世界変動展望

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自浄作用を保障する機構を絶対に作れ! - 京都府立医大不正疑惑の調査と被疑者教授の辞任

2013-02-28 19:15:25 | 社会

『バルサルタン:降圧剤論文撤回 責任著者の京都府立医大教授、辞職へ

毎日新聞 2013年02月28日 東京朝刊

 京都府立医大のチームによる降圧剤「バルサルタン」に関する臨床試験の論文3本が、「重大な問題がある」との指摘を受けて撤回された問題で27日、論文の責任著者の松原弘明教授(55)が大学側に月末での辞職を申し出、受理されたことが大学への取材で分かった。松原教授は大学に対し、「大学や関係者に迷惑をかけた」と説明したという。

 大学によると、辞職申し出は2月下旬。大学を所管する府公立大学法人が受理した。

 問題になっているのは、09~12年に日欧2学会誌に掲載された3論文。血圧を下げる効果に加え、脳卒中のリスクを下げる効果もあるかなどを約3000人の患者で検証した。

 3論文のうちの2本を掲載した日本循環器学会は昨年末、「深刻な誤りが多数ある」として撤回を決め、吉川敏一学長に調査を依頼。これに対し、大学は学内3教授による「予備調査」で、捏造(ねつぞう)などの不正を否定する結果を学会に報告した。その後、学会は再調査を求めており、大学は「対応を検討中」としている。【八田浩輔】 [1]』

『京都府立医大の教員、論文で図表使い回し訓告処分

 京都府立医科大は25日、複数の論文に同じ図表を使い回したとして、大学院医学研究科の教員を同日付で訓告処分にしたと発表した。指導・監督責任を問い論文発表時の上司を文書注意にした。

 教員が発表した11の論文を調査した結果、うち四つで使い回しがあったと認定。大学は教員のデータ管理が不適切だったとし、捏造はなかったと判断した。

 2011年9月、匿名で大学院生を名乗り「複数の論文で同じ図表が使われている。捏造の疑惑がある」とする投書が届き、調査していた。

 大学の事務局総務課は「適正な研究活動をするよう周知徹底した」とのコメントを出した。(共同)

[2]』

恐れていた事態が発生してしまった。[1]は不適切な扱いだが、やるかもしれないと思っていた。

まず[1]だが、完全な責任逃れが無理なら、誰かが辞職してわずかなダメージで幕引きにする常套手だ。[3]でも述べたようにこの問題は今後不正を繰り返さないためにも、絶対にこういう形で終結させてはならない。でなければ、反省がなく同じ事が繰り返される。

なぜ府公立大学法人はMの辞表を受理したのだ?きちんと調査して懲戒解雇にすべきである。Mも読売新聞に対して「集計のミスであり、通常なら修正すれば済む。論文の結論には影響を与えていない」(YOMIURI ONLINE 2013.2.28)と答えているが、それなら言ってることとやっていることが合致しない。不正がなければ辞任するのはおかしい。少なくとも世間では辞任はMが不正を認めたからだと思う。

あと、以前毎日jpの記事で京都府立医大が3名の教授に調査を依頼して調査させたという趣旨の記事があったので、てっきり規則を破って調査委員会を作らずに調査したのかと思ったが、予備調査で不正を否定したということだった。規則を守らなかったということではなかったようだ。訂正します。すみません。しかし、それでも組織が不正な判断をしたという点は変わりない。(毎日新聞は予備調査なら単に調査ではなく、予備調査と書いてほしかった。確かに間違った記載とはいえないけど、この記載だと調査委員会を作って本調査すべきところを3名の教授の調査で済ませたと誤解するおそれがある。私は誤解してしまった。なぜなら、この事件は調査委員会を作って本調査するのが当然の事案だからだ。)

バルサルタンの論文撤回は不正の組織的実行と組織的隠蔽疑惑、Kyoto Heart Studyとノバルティスフォーマ社との癒着疑惑が問題。このような中途半端な調査等で終わらせることなく徹底的に真相を究明し不正に厳しい処分を下すことが求められる。

[2]に関してはMの別件のデータ流用事件のことかと思っていたが、よく考えると告発の時期が2011年9月頃なのでMらのデータ流用事件の調査委員会発足時期(2011年12月頃)から逆算すると推測告発時期と少しあわないことや米国心臓協会(AHA)の告発について記事が何の言及もしていないことなどから、ひょっとしたら別人の事件かと思った。同大の調査報告書(要約)を見ると、調査委員会の発足が2011年9月20日だから、報道の情報とあわないし、被疑者Nの端的な言及([4])があるのでMとは別人の事件。コメントを見ても別人の事件との指摘があった。以前の記事は訂正しました。すみませんでした。

でも、Mのデータ流用事件は本当にどうなっているの?仮にデータ流用の不正を認めても「Mはすでに辞任しているので新たな処分等は行いません。」と同大は言うかもしれない。それに同大の隠蔽体質を考えると本当に[2]の件も不正ではなかったのだろうか?[2]によると2011年9月の告発で訓告処分等が出たのが今月25日だから、遅すぎる処分だ。また文科省のガイドラインでは「調査機関は、不正行為が行われなかったとの認定があった場合は、原則として調査結果を公表しない。ただし、公表までに調査事案が外部に漏洩していた場合及び論文等に故意によるものでない誤りがあった場合は、調査結果を公表する。」とあるし京都府立医大の規定でも同趣旨の規定があるので、公表は規則どおりだが、他の事例で不正がなかったケースはほとんど公表しないので、同大の公開はかなり珍しい対応。規則を守った点は評価できる。ただ、不正はなかったのに、規則どおりとはいえ調査結果公表という異例の対応で、訓告処分等が下ったのは、何か妙だ。

それに調査報告書(要約)では「直接の証拠となる実験ノートは紛失していたが、N氏のパソコンに残されたファイルの調査から、実験がそれぞれ独立して行われた証拠が認められた」と述べている。直接証拠の実験ノートがなくて、実験で論文に発表されたデータの作成がなされたとどうやって確認できるのだ?生データ自体はないわけでしょ?実験はやったけど疑惑対象の生データの作成はしなったという可能性は当然あるし、過去のデータの方が都合が良かった何らかの理由で疑惑データの部分だけわざと使いまわしたのかもしれないし。「実験ノートは紛失していた」というのは通常ないことだ。これも妙だ。

それに文章注意された「論文発表時の上司」って・・・。[4]で紹介した流出してしまった情報から訓告を受けたのはNで間違いなく、[2]で言及されている上司がY学長かはわからないが、ネットを調べるとNとY学長は上司、部下の関係だったようだ。NとYの経歴を調べると少なくとも2008年はYの管理下にある部署にNは勤めていた。

実験ノートの紛失、京都府立医大の隠蔽体質、Y学長の関与の可能性・・・。[2]は本当に公正な調査結果だったのだろうか?「発表先の学会や雑誌に修正を申し入れ、いずれも了承された」(毎日jp 2013.2.26)と報道されたので、いずれ訂正があったNらの論文等はわかるだろう。本当に不正がないか第三者が検証してみる必要があるかもしれない。案外面白いことがわかるかも?

少なくともMらのバルサルタン論文はすべてをもう一度徹底的に調査し、犯人を全員厳しく処分しなければならない。Mはとんでもない不正をしたのに何の懲戒処分も受けず高額の退職金をもらって辞職し、あとは医師としてしゃあしゃあと勤務を続けるんだよ?世界記録捏造のF医師も医師免許を取り消されず、医師を続けている。弁護士や税理士は不正をすると懲戒処分で業務停止等の処分を受けるが、医師はなぜそういう処分がないのだろう?先日の薬害オンブズパースン会議の要望をぜひ実現してほしい。

もう何度も言ってきたことなので繰り返す元気がなくなってきたが、第三者調査機関を作ったり、実効的な規定を作ったり、公正かつ積極的に調査する制度を必ず作らないといけない。

現在の学術界の実態は本当に危機的。このままだと本当に学術界の信用は死んでしまうよ。嘘の研究成果で我々だって被害を被るし。絶対になんとかしなければならない。そういう強い危機感をみんなが持って改善に向けた努力をすることが必要だ。

現在の研究不正調査制度の問題点については近いうちに執筆する。

参考
[1]毎日jp の記事 2013.2.28
[2]SANSPO.COM の記事 2013.2.26
[3]世界変動展望 著者:"学会が京都府立医大に再調査を要請! - 降圧剤論文撤回" 世界変動展望 2013.2.20
[4]京都府立医大による調査報告書(要約)写し1写し2)。これでは教員の実名は隠されている。名前が隠されているのになぜ私はN氏と確定できたか?単にコメントでN氏が指摘されたからではない。時間がたつとキャッシュが消えるだろうから、見たい人ははやくここを見てほしい。

現在は同大のサーバーから消去されているが、同大はどうやらNの実名を隠さないままの調査報告書(要約)を誤ってネットに公表してしまった様子。これでNと特定できた。あーあ。

画像 実名を隠さず公表してしまった調査報告書(要約)のキャッシュ -緑枠で隠したのは著者による

京都府立医大のページのキャッシュより
調査報告書(要約)写し1写し2

誰かが改定前の調査報告書(概要)の魚拓をとっていた。調査報告書(要約)写し1写し2)。黒塗りの部分をドラックしてメモ帳等のペーストすると隠した部分がわかってしまう。京都府立医大はNの実名を隠さないまま公表し、それを修正するため黒塗りを加えたが、不十分な隠し方だった。最終的には隠したい部分にマジック等で黒塗りを加えてからスキャンした画像を公表したと思う。同大はいったん公表したし、データが残っていると隠しても意味がないので端的に書くと内藤裕二経歴)の事。



7 コメント

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Unknown (Unknown)
2013-02-28 19:46:33
[2] の教員は、M氏とは別の人ではないかという噂もありますが、どうなんでしょうか?
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(2) (別人のようです)
2013-02-28 19:51:02
489 :名無しゲノムのクローンさん:2013/02/27(水) 23:01:05.95
京都府立医科大学に進学した高校時代の友人に聞いたところ、
HPにリンクされた報告書で二重投稿を揉消しにされているのは
消化器内科の内藤准教授で、循環器とは別に疑惑があったそうだよ。
で、その当時の上司にあたる教授が、なにかと話題のこの学長なんだけれども、
いろんなところに付き合いがあるので、学内では天皇なんだそうな。

http://yoshikawatoshikazu.com/

学内では、今回の騒動で観念した松原教授が辞表を提出しようとしたところ、
「辞めたら捏造を認めたことになる。」
といって学長は受理しなかったというウワサが流布しているそうだけど、
これで終わりにしようとしてるって一体何なんだろうねこの大学は。
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Unknown (Unknown)
2013-02-28 21:38:02
ちなみに、京都府立の松原氏の件も、もともとは内部告発で、匿名告発と聞いています。その後、明らかになった画像不正は一応大学などへ連絡していますが。
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回答 (世界変動展望 著者)
2013-02-28 22:35:05
11jigenさんですよね?いつもツィッターで紹介していただいてありがとうございます。紹介されるととてもアクセス数が上がります。また、間違いの指摘をありがとうございました。訂正しました。どうもすみませんでした。

Mの事件ももともと匿名による内部告発というのは知りませんでした。いったいどうやってそんな情報を?さすがです。

あと、せっかく投稿いただいたのに申し訳ないのですが、現在実名の扱いを検討しているので、将来的にコメントを非公開にするかもしれません。ご了承ください。報道や調査報告書でMやNの実名は公表されたので、ふせなくても大丈夫だと思いますが、今は扱いを検討しています。
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統治機能の問題 (憂古都)
2013-03-01 10:53:02
学長の吉川氏は消化器の専門家のはずですが、消化器内科学の教授の前に何故か糖尿病学の教授をされていますね。理解不能の謎の大学です。
また、抗加齢医学会、機能水学会の理事長をされていますが、両学会ともタニマチは怪しげなる民間療法の会社がずらり。研究活動を全て否定するものではありませんが、一般的には医科大学の学長が理事長をされるレベルの学会ではないことは確かです。うまみがあるのでしょうね。益々、謎の大学です。
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消化器内科教授選 (無名)
2013-03-01 10:54:59
京都府立医大消化器内科教授選が現在始まっています(公募は1月31日に終了)。そもそもY教授が学長になった時点で行うものですが、N氏を何とか次期教授にしようとするY学長の動きの中で、N氏への内部告発などがでてきたと聞いています。今回N氏は出ないという条件(密約??)の中で、再公募が行われたようです。しかし、またどろどろしたことが行われそうですね。公平な審査を臨みますが。。。
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回答 (世界変動展望 著者)
2013-03-02 00:15:22
憂古都さん

学長が所属する学会の支援団体については全く知りませんでした。京都府立医大は改善にむけてがんばってほしいと思います。

無名さん

Nの件はそういう裏があったんですか?教授選は公正に行われるといいですね。
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