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「中央区を、子育て日本一の区へ」こども元気クリニック・病児保育室  小児科医 小坂和輝のblog

感染を制御しつつ、子ども達の学び・育ちの環境づくりをして行きましょう!病児保育も鋭意実施中。子ども達に健康への気づきを。

コムスン(3) 卵焼き職人の老老介護

2007-06-13 01:31:45 | 医療
福祉保健委員会でがんの子ども達の在宅医療を質問したことや、
話題のコムスンの件もあり、最近手にした本。
『聖路加病院訪問看護科 11人のナースたち』上原善広著 新潮社。

それを読んで、ひと段落して、なんとなく月島温泉に行った。
そこで、今日偶然知り合った人が、
私が医者だと知って、ご自身の介護の話をしだした。
そして、なんとその本の話題になり、148ページに取り上げられている
その本人だと知り、驚きと感動。

その本の中では、武内健次氏として登場。
1933(昭和8)年、築地の仲買人の次男として生まれた。
家で卵を焼いていれば、
後々年老いた父母の面倒をみることができると考え、
卵焼き職人になった。
1964(昭和39)年、昭和9年生まれの美智と結婚。
二人の女の子に恵まれ、幸せだった。
結婚33年目の1997年4月10日。
妻が脳梗塞で突然倒れた。
聖路加病院に入院。
左腕の軽度麻痺、右腕と右足の麻痺、失語が残ったまま、
1999年3月に退院。

意識は明瞭だったが、日常生活は全てにおいて介護の手が必要。
自宅療養とともに聖路加病院の訪問看護が始まる。

仕事をすぐに廃業し、介護に専念。
そして7年が経った。

押川看護師は、武内さんの世代でこれほど献身的に介護をしている人はなかなかいないという。

筆者も武内さんにあうが、江戸っ子の苦労人らしく、礼儀正しい挨拶をされたという。

そして、銭湯の帰り道、武内さんは、7年の介護の話を淡々と私に語ってくれた。
今、奥さんは、寝たきりかつ、経管チューブから栄養をとる「介護5」で、訪問看護は、週に二回。訪問介護も当然受けている。本人は、在宅介護がいいのだという。施設に入ったらいつも一緒に入れるわけでもなく、急変などおこることが心配だから。


本書の、武内さんの語りを書いておく。
「へえ、おっかあ(妻)の介護がいやになったことはないです。今日もおっかあが無事でよかったなと、毎日そう思っております。初めはどうしていいか、わからなかったこともありましたけど、慣れてきたらどうってことないですよ。自然のならいとでもいうのでしょうか。入院だ、退院だといろいろあるしんどいなかでも、話題づくりをしてみたりして、楽しんで生活するようにしています。まあ、気をつけることといえば、睡眠をよくとることと、歩いたり自転車に乗ったりして運動して、ストレスをためないことくらいでしょうか。介護というものも、手前どもの好きな野球と同じで、ダメになるかなあと思い始めたらダメになるのと同じじゃないですかね。介護にしても、野球と同じで、そうじゃないですかね。」

築地から自転車で、月島の銭湯に来られていた。私の連れに聞いたところ、お酒が大変お好きらしい。介護の苦労なんか微塵も見せずに、さっそうと自転車に乗っていった後姿が印象に残っている。

この出会いを記したく、読んでいた本の中の登場人物との出会いなんて、なかなかあるもんじゃない。どうしても書かずして寝れないため書いた次第。


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