駒子の備忘録

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『エドワード二世』

2013年10月26日 | 観劇記/タイトルあ行
 新国立劇場、2013年10月23日マチネ。

 イングランド王エドワード一世の死後、王位を継いだエドワード二世(柄本佑)は追放されていたフランス人騎士ギャヴィストン(下総源太朗)を呼び戻し、異常な寵愛ぶりを発揮する。それが貴族たちや司教の反感を買う。一方、王妃イザベラ(中村中)は愛人のモーティマー(石田佳央)とともに王子への譲位を迫るが…
 作/クリストファー・マーロウ、翻訳/河合祥一郎、演出/森新太郎。1592年初演、日本での上演は半世紀ぶり。全2幕。

 すっごいよかった! 新国立劇場の小劇場作品は本当に裏切らないなあ、と思います。今のところ今年のマイ・ストレートプレイ・ベスト3は『OPUS/作品』と『フルーフ/証明』と、これだなあ。
 シェイクスピアは実はわりと苦手なのですが(『ハムレット』と『オセロ』、『マクベス』は好き。『リア王』は久しく観てないな…恋愛喜劇はけっこう支離滅裂だと思うのですよ)、同じ時代の作品、というかシェイクスピアの先行者であったマーロウのこの作品はすごくちゃんとしていておもしろかった。
 いや、総じて言うと、プログラムにあった柄本佑の言葉どおり「バカバカしい話」なんですよ。愚王とその愚劣な家臣たちとの裏切りと変心の物語で、別に綺麗に終わるとか何かメッセージがあるとかいうこともない、史実まんまの歴史・政治風刺劇なんだと思うのです。でもその風刺というものが、やっとわかる歳に私もなったのかもしれません。

 幕が開くと(舞台は手前に幅1メートルほどのエプロンステージということもない一段低い舞台があり、その奥に一段高い本舞台があり、その間をまさしくレールが通ってカーテンが引かれています。この開閉が実に劇的で効果的でした!)、ギラギラしたスーツの男がひとり手紙を読みながら立っています。なんでスーツ?と思うのですが、別に現代に置き換えたとかそういうことではなくて、ただ衣装として、当時の官僚の制服の象徴のようなものとして扱われているのですね。これがまず抜群に上手いと思いました。
 これが寵臣ギャヴィストンで、ろくでもない男で、ということはそのスーツからもすぐわかるわけです。愛人系の男たちはみんなチンピラスーツで現われるのです。
 では貴族たちはどうかと言うと、ダークスーツではあるのですが、ビシッとしたビジネスマンのスーツではなくて、いわゆるヤクザのスーツなんですよね。シャツが白とかブルーとかじゃなくて黒なの。こちらはこちらで怪しいわけですよ。でもあくまで端整に着こなし、腰に剣とか下げて仕えるポーズはして見せるわけ。
 そして王様は濃いブルーの若者スーツな大きな付け髭。王子さまは坊ちゃんふうのダブルの細身のスーツといった按配です。上手い!
 柄本佑が好きで観に行ったんだけれど、まあこのバカ殿さまをそれはそれは上手く達者に見せてくれて、周りの家臣たちのおじさまがたがまた素晴らしく怪しくて、日本の演劇界はすごいなとか思いました。
 初めて観る演出家でしたがシンプルな舞台の使い方が上手く人の出し入れが上手く、美しく的確な翻訳の台詞を上手く使っていて本当に感心しました。集中が途切れなかったし、興奮しました。

 カテコのシメまで粋なんですよまた!
 最初はメインキャストがセンター寄りに立って一列に並んで一礼して。二度目は逆にメインキャストが脇に散ってアンサンブルたちがメインに立ったので、素敵だなあと思っていたら、最下手にいた主役の柄本佑がカーテンを手に上手まで歩いて、それで幕、となったのです。カッコいい!

 中村中がいい舞台女優になっていたのにも感動しました。以前はもっとミュージシャンの人だよね、みたいな感じが強かったと思いますが、低い声が素敵で、いい王妃様役でした。王弟ケント伯エドマンド役の窪塚俊介も好演していました。

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