文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
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書評:痕跡本の世界: 古本に残された不思議な何か

2016-04-17 08:07:33 | 書評:学術・教養(人文・社会他)
痕跡本の世界: 古本に残された不思議な何か (ちくま文庫)
クリエーター情報なし
筑摩書房

・古沢和宏

 古本屋で買った本に、たまに線が引いてあったり、書き込みがされているとイラッとする。線や書き込みは、それを行った本人には役に立つのだろうが、人がやったものは、単に汚らしいだけだ。ネット書店で買った場合は、まずそんなことはなかったが、実店舗では、気が付かないまま買ってしまうことがたまにある。

 ところが書き込み、それも半端ではない書き込みをした本を、堂々と古書店に売ったり、そんな本を集めて喜んでいる人がいるというのだから世の中は広い。そういった本を「痕跡本」というらしいが、私の読んだ本などは、マーカーで線は引くわ、書き込みはするわで、立派な痕跡本になってしまう。さすがに、こんな本を古書店に売ろうなんてずうずしさも度胸もない。

 本書に紹介されている「痕跡本」は、そんな私の想像を遥かに上回るものばかりだ。意味不明な書き込みがしてあるようなものは、まだ序の口。手書きで幾何学模様を書き込んで本をデザインしなおしたようなもの、なんだか良く分からない絵日記のようなものが書き込まれたもの、悪口が延々と書き込まれたもの、一部がホッチキスで封印されたもの等々。「痕跡本」の世界は実に多彩だ。

 しかし、本書の面白さは別のところにある。本当の魅力は、そんな「痕跡」が残された裏にはどんなドラマがあったのだろうと、本書の著者が妄想遊びをしているところなのだ。やはり本を読むには、このくらいの想像力が必要なのだろうかと、つい思ってしまう。

☆☆☆☆

※本記事は、書評専門の拙ブログ「風竜胆の書評」に掲載したものです。

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