米オレゴン健康科学大の立花真仁研究員らのチームが人のクローン胚性幹細胞(ES細胞)作製に成功したと15日付米科学誌セル(電子版)で発表された。日本でも報道された(その1、その2)。しかし、PubPeerで画像の再利用が指摘され、Cellが現在調査している[1][2][3][4]。
人のES細胞の研究だと2005年に発覚したソウル大の黄禹錫による捏造事件を思い出す。世界的なスキャンダルとなった。この事件も画像に関する不正を契機として発覚したものだ。今回の事件はそれを連想させる。指摘された画像不正疑惑が論文の核心に抵触するかはわからないが、今後大問題に発展しないとよい。
このような注目を集める研究成果は多くの人が見るので不正疑惑があるとすぐに指摘される。ネイチャー等のトップジャーナルで論文撤回が多いのは著しい成果を作りたいという研究者の欲望だけでなく監視者が多いという理由もあるだろう(関連)。
それにしても論文の受付日や受理日をみると査読期間はわずか4日。かなり短い。本当に十分な査読をしているのだろうか。
画像 人ES細胞作製論文の受理日等 - 論文のPDFより
今後どうなるか注目する。
参考
[1]Retraction Watch:"Cell reviewing allegations of image reuse in human embryonic stem cell cloning paper" 2013.5.22
[2]ScienceInsider:"Cell Investigating Breakthrough Stem Cell Paper" 2013.5.22
[3]共同通信 記事と写し 2013.5.23
[4]Natureの記事と写し 2013.5.23
[5]asahi.com 記事と写し 2013.5.24
[6]Cell誌のMary Beth O’Learyは疑惑はミスによるもので論文の結論には影響を与えないとコメント。(2013.5.24 追記)