文理両道

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書評:マンダラは何を語っているか

2015-04-24 22:16:30 | 書評:学術・教養(人文・社会他)
マンダラは何を語っているか (講談社現代新書)
クリエーター情報なし
講談社


 真鍋俊照さんの「マンダラは何を語っているか」(講談社現代新書)。著者は、高野山大学の仏教学科を卒業し、東北大学の大学院に進み、金沢文庫長、宝仙学園短期大学長などを歴任し、学者であり、僧侶であり、画家でもある方だ。

 ところで、密教寺院に行けば、マンダラを目にすることがあるだろう。通常は、大日如来を中心として、その回りに、如来、菩薩、明王、天部などの諸尊を配置したものを言い、これには、胎蔵界と金剛界の2通りがある。これらは、両部マンダラとよばれ、それぞれ大日経、金剛頂経に基づいて作成されたものだ。

 マンダラとは、「本質を所有せるもの」という意味だそうで、密教諸尊の集合した場・空間を現す。そして、それは、悟りの境地そのものをも現している。その悟りの内容を、シンボル化したものがマンダラなのである。

 マンダラは、いつ頃成立したのだろうか。前兆となるものはあったようだが、マンダラの画像法と作壇法が説かれたのは、6世紀前半の「牟梨曼荼羅呪経」だという。これが、「法楼閣経」に説かれた「法楼閣マンダラ」となって完成する。ただし、このときは、中心となる仏は、釈迦如来であった。7世紀前半になると、「大日経」が成立し、胎蔵界マンダラが完成する。そして、7世紀の後半には、「金剛頂経」が成立し、金剛界、胎蔵界の両部マンダラが揃うのである。

 胎蔵界マンダラは、大日如来の内観の世界を表したもの、金剛界マンダラは、観想を体系的に表そうとしたものだそうだ。しかし、そのような理論はさておいても、多くの仏たちの造り上げる荘厳で華麗な世界には目を奪われる。そこには、宇宙の神秘が詰まっているのだ。

 密教の世界には、この両部マンダラが基本であるが、この他にも、「別尊マンダラ」というものがある。これは、不動堂、愛染堂といった個別のお堂に懸けられるもので、両部マンダラの中の一尊を取りだして、中央に配置したものだ。これには、どの仏を中心にするかにより様々な種類があるが、現世利益を望む人々の願望が現れたものらしい。それにしても、人間の欲望は、色々な物を生み出すものだ。

 マンダラとは本来密教世界のものだが、実は、この他にも、マンダラと呼ばれるものが存在している。浄土教の説く極楽浄土を表したものは、一般には浄土マンダラと呼ばれるようだし本地垂迹の影響で、なんと神道マンダラまであるという。

 本書には、マンダラの起源、マンダラの構成、それが表現しているもの、密教の両部マンダラ、そしてそれ以外の様々なマンダラについて、詳しく説明している。どのようなものなのか、多くの写真や図で具体的に示されているのでとても分かりやすい。ただ、カラーではないので、見にくいものがあるのが残念だ。

 ただし、解説されている事柄は、仏教、とりわけ真言密教の教義に関する知識がないと読みにくいかもしれない。しかし、本書は、マンダラというものの奥深さを教えてくれる。熟読しておけば、寺院などでマンダラを目にしたとき、これまでとは違った目で見ることかできるようになるのではないだろうか。

☆☆☆☆

※本記事は、姉妹ブログと同時掲載です。


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