駒子の備忘録

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シス・カンパニー『かもめ』

2013年09月14日 | 観劇記/タイトルか行
 シアターコクーン、2013年9月9日ソワレ。

 19世紀末、帝政末期のロシア。作家志望の青年トレーブレフ(生田斗真)は伯父ソーリン(山崎一)の田舎屋敷で暮らしながら、新しい演劇の創作に燃えていた。トレープレフの母で大女優のアルカージナ(大竹しのぶ)も愛人の流行作家トリゴーリン(野村萬斎)わ連れて屋敷に滞在している。トプレフは女優を夢見る恋人のニーナ(蒼井優)を主役に自作の戯曲を上演するが…
 作/アントン・チェーホフ、上演台本・演出/ケラリーノ・サンドロヴィッチ、美術/島次郎。1896年初演。『かもめ』『ワーニャ伯父さん』『三人姉妹』『桜の園』のチェーホフ四大戯曲をKERAが演出していく第一弾。全二幕。

 おそらく初めて舞台でチェーホフを観ましたが、イメージとしてはこんな感じでした。普通の人々の日常の、たわいない会話でつむがれる物語で、でもそこにこそドラマがある、というような。でも初演が大失敗に終わったというのもわかる気がします。確かに大芝居を期待して観た当時の観客には理解しがたいものだったでしょうからね。でもこういうタイプの物語だからこそ、100年以上の時がたっても、今も世界中どこででも何度でも上演されるのだ、と思いました。
 チェーホフは悲劇的な結末にもかかわらずこの作品を「四幕の喜劇」としているそうで、二幕四場に仕立てた今回の舞台でもそれは踏襲されていました。KERAさんお得意の不条理なギャグや笑いではなく、日常的にありがちな滑稽さやみっともなさ故のクスクス笑いやいたたまれない苦笑いがにじむような客席でした。
 だからこそラストの効いたのだと思うし、でも確かに悲劇的ですが日常的に普通にあることであり、だからこそせつないとか悲しいとかいったとおりいっぺんの言葉では語りつくせないような思いが残る観劇となりました。おもしろかったです。

 斗真くんはエキセントリックなマザコン若者と二年後に作家として名を成してからもあいかわらず不安定な青年とをとても上手く演じているなと思いました。もっさり見えるよう作っていたのもいい。
 大竹しのぶもこういう、華があるんだけどちょっとあつかましい女の役をやらせたら抜群に上手い。大女優という設定だけれどホントは昔にちょっとすごかっただけの人、という捉え方も素晴らしいと思いました。
 野村さんがまたすごいいい声で、でも色悪とも言い切れない滑稽さが抜群でした。身体能力も高いんだなあ、あんな笑いの取りかたをするとは思っていませんでした。
 蒼井優ちゃんは私は舞台での声が大好き。こちらも野心的な若い娘、そしてこれまたちょっとエキセントリックなところがある娘の役を好演していました。
 私がもしかしたら年10本くらい出演作を観ている気がする浅野和之のドールンもよかった。小野武彦もいかにもいるよねこういう人!ってのが本当に上手い。
 達者な人揃いのよくできた緊密な舞台だったと思いました。
 続く作品も観てみたいかな。

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