世界変動展望

私の日々思うことを書いたブログです。

京都府立医大元教授、バルサルタン論文で販売元社員名除外を指示か?

2013-05-14 22:52:28 | 社会

『降圧剤論文:販売元の社員名外す…京都医大元教授指示か

毎日新聞 2013年05月14日 02時30分

 降圧剤「バルサルタン」の臨床試験を巡り、学術誌から論文を撤回された京都府立医大チームの責任者だった松原弘明・元教授(56)が、統計解析に関与した薬の販売元「ノバルティスファーマ」(東京)の社員の名を論文に出さないよう、部下に指示した疑いがあることが、関係者への取材で分かった。ノ社とのつながりを隠蔽(いんぺい)するためだった可能性がある。大学や日本循環器学会も同様の情報を把握しており、調査している。

 同チームの論文は、血圧を下げるだけでなく、脳卒中や狭心症も抑える効果もあると結論付け、薬のPRに大々的に利用されてきた。研究チームは、臨床試験の実施要綱をまとめた2008年の論文でノ社は試験の設計やデータ解析などに無関係だと記し、統計解析責任者2人のうち1人の所属を「大阪市立大」としていた。この人物は、同大の非常勤講師を兼務するノ社の社員だったが、社名は明かしていない。チームは09年に試験結果をまとめた論文を発表。これには社員の名は記載しなかった。

 関係者によると、この社員は試験の打ち合わせに出席、統計処理にも関わっていた。しかし松原元教授は部下に対し、論文に社員の名前を出さないよう指示し、社員の関与も他言しないことを求めたという。

 これらの点について、松原元教授は弁護士を通じて毎日新聞にコメントした。論文に社員名を出さないように指示したり、社員の関与を口止めしたりしたことは「ない」と否定した。

 09年の論文は、ノ社によるバルサルタン(商品名はディオバン)の宣伝に使われてきた。一方で、ノ社は松原元教授の研究室に5年間に1億円余の奨学寄付金を提供していたことも分かっており、研究自体の正当性やノ社の関与を疑問視する声が、関係する学会などで高まっている。

 バルサルタンの臨床試験は、東京慈恵会医大▽滋賀医大▽千葉大▽名古屋大でも実施。いずれもノ社の同じ社員が関与していた。【河内敏康、八田浩輔】
 ◇何度も販売元の宣伝に…臨床試験結果の公表前

 松原弘明元教授は、試験の成果を公表する前から薬の販売元「ノバルティスファーマ」(東京)の宣伝記事に繰り返し登場していた。

 −−ぜひ、有意差を示してビッグジャーナル(有名学術誌)に発表していただきたいものです。

 松原元教授「ええ、頑張ります」。

ある医療雑誌の2008年12月号。ノ社提供のページに、松原元教授へのインタビューが載った。「有意差」とは同種の薬よりも優れた効果を指す。「バルサルタンのジャパン・エビデンス(日本発の科学的根拠)集積が期待されます」。記事は、バルサルタンに有利な結果が出ることを期待するインタビュアーの言葉で締めくくられた。

 そしてチームは09年、日本人の高血圧患者を対象にバルサルタンの心臓病予防効果などを示した論文を欧州心臓病学会誌に発表。これはバルサルタンの宣伝に繰り返し活用され、売り上げを支える要因の一つとなった。だが、今年2月、学会誌編集部は「重大な問題がある」と指摘して論文を撤回している。

 3月、ノ社の三谷宏幸社長(当時、現最高顧問)は取材に応じ、松原元教授の研究室に奨学寄付金を提供していたことを認めつつ、「薬メーカーが試験データを触ることはない。論文は先生のご自身の見識で発表された。それが我々に都合がいいデータであれば(宣伝に)使わせてもらう」と述べた。

【八田浩輔、河内敏康】

[1]』

M元京都府立医大教授(以下、M)がバルサルタン臨床研究の論文で販売元のノ社社員の名前を論文に載せないことや社員の関与を他言しないことを部下に指示していた疑いがあるという[1]。利益相反を隠蔽するためにノ社とのつながりを隠した可能性があることも言及された[1]。京都府立医大だけでなく日本循環器学会まで情報を把握し調査しているという[1]。学会まで調査しているのはいいことだと思うが、何が目的だ?再発防止策のため?

Mのグループとノ社が癒着していて、利益相反を隠すために論文でノ社社員のノ社所属を表示しなかったのではないかと思った人は多かっただろう。今回の報道は世間により強くそういう印象を与えるだろう。慈恵医大、名古屋大、千葉大、滋賀医大の研究でも同じノ社社員のノ社所属を論文に表示しなかった[2][3][4]。まさか・・・。

あいかわらずMは疑惑を否定している様子[1]。保身のために嘘をつく可能性が非常に高いMの言い分を何の証拠もなしに信用できないし、現にバルサルタン事件がただの過失だった等、Mの言い分は嘘が多い。こういう人物はできることなら国会の証人喚問や裁判での証人尋問のように真実を述べる宣誓をさせた上で強制的に証言させたい。嘘をつけば偽装罪の制裁がある。バルサルタン事件は国政調査権に基づく国会の調査までは発展しないかな?

現在の疑惑はノ社と研究機関・研究者が癒着し、研究者がノ社にとって都合のいいデータをでっちあげて発表したり、利益相反を隠蔽して中立・公正な論文で信頼性が高いと偽って販促していたことだ。そういう詐欺的な研究発表や販促があったのかどうか徹底的に究明する必要がある。

ところで、問題のノ社社員だが、Fobesで実名報道された[5]。[5]を見ると、論文の統計解析者の部分の画像を出しており、[2]と同じことをやっている。[2]で記載したように私のブログは「宴のあと」事件(東京地判昭和39年9月28日)の判例の規範を基準に実名記載の可否を判断しているが、マスメディアはどういう基準なんだろう?[1]を見るといまだにノ社社員の実名を隠しているし、フライデーもそうだった。しかし、Fobesは実名を掲載、最近のI.K.東大医学系教授の不正疑惑も実名と顔写真付で報道された。思えばS.K.元東大分生研教授の不正疑惑もまだ日本の報道機関で実名報道していない段階でScienceInsiderが実名報道していたし、Retraction Watchも実名と顔写真がわかる場合は大概それを報じている。

国内と海外のメディアでは実名や顔写真の報道基準が異なるのかもしれない。どういう基準なのだろう?海外のメディアは公開されているのだから実名等を扱っても構わないだろうという考えか?日本のメディアは疑惑段階では通常実名等を出さないが、I.K.の事件等を見ると疑惑段階でも辞職すると実名報道するので、よく基準がわからないし、辞職すると疑惑段階でも実名を扱う理由がわからない。

メディアの基準はよくわからないが、ノ社社員の実名は雑誌でも扱われ、ネットを通して不特定多数に公開されているから、実名を扱っても構わないと考える人は増えるだろう。ノ社社員はノ社や研究機関の悪い部分があるならきちんと供述して真相を明らかにしてほしい。そうでないと不当にノ社社員の責任されてしまうおそれもある。

今後徹底した真相の究明と改善策の実現を期待する。

参考
[1]毎日新聞 (web) 写し1写し2 2013.5.14
[2]世界変動展望 著者:"白橋伸雄(Nobuo Shirahashi)・ノバルティスファーマ社社員のバルサルタン不正疑惑への関与について" 世界変動展望 2013.4.30
[3]世界変動展望 著者:"白橋伸雄がNagoya Heart Study、VARTのバルサルタン論文でもノ社所属を表記せず統計解析者として名を連ね" 世界変動展望 2013.4.30
[4]世界変動展望 著者:"滋賀医大もバルサルタン論文を調査、またしても白橋伸雄ノ社社員が論文にノ社所属を表示せず名を連ね" 世界変動展望 2013.5.2
[5]Fobesの記事の写し 2013.5.2



2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ブラックアカデミズム (ノスカール)
2013-05-15 13:16:39
ブラックジャーナリズムという言葉があります。今回の一連の報道はブラックアカデミズムという言葉がぴったりです。

The stastical analysis ogenaniztion (board)
Nobuo Shirahashi Osaka City University Mediacl School
上記の類が、Jikei Heart Study, Kyoto Heart Study, VART, Nagoya Heart Study, SMARTでご指摘のように認められていますね。

「関係者によると、・・・・・求めたという。」が事実であれば、上記のすべての大学で起きていたことと推定されます。

手元に、Cardiovascular Frontierというノバルティスの広告のみを満載したメディカルレビュー社の雑誌があります。Kyoto, VART, Nagoyaの責任研究が編集委員または編集アドバイザーをしています。値段は2310円ですが、私の所属する施設では毎号ノバルティス社から無料でご参考にしてくださいと配布されています。随所にバルサルタン関連薬品をほめたたえています。どこの大学にも無料配布されているものです。このことからも、循環器の医師であれば、この3人がノバルティスとスブスブな関係であることを知らぬ者は少ないです。

返信する
回答 (世界変動展望 著者)
2013-05-15 23:50:12
千葉大等でもノ社社員の所属を表示しないように指示があったケースは最悪ですね。そうでないといいと思います。
返信する