文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

書評:スノーデンファイル

2014-06-30 19:47:25 | 書評:その他
スノーデンファイル 地球上で最も追われている男の真実
クリエーター情報なし
日経BP社


 エドワード・スノーデンによる内部告発が報道されたのは記憶に新しい。米国家安全保障局(NSA)や英政府通信本部(GCHQ)などの個人情報収集を無差別大量に収集しているというものだ。「スノーデンファイル 地球上で最も追われている男の真実」(ルーク・ハーディング/三木俊哉:日経BP社)は、なぜスノーデンは内部告発を行ったのか、事件の全容はどのようなものだったのかを追ったノンフィクションである。

 急激に進んだ情報化社会。何事にも光の部分と闇の部分の2面性があるが、この事件は、情報化社会における最大の闇と言っても良いのではないか。 この話の一番怖いところは、国家がそれを推し進めてきたというところだろう。国家が、無制限に国民を監視する。それに、通信やネット企業の大手が協力していたというのもぞっとする話だ。本書は、現代ネット社会の陰の部分をこれでもかというくらいに暴きだしている。

 もちろん、現代の世界情勢を考えれば、諜報活動を否定することも現実的ではない。本書にあるように、<テロリスト、敵対国、組織犯罪者、核を保有するならず者国家、情報機密を盗もうとする外国のハッカーなど、英米に敵が多いことはだれもが認めている。個別のターゲットをスパイすることにも異論はない。諜報機関とはそういうところである。>しかし、一般市民の情報を無制限に取り込んだり、友好国の元首の電話まで盗聴するというのは明らかに行き過ぎだ。

 面白いのは、この事件のおかげで、タイプライターが復活の動きがあるということだ。この事件は、ネット社会ならではのものという性格が強く、紙データならば、ハッキングのやりようがない。<伝書バトの復活も時間の問題だった>とあるが、これはジョークだろう(笑)。

 日本でも街ではあらゆるところに監視カメラが仕掛けられているのは周知のところだ。情報化社会というのは、監視社会という性格も併せ持っている。昔なら、ピンポイントでしか監視できなかったものが、現在では椅子に座っていても、ネットをトラフィックが通過しさえすれば、大量のデータを盗聴することができるのだ。ビッグデータを扱う技術が発達すると、個人のプライバシーなど無いも同然になってしまうのではないかと危惧する。本書は、そのようなネット社会のあやうさを考えさせてくれる。

☆☆☆☆

※本記事は、姉妹ブログと同時掲載です。
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書評:平家物語―ビギナーズ・クラシックス

2014-06-22 19:54:36 | 書評:学術・教養(人文・社会他)
平家物語 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 (角川ソフィア文庫)
クリエーター情報なし
KADOKAWA / 角川学芸出版


 全12巻もある膨大な平家物語を、文庫1冊にコンパクトに纏めた「平家物語―ビギナーズ・クラシックス」(角川書店編)。副題に「ビギナーズ・クラシックス」とあるように、あまり、古典に慣れ親しんでいない人でもその面白さが分かるようにうまく編集されている。

 本書は、全巻全章の要約に加え、各巻の見処となる場面の現代語訳とその原文で構成されている。この原文を声を出して読めば、琵琶法師のようにはいかないだろうが、本来の名調子の一端なりとも、味わうことができるだろう。

 見どころとして、選ばれているのは、祇王と仏御前の話、俊寛の話、熊谷直実と平敦盛の話など、平家物語は読んだことが無くても、その概要位は知っている人が多いようなものだ。ただひとつ疑問なのは、木曽義仲の最後の場面で、どうして愛妾の巴御前との別れの場面でなく、乳兄弟の今井四郎兼平との最後の場面を選んだのかということである。

 巴御前は、元祖戦闘派美女とも言える人物だ。義仲一行が最後の数騎になったとき、最後まで女を連れていたとあっては名折れとなると言い聞かせて巴を帰す。巴を死なせたくないという義仲の優しさだったのだろうが、巴は、最後に義仲に見せるために、敵と戦って、その首をねじ切って去っていく。まさに戦闘派美女の面目躍如ではないだろうか。この別れのシーンにはいかにも彼女らしい華がある。

 「平家物語」では、清盛は、悪人ながらも、妖怪を睨んで退散させるほどの胆力のある人物としてえがかれている。これに比べ、重盛などは、完璧な人格者として描かれているが、あまりに分別臭い。物語の前半では、この二人の対比というのが、ひとつの見どころだろう。そして、この二人が死んだころから平家の衰退が始まる。

 もちろんこれは「物語」なので、史実とは異なる部分も多い。しかし、日本人の教養として、その概要なりとも知っておきたいものだ。本書は、忙しいサラリーマンでも、気楽に平家物語の世界を楽しめるという優れものの一冊である。

☆☆☆☆

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新山口駅で見かけたカンセンジャー

2014-06-21 18:54:15 | 旅行:山口県


 新山口駅の新幹線改札内で見かけたカンセンジャー。500系の車両をスーパーヒーローに仕立てたものだ。

 確かに、500系はかっこいい。これが700系だったら、こんなヒーローにはならないんじゃないかな。500系は、かってのぞみとして走っていたので、その頃に作られたのかと思ったが、「こだま」の文字が入っていたので、最近になって作られたもののようである。

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書評:宇宙最大の爆発天体ガンマ線バースト

2014-06-20 08:39:12 | 書評:学術教養(科学・工学)
宇宙最大の爆発天体ガンマ線バースト (ブルーバックス)
クリエーター情報なし
講談社


 宇宙の彼方から、突然強いガンマ線が、短時間だけ飛んで来る現象のことを「ガンマ線バースト」と呼ぶ。ガンマ線バースト自体は、1967年頃には、発見されていたが、その原因が分かったのは、1997年になってからというから、まさに宇宙論のホットな話題のひとつである。本書、「宇宙最大の爆発天体ガンマ線バースト」(村上敏夫:ブルーバックス)は、このガンマ線バーストについて、発見から解明までの歩み、メカニズムなどについて、分かりやすく解説した啓蒙書である。

 発見が遅かったのには訳がある。ガンマ線というのは放射線の一種で、エネルギーが高いために、大気に入ると、大気中の成分と反応してしまい、なかなか地表まで届かない。そのため、人工衛星が打ち上げられるようになるまでは、このような現象があることに気付かなかったのである。

 それでは、いったいどのような天体がガンマ線バーストの発生源なのか。当初その候補にあがったのは、中性子星である。しかし、それでは、ガンマ線バーストの膨大なエネルギーを、説明できない。更には、ガンマ線バーストにもいいくつかの種類があることも分かった。当初は、「古典的ガンマ線バースト」と「軟ガンマ線リピーター」の2種類に分けられたが、最終的には、軟ガンマ線リピーターは、ガンマ線バーストではないとされた。しかし、こんどは、古典的ガンマ線バーストには、継続時間が長短の2種類があることが分かったのだ。前者は、巨大星の重力崩壊による極超新星の爆発(ハイパーノバ)が原因で、後者は連星の中性子星が合体するときの爆発により発生するという。しかし、この他にも別のタイプのガンマ線バーストがあるらしく、まだまだ謎の多い現象である。

 ところで、本書には、いくつか教訓的なことが見受けられる。まず、ガンマ線というのは透過力が強く観測しにくいので、ガンマ線バーストといっしょに発生する「X線残光」というものに目をつけたというところだ。もうひとつは、長いガンマ線バーストを説明する理論を、この道の専門家ではない、マーチン・リース卿が相対論を駆使して構築したことである。発想の転換ということがいかに大切であるかを示す良い例ではないだろうか。

 本書は、ガンマ線バーストのメカニズムが解き明かされていく歴史が生き生きと描かれ、ヘタなミステリーよりずっと面白い。また、ガンマ線バーストという、まだ一般的には馴染みのない、宇宙物理学の最先端の現象がテーマというのも、読者の知的好奇心を刺激してくれるだろう。

☆☆☆☆☆

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書評:The 21 2014年7月号

2014-06-17 19:48:16 | 書評:その他
THE 21 (ザ ニジュウイチ) 2014年 07月号 [雑誌]
クリエーター情報なし
PHP研究所


 「The 21」(PHP研究所)の2014年7月号。

 最近は、あまりこのようなビジネスマンの自己啓発雑誌の類は買わなくなった。久しぶりに買ってみたのは、出張の際の夜の徒然を紛らわすために、あらかじめ鞄に入れておいた本を全部読んでしまったからだ。何しろアルコールを飲まない私にとって、夜の読書は至福の時間である。

 しかし、最近は書店がなかなか見つからなくなった。しかたなしにコンビニで何か読むものを探そうとすると、普通の書籍は置かれていても種類が限られているので、どうしても雑誌ということになってしまう。

 ところで、自己啓発系の雑誌といってもいくつかの種類があるのだが、これを選んだ理由は、表紙の<「地頭力」の鍛え方>という言葉に魅かれたからだ。いくらお勉強をしても、今のように変動の激しい時代には、覚えた知識などすぐ陳腐化してしまう。必要なのは知識ではない。大切なのは、どんな状況になっても、柔軟に対処ができる「地頭力」なのである。

 この雑誌には、色々な分野で活躍している人たちが、「地頭力」の鍛え方について、各自の見解や、「地頭力」を鍛えるためのトレーニングなどについて紹介されている。書かれていることはそう異論はないが(つまりそう目新しくもないが)、あまり「地頭」を伸ばすということを考えてこなかった人には参考になるものと思う。

 気なることが少々ある。ひとつは、「古典で先人の思考のプロセスを追体験する」ということを言っている人がいたこと。確かに、読みにくい古典を一生懸命読み説いていくことは、かなりの頭の負荷になることは確かだ。いかにも、この手の雑誌で好まれそうな意見だが、私は別に古典でなくても、現代の良書をじっくりと読めば良いと思う。古典は、時代の壁があり、言葉ひとつにしても、本筋以外の部分で手間取ってしまう。ましてや、翻訳ものなど、そこに訳者のフィルターがかかってくるので、一層読みにくくなっているものもある。

 古典が好きな人なら、古典を読めば良いが、現代の書にもすばらしいものはたくさんあるだろう。そういったものを発掘しないで、単に評価が定まっているだけで古典を読めというのは、そこで思考を放棄しているも同然ではないか。それは、「地頭力」を鍛えるというテーマに照らしてどうなのだろう。

 本を読むというのは、なにも著者の考えをありがたく拝聴するというのが目的ではない。書かれていることをネタに、自分の頭でその先を考えることが必要だ。しかし、その目的のために、現代とまったく社会システムの違う時代に書かれた古典が役にたつかどうかは疑問である。

もうひとつ、「地頭が良い人の典型がアインシュタインです。アインシュタインは、従来のニュートン力学のセオリーと実測数値が微妙にずれていることを発見しました」と書いている人がいる。彼が時空の概念を根本的に変えたのは間違いないが、実験家ではないのだから、そんなことを発見したということは聞いたことがない。まあ、同じ筆者の、「一生懸命覚えたいくつかのセオリーが思考の”型”になってしまって、事実を無理やりその型にはめてしか解釈できない。マクロ経済学の世界にたくさんいらっしゃいますが・・・」という部分は同感なのだが。

☆☆☆

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書評:全員で稼ぐ組織

2014-06-16 18:07:45 | 書評:ビジネス
全員で稼ぐ組織 JALを再生させた「アメーバ経営」の教科書
クリエーター情報なし
日経BP社


 アメーバ―経営とは、現京セラ名誉会長である稲盛和夫氏が考案した経営手法だ。大雑把に言えば、社員を5~6名の小グループに分割し、その単位で自律的に採算を最大化させていくというものである。本書「全員で稼ぐ組織」(森田直行:日経BP社)は、その有効性と適用事例を紹介したものだ。

 著者の森田氏は、元京セラの副会長で、稲盛和夫氏と共に、JAL再建に尽力した人だ。本書では、まずアメーバ―経営について説明し、その適用例として、JAL、メーカー、病院、介護業界、中国での事例が取り上げられている。それらの事例は、企業経営の手法として参考になるだろう。

 ただ、本書では、「アメーバ―経営」と「部門別採算制度」をほぼ同義語で使っている。だから、「アメーバ―」の利点を説明しようとしていたのが、いつの間にか「部門別採算制度」の話に変わって分かりにくい。確かに「アメーバ―」は「部門別採算制度」のための手段であるかもしれない。しかし、「アメーバ―」以外の方法でも、「部門別採算制度」を取ることは可能なのである。

 また、アメーバ―も部門別収支管理も経営目的を達成するためのひとつの手段であり、決して目的ではない。だから、何のために、アメーバ―を導入するのかという目的を明確にすることが大切だ。それは、抽象的なお経のようなものではいけない。利益があがれば、それが社員にも還元されるという明確なメッセージも必要だろう。

 もうひとつ、この方法は、生産性を上がればあげるほど売れると言うのが前提だろう。しかし、いくらアメーバ―単位で生産性をあげたとしても、そもそもの受注がなければ、手空き時間が増えるか、在庫が積み上がってしまうだけになるのではないか。

 万病に効く薬などはないのである。要は、自分の会社に上手く適合するような手段を使うということなのだろう。アメーバ―もその候補の一つではある。

☆☆☆

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書評:スーパー速書きメソッド

2014-06-15 10:01:45 | 書評:ビジネス
スーパー速書きメソッド (マイナビ新書)
クリエーター情報なし
マイナビ


 ビジネスの場においては、文書を作成する機会が多い。各種報告書だったり、日報、週報だったり、依頼文、通知文だったりと、その種類も様々だ。しかし、その多くは比較的定型的なものであり、やり方次第で大幅な効率化を図ることができる。そのビジネス文書を、ささっと簡単に作るためのノウハウを纏めたのが、この「スーパー速書きメソッド」(石田章洋:マイナビ新書)である。

 ところで、何かの文書を書いていれば、それだけで仕事をしているような気になっていないだろうか。文書作成は仕事の一部ではあるが、あくまでメインの仕事を行うための周辺的な業務である。帯に、「書類は4分以上かけて作るな!」と書かれているが、その通りで、ビジネス文書などちゃちゃっと仕上げてしまって、本筋の仕事のアイディアを考えたり、情報を収集したり、クライアントと会見したりする方が、よほど仕事の成果はあがるのではないだろうか。

 ビジネス文書は文学作品ではない。要は伝えたいことが、相手に正確に伝われば良いのだ。そして、多くのビジネス文書というのは、極めて定型的なものである。だからやり方を工夫すれば、極めて簡単に作れてしまうのだ。本書はそのためのテクニックとして、ひとつひとつの文の作り方、これをくみ上げて一つの文章にする方法などを極めて分かりやすく紹介している。

 また、上に書いたように、ビジネス文書には定型的なものが多い。だから既存の様式を使うことが、速書きのためには有効である。本書には、今日からでも使えそうな各種文書の様式が多く紹介されているというのもひとつの特徴だ。読者は、使えそうなものを選んで、自分自身のビジネスシーンで活用してみると良いだろう。

 著者の本職は、構成作家&プランナーであり、「世界ふしぎ発見!」などの人気番組を担当している。いわば、定型文書とは対極の位置にあるクリエイティブな領域で仕事をしている人だ。その人が、このようなビジネス文書の書き方を指南するのいうのもなかなか興味深いが、どんな仕事にも、周辺にはこのような定型的な仕事がたくさんあるので、そこをどう簡略化していくかが大切だということなのだろうと思う。

☆☆☆☆

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なか卯の親子丼セット(広島市を歩く132)

2014-06-14 12:08:09 | 旅行:広島県




 これは、11日に<県立広島大学マネジメント特別講座、「社会企業家とBOPビジネス」>へ出席するときに、夕食のために立ち寄った、「なか卯」の「親子丼並」とプラスメニュー「小うどん冷やし」のセット。前者が490円、後者が150円だった。

 いつもとは違う道を通って行ったため、たまたま見つけた店に入ったので、場所ははっきりしないのだが、なかなか美味かった。


○関連過去記事
「和風たれかつ丼とざるうどんのセット」@ごはん処やよい軒(広島市を歩く131)
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県立広島大学マネジメント特別講座、「社会企業家とBOPビジネス」

2014-06-14 11:50:42 | セミナー、講演会他


 色々忙しくて、少し掲載するのが遅くなったが、11日の水曜の夜には、サテライトキャンパスひろしまで開催された、県立広島大学マネジメント特別講座、「社会企業家とBOP」ビジネスを聴講して来た。月1回ペースで、18時30分から20時までの講義なので、勤め人にも出席がしやすいので助かる。




 BOPとは、Bottom of Pyramidのことだ。アメリカ型のグローバル経済を追求すれば、待っているのは、貧富の差の大きな社会である。しかし全く別の道もある。所得の少ない世界の大多数の人のためのビジネスである。

 日本の企業も、途上国に工場をたくさんつくっている。しかし、人件費の安いところに工場をつくるというのは、果たして相手をイコール・パートナーとして見ているのだろうか。この講義の中で、一番考えさせられた部分である。
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書評:企画はひと言

2014-06-11 21:09:31 | 書評:ビジネス
企画は、ひと言。
クリエーター情報なし
日本能率協会マネジメントセンター



 「世界ふしぎ発見」や「TVチャンピオン」などの人気番組を手掛けた放送作家である著者が、その秘訣を明かす、「企画はひと言」(石田章洋:日本能率協会マネジメントセンター)。このような番組を生み出せるのだから、著者は昔から企画が得意中の得意なんだとつい思ってしまいがちだ。ところが、意外な事に、若手時代は企画を出しても出しても通らず、企画に対して恐怖まで覚えていたという。

 色々試行錯誤しているうちに、ぱっと閃いたアイディア。それは、どんな企画の本にも書いてあるが、1~3行しか書かれていないことだった。それが、「見えるひと言」が企画を通すというである。人間というものは不思議なもので、問題の解決法をずっと考え続けていれば、あるときにぱっと閃くことがある。無意識に頭の中でアイディアを練っているのだ。大切なのは、徹底的に考えることであるということが、このエピソードから分かる。

 ところで、この「ひと言」というのは、消費者向けのキャッチコピーのことではない。意思決定者が短時間で判断を下すことができるための「ひと言」なのである。意思決定者は多忙だ。長々と説明を聞いたり、企画書を読んだりしているような時間はない。「ひと言」でその内容が見えれば、決断を行いやすくなるのである。

 だからセンスなど不要だ。ベタでよい。ただしベタなものに+αするものがないと、陳腐なものと見なされてしまうから注意が必要であるという。

 本書には、この+αのアイディアを出すコツ、アイディアを「ひと言」へまとめる方法、「ひと言」の伝え方についても分かりやすく説明され、今日からでも活用できそうだ。この手のこと、単に頭の中に知識として持っているだけではだめで、実際に使ってみないとなかなかコツをつかめない。ぜひ、本書に書かれていることをベースに+αを加えるつもりで試して欲しい。

☆☆☆☆

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