鼻の脇に大きなホクロのある男から、父の伴太郎に紙片を渡してくれと言われる。その紙片には「はないちもんめ」と書かれていた。これが一連の事件の幕開けになる。

 まず夕鶴の親友の甲戸(かぶと)麻矢の父親の天堂が殺される。更には夕鶴に紙片を渡した男、夕鶴の叔母の梅子も。そこには35年前の因縁があった。

 紹介されるのは「はないちもんめ」という童歌。この歌や遊びは日本中にあるので、語源に関しては、いろいろな説があるが、ここでは「はな」=紅花説をとっている。紅花と言えば、山形県。これはかって、山形県で、紅花にちなんで「紅藍の君」と呼ばれた女性に関する哀しい事件だ。なお、「紅藍の君」という女性は出てくるが、別に被害者にはなっていない。というよりあまり作品中で存在感を発揮していない。

 三郷家は、今は東京に住んでいるものの、祖父の代までは山形に住んでいた。35年前に使用人の黒崎賀久男が殺人事件の冤罪を着せられ、無期懲役となって服役していたのである。この黒崎が出所したという。彼が冤罪を着せられたのは、供太郎や天堂などの偽証による。果たして事件は、冤罪を着せられた黒崎の復讐なのか。

 内田さんの作品は、関係者を実名で登場させることが多いがなぜかこの作品では仮名となっている。まず、三郷家は昔紅花で財を成したというが、調べてみると堀米家というのがあったので、ここをモデルにしたと思われる。また、この作品には、河北町の紅花記念館というものが出てくるが、このモデルは、明らかに河北町の紅花資料館だろう。

 驚くような、どんでん返しもあり、楽しんで読むことが出来たが、ひとつ疑問がある。光彦の友人だという霜原宏志だ。夕鶴と姉の透子のテニスのコーチだったという設定で、光彦と夕鶴の出会いも彼によるところが大きいが、いったい光彦とどういう関係なのか。内田さんはプロットを書かないことで有名だが、話の進み方次第では彼が犯人にされていたのかな?

☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。

 

 

 

 

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ホクサイと飯さえあれば(1)、(2)

2020-08-26 10:05:18 | 書評:その他

 

 

 

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今日は放送大学の成績発表日

2020-08-24 10:56:19 | 放送大学関係

今日の10時からシステムWAKABAで放送大学の成績発表だ。結果は、

数値の処理と数値解析(’14) がBだったが、経営情報学入門(’19) と解析入門(’18) は両方Ⓐ だった。あと2単位とれば6回目の卒業が確定し、残りは「生活と福祉コース」のみとなる。2学期の登録は、「データベース」1科目のみの予定だが、別に学位はどうでもいいので、秋田大学の通信教育の方に力を入れたいと思う。

 

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半七捕物帳 52 妖狐伝

2020-08-24 09:15:30 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 

 これも半七捕物帳に収められている話だ。タイトルからは、大妖怪がでるようなすごい話を連想してしまう。この話も語り手が、明治に入って、半七老人から思い出話を聞いている体裁となっている。

 最初に半七老人の話として、こんな一節がある。

江戸時代の鈴ヶ森は仕置場で、磔や獄門の名所です。


 名所なのか。江戸見物に来たら、鈴ヶ森は外せないとか・・・。

 さて事件の方だが、鈴ヶ森の縄手い悪い狐が出るという噂が立った。星の明るい夜のこと。巳之助と言う若い男が、若狭屋に勤めている、なじみの女郎・お糸に声をかけられた。お糸の顔がのっぺらぼうに見えた巳之助は、お糸の首を絞めたが、何者かにより昏倒させられてしまう。しかし、お糸は何事もなく若狭屋に勤めていた。これが、妖狐の事件だが、オチが明らかになると、「それ何やねん」と思う人もいるかもしれない。

 そしてこの話に収められているのが、天狗の話。京の織物商人・逢坂屋伝兵衛一行が鈴ヶ森で天狗を目撃する。顔が赤く、鼻が高い大天狗だ。口から火を吐いていたという。果たして狐が化けたものか。

 天狗が口から火を吐いていた。時代は幕末で黒船が沢山来ていたころ。天狗の居た場所には西洋葉巻の吸い殻が落ちていたとなると、もうそちらのネタは分かるだろう。

 タイトルはものすごく期待を持たせるが、内容は、なあーんだという感じ。

☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。

 

 

 

 

 

 

 

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じごくゆきっ

2020-08-22 09:22:11 | 書評:小説(その他)

 

 

 本書は、桜庭一樹さんの短編7編を収めた短編集である。収められているのは、「暴君」、「ビザール」、「A]、「ロボトミー」、「じごくゆきっ」「ゴッドレス」、「脂肪遊戯」の七つ。簡単にそれぞれを紹介してみよう。

〇暴君
 主人公の金堂翡翠は、益田市から松江市にあるミッション系の女子中学校に通っている中学一年生。ある日、帰る途中で小学校の時同級だった三雲陸のお腹に出刃包丁が突き刺さっており、彼の妹や弟が殺されていた。

〇ビザール
 主人公の近田カノは25歳のOL。転職先の隣の課のおじさん更田と恋仲になる。二人は、7年前土砂崩れで壊滅した同じ町の出身だった。このままうまくいくと思われた二人だが事件が起こる。

〇A
 Aは50年前のアイドル。彼女は、事故で目覚めることのない15歳の少女と接続することにより、再びセンセーションを巻き起こす。

〇ロボトミー
この話は、僕(鷹野)と優埜(ユーノ)の結婚式の場面から始まる。ユーノの母親はとんでもない毒親で、まったく娘離れしていない。僕たちは半年で離婚になる。その後再開したユーノは病に侵されていた。

〇じごくゆきっ
 主人公の女子高生金城は、副担任の中村由美子先生と2人で、なぜか鳥取砂丘へ行くことになってしまう。

〇ゴッドレス
 主人公のニノは父の香(かおる)から呼び出される。香は同性愛者で、彼の女友達が体外受精でニノをつくった。香はニノに勉という男と結婚しろという。勉は香の恋人で、ニノと結婚すれば家族になれるというのだ。ニノは香からDVを受けて、支配されていた。

〇脂肪遊戯
 第1話の「暴君」と続く話で、そちらにも出てくる田中紗沙羅の物語。彼女は小学校では美少女だったが、思春期を迎えると美少女のままぶくぶくと太りだした。その理由が明らかになる。

 桜庭さんの作品は好きなのだが、ツッコミどころも多い。名前や設定が変なのが多いのである。もうひとつ地理的な感覚も変だ。あの名作「砂糖菓子の弾丸は打ち抜けない」には海野藻屑というトンでもない名前が出てきたし、七竈という美少女もいる。この短編集では田中紗沙羅が変と言えば変なのだが、トンでもない名前は見当たらない。ただし紗沙羅の設定が、「整った目鼻立ち。横幅は少女二人分。巨漢の美少女。」(p13)と、やっぱり変なのである。

 地理的な感覚に関しては、例えば主人公は、益田市から松江のミッション系の女子中学校に入っている。本文にも松江は益田の「近くの都会」(p8)と書かれているが、益田市は島根県の西のはずれ。殆ど山口県である。一方松江市は島根県の東の端、隣はもう鳥取県だ。両者の距離は160㎞以上もある(注:益田駅~松江駅)。決して近くはない。他の作品には、下関にサンゴ礁の島があったり、中国一の大都会だったり・・・。伯備線の近くに余部鉄橋があると言ったり。

 帯やカバーの後ろ側には「「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」の後日談を含む」と書かれており、期待していたのだが、結論を言うとどの話が該当する作品かよく分からなかった。おそらく隣の県の益田市の話である「暴君」と「脂肪遊戯」がそうなのかなと思う。しかし、「砂糖菓子の弾丸」の舞台は鳥取県境港市だ。地理的に離れすぎている。
 
 ミッション系の女子中というのは2005年までは松江にあった(現在は共学)。当時の時刻表は分からないが、今だったら特急に乗らないと始業時間に間に合わない。各駅に乗れば片道4時間程度かかるので、山陰線の便利の悪さを考えると、益田から松江に通学というのは、まずありえないと思う。

☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。

 

 

 

 

 

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潮騒のアニマ 法医昆虫学捜査官

2020-08-20 09:59:19 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 

 本書は、法医昆虫学捜査官シリーズの5作目だ。舞台は伊豆諸島の神ノ出島。色々調べてみたが、この島は架空の島のようで、伊豆諸島には、神津島という島があるので、ここがモデルだと思われる。 

 このシリーズは法医昆虫学者の赤堀先生と、警視庁の岩楯警部補そして所轄から一人参加するというスタイルで行っている。今回は新島南署の兵藤晃平巡査部長。ちなみに新島署というのはあるようだが、新島南署はないようだ。新島署は、神津島も所管地区になり、駐在所もある。

 大体所轄から参加する警官は、死体に湧いた蛆ボールの洗礼を受けるのだが、今回、見つかった死体は一部を蛆に食われた跡はあるものの、割ときれいなミイラ。西峰果歩という若い女性だ。この死体の謎に挑戦するのが、我らが赤堀先生という訳だ。

 今回の主役は蛆ではなく、アリ。それもアカカミアリという特定外来生物である。あのヒアリの近縁種で、毒針を持っており、刺されると重篤なアナフィラキシーショックを起こすことがある。蠅はあまり登場しない代わりに、蠅のようなマスコミは登場し、この作品は、マスコミに対する皮肉にもなっているように思う。

 この事件が大量のミイラ死体の発見に繋がったり、別の殺人事件に繋がったりと以外な展開を見せる。そして犯人も。

 赤堀先生が犯人に殺されかけるというのもお約束。もちろんこの作品でもそういった場面がある。

「毎度のことだが、赤堀ほど体を張っている者はいない。しかし、このままでは駄目だと岩楯は思っていた。彼女の仕事の性質上、いつかは取り返しのつかない場面が訪れる。(以下略)」(p481)

 

☆☆☆☆

※初出は「風竜胆の書評」です。

 

 

 

 

 

 

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放送大学2020年度1学期履修科目合格

2020-08-19 15:53:29 | 放送大学関係

 ツイッター情報で、放送大学の合否判定の裏技が使えるようになったというので、自分もやってみた。1学期に履修した科目はすべて「履修済の科目が申請されています。」となっていたので、合格したのは分かる。ただ合否は分かるものの、評価の方は、成績発表があるまで分からないので、発表を楽しみに待とう。後は、2学期に履修予定の「データベース」を無事に履修すれば6回目の卒業ということになる。来学期はこの科目と、秋田大学の通信教育「地球科学コース」を中心にやるつもり。

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尾崎放哉選句集

2020-08-18 09:20:50 | 書評:その他

 

 本書は、種田山頭火と並び、自由律俳句の読み手として有名な尾崎放哉の句を集めたものだ。本書に収録されているのは、中学時代に作った俳句から、彼の終焉の地である小豆島で読んだ俳句まで。

 鳥取県で生まれた放哉は、一高、東大と、当時の超エリートコースを歩んだ。しかし、会社勤めが彼にはなじめなかったようで、ころころと職を変えている。おまけに酒におぼれて、勤務態度も極めて悪かったようである。東洋生命時代に結婚するもその後離婚、このあたりは、山頭火に似ている。どうも俳人=廃人を思わせるが、もちろんそうでない人も多い。

 最後は、一高、東大の先輩である荻原井泉水の世話で入った小豆島にある西光寺奥の院の南郷庵で病没している。享年41、早い死であった。山頭火がヘンだが割と話しやすいおじさんと言うイメージがあるのに対し、彼は癖が強く、エリート意識もあったようで、島での評判は極めて悪かったという。

 自由律俳句で有名な放哉だが、最初から自由律俳句を詠んでいたわけではない。この選句集を読むと、最初のころは普通の定型的な俳句を詠んでいたことが分かる。彼が自由律の俳句に転向したのは、東京生命保険の大阪支店から東京本社に帰ったころのようだ。しかし、山頭火に比べて硬い感じを受ける。これも彼の性格を表しているからだろうか。ただ、次のような句を読むと、彼の孤独感が透けて見えるようである。

淋しいぞ一人五本のゆびを開いて見る
とんぼが淋しい机にとまりに来てくれた
淋しきままに熱さめて居り
淋しい寝る本がない
月夜風ある一人咳して
せきをしてもひとり
墓地からもどって来ても一人
☆☆☆
※初出は、「風竜胆の書評」です。

 

 

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