世界変動展望

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三重大事件、今頃ようやく不正認定、懲戒解雇!共著者の関与は?不公正な業績評価をなくす制度の実現を!

2013-05-10 20:52:50 | 社会

『三重大准教授が不正論文 画像データ流用と懲戒解雇

 名古屋大学は10日、三重大大学院准教授の男性が名古屋大所属時に発表した論文に、画像データを他の論文などから流用する不正を繰り返していたと発表した。三重大は9日付で准教授を懲戒解雇処分とした。

 名古屋大や三重大によると、懲戒解雇されたのは三重大大学院生物資源学研究科の青木直人准教授。

 名古屋大に在籍していた当時に発表された論文を調査したところ、11本の論文中、66項目の画像データで不正が確認されたという。

 青木准教授が科学誌に投稿した論文にデータ捏造や改ざんがあるとの告発文が文部科学省に寄せられ、名古屋大と三重大が調査していた。[1]』

『三重大大学院の准教授、論文不正で懲戒解雇
(三重県)

三重大学の大学院准教授が他人の論文から画像データを流用するなどの不正を繰り返していたとして、9日付で懲戒解雇された。懲戒解雇されたのは、三重大学 大学院の生物資源学研究科・青木直人准教授(47)。名古屋大学と三重大学によると、青木准教授は名古屋大学に助手として勤務していた1996年から、他 人の論文から流用した実験画像のデータを加工し、自分の論文に掲載する不正を繰り返していたという。おととし2月、三重大学に告発があり、調査の結果、 11の論文で不正が見つかった。青木准教授は大学の聞き取りに対し、不正を否定しているという。論文の中には、文部科学省の機関から公的な補助金を受けた 研究もあり、三重大学は「不正と関連のある支出については返還を行う」としている。[2]』


5本の不正論文で補助金 三重大元准教授

 三重大大学院生物資源学研究科の青木直人元准教授(47)=9日付で懲戒解雇=が論文の中で画像データを不正使用していた問題で、三重大などは10日、青木元准教授が、不正が確認された5本の論文を研究実績として文部科学省所管の日本学術振興会などに申請、補助金を受け取っていたと明らかにした。

 三重大などによると、このほか、2本の論文を学術振興会に研究成果として報告していた。今後、補助金返還を協議するとしている。

 不正な画像が確認されたのは、名古屋大在籍時などに発表された細胞内の情報伝達を研究した論文など11本中69カ所に及ぶ。[3]』

この事件は今頃ようやく処分がくだされた。調査委員会ができたのが2011年3月で2年以上調査していたので、てっきり握りつぶしたのかと思っていた。不正が認められたのは当然だ。不正が認められ懲戒解雇になったことはよかったと思う。しかし、調査に余りに時間がかかりすぎ。調査と処分の報告ではあたかも普通に調査をしたように公表しているが、文科省のガイドライン等では本調査の期間は3~6ヶ月程度に定められているのに、大学はこれほど長期間公表が遅れた理由を何も説明していない。もっと迅速に調査をやらなければならない。

それにしてもこれも論文11編、66項目で不正だから青木以外の共著者で不正に関与した人がいるかもしれなが、調査報告書(概要)では青木以外の関与者はいないという扱いをした。もしかしてどの研究機関もいつもトカゲの尻尾切りをやるのかな。それはとてもまずい。

不正の可能性が指摘され全て項目について、青木直人准教授以外の共著者が不適切行為に関わったことを示す資料や証言は見出されなかった。[5]」と調査報告書(概要)で述べられているが、これだけたくさんの不正で青木以外に関与者がいないとか不正を知らなかったというのは信じ難い[6]。共著者が口をつぐんで不正を隠蔽しただけではないか?論文のデータを誰が作ったのか共著者たちが知らないはずがなく、きちんと調べれば不正データの作成者が特定できたはずだ。その者が不正の実行者だ。三重大や名古屋大の調査はその点で不当に甘かった。

世界記録捏造のFや独協医大のH、おそらく京都府立医大のMのデータ流用事件も主犯だけ不正認定して他が逃げ切るというトカゲの尻尾切りを実行しているので、このようなやり方を許したら当事者に反省がなく不正が繰り返されるおそれがある。不正が見つかってもボスだけが処分されるので安心だなどと考える悪い研究者が出るかもしれない。

これだけ多くの研究機関が不正が発覚したときにトカゲの尻尾切りを実行するのだから、不正の実行者がわからなかった場合は共著者全員が連帯責任という処理にすべきという気になるが、さすがにやりすぎか。ただ、トカゲの尻尾切りを繰り返す現在の調査のあり方は改善しないとまずい。

青木は不正を否定しているらしいが、告発者のサイトを見ると全く信じられない。東北大のU元歯学系助教、名市大O元医学系教授、H元医学系准教授、阪大卒のK医師、京都府立医大M元教授など不正が正式認定され一部の人は裁判で敗訴し、大量に不正の証拠があり、どうみても明白な不正なのにそれでも不正を否定している。全然反省していない。

少なくともこれだけたくさん明白な不正を否定する犯人がいたことを考えると、被疑者の「過失だ。不正をやっていない。」という主張は、それだけでは全く信用できない。保身のために平気で嘘をいう。どこかの研究機関のように大事にしないためか被疑者の主張を盲目的に信じてあっさり不正でないとしている研究機関は被疑者とぐるになって不正を隠蔽していると言われかもしれない。そういう態度は不適切だ。

被告発者が生データや実験・観察ノート、実験試料・試薬の不存在など、本来存在するべき基本的な要素の不足により、不正行為であるとの疑いを覆すに足る証拠を示せないとき(上記(2)2)も同様とする。=(不正行為とみなされる。)

証拠の証明力は、調査委員会の判断に委ねられるが、被告発者の研究体制、データチェックのなされ方など様々な点から故意性を判断することが重要である。

被告発者が自己の説明によって、不正行為であるとの疑いを覆すことができないときは、不正行為と認定される。

という文科省のガイドラインをきちんと守れといつも思う。

青木に関しては文科省のガイドラインを適用したようだ。「多数・長期にわたる不適切行為があったことは、仮に過失としても研究遂行上の重大な瑕疵である。[5]」として重過失を故意に準じて扱い不正を認定している点は評価できる。これは前に私が主張したもう一つ)ことだ。保身のために過失と主張するのは被疑者の常套手段なので、重過失を故意とみなすルールを作るべきかも知れない。

不正に使った公的研究費は返還されるという[2][3]。当たり前だ。独協医大H元教授は大規模なデータ改ざんを行ったが、独協医大は科研費を返還しないと発表し、学振はそれを追認した。H元教授に下されたのは5年間の競争的資金の応募制限のみ。独協医大のような社会の一員とは呼べないような全くモラルのない大学もあるので、不正に使った研究費は必ず返還させる制度を作らないとだめだ。

不正な論文で公的補助金を申請、実績報告するのは不適切な行為で、詐欺的な研究費の獲得と実績報告といえる。本来こういう行為は厳密には詐欺罪になるのかもしれないが、そこまで取り締まられた例を知らない。

前に紹介した尾崎美和子(アジアメディカルセンター 代表)の文章で

『多様性が重要と言いつつも審査委員、評価委員はいつも同じ、採択される研究者も委員会委員グループかその関係者(事業目的に合わせた専門性があまり考慮されていない)、報告書は実体のないものでも平気でとおる。調査、修正、訂正を求めても聞き入れられない。偽 りの報告書に対し、評価委員会を設け評価し(もちろんここにも公費が費やされているだろう)、そこにSやA評価が下る。何のための事業であったのか、その 目的が頻繁にぶれ、事後評価は『やったふりをしている』だけのことも多い。これは紛れもなく日本で起きている現実である。[4]』

不正が起きる原因の一つに予算獲得で有利になることがあるから、申請時や研究実績報告などの事後的な評価をきちんと適正に行うように改善することは必要だ。また、不適切な業績に基づいて審査が行われたら、やり直し、研究費の返還等を行う制度も必要だ。不公正な業績申告や評価が行われたら不正を認定し罰則を与える制度などを実現する必要がある。

参考
[1]共同通信  写し 2013.5.10
[2]中京テレビ 写し 2013.5.10 18:17
[3]共同通信 写し 2013.5.10
[4]尾崎美和子:"監査局や研究公正局の設立の必要性 ~科学者の心と言葉を取り戻す為に~" 日本の科学を考える 2013.4.10
[5]三重大の懲戒処分公表調査報告書(概要) 2013.5.10
[6]例えば不正論文のうちこれこれは筆頭著者は同じ人物と思われるが、これだけ(14項目)不正があって関与してなかった又は知らなかったというのは信じ難い。この筆頭著者が論文中でどのデータを作成し、どのような貢献があったのかきちんと特定すべきだ。