文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

携帯電話の抑制

2016-01-30 12:00:00 | 電気・電子工学
 先般「博多座」で「放浪記」を観劇した際のこと、上演中は、携帯電波を抑制している旨のアナウンスがあった。劇場全体をシールドしているのかと思ったが、携帯電話の電波は意外に執念深く?、ちょっとした隙間からでも入り込んでしまう。これはちょっとむつかしいだろう。現に休憩時間には電源を入れると、アンテナがちゃんと立って通話可能状態になっている。いったいどんな原理を使っているのだろうと気になって調べてみた。

 どうも、通信機能抑止装置というものを使っているらしい。原理は、携帯と同じ周波数で、何の情報も入っていない妨害電波を基地局からの電波より少し強く出すことにより、携帯~基地局間の通信を妨害するというもの。ここからは想像だが、現在の携帯はディジタル方式のため、信号が1を表しているのか、0を表しているのかを判別できなければ通信ができなくなる。そして、ディジタル通信では、2つの電波がある場合、アナログ通信のように混信が起こるというわけではなく、強いほうが勝ってしまう。だから、通話ができるかどうかについても1か0になってしまうのである。このことを利用して、携帯の使用を妨害しているのだと推測する。

 劇場、映画館、コンサートホールなどで使われるほか、振り込め詐欺防止でATM周辺で使われたり、試験時の不正防止で大学などの試験会場でも使われているという。ただし、電波を発射する装置なので、使用するためには、総務大臣から免許を受けるなければならないので、注意が必要だ。


 
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電力系統の系統定数の話

2016-01-29 20:02:57 | 電気・電子工学

 電力と周波数の関係を表すのに、

 ΔP=KΔf ・・・(1)

という式がよく使われる。これは、本来は非線形となる電力と周波数の関係を線形で近似したものであるが、この式が表すのは単純明快なことで、電力の供給が多くなれば、周波数が上がり、電力が不足すれば(ΔPがマイナスになる)、周波数が下がるということだ。これは回転機である発電機の特性を大きく反映している。

 大容量発電機は回転機であるため、回転に伴う膨大な運動エネルギーをため込んでいる。もし電力が不足すれば、その運動エネルギーを吐き出して需給のバランスをとる。運動エネルギーを吐き出すから発電機の回転は落ちる。すなわち周波数が下がることになるのだ。また電力が余っているときには、逆に発電機が回転のための運動エネルギーを増やすことになるので、周波数は上がる。

 さて、ここで(1)を導くため、次のような発電電力PG、負荷の消費電力PLと周波数fの一般的な関係式をとして次のようなものを考えて見よう。

 F(PG、PL,f)=0 ・・・(2)

 もちろんこの関係式を正確に決めるのは容易ではないし、それぞれの変数の値によっては、式の形が変わってくるかもしれない。しかし、今考えるのはある均衡点(PG0,PL0,f0)の周辺だけなので、その近辺で何らかの関係が成り立っていると思えばよい。今、PG0→PG0+ΔPG,PL0→PL0+ΔPL、f0→f0+Δfと変化したとする。このとき上式をTaylor展開して、2次以上の微小項を無視すれば、

 F(PG0,PL0,f0)+∂F/∂PG・ΔPG+ ∂F/∂PL・ΔPL+∂F/∂f・Δf=0 ・・・(3)

 均衡点(PG0,PL0,f0)では、(2)式が成り立つから、F(PG0,PL0,f0)=0となるので、(3)式は、結局次のようになる。
 
 ∂F/∂PG・ΔPG+ ∂F/∂PL・ΔPL+∂F/∂f・Δf=0 ・・・(4)

 ここで、偏微分である係数は、均衡点の値を代入した定数になる。また線形近似できるなら、PGの増加する影響と、PLの減少する影響は、単に逆向きの電力変化に対するものを表しているだけなので、

 ∂F/∂PG=-∂F/∂PL ・・・(5)

 またPGが増えれば周波数も増加するが、(4)式が成り立つためには、∂F/∂PGと∂F/∂fは逆符号でなければならない。そこで、

 ∂F/∂PG=-∂F/∂PL=a、 ∂F/∂f=-b・・・(6)

とおくと、(4)式は、

 aΔPG-aΔPL=bΔf・・・(7)

 となる。 ここで、

 PG-PL=P、b/a=K ・・・(8)

 と置けば、結局(1)式が導出できることになる。おそらく通常の電力系統工学の教科書には、結果としての(1)式だけしか書いていないと思う。理論的に導かなくとも、経験則として(1)式が成り立っていることが知られているというようなところもある。しかし、このように理論的に考えてみれば、頭の体操になってよいのではないだろうか。

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再生可能エネルギーは上積みを急ぐべきか

2016-01-10 13:47:40 | 電気・電子工学
 今日の中国新聞の社説に気になる記事が載っていた。「電力小売り自由化」に関して「再生エネの上積み急げ」という記事だ。もちろん、利用できる再生可能エネルギーは利用すべきだし、そのこと自体については異論はない。しかし現状ではコスト面や安定供給上の問題がまだまだ山積みだ。全量買い取り制度なんて、何を考えて始めたのか疑問だらけだが、あのように拙速で進めて、消費者に高い電気代を負担させるのはいかがなものか。

 特に気になるのは、「太陽光でつくったクリーンな電気です」という事業者のアピールを経産省が禁じる方針だというところに異論を唱えているところだ。社説には「これでは消費者の選択肢は狭められかねない。どこで、どのようにして作られた電気であるかも、知りたいポイントである。」と書かれている。

 わざわざ再生可能エネルギーによる高い電気を選択するような消費者がどれだけいるかはさておき、この発言は社説子の電力に関する無理解を示しているのではないだろうか。どんな電源でも、いったん電力系統につないだら、そこから先には色はつかない。どの電源から受電しているかは、所詮は約束事にしかすぎないのである。

 そして再生可能エネルギーが電源として役立つとすれば、それは既存の大電源が、需給のアンバランスをバックアップしてくれているからに他ならないのだ。太陽光などの再生可能エネルギーが、需要に応じて発電できない以上、需要家は必ずほかの電源によって起こした電気を受電することになる。だから、経産省の方針は、こういった意味で正しい。すべてを再生可能エネルギーでまかなった電力など、どこにも存在しないのである。

 また社説では「蓄電池の開発が進めば安定した電源になる・・・」とも書かれている。確かに安定はするだろうが、その分コストも上がる(蓄電池設備の費用はもちろん、電力も充放電によって、3割程度のロスが生じる)ことを忘れてはならない。やはり現実的なのは、大電源を中心にして、コスト的にも系統連系的にも問題のない再生可能エネルギーを少しずつ増やしていくことだろうと思う。



 

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Γ関数の回帰式

2016-01-03 15:11:22 | 電気・電子工学
 風力発電で、風速の度数分布を表すにはワイブル関数が使われるというのは前回記事の通りだが、平均風速を計算しようとすると、以下の確率密度関数にVをかけて、Vについて0~∞まで積分すればよい。

・確率密度関数

 f(V)=(k/c)(V/c)^(k-1)exp〔-(V/c)^k〕(V:風速、k:形状係数、c:尺度係数)

・平均風速
 Vav=∫V・f(V)dV (Vについて0~∞まで積分)だから、これに実際にf(V)を入れて若干の変数変換などを行うと

 Vav=cΓ(1+1/k)

 ここにΓはガンマ関数と呼ばれるもので以下のようなものである。

 Γ(z)=∫t^(z-1)exp(-t)dt(tについて0~∞まで積分)(本当に数式を表すときは面倒くさい)

 
 ガンマ関数には以下のような回帰式が成立すると書いてあったので、これも証明してみよう。

 Γ(z+1)=zΓ(z)

(証明)
 ガンマ関数の定義式より

 Γ(z+1)=∫t^zexp(-t)dt(tについて0~∞まで積分)

これは部分積分を行うことにより

  Γ(z+1)=-t^zexp(-t)+z∫t^(z-1)exp(-t)dt= -t^zexp(-t)+zΓ(z) (tについて0~∞まで積分)

 右辺第一項は、tが0のときも∞のときも0となるから結局

 Γ(z+1)=zΓ(z) (証明終)

○関連過去記事
ワイブル分布の積分




 
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ワイブル分布の積分

2016-01-03 13:04:23 | 電気・電子工学
 風力発電に関する本を読んでいると、風速の度数分布はワイブル分布で表されることが多いと書いてあった。ワイブル分布とは、品質管理などでも使われる分布関数である。

 風速の度数分布の確率密度関数f(V)と、風速がVa以下の確率F(Va)はそれぞれ以下のようにあらわされる。

 f(V)=(k/c)(V/c)^(k-1)exp〔-(V/c)^k〕(V:風速、k:形状係数、c:尺度係数)

 F(Va)=1-exp〔-(Va/c)^k〕

 f(V)からF(Va)を導出する過程は書いてないが、これはf(V)を0~Vaまで積分すればよいはず。理工書を読むのに一番大切なのは数式を理解するということだ。出てきた数式は、自分の手で追ってみる。これが理工書を読みこなす秘訣である。やってみるとミスプリが見つかったりして意外と楽しい。

 導出過程の書いてあるものはもちろんのこと、導出過程が省略されているものについても自分でその行間を埋めていくとよい。そうやって初めて理工書に書いてあることが理解できるようになるのだ。

 最初は生真面目に部分積分法などを使ってやってみたが、私は計算自体はあまり得意でないので、どんどん泥沼に落ち込んでいく(笑)。

 ここでふと気が付いたのは、(V/c)の形。係数のほうは(k-1)乗、exp関数の中はk乗という形になっている。

 ここで次の積分を考える。

 ∫x^(k-1)exp(-x^k)dx

 今、t=-x^k と変数変換すると、dt=-kx^(k-1)dx

 ∴ 与式=-(1/k)∫exp(t)dt=-(1/k)exp(t) 

 変数を元に戻すと、与式=-(1/k)exp(-x^k) ・・・(1)

 となり、この式は簡単に積分できることが分かる。

 そこで最初のf(V)とF(Va)の式に戻る。f(V)の積分においては、(1)においてx=V/cとおいて0~Vaまで積分するとF(Va)が簡単に導出できる。

 関数の形は複雑だが、それに惑わされないで自分の手で計算して確かめてほしい。それにしてもブログって数式を表すときになんとも不便だなあ。

 またワイブル分布において、k=2の場合はレイリー分布と呼ばれ、こちらも風速の度数分布を表すのに使われるようだ。

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電気の周波数の違いは簡単には乗り越えられない

2011-04-27 18:54:44 | 電気・電子工学
gooニュースに次のような記事が載っていた。

東日本大震災 立ち上がれ!モノづくり大国 「節電しか方法がない」のではあまりに悲しくないでしょうか? 周波数の違いを乗り超えて関東に電気を送るには(その2)(日経ビジネスオンライン) - goo ニュース


 この記事の要旨は、周波数の違いを乗り越えて、関東に電気を送電するためには、「60Hzの22kV配電線を、中部電力に隣接する静岡県東部・山梨県・群馬県および埼玉県に順次伸ばして」いけばよいだろうということだ。しかし、これには大きな問題がいくつもある。

 まず、変圧器や機器の問題である。家電については、最近はどちらの周波数でも使えるものが多いが、変圧器やモーターなどは、特定の周波数で動作するように設計されている。これは、日本電気技術者協会のサイトに詳しく解説されている。単に22kVの送電線を伸ばしていっただけでは対応できないのだ。

 さらに、22kVでは同じ電力を送ろうとすると、もっと高電圧で送るよりは電流が大きくなる。電流が大きくなれば、電線の電圧降下が大きくなる。またロスも大きくなるので、電線の熱容量上の制約が出てくる。結局、22kVでは、それほど長距離に渡って大電力を送るのは無理なのである。更に、大電力を送る場合には、電力の安定度問題も発生する。

 また、「22kVの配電線は被覆線であって一般には地下ケーブルだから、新電力会社の60Hz配電網を東京電力の50Hz配電網と相乗りさせることは、技術的に問題ない。」と書かれているが、これも大きな誤解がある。地下に電線を敷設するにはコストがかかるので、一般には、都市のように電力需要が集中している狭い区域が対象だ。現状あるルートを使って、22kVを長く伸ばすことはできない。伸ばそうとすると、新たにルートを作らねばならないので、莫大なコストがかかる。

 これらを考えれば、記事を書いた人が思っているように「より現実的なアイデア」とはとても思えない。現実的には、周波数変換所の容量を上げるしかないであろう。

 
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