世界変動展望

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一流科学誌も対応苦慮 STAP論文の不正「見抜けず」

2013-02-28 15:13:26 | 社会

STAP細胞論文の問題で、論文の撤回を2日に発表した英科学誌ネイチャーは、論文の審査体制を見直す方針を明らかにした。世界で最も権威のあると言われる同誌でも、不正を完全に排除するのは困難で、対応に苦慮している。

 STAP論文で見つかった画像の改ざんや捏造(ねつぞう)についてネイチャーは、掲載前に同じ分野の研究者がチェックする「査読」で見抜くことは できなかったと結論づけた。一方、画像の操作の発見は「比較的簡単」とし、こうした画像のチェックの頻度を増やすことを検討しているという。「編集方針の 改訂が済み次第、公表したい」としている。

 科学誌の論文撤回は珍しいことではない。研究不正に詳しい愛知淑徳大学の山崎茂明教授が、米国立医学図書館が運営する生命科学系の論文データベースで1980~2008年に撤回された論文1154本を調べたところ、ネイチャーは38本だった。米科学誌サイエンスの61本、米科学アカデミー紀要の43本に次いで多かった。

 山崎教授は「一流誌ほど世界中の科学者が注目を集めるきわどい論文を載せようと狙ってくる。査読は、データが正しいという前提に立つ性善説に基づ いているので意図的な不正を見抜くことは期待できない」と語る。ネイチャーが、こうした方針の転換にまで踏み込むか注目される。

 一流科学誌を舞台にした研究不正では、ネイチャーやサイエンスだけで十数本の論文が撤回された「米ベル研究所シェーン事件」が知られる。山崎教授は「STAP細胞と構図が似ている」と指摘する。

 事件では、20代で採用された無名の研究者が一流科学誌に高温超伝導に関する論文を次々と発表。当時、研究所の親会社が経営難に陥っていたため、格好の宣伝材料となって周りは何も言えなくなった。山崎教授は「手っ取り早く成果を上げたいという理研の思惑がなければ、STAP細胞論文も世の中に出ることはなかったかもしれない」と話す。(行方史郎)

■過去の主な科学論文の撤回

2002年 米ベル研究所研究員

米科学誌サイエンス、英科学誌ネイチャーなど

高温超伝導に関する論文で画像の使い回し、データ捏造(ねつぞう)が見つかり、計63本の論文が撤回

2005年 大阪大学医学研究科グループ

米医学誌ネイチャー・メディシン

インスリンの効き目に関係する酵素の働きを示した論文で画像データを不正操作

2006年 韓国ソウル大教授ら

サイエンス

世界で初めてヒトクローン胚(はい)からES細胞をつくったという論文でデータを捏造

2013年 東京慈恵会医科大グループ

英医学誌ランセット

製薬大手ノバルティスの高血圧治療薬の臨床研究の論文データを不正操作

2014年 理化学研究所など

ネイチャー

STAP細胞論文の画像に改ざんや捏造

※年は論文の撤回時

行方史郎

2014年7月3日13時53分

朝日新聞