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場外車券販売施設から生活環境利益保護のため周辺医療機関が裁判提起可能

2014-09-30 23:00:00 | 行政法学
 誰が裁判を提起できるか、裁判を提起できる資格のありなし(原告適格)は、
 行政訴訟においても大事な問題です。

 以下の最高裁判決は、場外施設をめぐる周辺住民等の原告適格を判断した最初の最高裁の判決です。

 評釈では、「本判決が周辺住民に訴訟で争う途を閉ざした意味は重い」など批判もありますが、本判決により、場外車券発売施設設置許可に対する訴訟において、周辺医療機関の開設者X2,X3,X4(施設から120m 180m 200m)は、原告適格がありとされました(実際は、差し戻し審大阪地裁H24・2・29で原告適格は認められました。)。ちなみに800mの医療機関開設者X1は原告適格が認められませんでした。

 医療機関開設者は、生活環境利益を保護するために、裁判を提起する資格が認められます。

 ただ、生活環境利益の保護を理由に、裁判に、勝つには、次なるハードルがあります。



***********************判決文全文*******************************
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/073/038073_hanrei.pdf

主文

1 原判決中被上告人X1に関する部分を破棄する。

2 その余の被上告人らに関する部分につき,原判決を
次のとおり変更する。
(1) 第1審判決中,被上告人X2,同X3及び同X4に関する部分を取り消し,同部分につき,本件を大阪地方裁判所に差し戻す。
(2) その余の被上告人らの控訴を棄却する。
3 前項(2)の被上告人らの請求に関する控訴費用及び 上告費用は,同被上告人らの負担とする。
4 本件訴訟のうち被上告人X1に関する部分は,平成 19年12月13日同被上告人の死亡により終了し た。


理由

第1 職権による検討
記録によれば,被上告人X1は原判決言渡し前である平成19年12月13日に 死亡したことが明らかである。本件訴訟は,被上告人が死亡した場合においてはこ れを承継する余地がなく当然に終了するものと解すべきであるから,原判決中同被 上告人に関する部分を破棄し,同被上告人の死亡により本件訴訟が終了したことを 宣言することとする。
第2 上告代理人貝阿彌誠ほかの上告受理申立て理由について 1 本件は,経済産業大臣がA(以下「A」という。)に対し自転車競技法(平
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成19年法律第82号による改正前のもの。以下「法」という。)4条2項に基づ き場外車券発売施設「サテライト大阪」(以下「本件施設」という。)の設置の許 可(以下「本件許可」という。)をしたところ,本件施設の周辺において病院等を 開設するなどして事業を営み又は居住する被上告人ら(被上告人X1を除く。以下 同じ。)が,本件許可は場外車券発売施設の設置許可要件を満たさない違法なもの であるなどと主張して,上告人に対しその取消しを求める事案である。
2 原審が確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。
(1) Aは,大阪市中央区日本橋1丁目所在の土地(以下「本件敷地」とい う。)に本件施設を設置することとし,経済産業大臣から平成17年9月26日付 けで本件許可を受けた。
(2) Aが作成した資料によれば,本件施設は,鉄骨造,7階建て,地下1階の 建物(高さ29.2m,延べ床面積8121.30m²)であり,同社から競輪施行 者(岸和田市)に対して賃貸され,競輪施行者においてその運営等を行うこととさ れている。また,本件施設における営業の日数として年間340日が予定され,1 日当たり約1700人の来場が見込まれている。
(3) 本件敷地は,大阪市営地下鉄の日本橋駅及び近鉄奈良線の近鉄日本橋駅に ほど近い大阪府道恵美須南森町線(堺筋)に面した商業地域に所在しており,建築 基準法48条及び同法別表第二により場外車券発売施設(以下「場外施設」とい う。)の設置が禁じられる地域やこれに隣接して所在するものではなく,また,こ れらと同様の実質を備えた地域に所在するものでもない。被上告人らのうち,被上 告人X2,同X3,同X4及び同X5は,それぞれ本件敷地から約120m,約180 m,約200m及び約800m離れた場所に,いずれも病院又は診療所を開設する
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医師である。その余の被上告人らは,いずれも,本件敷地から1000m以内の地 域において居住し又は事業を営む者である。
(4) 法4条2項は,経済産業大臣は,場外施設の設置許可の申請があったとき は,申請に係る施設の位置,構造及び設備が経済産業省令で定める基準に適合する 場合に限り,その許可をすることができる旨規定している。そして,これを受け, 自転車競技法施行規則(平成18年経済産業省令第126号による改正前のもの。 以下「規則」という。)15条1項は,上記の基準として,1 学校その他の文教 施設及び病院その他の医療施設(以下,これらを併せて「医療施設等」という。) から相当の距離を有し,文教上又は保健衛生上著しい支障を来すおそれがないこと (同項1号。以下,この基準を「位置基準」という。),2 施設の規模,構造及 び設備並びにこれらの配置は周辺環境と調和したものであること(同項4号。以 下,この基準を「周辺環境調和基準」という。)を定めている。また,規則14条 2項は,場外施設の設置許可申請書に,敷地の周辺から1000m以内の地域にあ る医療施設等の位置及び名称を記載した場外施設付近の見取図,場外施設を中心と する交通の状況図並びに場外施設の配置図を添付すべき旨を定めている。
3 原審は,上記事実関係等の下において,次のとおり判示して,被上告人らは いずれも本件許可の取消しを求める原告適格を有すると判断し,原告適格を否定し て被上告人らの訴えをすべて却下した第1審判決を取り消して本件を第1審に差し 戻すべきものとした。
法及び規則の趣旨,目的に反する場外施設の設置許可がされた場合,そのような 施設に起因する善良な風俗及び生活環境に対する悪影響を直接的に受けるのは,当 該場外施設の周辺の一定範囲の地域において居住し又は事業を営む住民に限られ,
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その被害の程度は,居住地や事業地が当該場外施設に接近するにつれて増大する。 また,これらの住民が,当該地域において居住し又は事業を営み続けることにより 上記の被害を反復,継続して受けた場合,その被害は,これらの住民のストレス等 の健康被害や生活環境に係る著しい被害にも至りかねず,そのような被害を受けな い利益は,一般的公益の中に吸収解消させることが困難なものである。規則が,場 外施設の設置許可申請者に対し,その敷地の周辺から1000m以内の地域にある 医療施設等の位置及び名称を記載した見取図を添付することを求め,また,位置基 準及び周辺環境調和基準を定めていることにかんがみると,これらの規定は,当該 場外施設の敷地の周辺から1000m以内の地域において居住し又は事業を営む住 民に対し,違法な場外施設の設置許可に起因する善良な風俗及び生活環境に対する 著しい被害を受けないという具体的利益を保護したものと解するのが相当であり, 被上告人らは,いずれも本件許可の取消しを求める原告適格を有するものと解され る。
4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次 のとおりである。
(1) 行政事件訴訟法9条は,取消訴訟の原告適格について規定するが,同条1 項にいう当該処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」とは,当該 処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され,又は必然的に侵 害されるおそれのある者をいうのであり,当該処分を定めた行政法規が,不特定多 数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,それが帰属 する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解され る場合には,このような利益もここにいう法律上保護された利益に当たり,当該処
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分によりこれを侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者は,当該処分の取 消訴訟における原告適格を有するものというべきである。
そして,処分の相手方以外の者について上記の法律上保護された利益の有無を判 断するに当たっては,当該処分の根拠となる法令の規定の文言のみによることな く,当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及 び性質を考慮し,この場合において,当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たっ ては,当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参 酌し,当該利益の内容及び性質を考慮するに当たっては,当該処分がその根拠とな る法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれ が害される態様及び程度をも勘案すべきものである(同条2項,最高裁平成16年 (行ヒ)第114号同17年12月7日大法廷判決・民集59巻10号2645頁 参照)。
(2) 上記の見地に立って,被上告人らが本件許可の取消しを求める原告適格を 有するか否かについて判断する。
ア 一般的に,場外施設が設置,運営された場合に周辺住民等が被る可能性のあ る被害は,交通,風紀,教育など広い意味での生活環境の悪化であって,その設 置,運営により,直ちに周辺住民等の生命,身体の安全や健康が脅かされたり,そ の財産に著しい被害が生じたりすることまでは想定し難いところである。そして, このような生活環境に関する利益は,基本的には公益に属する利益というべきであ って,法令に手掛りとなることが明らかな規定がないにもかかわらず,当然に,法 が周辺住民等において上記のような被害を受けないという利益を個々人の個別的利 益としても保護する趣旨を含むと解するのは困難といわざるを得ない。
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イ 位置基準は,場外施設が医療施設等から相当の距離を有し,当該場外施設に おいて車券の発売等の営業が行われた場合に文教上又は保健衛生上著しい支障を来 すおそれがないことを,その設置許可要件の一つとして定めるものである。場外施 設が設置,運営されることに伴う上記の支障は,基本的には,その周辺に所在する 医療施設等を利用する児童,生徒,患者等の不特定多数者に生じ得るものであっ て,かつ,それらの支障を除去することは,心身共に健康な青少年の育成や公衆衛 生の向上及び増進といった公益的な理念ないし要請と強くかかわるものである。そ して,当該場外施設の設置,運営に伴う上記の支障が著しいものといえるか否か は,単に個々の医療施設等に着目して判断されるべきものではなく,当該場外施設 の設置予定地及びその周辺の地域的特性,文教施設の種類・学区やその分布状況, 医療施設の規模・診療科目やその分布状況,当該場外施設が設置,運営された場合 に予想される周辺環境への影響等の事情をも考慮し,長期的観点に立って総合的に 判断されるべき事柄である。規則が,場外施設の設置許可申請書に,敷地の周辺か ら1000m以内の地域にある医療施設等の位置及び名称を記載した見取図のほ か,場外施設を中心とする交通の状況図及び場外施設の配置図を添付することを義 務付けたのも,このような公益的見地からする総合的判断を行う上での基礎資料を 提出させることにより,上記の判断をより的確に行うことができるようにするとこ ろに重要な意義があるものと解される。
このように,法及び規則が位置基準によって保護しようとしているのは,第一次 的には,上記のような不特定多数者の利益であるところ,それは,性質上,一般的 公益に属する利益であって,原告適格を基礎付けるには足りないものであるといわ ざるを得ない。したがって,場外施設の周辺において居住し又は事業(医療施設等
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に係る事業を除く。)を営むにすぎない者や,医療施設等の利用者は,位置基準を
根拠として場外施設の設置許可の取消しを求める原告適格を有しないものと解され
る。
ウ もっとも,場外施設は,多数の来場者が参集することによってその周辺に享 楽的な雰囲気や喧噪といった環境をもたらすものであるから,位置基準は,そのよ うな環境の変化によって周辺の医療施設等の開設者が被る文教又は保健衛生にかか わる業務上の支障について,特に国民の生活に及ぼす影響が大きいものとして,そ の支障が著しいものである場合に当該場外施設の設置を禁止し当該医療施設等の開 設者の行う業務を保護する趣旨をも含む規定であると解することができる。したが って,仮に当該場外施設が設置,運営されることに伴い,その周辺に所在する特定 の医療施設等に上記のような著しい支障が生ずるおそれが具体的に認められる場合 には,当該場外施設の設置許可が違法とされることもあることとなる。
このように,位置基準は,一般的公益を保護する趣旨に加えて,上記のような業 務上の支障が具体的に生ずるおそれのある医療施設等の開設者において,健全で静 穏な環境の下で円滑に業務を行うことのできる利益を,個々の開設者の個別的利益 として保護する趣旨をも含む規定であるというべきであるから,当該場外施設の設
置,運営に伴い著しい業務上の支障が生ずるおそれがあると位置的に認められる区
域に医療施設等を開設する者は,位置基準を根拠として当該場外施設の設置許可の
取消しを求める原告適格を有するものと解される。そして,このような見地から,
当該医療施設等の開設者が上記の原告適格を有するか否かを判断するに当たって
は,当該場外施設が設置,運営された場合にその規模,周辺の交通等の地理的状況
等から合理的に予測される来場者の流れや滞留の状況等を考慮して,当該医療施設
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等が上記のような区域に所在しているか否かを,当該場外施設と当該医療施設等と
の距離や位置関係を中心として社会通念に照らし合理的に判断すべきものと解する
のが相当である。
なお,原審は,場外施設の設置許可申請書に,敷地の周辺から1000m以内の 地域にある医療施設等の位置及び名称を記載した見取図等を添付すべきことを義務 付ける定めがあることを一つの根拠として,上記地域において医療等の事業を営む 者一般に上記の原告適格を肯定している。確かに,上記見取図は,これに記載され た個々の医療施設等に前記のような業務上の支障が生ずるか否かを審査する際の資 料の一つとなり得るものではあるが,場外施設の設置,運営が周辺の医療施設等に 対して及ぼす影響はその周辺の地理的状況等に応じて一様ではなく,上記の定めが 上記地域において医療等の事業を営むすべての者の利益を個別的利益としても保護 する趣旨を含むとまでは解し難いのであるから,このような地理的状況等を一切問 題とすることなく,これらの者すべてに一律に上記の原告適格が認められるとする ことはできないものというべきである。
エ これを本件について見ると,前記事実関係等によれば,本件敷地の周辺にお いて医療施設を開設する被上告人らのうち,被上告人X5は,本件敷地の周辺から 約800m離れた場所に医療施設を開設する者であり,本件敷地周辺の地理的状況 等にかんがみると,当該医療施設が本件施設の設置,運営により保健衛生上著しい 支障を来すおそれがあると位置的に認められる区域内に所在しているとは認められ ないから,同被上告人は,位置基準を根拠として本件許可の取消しを求める原告適 格を有しないと解される。これに対し,その余の被上告人X2,同X3及び同X4 (以下,併せて「被上告人X2ら3名」という。)は,いずれも本件敷地の周辺か
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ら約120mないし200m離れた場所に医療施設を開設する者であり,前記の考 慮要素を勘案することなく上記の原告適格を有するか否かを的確に判断することは 困難というべきである。
オ 次に,周辺環境調和基準は,場外施設の規模,構造及び設備並びにこれらの 配置が周辺環境と調和したものであることをその設置許可要件の一つとして定める ものである。同基準は,場外施設の規模が周辺に所在する建物とそぐわないほど大 規模なものであったり,いたずらに射幸心をあおる外観を呈しているなどの場合 に,当該場外施設の設置を不許可とする旨を定めたものであって,良好な風俗環境 を一般的に保護し,都市環境の悪化を防止するという公益的見地に立脚した規定と 解される。同基準が,場外施設周辺の居住環境との調和を求める趣旨を含む規定で あると解したとしても,そのような観点からする規制は,基本的に,用途の異なる 建物の混在を防ぎ都市環境の秩序ある整備を図るという一般的公益を保護する見地 からする規制というべきである。また,「周辺環境と調和したもの」という文言自 体,甚だ漠然とした定めであって,位置基準が上記のように限定的要件を明確に定 めているのと比較して,そこから,場外施設の周辺に居住する者等の具体的利益を 個々人の個別的利益として保護する趣旨を読み取ることは困難といわざるを得な い。
したがって,被上告人らは,周辺環境調和基準を根拠として本件許可の取消しを
求める原告適格を有するということはできないというべきである。
他に,被上告人X2ら3名を除く被上告人らにおいて本件許可の取消しを求める 原告適格を有すると認めるに足りる事情は存在しないから,これらの被上告人ら は,本件許可の取消しを求める原告適格を有しないものと解される。
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5 以上のとおり,被上告人らが本件許可の取消しを求める原告適格を有すると した原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨 はこの趣旨をいうものとして理由があり,原判決のうち,被上告人X2ら3名を除 く被上告人らに関する部分は破棄を免れない。そして,第1審判決中,被上告人X 2ら3名の訴えを却下した部分はこれを取り消し,同被上告人らが上記の原告適格 を有するか否か等について更に審理を尽くさせるため,同部分につき,本件を第1 審に差し戻すのが相当である。また,第1審判決中,その余の被上告人らの訴えを 却下した部分に関する判断は,結論において相当であるから,同部分につき同被上 告人らの控訴を棄却することとする。これと異なる原判決は主文第2項のとおり変 更すべきである。

よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 甲斐中辰夫 裁判官 涌井紀夫 裁判官 宮川光治 裁判官櫻井龍子 裁判官 金築誠志)
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情報公開条例をたてに情報を出さない行政から、いかに公開を勝ち取るか(事例研究第2部問題1を例に)

2014-09-29 23:00:00 | 行政法学
(事例研究行政法「第二部第1問土地買収価格の公開をめぐる紛争」を題材に)
  
第1 設問1 

1、本件取消訴訟における原告Xの違法性の主張について

(1)条例8条1項4号該当性について
 Xがなした道路拡幅工事用地として買収した土地に関して作成された文書P(以下、「同文書」という。)の公開をもとめたところ、Yは、「各土地の買収価格と単価」(以下、「本件非公開部分」という。)が、条例8条1項4号に該当するとして、非公開とした。
 同号には、「当該若しくは同種の事務の目的が達成できなくなり、又はこれらの事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれ」と規定があるものの、①当該事務は、すでに土地を買収し目的を達成した結果としての情報であるし、また、②同種の事務として、道路拡張工事の他の地域の買収を考えたとしても、その地域の土地の価格はその地域の周辺地域の類似の土地の地価によって定まる損失補償基準が用いられているものであって、非公開とした土地の買収価格が公開されたからと言っても、目的が達成できなくなることや、著しい支障が及ぼされるとまでは言えない。
 従って、同号に該当せず、本件非公開処分は、取り消されるべきである。


(2)条例11条1項該当性について
 また、たとえ条例8条1項4号に該当する情報であったとしても、条例11条1項では、「公益上特に必要があると認めるとき」は、公開することを定める。
 本件非公開部分の情報は、道路拡幅工事において適正な価格で土地が買収されたかを示すもので、適正な公金支出がなされていることを知るために、公益上特に必要があると言える。
 従って、同項に該当し、本件非公開処分は、取り消されるべきである。


(3)手続法上の違法性について
 非公開処分においては、理由付記義務が定められている(条例13条3項)。すなわち、非公開決定には理由を付さなければならない。
 本件では、単に該当する条文を指摘するだけであり、具体的に非公開事由に該当することの説明がなく、十分な理由の付記がない。
 従って、非公開処分は、適切な手続きに則らずになされており、説明責任を果たすことで県民の県政への参加を推進し、県民の県政への信頼を深めるという情報公開条例の趣旨(条例1条参照)に大きく反し、条例13条3項1号違反であるが故に、本件非公開処分は、取り消されるべきである。



2、本件取消訴訟における被告行政Yの非公開処分の適法性の主張について

(1)条例8条1項4号該当性について
 公共事業用地の買収は、土地を手放したくない土地所有者に対して公共事業への理解を求め、何度も足を運んで納得してもらって買収に至るという説得に時間を要する事務であり、買収価格が明らかになると、今後同種の公共事業について買収交渉をする際にも困難が予想される。特に、道路Qの拡幅工事において、買収はほとんど終わっていたが、一部にまだ交渉中の土地も残っており、さらに、今後同種の道路工事を近くでも予定している状況であった。
 ①公共事業用地の買収という事務の特性を鑑みると、本件非公開部分の公開により、土地所有者は、同じ道路Qの拡幅工事であるというだけで、公開された土地価格と自らの土地の価格を土地の特性など考慮に入れることなく単純に比較することとなり、両者の差が大きい場合において、買収の説得作業が難航する可能性があるのであって、当該若しくは同種の事務の目的が達成できなくなるか、又は著しく支障が来されることになるおそれがある。
 また、②今後、同種の道路事業が計画されており、買収価格が公開されると、それら事業における土地買収の交渉にも同様に支障を来すことが考えられる。
 従って、同号に該当し、非公開処分は、適法である。

(2)条例11条1項該当性について
 条例11条の公益上の判断には、行政に裁量が与えられている。
 本件非公開部分の情報は、個別の土地の値段であって、公益上特に重要なものとはいえないと判断することは、裁量権の逸脱濫用とまでは言えない。
 道路Qの拡幅工事への公金支出の適正をみるのであれば、別途、決算資料で把握すればよいわけであって、その点からも公益上特に重要なものとは言えない。
 従って、同行に該当せず、非公開処分は、適法である。

(3)手続法上の違法性について
 本件の場合は、該当条項から買収事務への支障という非公開理由は十分に理解できるのであり、手続法上の違法性はない。


3. 証明責任について
 条例は、6条で、何人も、行政文書の公開を請求することができるとしており、不開示情報に該当しない限り、原則公開であるという考え方となっている。非公開情報であることの証明責任を果たさねば公開になることからすると、その証明責任は、被告行政側にあることとなる。
 また、対象公文書を現実に所持するのは、行政であり、その内容を判断できるのも行政であるから、証明責任は行政側にある。


第2 設問2

1, 本件取消訴訟の段階における理由の追加・差し替えを否定する考え方について
 条例は、非公開処分において、理由付記を義務づけている。もし、訴訟の段階で処分時には主張されなかった理由を持ち出すことを許せば、条例が理由付記を定めた趣旨に反する結果となる。
 従って、許されない。

2, 本件取消訴訟の段階における理由の追加・差し替えを肯定する考え方について
 本件訴訟の訴訟物は、処分の違法性一般であり、処分の違法性を支える理由は、口頭弁論終結時まで自由に主張できるというのが、民事訴訟法上の原則であるからである。
 また、あらたな理由に基づいて再度非公開処分がなされるとすると、再度その処分の取消し訴訟が提起されることがありえ、訴訟経済において大いに不利益である。紛争の一回的解決の要請から、理由の追加・差し替えは許すべきである。


3, 非公開処分の取消し訴訟に加えて、公開処分の申請型義務付け訴訟(行訴法3条6項2号)が併合提起された場合に、理由の追加・差し替えの判断はどうなるかについて
 取消訴訟では、裁判所は非公開処分の理由として上げられた不開示情報該当性の有無についてだけ判断することが求められている。
 一方、義務付け訴訟の場合には、裁判所は、文書を公開すべきか否かを判断すべき要素をすべて考慮した上で判断すべきことが求められている(行訴法37条の3第5項本案勝訴要件)。行政庁が、新たな非公開理由を主張してきた場合は、それを審理判断することが当然に求められることとなる。
 取消訴訟では、前述の第2,1及び第2,2のよう理由の追加・差し替えは当然には認められない。


4, 本件取消訴訟で、新たな理由の追加が認められる状況で、「条例8条1項4号所定の非公開情報に該当する」という当初の非公開理由が認められず、取消訴訟が認容されることになった場合に、新たな理由に基づいて、再度非公開決定を出すことはできるかについて、

 非公開処分の取消判決が出た場合、行訴法33条2項は、「改めて申請に対する処分」をしなければならないこととなる。
 その場合、訴訟で争われなかった新たな理由に基づいて非公開処分をすることは、民事訴訟法上の既判力は、判決の理由中の判断には及ばないことから、可能である。
 ただし、原告の手続的権利保障から、処分段階において容易に主張できた理由については、主張できないと考えるべきである。すでに行われた取消訴訟において主張できた理由を、その時に主張せず、再度の非公開処分で主張することは、信義則に反し許されないからである。


第3、関連問題1 非公開から公開にYの姿勢が変わる場合に、土地所有者が非公開を維持してほしいと考えた場合。

1、 本件取消訴訟において、Aの主張を反映する法的手段について
 A自身も、本件取消訴訟に参加することが可能になれば、自らの主張を反映することができる。
 訴訟参加として、独立当事者参加(民訴法47条1項)または、共同訴訟参加(民訴法52条1項)が、考えられる。
 行訴法上は、22条に規定がある。

2、 Aがとりうる法的手段について
(1)差止め訴訟について
 非公開処分が取り消されることは、処分性があり、よって、非公開処分の取消処分の差し止め訴訟を提起することができると考える(行訴法3条2項7号、37条の4)。
 しかし、公開決定の処分後2週間の期間をおくことが定められており(条例17条2項3号)、「重大な損害を生じるおそれ」の要件を満たさず、差止め訴訟は却下される可能性がある。

(2)反対意見書を提出してからの手続きに従う(17条)

 
以上

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公文書非公開決定処分取消等請求事件 最高裁H22.2.25

2014-09-28 23:00:00 | 行政法学
 茨木市情報公開条例(平成15年茨木市条例第35号)

 7条6号柱書き所定の非公開情報である「公にすることにより,(中略)当該事務又は事業の性質上,当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」

及び

 同号エ所定の非公開情報である「人事管理に係る事務に関し,公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれ」があるもの

 に該当するかどうか、判断されました。



************************************************

事件番号

 平成21(行ヒ)25



事件名

 公文書非公開決定処分取消等請求事件



裁判年月日

 平成22年2月25日



法廷名

 最高裁判所第一小法廷



裁判種別

 判決



結果

 その他



判例集等巻・号・頁

 集民 第233号119頁




原審裁判所名

 大阪高等裁判所



原審事件番号

 平成19(行コ)29



原審裁判年月日

 平成20年10月30日




判示事項

 市立学校の教職員の評価・育成制度の下で教職員が作成した自己申告票中の設定目標,達成状況等に係る各欄に記載された情報及び校長が作成した評価・育成シート中の当該教職員の評価,育成方針等に係る各欄に記載された情報が,茨木市情報公開条例(平成15年茨木市条例第35号)7条6号柱書き及び同号エ所定の非公開情報に当たるとされた事例



裁判要旨

 市立学校の教職員の評価・育成制度の下で教職員が作成した自己申告票中の設定目標,達成状況等に係る各欄に記載された情報及び校長が作成した評価・育成シート中の当該教職員の評価,育成方針等に係る各欄に記載された情報は,次の1〜3など判示の事情の下では,茨木市情報公開条例(平成15年茨木市条例第35号)7条6号柱書き所定の非公開情報である「公にすることにより,(中略)当該事務又は事業の性質上,当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」及び同号エ所定の非公開情報である「人事管理に係る事務に関し,公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれ」があるものに当たる。
1 上記制度は,教職員による主体的な目標設定と達成状況等の点検及びこれを踏まえた校長による教職員に対する評価,指導等を通じて,教職員の意欲・資質能力の向上,組織の活性化等を図ることを目的とする。
2 上記自己申告票及び評価・育成シートは,上記制度を運用する過程で作成され,その写しが勤務成績評定権者である市教育委員会に送付されて,人事管理及び人事評価の資料として用いられる。
3 上記各欄には,作成者や関係者が特定できるような記載がされたり,教職員や評価者が外部に公開されることを望まないような記載がされることがある。



参照法条

 茨木市情報公開条例(平成15年茨木市条例第35号)7条6号

********************
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/499/038499_hanrei.pdf

判決文全文

- 1 -
主文
原判決中1審被告敗訴部分を破棄し,同部分につき1審
原告の控訴を棄却する。
1審原告の上告を棄却する。
控訴費用及び各上告費用は1審原告の負担とする。

理由

平成21年(行ヒ)第25号上告代理人高坂敬三ほかの上告受理申立て理由及び
同第26号上告代理人田窪五朗,同河村学の上告受理申立て理由(ただし,排除さ
れたものを除く。)について
1 本件は,1審原告が,茨木市情報公開条例(平成15年茨木市条例第35
号。以下「本件条例」という。)に基づき,同条例所定の実施機関である茨木市教
育委員会(以下「市教委」という。)に対して,平成15年度及び同16年度に茨
木市立学校の教職員の評価等に関して教職員が作成した自己申告票及び校長が作成
した評価・育成シートの一部につき,その公開を請求したところ,本件条例7条6
号柱書き及び同号エ所定の非公開情報が記録されているとしてこれを非公開とする
旨の各決定(以下「本件各処分」という。)を受けたため,その取消しを求めてい
る事案である。
2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。
(1) 本件条例7条は,「実施機関は,公開請求があったときは,公開請求に係
る公文書に次の各号に掲げる情報(以下「非公開情報」という。)のいずれかが記
録されている場合を除き,公開請求者に対し,当該公文書を公開しなければならな
い。」と定めた上,非公開情報の一つとして,同条6号柱書きにおいて,「市の機
- 2 -
関(中略)が行う事務又は事業に関する情報であって,公にすることにより,次に
掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上,当該事務又は事業の適正な遂行に
支障を及ぼすおそれがあるもの」を掲げ,その例の一つとして,同号エにおいて,
「人事管理に係る事務に関し,公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれ」
を掲げている。
(2) 市教委は,教職員が個人目標を主体的に設定し,他と協力しながらその達
成に積極的に取り組み,評価,改善等を行うことにより,教職員の意欲・資質能力
の向上,教育活動等の充実及び組織の活性化を図ることを目的として,茨木市立学
校に勤務する教職員の評価・育成システム(以下「本件システム」という。)を導
入した。その手順は,教職員が取り組む目標を記載した自己申告票を作成し,校長
との目標設定面談を経るなどしながら,目標達成状況等を順次追記して自己申告票
を完成させた上,これを校長に提出し,校長において,当該教職員に対する日常の
観察や自己申告票の内容等を踏まえてその評価を記載した評価・育成シートを作成
し,当該教職員との間でその開示をしつつ面談を行うなどして指導助言を行うもの
である。この過程で作成された自己申告票及び評価・育成シート(以下,両者を併
せて「本件各文書」という。)の写しは,校長から勤務成績の評定権者である市教
委(地方教育行政の組織及び運営に関する法律46条)に提出される。
平成15年度及び同16年度の本件各文書は,以上のようにして作成されたもの
であり,このうち,自己申告票は,作成者の所属校,氏名,経歴等及び今年度の組
織目標を記載する各欄のほか,設定目標,進ちょく状況,目標の達成状況及び「今
後習得したい知識・技能及び今後取り組みたいこと」の各欄(以下「本件公開請求
部分1」という。)から構成されている。他方,評価・育成シートは,作成者の氏
- 3 -
名及び所属校等を記載する欄のほか,能力の評価及び総合評価の各欄(以下「本件
公開請求部分2」という。)並びに業績の評価及び「次年度に向けた課題・今後の
育成方針」の各欄(以下「本件公開請求部分3」といい,これと本件公開請求部分
1,2を併せて「本件各公開請求部分」という。)から構成されている。
(3) 1審原告は,市教委に対し,本件各公開請求部分の公開請求をしたが,市
教委は,本件各公開請求部分に係る情報は,本件条例7条6号柱書き及び同号エ所
定の非公開情報に当たるとして,いずれについても非公開とする本件各処分をし
た。
3 原審は,上記事実関係等の下において,要旨次のとおり判断し,市教委が,
本件公開請求部分1,2につき非公開としたのは適法であるが,本件公開請求部分
3につき非公開としたのは違法であるとして,本件公開請求部分3に係る請求を認
容すべきものとし,その余の請求を棄却すべきものとした。
(1) 本件公開請求部分1,2が公開されると,教職員は他の教職員,生徒及び
保護者との無用な摩擦を避けるなどのために率直な記載を控えたり,教職員からの
本件システムへの協力が得られなくなったりするおそれがあり,同部分に係る情報
は本件条例7条6号柱書き及び同号エ所定の非公開情報に当たる。
(2) これに対し,本件公開請求部分3は,教職員個人に対する評価としての性
格は弱く,余り具体的な記載が要求されているとも考えられない。したがって,そ
の記載内容を公開しても,それによって教職員からの本件システムへの協力が得ら
れなくなるおそれがあるとは認められず,同部分に係る情報は本件条例7条6号柱
書き及び同号エ所定の非公開情報に当たるとはいえない。
4 原審の上記3の判断のうち,(1)は是認することができるが,(2)は是認する
- 4 -
ことができない。その理由は,次のとおりである。
前記事実関係等によれば,本件システムは,教職員による主体的な目標設定と達
成状況等の点検及びこれを踏まえた教職員に対する評価,指導等を通じて,教職員
の意欲・資質能力の向上,教育活動等の充実及び組織の活性化を図ることを目的と
するものであり,本件各文書は,このような本件システムを運用する過程で教職員
及び校長により作成され,その写しが勤務成績評定権者である市教委に送付され
て,人事管理及び人事評価の資料として用いられるものである。そうすると,本件
システムの上記のような目的が達成されるためには,教職員は,その目標や達成状
況等を,他の教職員,生徒及び保護者に関する事情等も含めて,自己申告票に率直
かつ具体的に記載し,校長は,当該教職員に係る所見,課題及び育成方針等を評価
・育成シートに率直かつ具体的に記載することがそれぞれ期待されていると考えら
れる。
ところが,このような本件各文書の性質等からして,本件各公開請求部分には,
作成者である教職員若しくは校長又は記載されている関係者が特定できるような記
載がされたり,教職員や評価者が外部に公開されることを望まないような記載がさ
れることがあり得ると考えられる(記録によれば,実際にもそのような記載がされ
ている例があることがうかがわれる。)。したがって,本件各公開請求部分が公開
されることになった場合,作成者や記載内容中の関係者が特定されて問題が生じる
のをおそれたり,自らが記載した具体的内容が広く第三者に公開される可能性があ
るのを嫌ったりして,教職員や校長が当たり障りのない記載しかしなくなる結果,
本件各文書の記載内容が形骸化するおそれがあるというべきである。このことは,
本件公開請求部分3についても,何ら変わるところがないものと考えられる。
- 5 -
そうすると,本件各公開請求部分に係る情報は,これを公開した場合に,学校の
組織活性化等を目的とした本件システムに係る事務の適正な遂行に支障を及ぼすお
それがあり,ひいては公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがあるもの
であり,本件条例7条6号柱書き及び同号エの定める非公開情報に当たるというべ
きである。
5 以上と異なる見解の下に本件公開請求部分3につき請求を認容すべきものと
した原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。1審
被告の論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり,原判決中の1審被告敗訴部分
は破棄を免れない。そして,同部分について請求を棄却した第1審判決は正当であ
るから,同部分に係る1審原告の控訴を棄却すべきである。原判決中のその余の部
分は是認することができる。1審原告の論旨は採用することができない。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官宮川光治裁判官櫻井龍子裁判官金築誠志裁判官
横田尤孝)
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小坂こども元気クリニック・病児保育室9月のお知らせ(このページが9月中トップです。)

2014-09-27 02:19:19 | 小児医療

 実りの秋です!
 
 子ども達、ひとりひとりに、それぞれの成果が発揮される秋になりますように。

 早寝・早起き・朝ごはんをきちんとして、頑張ってください。
 芸術の秋、読書の秋、本もいっぱい読んでください。
 
 
 さて、小坂クリニックの9月のお知らせを致します。

 
【小坂こども元気クリニック・病児保育室】
 
診  療:月~土 午前8:30受付開始 受付終了18:30(土曜は午前診療のみ)
     日曜日・祝日 急病対応あり(午前中)

予防接種、健診(1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、1歳、1歳半、3歳、5歳、入園児健診など)
     :毎日、適宜、対応可能です。診療時間の場合は、健康隔離室でお待ちいただき、病気のお子様から風邪をもらわないように対応致します。
      予防接種・健診特別枠として、11:30~、15:00~も設けています。

      区で行われる公費の3ヶ月健診、3歳児健診の日程が取れない方々にも、健診の対応致します


病児保育:月~土/ 時間8:30-17:30 

      17:30~18:00の延長病児お預かり、土曜日病児保育のご希望は、ご相談下さい


東京都中央区月島3-30-3 ベルウッドビル2~4F
電話 03-5547-1191
fax 03-5547-1166


<当院が紹介されているサイト>
中央区ドクターズさん:
http://www.chuo-doctors.com/hospitalDetail/596    
http://www.chuo-doctors.com/movieDetail/596    

ドクターズファイルさん:
http://doctorsfile.jp/h/28824/df/1/    

**********************************
<小坂クリニック平成26年9月のお知らせ> 


<小児予防医療関連>
重要!【1】デング熱の基礎知識について

 デング熱の基礎知識
 ⇒http://blog.goo.ne.jp/kodomogenki/e/837f10772f66343762278ceedcd53a94

 ポイント: 〇急に発熱を起こす感染症(予後は比較的良好)で、蚊(ネッタイシマ蚊、ヒトスジシマ蚊)が媒介したウイルスが原因です。
         感染から発症まで、だいたい、3-7日。

        〇ひとからひとにうつりません。

        〇治療薬やワクチンはなく、対症療法になります。

        〇予防は、流行地域で、蚊(ネッタイシマ蚊、ヒトスジシマ蚊)にさされないようにすること。        


【2】予防接種のご相談、お気軽に。

 安全安心の予防接種を行うことが、私達小児科専門医の責務と考えています。
 それも、痛くない注射、泣かない注射を、実施できますように。

 お気軽にご相談ください。

 場合によっては、注射の針を刺すときの痛みをなくすシール(貼付用局所麻酔剤)(無料)を、事前にお渡しすることも可能です。
 注射の30-60分前に接種部位に貼ることで、その部位の痛みをなくします。


予告!【3】インフルエンザ予防接種、来月10月から接種を開始致します。

 時期が近づきましたら、あらためてお知らせいたします。


【4】水ぼうそう、2回目接種も含め、お済ですか? 当院は、自己負担分は、中央区助成券をお持ちのかたは、無料対応させていただきます。

 中央区助成券をお持ちのかたは、水ぼうそう予防接種の自己負担を無料とさせていただきます。

 (もしかして、秋口に水ぼうそうワクチンが不足気味になるかもしれませんので、ご希望のかたはお早めにご相談下さい。)
 

【5】大人の風しん、赤ちゃんの麻しん
 〇おとなの三日ばしか(風しん)
   お父さん、お母さん、風しんの予防接種(助成により自己負担無料)は大丈夫ですか?
   風しんに罹る成人が依然多いことに対応するため、中央区では、妊娠を希望される女性やその同居家族(お父さんだけでなく、祖父母も含め)にも予防接種の費用を助成することとなりました。
   当院でも、妊婦やその同居家族(お父さんだけでなく、祖父母も含め)の皆様に接種可能です。

 〇赤ちゃんのはしか(麻しん)
   はしか(麻しん)の予防接種(麻しん風しん混合MRワクチン)、お済ですか?
   一部地域で、はしかの流行が見られます。
   一歳になったら、お誕生日に接種をするなどのように、早めの接種をお願いします。
   保育園で0歳児入園のかたには、麻しんの早期接種のご相談もお受けします


【6】夏休みのご旅行の準備として、持参薬・旅のくすり、大丈夫ですか?

 時期をずらして、9月に夏休みを取られる方も、多くいらっしゃいます。
 遅い夏休みの国内旅行/海外旅行、思いでいっぱいの家族旅行、楽しんできてください。

 持参薬、旅のくすりを、忘れずに!!

 楽しいご旅行となるよう、乗り物酔いのご相談等も、お受けいたします。

 ご旅行中の病気などについて、注意点を簡単なパンフも作成致しました。
 お渡しいたしますので、診察の際、ご希望のかたはお声掛けください。

 旅行中、万が一なにかございましたら、旅先からお電話下さい。
 海外からでも、構いません。
 

 小坂クリニック
 国内:03-5547-1191
 海外:81-3-5547-1191


予告!【7】小坂クリニックの来年2015年の健康標語、大募集

 小坂クリニックの健康標語を、来月大募集致します。

 今年2014年の小坂クリニックの健康標語:にこにこ笑顔が、1ばんのくすり

 素敵な標語、お考え下さい!
 



<小児医療関連>
New【8】9月の日曜、祝日は、すべて急病対応致します。
 急病対応可能な休日:9/7(日)、9/14(日)、9/15(祝、月)、9/21(日)、9/23(祝、火)、9/28(日)=電話対応


 
New【9】9月の土曜日の開始時間が変則的となります。
  9/6(土)、9/13(土)開始を10時からとさせていただきます。
  9/13(土)、9/27(土)は、通常通り9時から。


【10】赤ちゃんの鼻カゼには、まず、吸引!

 風邪治療のスタンダードとして、ポータブル鼻吸引器(医療用)の無料貸し出しを行っています。

 秋は、鼻の風邪が増加します。中耳炎予防にも、早めに吸引対応してあげて下さい

 なかなか、お鼻がかめない乳幼児のお風邪で、吸引により、だいぶ楽になられていて、ご好評いただいております。


【11】当院でも、禁煙外来治療が可能です。

 親御さんが、禁煙できず、または、禁煙途上でお悩みの場合、お気軽にご相談ください。


<病児保育関連>
【12】当院の病児保育について

 〇お子さんの急な発熱、ご病気で保育園・幼稚園・小学校に登園・登校できない場合、当院の病児保育でお預かりいたします。

 〇病児保育時間の延長について:
 原則平日17時30分までのお預かりの病児保育ですが、子どもや子育てには、例外がつきものです。万が一、17時30分を過ぎることがわかっている場合、ご相談ください。

 18時30分までの延長も可能です。

 〇土曜日の病児保育について:
 土曜日の病児保育もまた、ご相談ください。

 〇病児お迎えサービスについて:
 保育園での急な発病の場合、親御さんに代わって当院スタッフが、保育園に出向き、そのまま当院で病児保育へ移行することも可能です。

  
<学校生活>
【13】食物アレルギー アナフィラキシーに備えたエピペンを学校に常備できていますか?ご旅行中も、大丈夫?

 食物アレルギーのお子様が、給食を食べて、万が一アナフィラキシー・ショックを起こした緊急事態に、治療薬としてエピペン接種が必要です。

 学校に常備し、担任・養護・副校長・校長先生の指導の下、対処できる体制になっていますでしょうか?


【14】ネット上の誹謗中傷被害から、お子さんを守って下さい。

 ネット上の掲示板で、お子様方の誹謗中傷が書かれた場合、その掲示板を運営するプロバイダーに削除を申し出ることが可能です。
 指摘を受けたプロバイダーは、削除することが法律で定められています。
http://blog.goo.ne.jp/kodomogenki/e/46c187ebbac775189f5beb5e76a27ba3 

 実際の適用例⇒http://blog.goo.ne.jp/kodomogenki/e/5d2ead2996bb28ffae57072fe29f66b5

 まだまだ、インターネットは、新しい技術であり、その功罪をこれからも考えて行きたいと思います。


<子育て支援関連>
【15】クリニック隣り、みんなの子育てひろば“あすなろの木”のお知らせ

【スペシャル企画 学びの宝箱】受付開始迫る!受け付けは、9/11(木)からです(9/18(木)まで)。

みんなの子育てひろば“あすなろの木”では「学びの宝箱」と題し、

地域の中で活躍する各分野のスペシャリストを講師として招き、

一日を通して親子で楽しい学びの時間が得られる、実感できる体験型授業を行います。

この企画は、中央区地域家庭教育推進協議会と共催!

今年も「平成26年度 家庭教育学習会」の一貫として行います。(今年で10回目)

小学生の皆さん、子育て中のお母さんお子さんご一緒に御参加ください。

***********************

第10回『学びの宝箱』

共催 中央区地域家庭教育推進協議会

   みんなの子育てひろば“あすなろの木”

●日時:9月20日(土)

午前10時~午後5時 ※複数講座、受講可能です

●会場:月島社会教育会館

●費用:無料 ※�のみ材料費:1組500円 お子さん2名参加の場合は700円

●応募期間:9月11日(木)~9月18日(木)

●応募方法:Eメールまたは電話

asunarohiroba@yahoo.co.jp

1) テーマ

2) 住所

3) 電話番号

4) 保護者名

5) 子どもの名前

6) 学校名・学年

 

●各講座名

『木のおもちゃをつくろう』

第一部『エコ! チラシ・ペットボトルでストラップづくり』第二部『ものの〈始まり〉クイズ』

『テコンドー教室』

『超常現象は本当にあるのか?』

『みんなでうたおう! たのしいゴスペル』

『世界で1 つだけのオリジナルスパイス作り』

************************

 

昨年『第9回学びの宝箱』の様子です。

http://ameblo.jp/asunaro-kids/entry-11619154724.html

 

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

テコンドー教室を毎週日曜日に開催しております。

2部制で親子の部では、日頃、子育てで忙しいお母さんでも

仕事でお子さんと接する機会の少ないお父さんでも

お子さんと一緒にテコンドーを習いながら、

お互いのコミュニケーションを取ることができます。

また、小学生の部では、低学年から高学年のお子さんが

一緒に頑張って汗を流しております。

もちろん、年に2度の階級別の進級試験があります。

御興味のある方は、ご連絡ください。

 

講師:石田峰男(岡澤道場総括)

毎週日曜日 / 親子クラス AM9:30-10:30 / 小学生クラス AM10:30-11:30 

連絡先 / あすなろの木事務局 03-5547-1191

 

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 

木の部屋、空間でイベント開催しませんか?

 

あすなろの木では、大人1人300円、

こども無料で何時間でも遊べます。

もちろん1組から御利用できますが、

お友達のイベント(お誕生会・歓送迎会・お食事会)など

グループでの御利用も頂けます。

 

お母さんは、仲間同士、デリバリーでピザを頼んで、ビールやワインで乾杯!

お子さんは、お菓子を食べながらジュースで乾杯!

ティ―パーティとしても御利用頂けます。(土曜日・日曜日でも利用可能)

御利用お待ちしてしております。

 

利用:完全予約制

利用料:おとな300円 こども無料

連絡先:03-5547-1191 あすなろ事務局

※   お陰様で御利用頂く方が沢山おられます。

御利用希望の方はお早めに予約されることをお勧めいたします。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 

『あすなろ倶楽部』無料体験会開催中!!

 

あすなろ倶楽部では、少人数制で、お子さんの発達に合った

いろいろな遊び、絵本紹介、しつけ方法などお話します。

また、参加されているお母さん同士の交流の

きっかけなどで御利用を頂いております。

只今、無料体験実施中!

お子さんと一緒に、勉強、遊びながら素敵なお友達をつくりましょう♡

 

講師:NPO法人あそび子育て研究協会 理事長 増田おさみ

毎週木曜日(月3回)費用:月5,000円

時間:�0~3才クラス 2:00 -3:00 �3歳以上クラス 3:00 – 4:00

場所:みんなの子育てひろば『あすなろの木』(こども元気クリニック隣り)

連絡先:080-6905-6498(増田)

 

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



以上です。


 どうか充実した秋になりますように。

 お大事に。

 7、8月中は、病児保育室は、満杯状態が続きました。
 スタッフを増員し、冬場に備えます。
 丁度、スタッフ2名研修中です。どうか、よろしくお願いいたします。

医療法人小坂成育会
こども元気クリニック・病児保育室
小坂和輝

*こども元気クリニック・病児保育室は、「いつでも(24時間・365日)・どこでも(学校・地域の子ども達と関わられる皆様・NPOと連携して)・あらゆる手段を用いて(医学・心理分野にとどまることなく、法律・行政分野などの多角的視点を持って)」子どもの健やかな成長を守る小児科でありたいと思っています。

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平成26年9月28日 日曜日18時~葛飾区医師会『デング熱を知ろう』どなたでも参加可能

2014-09-27 02:10:34 | 医療
 以下、勉強会の開催がなされます。

 「当会には、医師・医療関係者でなくても、真面目な関心をお持ちの方ならどなたでも参加できます。」とお知らせされています。

 私も、久々に大学院のない日曜日夜の開催なので、出席することができ、楽しみにしています。
 時々、患者さんから当該疾患についてご質問をいただくため、勉強して参ります。

*************************************************

デング熱を知ろう
川崎市健康安全研究所長
岡部信彦

平成26年9月28日 日曜日
午後6時~
会場 葛飾区医師会館 3階 講堂
東京都葛飾区立石5-15-12 電話 3691-8536

 私がデング熱(DF)という病名を知ったのは、1980年代前半の日本感染症学会での国内発症に関する症例
報告でした。その時私が勤務していた国立小児病院に研修に来ていて一緒に学会に出席したフィリピンの若
い医師が「DFは日本のインフルエンザみたいなもので珍しくないが、中には出血やショックに陥る重症型
がいるので、それを適切に発見治療することが大切だ」とフロアからコメントをしました。
 私は1990-94年、WHO西太平洋地域事務局(マニラ)に勤務していましたが、その時の担当疾患の一つ
がDFでした。熱帯アジアの小児病棟は、点滴を受けているDFの小児が廊下まであふれている状況で、重
症型の早期検知、出血に対処する方法や適切な輸液、そして蚊やボウフラの駆逐、アスピリンを使わないこ
となどを地域に普及させることが主な仕事でした。シンガポールやクアラルンプール、バンコクなどの都会
では重症例は少ないものの、今でもデング熱は減らず、蚊の対策の難しさが現れています。
 70年前の国内のデングは、第二次大戦終了後の戦地からの復員兵や引き上げる人々からもたらされ、国
内にいるヒトスジシマカによって一時的に媒介・拡大されたものでした。当時より圧倒的な人口の拡大やネ
ッタイシマカの生息域の拡大は、アジアでの拡大にとどまらず中南米、アフリカと広がりました。さらにこ
のところアジアと我が国を往復する人々の数は70年前当時の数をはるかに上回っていることは、国内発症
例の増加に結びつき、そのことは媒介蚊であるヒトスジシマカが生息している我が国では、感染者数や重症
者数の急増のリスクは少ないものの二次感染、三次感染のリスクは増加していることを示しています。
 今回のデング熱発生は当然と言えば当然の事象で、疾病の重症度から言えば多くの人が不安に思うもので
はありませんが、これを機に海外の感染症は海外だけのものではなく国内でも発症・感染があり得ること、
またそれに対して通常からの備えをしておくことの重要性を再認識する良い機会でもあったと思います。

感染・免疫懇話集談会/葛飾区医師会
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東京入国管理局により退去強制令書発布処分に基づき、強制送還されようとするのを、いかに止めるか。

2014-09-26 09:13:51 | 行政法学


主   文

一 相手方が平成一四年一一月六日付けで申立人に対して発付した退去強制令書に基づく執行は、平成一五年六月一一日午後三時以降、本案事件(当庁平成一五年 (行ウ)第一一号退去強制令書発付処分取消請求事件)の第一審判決の言渡しの日から起算して一五日後までの間、これを停止する。

二 申立人のその余の申立てを却下する。

三 申立費用は、これを二分し、その一を申立人の負担とし、その余を相手方の負担とする。


***********
 
 上記判決は、執行停止の申立てが、認められた例(東京地決H15.6.11)です。
 本案事件の裁判が終わるまでは、強制送還や強制収容はされないことが認められました。


 以下、どのように認められたか、外観します。


1、事案の概要
 相手方(東京入国管理局主任審査官)が、平成14年11月6日付けで申立人に対して発布した退去強制令書(以下「本件退令発付処分」という。)に基づく執行について、その執行停止を申立てた事件。
 本案事件として、強制令書発布処分取消し請求がなされている。
 本件申立ては、理由があるとして認容され、本案事件の第一審判決の言渡しの日から起算して15日後までの間、執行停止の決定がなされた。

2、争点:
1)行訴法25条2項及び3項所定の要件が、2)退去強制令書発布処分においてはどのように解釈され、3)その解釈を本件にあてはめるとどうなるか。

行政事件訴訟法
(執行停止)
第二十五条  処分の取消しの訴えの提起は、処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げない。
2  処分の取消しの訴えの提起があつた場合において、処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもつて、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止(以下「執行停止」という。)をすることができる。ただし、処分の効力の停止は、処分の執行又は手続の続行の停止によつて目的を達することができる場合には、することができない。
3  裁判所は、前項に規定する重大な損害を生ずるか否かを判断するに当たつては、損害の回復の困難の程度を考慮するものとし、損害の性質及び程度並びに処分の内容及び性質をも勘案するものとする。
4  執行停止は、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき、又は本案について理由がないとみえるときは、することができない。
5  第二項の決定は、疎明に基づいてする。
6  第二項の決定は、口頭弁論を経ないですることができる。ただし、あらかじめ、当事者の意見をきかなければならない。
7  第二項の申立てに対する決定に対しては、即時抗告をすることができる。
8  第二項の決定に対する即時抗告は、その決定の執行を停止する効力を有しない。




 次に、1)~3)それぞれにおいて、検討する。


3、1)行訴法25条2項及び3項所定の要件について(決定文第3、1(1))
(1)行訴法25条2項「回復の困難な損害」とは、
 処分を受けることによって生ずる損害が、原状回復又は金銭賠償が不能であるとき、若しくは金銭賠償が一応可能であっても、損害の性質、態様にかんがみ、損害がなかった現状を回復させることは社会通念上容易でないと認められる場合。

(2)行訴法25条2項「回復の困難な損害を避けるため緊急の必要があるとき」=執行停止の必要性と同条3項「本案について理由がないとみえるとき」=消極要件該当性
 執行停止の必要性の判断を行うに当たっては、処分が違法である蓋然性の程度との相関関係を考慮する。
 発生の予想される損害が重大で回復可能性がない場合は、消極要件該当性は相当厳格に判断すべきで、損害が比較的軽微で回復可能性もないとはいえないときは、消極要件該当性は比較的緩やかに判断するのが相当である。


4、2)退去強制令書発布処分(送還、収容)における行政事件訴訟法25条2項及び3項所定の要件の解釈(決定文第3、1(2))
(1)送還部分について
①申立人の意思に反した送還でること
②送還前に置かれていた原状を回復する制度的な保障はないこと
③本案事件の訴訟を追行することが著しく困難
→消極要件該当性を相当厳格に判断するのが相当であり、申立人の主張がそれ自体失当であるような例外的な場合を除き、この消極要件を具備しないものとするのが相当である。

(2)収容部分について
社会的活動の停止を余儀なくされることや心身に異常を来すおそれのあること、それら以上に、身柄拘束自体が個人の生命を奪うことに次ぐ重大な侵害、人格の尊厳に対する重大な損害。(従来、この点については、ややもすると十分な考慮がされず、安易に金銭賠償によって回復可能なものとの考え方もないではなかったが、そのような考え方は個人の人格の尊厳を基調とする日本国憲法の理念に反するものというほかない。)。
送還部分の執行によって生ずる損害よりは軽微。
→消極要件該当性をそれほど厳密に判断する必要はなく、通常どおり、本案について申立人が主張する事情が法律上ないとみえ、又は事実上の点について疎明がないときと解すれば足りる。



5、3)本件へのあてはめ(決定文第3、2)
(1)執行停止の必要性
〇一般的に生ずる損害はすべて生じることがあきらかであり、送還部分のみならず収容部分についても執行停止の必要性がある。
〇申立人が収容の初期から心身に異状を来し、収容を原因とする統合失調症を発症。
   ↓
申立人の収容を解く必要性は極めて高い。


(2)「本案について理由がないとみえるとき」消極要件該当性
違法事由 ①口頭審理請求権の放棄の手続きの違法
     ②本件退令発布処分の裁量権の逸脱濫用又は比例原則違反の違法

①口頭審理請求権の放棄の手続きの違法
 口頭審理放棄の発言を申立人は否定、申立人の日本語能力からすると入国審査官の説明を理解した上で口頭審理放棄書に署名したか疑問が残る
   ↓
本件申立ては、消極要件に該当するものではない。

②本件退令発布処分の裁量権の逸脱濫用又は比例原則違反の違法
 処分権限を発動するかどうかは処分庁の裁量に委ねられている。
 本件において、申立人が甲野と既に内縁関係にあることを全く考慮していない
   ↓
 裁量判断の基礎に著しい欠落があった可能性が濃厚
   ↓
本件申立ては、消極要件を具備しない


(3)「公共の福祉に重大な影響をおよぼすおそれがあるとき」消極要件該当性
〇執行停止部分:相手方は送還停止による一般的な影響をいうもので具体性がない
   ↓
 相手方による疎明がない

〇収容部分:甲野太郎と申立人は処分後平成14年11月26日婚姻。甲野が申立人が働くに至った借金を無理なく返済する手段を講じる等
   ↓
 申立人の逃亡、醜業に就くことは認められず、消極要件に該当する事実が生じるとは認め難い。


6、結論
 本件申立ては、主文第一項記載の限度で理由があるから認容、その余の部分は却下。


以上
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経済学の視点 K・ポラニー『大転換』/K・ポメランツ『大分岐』

2014-09-25 23:00:00 | 書評


 経済学の視点も参考になります。

 

〇K・ポラニー『大転換』

 労働・土地・貨幣は本来、商品ではない。

 労働力を売るしかない状況を生み出した構造的な暴力こそ市場経済への大転換の前提。


〇K・ポメランツ『大分岐』

 奴隷制の制度的な暴力と植民地への生態学的な圧力の転移こそ西欧優位の理由。
 

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住基ネットは、個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は公表されない自由を侵害するか。

2014-09-24 23:00:00 | 行政法学
 住基ネットは、個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は公表されない自由を侵害するか。

 最高裁H20.3.6は、侵害しないと判断しています。


*************最高裁ホームページより******************************
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/933/035933_hanrei.pdf


主文

原判決中,上告人敗訴部分を破棄する。
前項の部分につき,被上告人らの控訴をいずれも棄却す
る。
控訴費用及び上告費用は被上告人らの負担とする。


理由

上告代理人大竹たかしほかの上告理由及び上告受理申立て理由について

1 本件は,被上告人らが,行政機関が住民基本台帳ネットワークシステム(以
下「住基ネット」という。)により被上告人らの個人情報を収集,管理又は利用
(以下,併せて「管理,利用等」という。)することは,憲法13条の保障する被
上告人らのプライバシー権その他の人格権を違法に侵害するものであるなどと主張
して,被上告人らの住民基本台帳を保管する上告人に対し,上記の人格権に基づく
妨害排除請求として,住民基本台帳からの被上告人らの住民票コードの削除を求め
る事案である。

2 原審の適法に確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。
(1) 住民基本台帳法(以下「住基法」という。)は,平成11年法律第133
号により改正され,住基ネットが導入された。住基ネットの概要は,次のとおりで
ある。

ア目的
従前,各市町村の保有する住民基本台帳の情報は当該市町村内においてのみ利用
されていたが,住基ネットは,市町村長に住民票コードを記載事項とする住民票を
編成した住民基本台帳の作成を義務付け,住民基本台帳に記録された個人情報のう
- 2 -
ち,氏名,住所など特定の本人確認情報を市町村,都道府県及び国の機関等で共有
してその確認ができる仕組みを構築することにより,住民基本台帳のネットワーク
化を図り,住民基本台帳に関する事務の広域化による住民サービスの向上と行政事
務の効率化を図ることを目的とするものである(住基法6条,7条13号,30条
の5~30条の8等)。

イ住民票コード
市町村長は,個人を単位とする住民票を世帯ごとに編成して,住民基本台帳を作
成しなければならず(住基法6条1項),その住民票には住民票コードを記載しな
ければならない(同法7条13号)。都道府県知事は,総務省令で定めるところに
より,あらかじめ他の都道府県知事と協議して重複しないよう調整を図った上,当
該都道府県の区域内の市町村の市町村長ごとに,当該市町村長が住民票に記載する
ことのできる住民票コードを指定し,これを当該市町村長に通知する(同法30条
の7第1項,2項)。上記総務省令に当たる同法施行規則においては,住民票コー
ドの指定は,都道府県知事が,無作為に作成された10けたの数字及び1けたの検
査数字を組み合わせて定めた数列のうちから無作為に抽出することにより行うもの
とされている(同法施行規則1条,14条)。
市町村長は,いずれの市町村においても住民基本台帳に記録されたことがない者
について新たに住民票の記載をする場合は,都道府県知事から指定された上記の住
民票コードのうちから一を選択して住民票に記載し(同法30条の2第2項),い
ずれかの市町村において住民基本台帳に記録された者について住民票の記載をする
場合は,直近に住民票の記載をした市町村長が記載した住民票コードを記載する
(同条1項)。
- 3 -

ウ本人確認情報
住基ネットによって管理,利用等される個人情報である本人確認情報は,住民票
の記載事項(住基法7条)のうち,①氏名(1号),②生年月日(2号),③性別
(3号),④住所(7号)(以上①~④を併せて,以下「4情報」という。)に,
住民票コード(13号)及び住民票の記載に関する事項で政令で定めるもの(以下
「変更情報」という。)を加えたものである(同法30条の5第1項)。変更情報
とは,具体的には,異動事由(「転入」,「出生」,「転出」,「死亡」等),異
動年月日及び異動前の本人確認情報である(同法施行令30条の5)。

エ住基ネットの仕組み
市町村には,既存の住民基本台帳電算処理システム(以下「既存住基システム」
という。)のほか,既存住基システムと住基ネットを接続し,その市町村の住民の
本人確認情報を記録,管理するシステムであるコミュニケーションサーバが設置さ
れ,本人確認情報は,既存住基システムから上記サーバに伝達されて保存される。
都道府県には,区域内の全市町村のコミュニケーションサーバから送信された本
人確認情報を記録,管理するシステムである都道府県サーバが設置されている。都
道府県知事は,総務大臣の指定する者(以下「指定情報処理機関」という。)に本
人確認情報処理事務を行わせることができ(住基法30条の10第1項柱書き),
指定情報処理機関には,全都道府県の都道府県サーバから送信された本人確認情報
を記録,管理する全国サーバが設置されている。都道府県知事から指定情報処理機
関に送信された本人確認情報は,全国サーバに保存される(同法30条の11)。

オ本人確認情報の管理,利用等
(ア) 市町村長は,住民票の記載,消除又は4情報及び住民票コードの記載の修
- 4 -
正を行った場合,本人確認情報を都道府県知事に通知する(住基法30条の5第1
項)。都道府県知事は,通知された本人確認情報を磁気ディスクに記録し,これを
原則として5年間保存しなければならない(同法30条の5第3項,同法施行令3
0条の6)。
(イ) 市町村長は,条例で定めるところにより,他の市町村の市町村長その他の
執行機関から事務処理に関し求めがあったときは,本人確認情報を提供する(同法
30条の6)。
(ウ) 都道府県知事は,同法別表に掲げる国の機関等,区域内の市町村の市町村
長その他の執行機関又は他の都道府県の執行機関等から,法令又は条例によって規
定された一定の事務の処理に関し求めがあったときは,政令又は条例で定めるとこ
ろにより,本人確認情報を提供する(同法30条の7第3項~6項)。
(エ) 都道府県知事は,統計資料の作成など法令に規定する一定の事務を遂行す
る場合には,本人確認情報を利用することができる(同法30条の8第1項)。
(オ) 同法別表の改正等により,住基ネットの利用による本人確認情報の提供及
び利用が可能な行政事務は,平成17年4月1日現在で275事務となっている。
現行法上,これらの行政事務において取り扱われる個人情報を一元的に管理するこ
とができる機関又は主体は存在しない。また,指定情報処理機関は,行政機関等に
対してその求めに応じ本人確認情報を提供することが予定されているが(同法30
条の10),指定情報処理機関には行政機関等からその保有する他の個人情報を収
集する権限は付与されていないから,指定情報処理機関がこれらの個人情報を本人
確認情報と結合することはできない。

カ本人確認情報の目的外利用
- 5 -
(ア) 住基法別表に規定する事務等を行うため法令等の規定に基づき本人確認情
報の提供を受けた市町村長その他の受領者(同法30条の33)は,当該事務処理
の遂行に必要な範囲内で,受領した本人確認情報を利用し,又は提供するものとさ
れ,当該事務の処理以外の目的のための利用又は提供は禁止されている(同法30
条の34)。
(イ) 行政機関は,特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて個人情報を
保有してはならず(行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律〔以下「行政
個人情報保護法」という。〕3条2項),行政機関の長は,法令に基づく場合を除
き,保有個人情報を目的外に利用し,又は提供してはならないとされている(同法
8条1項)。
(ウ) 本人確認情報を保有する行政機関が,上記(ア)で許される範囲を超えて,
住民票コードをマスターキーとして用いて本人確認情報を他の個人情報と結合する
こと(以下「データマッチング」という。)は,住基法30条の34に規定する職
務上の義務に違反する行為に当たり,懲戒処分の対象となる(国家公務員法82
条,地方公務員法29条)。
行政機関の職員が,データマッチングなど上記(ア)の範囲を超える利用のために
個人の秘密に属する事項が記録された文書等を収集した場合には,「その職権を濫
用して,専らその職務の用以外の用に供する目的で」行ったとき(行政個人情報保
護法55条)に当たり,刑罰の対象となる。
指定情報処理機関の役員及び職員(住基法30条の17第3項),本人確認情報
の提供を受けた市町村,都道府県又は国の機関等の職員が,その知り得た本人確認
情報に関する秘密を他の機関等に漏えいした場合には,公務員の守秘義務違反に該
- 6 -
当し,刑罰の対象となる(国家公務員法109条12号,100条1項,2項及び
地方公務員法60条2号,34条1項,2項)。
本人確認情報の電子計算機処理等に関する事務に従事する市町村の職員等(住基
法30条の31第1項,2項)が,その事務に関して知り得た本人確認情報に関す
る秘密等を漏えいする行為は,住基法42条に規定する刑罰の対象となる。
また,行政機関の職員等が,正当な理由がないのに,個人の秘密に属する事項が
記録された個人情報ファイルを第三者に提供する行為も,刑罰の対象となる(行政
個人情報保護法53条)。

キ監視機関
住基法は,都道府県に本人確認情報の保護に関する審議会を設置し(同法30条
の9第1項,2項),また,指定情報処理機関に本人確認情報保護委員会を設置す
ること(同法30条の15第1項,2項)を定め,上記審議会又は委員会におい
て,それぞれ当該都道府県又は指定情報処理機関における本人確認情報の保護に関
する事項を調査審議させることとしている。
ク住基カード
住民基本台帳に記録されている者は,当該市町村の市町村長に対し,自己に係る
氏名及び住民票コードその他政令で定める事項が記録された住民基本台帳カード
(以下「住基カード」という。)の交付を求めることができる(住基法30条の4
4第1項)。
市町村長その他の市町村の執行機関は,住基カードを,条例の定めるところによ
り,条例に規定する目的のために利用することができる(同法30条の44第8
項)。
- 7 -


(2) 住基ネットの導入により,住民にとっては,① 一定の要件のもとで住基
カードを添えて転入届を行う場合,従来必要とされていた転出証明書の添付が不要
となり転出地の市役所等に出向く必要がなくなること(住基法24条の2第1
項),② 全国のどの市町村でも住民票の写しを入手できるようになること(同法
12条の2第1項),③ 婚姻届及び離婚届の提出,旅券の交付申請,戸籍抄本の
交付請求,所得税の確定申告など一定の場合に,従来必要とされていた住民票の写
しの提出が不要となること(行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法
律3条,関係行政機関が所管する法令に係る行政手続等における情報通信の技術の
利用に関する法律施行規則4条1項,7項)などの利点がある。
他方,市町村にとっては,市町村間の通信を郵送に代えて電気通信回線を通じて
行うことにより事務の効率化を図ることができるほか,上記①~③に対応して,住
民票の交付事務等に伴う負担の軽減及び行政経費の削減を図ることができるなどの
利点がある。

(3) 本人確認情報の漏えい防止等の安全確保の措置として,技術的側面では,
住基ネットシステムの構成機器等について相当厳重なセキュリティ対策が講じら
れ,人的側面でも,人事管理,研修及び教育等種々の制度や運用基準が定められて
実施されており,現時点において,住基ネットのセキュリティが不備なため本人確
認情報に不当にアクセスされるなどして本人確認情報が漏えいする具体的な危険は
ない。


3 原審は,次のとおり判断して,被上告人らの上告人に対する住民票コードの
削除請求を認容した。

(1) 自己の私的事柄に関する情報の取扱いについて自ら決定する利益(自己情
- 8 -
報コントロール権)は,人格権の一内容であるプライバシーの権利として,憲法1
3条によって保障されていると解すべきである。一般的には秘匿の必要性の高くな
い4情報や数字の羅列にすぎない住民票コードについても,その取扱い方によって
は,情報主体たる個人の合理的期待に反してその私生活上の自由を脅かす危険を生
ずることがあるから,本人確認情報は,いずれもプライバシーに係る情報として法
的保護の対象となり,自己情報コントロール権の対象となる。

(2) 本人確認情報の管理,利用等は,正当な行政目的の実現のために必要であ
り,かつ,その実現手段として合理的である場合には,自己情報コントロール権の
内在的制約又は公共の福祉による制約により,原則として自己情報コントロール権
を侵害するものではないが,本人確認情報の漏えいや目的外利用などにより住民の
プライバシーないし私生活上の平穏が侵害される具体的な危険がある場合には,上
記の実現手段としての合理性がなく,自己情報コントロール権を侵害するものとい
うべきである。

(3) 現行法上,データマッチングは,本人確認情報の目的外利用に当たり,罰
則をもって禁止される。しかし,行政個人情報保護法は,行政機関の裁量により利
用目的を変更して個人情報を保有することを許容しており(同法3条3項),この
場合には本人確認情報の目的外利用を制限する住基法30条の34に違反すること
にはならない。また,行政機関は,法令に定める事務等の遂行に必要な限度で,か
つ,相当の理由のあるときは,利用目的以外の目的のために保有個人情報を利用し
又は提供することができるから(行政個人情報保護法8条2項2号,3号),住基
法による目的外利用の制限は実効性を欠く。さらに,住民が住基カードを使って行
政サービスを受けた場合,その記録が行政機関のコンピュータに残り,それらを住
- 9 -
民票コードで名寄せすることが可能である。
これらのことを考慮すれば,行政機関において,個々の住民の多くのプライバシ
ー情報が住民票コードを付されて集積され,それがデータマッチングされ,本人の
予期しないときに予期しない範囲で行政機関に保有され,利用される具体的な危険
が生じているということができる。したがって,住基ネットは,その行政目的実現
手段として合理性を有しないから,その運用に同意しない被上告人らに対して住基
ネットを運用することは,被上告人らのプライバシー権ないし自己情報コントロー
ル権を侵害するものである。

(4) 被上告人らに対する住基ネットの運用は,制度自体の欠陥により被上告人
らの人格権を違法に侵害するものであって,その人格的自律を脅かす程度も相当大
きいと評価でき,それが続く場合には被上告人らに回復し難い損害をもたらす危険
がある。このような場合には,権利を侵害されている者は侵害行為の差止めを求め
ることができると解するのが相当であるところ,大阪府知事に対する通知の差止め
は,行政機関の行為であるが,事実行為であり,民事訴訟において差止めを求める
ことができると解される。そして,住民票コードの削除請求は,実質は差止めを実
効あるものとするための原状回復行為であるから,差止請求と同様に許されるもの
と解される。

4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は次の
とおりである。

(1) 憲法13条は,国民の私生活上の自由が公権力の行使に対しても保護され
るべきことを規定しているものであり,個人の私生活上の自由の一つとして,何人
も,個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は公表されない自由を有するもの
- 10 -
と解される(最高裁昭和40年(あ)第1187号同44年12月24日大法廷判
決・刑集23巻12号1625頁参照)。

そこで,住基ネットが被上告人らの上記の自由を侵害するものであるか否かにつ
いて検討するに,住基ネットによって管理,利用等される本人確認情報は,氏名,
生年月日,性別及び住所から成る4情報に,住民票コード及び変更情報を加えたも
のにすぎない
。このうち4情報は,人が社会生活を営む上で一定の範囲の他者には
当然開示されることが予定されている個人識別情報であり,変更情報も,転入,転
出等の異動事由,異動年月日及び異動前の本人確認情報にとどまるもので,これら
はいずれも,個人の内面に関わるような秘匿性の高い情報とはいえない。これらの
情報は,住基ネットが導入される以前から,住民票の記載事項として,住民基本台
帳を保管する各市町村において管理,利用等されるとともに,法令に基づき必要に
応じて他の行政機関等に提供され,その事務処理に利用されてきたものである。そ
して,住民票コードは,住基ネットによる本人確認情報の管理,利用等を目的とし
て,都道府県知事が無作為に指定した数列の中から市町村長が一を選んで各人に割
り当てたものであるから,上記目的に利用される限りにおいては,その秘匿性の程
度は本人確認情報と異なるものではない。

また,前記確定事実によれば,住基ネットによる本人確認情報の管理,利用等
は,法令等の根拠に基づき,住民サービスの向上及び行政事務の効率化という正当
な行政目的の範囲内で行われているものということができる。住基ネットのシステ
ム上の欠陥等により外部から不当にアクセスされるなどして本人確認情報が容易に
漏えいする具体的な危険はないこと,受領者による本人確認情報の目的外利用又は
本人確認情報に関する秘密の漏えい等は,懲戒処分又は刑罰をもって禁止されてい
- 11 -
ること,住基法は,都道府県に本人確認情報の保護に関する審議会を,指定情報処
理機関に本人確認情報保護委員会を設置することとして,本人確認情報の適切な取
扱いを担保するための制度的措置を講じていることなどに照らせば,住基ネットに
システム技術上又は法制度上の不備があり,そのために本人確認情報が法令等の根
拠に基づかずに又は正当な行政目的の範囲を逸脱して第三者に開示又は公表される
具体的な危険が生じているということもできない。


なお,原審は,① 行政個人情報保護法によれば,行政機関の裁量により利用目
的を変更して個人情報を保有することが許容されているし,行政機関は,法令に定
める事務等の遂行に必要な限度で,かつ,相当の理由のあるときは,利用目的以外
の目的のために保有個人情報を利用し又は提供することができるから,行政機関が
同法の規定に基づき利用目的以外の目的のために保有個人情報を利用し又は提供す
る場合には,本人確認情報の目的外利用を制限する住基法30条の34に違反する
ことにならないので,同法による目的外利用の制限は実効性がないこと,② 住民
が住基カードを用いて行政サービスを受けた場合,行政機関のコンピュータに残っ
た記録を住民票コードで名寄せすることが可能であることなどを根拠として,住基
ネットにより,個々の住民の多くのプライバシー情報が住民票コードを付されてデ
ータマッチングされ,本人の予期しないときに予期しない範囲で行政機関に保有さ
れ,利用される具体的な危険が生じていると判示する。しかし,上記①について
は,行政個人情報保護法は,行政機関における個人情報一般についてその取扱いに
関する基本的事項を定めるものであるのに対し,住基法30条の34等の本人確認
情報の保護規定は,個人情報のうち住基ネットにより管理,利用等される本人確認
情報につきその保護措置を講ずるために特に設けられた規定であるから,本人確認
- 12 -
情報については,住基法中の保護規定が行政個人情報保護法の規定に優先して適用
されると解すべきであって,住基法による目的外利用の禁止に実効性がないとの原
審の判断は,その前提を誤るものである。また,上記②については,システム上,
住基カード内に記録された住民票コード等の本人確認情報が行政サービスを提供し
た行政機関のコンピュータに残る仕組みになっているというような事情はうかがわ
れない。上記のとおり,データマッチングは本人確認情報の目的外利用に当たり,
それ自体が懲戒処分の対象となるほか,データマッチングを行う目的で個人の秘密
に属する事項が記録された文書等を収集する行為は刑罰の対象となり,さらに,秘
密に属する個人情報を保有する行政機関の職員等が,正当な理由なくこれを他の行
政機関等に提供してデータマッチングを可能にするような行為も刑罰をもって禁止
されていること,現行法上,本人確認情報の提供が認められている行政事務におい
て取り扱われる個人情報を一元的に管理することができる機関又は主体は存在しな
いことなどにも照らせば,住基ネットの運用によって原審がいうような具体的な危
険が生じているということはできない。


(2) そうすると,行政機関が住基ネットにより住民である被上告人らの本人確
認情報を管理,利用等する行為は,個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は
公表するものということはできず,当該個人がこれに同意していないとしても,憲
法13条により保障された上記の自由を侵害するものではないと解するのが相当で
ある。また,以上に述べたところからすれば,住基ネットにより被上告人らの本人
確認情報が管理,利用等されることによって,自己のプライバシーに関わる情報の
取扱いについて自己決定する権利ないし利益が違法に侵害されたとする被上告人ら
の主張にも理由がないものというべきである。以上は,前記大法廷判決の趣旨に徴
- 13 -
して明らかである。

以上と異なる見解に立って,被上告人らの住民票コード削除請求を認容した原審
の判断には,憲法解釈の誤り及び結論に影響を及ぼすことが明らかな法令解釈の誤
りがある。論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,以上説示したと
ころによれば,被上告人らの上記請求には理由がなく,これを棄却した第1審の判
断は相当であるから,被上告人らの控訴をいずれも棄却すべきである。

よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官涌井紀夫裁判官横尾和子裁判官甲斐中辰夫裁判官
泉治裁判官才口千晴)



事件番号

 平成19(オ)403



事件名

 損害賠償請求事件



裁判年月日

 平成20年3月6日



法廷名

 最高裁判所第一小法廷



裁判種別

 判決



結果

 破棄自判



判例集等巻・号・頁

 民集 第62巻3号665頁




原審裁判所名

 大阪高等裁判所



原審事件番号

 平成16(ネ)1089



原審裁判年月日

 平成18年11月30日




判示事項

 住民基本台帳ネットワークシステムにより行政機関が住民の本人確認情報を収集,管理又は利用する行為と憲法13条



裁判要旨

 住民基本台帳ネットワークシステムにより行政機関が住民の本人確認情報を収集,管理又は利用する行為は,当該住民がこれに同意していないとしても,憲法13条の保障する個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は公表されない自由を侵害するものではない。



参照法条

 憲法13条,住民基本台帳法6条1項,住民基本台帳法7条1号,住民基本台帳法7条2号,住民基本台帳法7条3号,住民基本台帳法7条7号,住民基本台帳法7条13号,住民基本台帳法30条の2第1項,住民基本台帳法30条の2第2項,住民基本台帳法30条の5第1項,住民基本台帳法30条の6,住民基本台帳法30条の7,住民基本台帳法30条の8,住民基本台帳法30条の10,住民基本台帳法30条の11,住民基本台帳法30条の44,住民基本台帳法施行令30条の5,住民基本台帳法施行規則1条,住民基本台帳法施行規則14条1項
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外形を自ら作り出していないのに権利外観法理(94条2項類推)が適用される場合とは。

2014-09-23 23:00:00 | 民法総則




  下に掲載した事例の検討

1、原則は、XとAの売買契約があるので、それに従う。

 すると、売買代金の支払いがなされておらず、甲土地の所有権は移転していないこととなり、Bは所有権を有しないAから甲土地を買ったこととなる。

 上の写真の設問1のほうの類似問題(公信問題)と言える。

 X    - - -→    A     →       B
    H11.2.28    4.5    4.15    4.16    
    売買契約     登記   売買契約   登記  


2、事例では、Bは、権利の外観としての「Aの登記」を信じて(善意無過失)、甲土地を購入した。
 このようなBを保護しないと、取引の安全を害することになる。


3、権利外観法理は、1)外観作出への帰責性と、2)外観を信じた第三者が保護に値すること(善意)。

 この事例では、Bは善意無過失であり、2)は問題にならない。

 Xに、1)でいう外観作出への帰責性があると言えるか。そもそも、Aは、外観作出自体に関与していないのである。

4、A名義登記という外形作出について、Xに帰責性が認められるか。

 判断要素

 〇Xに帰責性がありの方向に働く要素(下線)
 ① 白紙委任状、権利証、印鑑証明書等を容易に交付

 ② 権利書の預り証、補充後の委任状写しの内容をみたのに訂正請求せず

 〇Xに帰責性がなしの方向に働く要素(青色)
 ① XとAの属性

 ② Aが欺罔的手段を使用

 ③ A名義登記の存在を知って長期間放置していない(A名義登記とAB間の売買契約・移転登記との時間的接着性)


5、最終判断

 〇Xに帰責事由なし ⇒ 94条2項類推適用× ⇒ Xに甲土地の所有権

 〇Xに帰責事由あり ⇒ 94条2項類推適用〇 ⇒ Bに甲土地の所有権

  *ただし、本件事例のようにBが、善意・無過失の場合はよいとしても、
  Bが善意・有過失の場合は、外観を信頼した第三者と外観作出の原因行為をした者との公平を図る民法110条の法意を本件でもあてはめ、Bが保護されないと考えるべき。



6、本件事例と似た判例

 〇最判平成18.2.23 (百選I-22)

 〇本件事例のもとの判例 最判平成15.6.13

7、従来の判例

 〇意思外形対応型
  1、外形自己作出型 最判昭和41.3.18
  2、外形他人作出型 最判昭和45.9.22(百選I-21)

 〇意思外形非対応型 最判昭和43.10.17
  

**********事例*********

1 Xは、工業高校を卒業し、技術職として会社に勤務しているが、相続によ
って甲土地を所有することになった。

2 そこで、Xは、甲土地を売却することを計画して、不動産売買等を業とす
るAに売買を持ちかけたところ、Aとの間で話がまとまり、平成11年2月
28日、甲土地の所有権移転及び所有権移転登記手続と売買代金8200万
円の支払とを引換えとするとの約定で、甲土地の売買契約を締結した。

3 その際、Aが甲土地の地目を田から宅地に変更し、道路の範囲の明示や測
量をし、近隣者から承諾を得るために委任状が必要であるというので、Xは、
委任事項が白紙の委任状を作成し、Aに交付した


4 また、同時に、Aが、5月31日の所有権移転に間に合わせるために、甲
土地の地目の田から宅地への変更、道路の範囲の明示、測量等の所有権移転
の事前準備の必要があるので登記済証を預かりたいと言い、「事前に所有権移
転しますので、本日、土地の権利証を預かります」との記載
がされた預り証
を交付したところ、Xは同記載を見たものの深く考えず、Aに言われるまま
甲土地の登記済証を預けた。


5 3月4日ころ、Aはさらに、道路の範囲の明示に必要であるという説明を
して、XからXの印鑑登録証明書の交付を受けた。

6 3月9日、Xは、Aから、既に交付していた白紙委任状のコピーの交付を
受けたが、委任状には、「上記の物件の土地の売買に関して一切の権限を委任
します」との記載が書き加えられていることに気付いた


7 Xは、不安になって、Aに対し、委任状の記載はこれで良いのか等確認し
たが、Aが言葉巧みにもっともらしい説明を繰り返したため、Aの説明を信
用した。

8 Aは、Xから交付を受けた書類を悪用して、Xに対して売買代金を支払う
ことなく、甲土地につき、4月5日受付で、XからAへの所有権移転登記を
した(本件第1登記)。

9 さらに、Aは、4月15日、Bとの間で、甲土地を売買代金6500万円
で売り渡す旨の契約を締結し、これに基づき、4月16日、甲土地の所有権
移転登記をした(本件第2登記)。

10 なお、Bは、Aに甲土地の所有権が移転していないことについて善意・無
過失であった。

11 Xは、Aの地目変更のため等で委任状や登記済証等が必要であるという説
明を信じて上記書類を交付したものであって、その他本件第1登記がなされ
ることを承諾したと認められる事情はなかった。

12 Xは、本件第1登記、同第2登記がなされていることを5月26日に知り、
Aに対し事情の説明を求めたが、Aは不誠実な対応を繰り返すばかりで、埒
があかなかったので、弁護士に相談することにした。

(小問1) Xが、移転登記抹消登記手続請求をする場合、請求原因の要件事
実は何か

(小問2) 本件の素材となった事案に対する判例の処理は、従来の判例の考
え方には該当しないとする説明がある。では、素材となった事案に
対する判例の処理は、どのような点で、従来の判例の考え方に該当
しないと説明できるのか。

(小問3) あなたはXから相談を受けた弁護士だとする。
 Xから、Bに過失がある場合と無過失である場合とでXの移転登記抹消登記手続が認
められるか否かの結論が異なるのかとの質問を受けた場合、どのよ
うに回答するか。
 本件事案とは異なり、Xが、債権者から甲土地を
守るために、自らその登記名義を妻のC名義に移すこととし、Cに
は相談せず、甲土地の売買契約書を作成してCの実印を押印し、こ
れに基づいて所有権移転登記を行ったところ、その後Xと離婚した
Cが甲土地の登記名義がCとなっていることに気付いて、Cが甲土
地をDに売却した場合と比較して回答しなさい。

以上

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『Judge』 第1話 はじめてのお役所 T地方裁判所

2014-09-22 23:00:00 | 小説 Judge
 甲野太郎は、こんなとこに来るとは、思いもよらなかった。小児科の医師なのであり、いくら診察室から出ようと仲間の小児科医師同士で声掛けしあってはいても、ここまで出ることになろうとは。

 でも、今、自分は、そこにいる。

 同じような役所でも、申請を出したあと、どきどきすることはない。

 形式面だけの審査であろうけど、あまりにも形式が整っていなくて突っ返されたらどうしようと不安であった。

 「訴状」

 ホッチキスで二個左端を止めた3枚の紙。

 収入印紙を張ることで、少しだけ立派に見えるようにはなったが、内容面ではどうかわからない。
 すでに、しくじっている。総会決議不存在確認請求の主位的請求と総会決議取消請求の予備的請求のふたつをそれぞれ別個の訴訟物としてカウントして、それぞれ160万円に相当し、その2倍として、320万円、これに損害賠償請求1円を足して、321万円分の収入印紙22000円を買っていた。
 主位的請求と予備的請求は、ひとつでカウントするようで、14000円の印紙でよさそうだった。
 今後、あまり使うことのない8000円分の収入印紙を、甲野は、大切に持つ羽目になったのである。

 丁寧に係りのひとは見て下さっているのであろう。
 また、時間の進みも遅く感じた。
 手持ち無沙汰に、訴状作成でまねた本、そして、今後もバイブルのように参考にすることになるであろう『第一審 民事訴訟手続き』を読もうとするが、あんまり頭に入らない。

 果たして、「甲野さん。」と呼ばれた。

 「はい。」
 おそるおそる窓口に近づく。

 「被告 乙会 代表理事 丙山次郎」のところにピンクの付箋がひとつつけられていた。

 代表理事の前に「代表者」を入れるように言われた。
 甲野にとっては、内容面はともかく、この部分は、考えた上での結論だったので、そもそも「代表理事」と既につけているのであるから、「代表者」であることはわかるから、わざと「代表者」をつけなかったのであるが、係りのひとの指示に、もちろん従うことにした。
 
 訂正は、そのひとつだけだった。
 甲野は少し安堵した。
 

 係りのひとから、次の説明が始まった。
 
 出した訴状に番号が付された。
 「平成2×年(ワ)〇〇〇〇〇号」

 そして、担当となる部は、
 T地方裁判所民事第8部担当」と伝えられた。
 「法人」のことだからという理由のようだ。

 次に、
 「訴訟進行に関する照会書 T地方裁判所民事第8部 宛て」の紙が手渡された。
 照会事項に記入して、早急に担当部に提出するお願いだった。
 照会事項は、
「1 郵便による訴状送達の可能性
 2 被告の就業場所について
 3 被告の欠席の見込み
 4 被告との事前交渉
 5 被告との間の別事件の有無
 6 事実に関する争い
 7 和解について
 8 その他、裁判の進行に関する希望等、参考になることがあれば自由に記入してください」


 甲野は、効率的な裁判運営に欠かせない事項も入っているが、最後のところなど自由に記載できる内容であることから、一見裁判所というと、ひとがなかなか近づけないイメージがあるが、少し親近感を抱いたのであった。


 最後に、訴訟で必要となる郵便の切手代などの予納6000円の説明がなされた。
 甲野にとっては、予想外の出費である。
 大金を財布で持ち歩かない甲野にとっては、偶然に一万円札が一枚入っていて、その足でさっそく出納係に行けた。



 甲野にとって、人生で初めての書類の提出が終わった。
 一体、何がはじまろうとしているのだろうか。

 夜、ふとつけたテレビ。検察を描く人気ドラマの一場面が写った。
 有名俳優が、法廷に立ち、裁判員に向かって語りかけていた。
 「世の中には、いくつもの正義があります。検察には、被害者を守る正義、弁護人には、被告人を守る正義。そして、裁判員の皆様には、公平な裁判をする正義。」
 (正確には、検察は、被害者を守る正義もあるが、冤罪をゆるさない被告人を守る正義もあり、結局、社会を守る正義がある。)

 甲野も信じている。
 自分の出した訴状は、自らも属す乙会のガバナンスを正すための正義からのものであると。



 201×年9月22日、昼間はさわやかな秋空、夜は、めっきり涼しくなってきた秋の日の出来事であった。南の島では、大型で強い台風16号が、本州上陸をうかがっていた。

<つづく>


*この小説は、フィクションです。
 登場人物、団体は、実在するものといっさい関係ありません。
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かつて、横浜市には、第三者機関としての行政手続審議会があった。

2014-09-21 23:00:00 | マニフェスト2011
 横浜市には、かつて「行政手続審議会」が設置されていたのですね。

 平成23年の条例改正で、平成24年4月1日から廃止された模様。

 行政手続きの公正適正な運用を、第三者機関に委ねるのもひとつの手であったのではないかと考えます。

********現行の横浜市、横浜市行政手続条例 行政指導の部分抜粋***********************************

http://www.city.yokohama.jp/me/reiki/reiki_menu.html

第4章 行政指導

(行政指導の趣旨)

第30条 市の機関は、その任務又は所掌事務の範囲内において一定の行政目的を適切かつ円滑に達成するため、特定の者に一定の作為又は不作為を求める指導、勧告、助言その他の行為(処分を除く。)をすることができる。

(行政指導の一般原則)

第31条 行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、当該市の機関の任務又は所掌事務の範囲を逸脱してはならないこと及び行政指導の内容が相手方の任意の協力により実現されるものであることに留意しなければならない。

2 行政指導に携わる者は、その相手方が行政指導に従わなかったことを理由として、不利益な取扱いをしてはならない。

(行政指導の継続等)

第32条 行政指導に携わる者は、その相手方が当該行政指導に従わない場合には、その従う意思がない旨の明確な表明の有無、当該行政指導の目的とする公益上の必要性と相手方が受ける不利益との比較等を総合的に判断して、当該行政指導を継続するか否かを決定しなければならない。

2 前項の場合において、当該行政指導が申請の取下げ又は内容の変更を求めるものであるときは、行政指導に携わる者は、申請者が当該行政指導に従う意思がない旨を明確に表明したにもかかわらず当該行政指導を継続すること等により当該申請者の権利の行使を妨げるようなことをしてはならない。

(許認可等の権限に関連する行政指導)

第33条 許認可等(法令に基づくものを含む。以下この章において同じ。)をする権限又は許認可等に基づく処分をする権限を有する市の機関が、当該権限を行使することができない場合又は行使する意思がない場合においてする行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、当該権限を行使し得る旨を殊更に示すことにより相手方に当該行政指導に従うことを余儀なくさせるようなことをしてはならない。

(行政指導の方式)

第34条 行政指導に携わる者は、その相手方に対して、当該行政指導の趣旨及び内容並びに責任者を明確に示さなければならない。

2 行政指導が口頭でされた場合において、その相手方から前項に規定する事項を記載した書面の交付を求められたときは、当該行政指導に携わる者は、行政上特別の支障がない限り、これを交付しなければならない。

3 前項の規定は、次に掲げる行政指導については、適用しない。

(1) 相手方に対しその場において完了する行為を求めるもの

(2) 既に文書(前項の書面を含む。)又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)によりその相手方に通知されている事項と同一の内容を求めるもの

(平16条例67・一部改正)

(複数の者を対象とする行政指導)

第35条 同一の行政目的を実現するため一定の条件に該当する複数の者に対し行政指導をしようとするときは、市の機関は、あらかじめ、事案に応じ、これらの行政指導に共通してその内容となるべき事項を定め、かつ、行政上特別の支障がない限り、これを公表しなければならない。

(行政指導の趣旨等の公表)

第36条 市長その他の執行機関は、自ら又は所管の市の機関が行う行政指導に協力が得られない場合において、市民間の公平性を確保し、若しくは利害の調整を図ることが困難となり、又は市民が不利益を被るおそれがあると認めるときは、当該行政指導の趣旨及び内容を公表することができる。ただし、許認可等又は不利益処分に至るまでの過程において行う行政指導にあっては、当該許認可等又は不利益処分がされた後においては、この限りでない。

(平23条例50・一部改正)

(異議の申出等)

第37条 行政指導の相手方は、行政指導がこの章の規定に違反すると認めるときは、当該行政指導をした市の機関に対し、書面により、その是正その他必要な措置を執るよう異議を申し出ることができる。ただし、許認可等又は不利益処分に至るまでの過程において行われる行政指導にあっては、当該許認可等又は不利益処分がされた後においては、この限りでない。

2 市長その他の執行機関は、前項の規定による申出を正当と認めるときは、自ら必要な措置を執り、又は所管の市の機関に必要な措置を執らせるものとする。

(平23条例50・一部改正)
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9月21日(日)23(祝)、中央区月島3丁目こども元気クリニック・病児保育室5547-1191急病対応致します。

2014-09-20 23:00:00 | 日程、行事のお知らせ
 9月21日(日)&23日(火、祝)の午前中、中央区月島3丁目 こども元気クリニック・病児保育室03-5547-1191急病対応致します。
 

 1)高熱の風邪、2)咳の風邪、3)お腹の風邪の3つのお風邪がそれぞれ、今、流行っています。
 急に寒くなって、気候の変化に体が対応できていないことが、流行の原因のひとつと考えます。
 
 喘息の子の咳も増えています。
 あわせて、クループの咳の子が多いのも気になるところです。

 先週末には、3)お腹の風邪の子も、増えてきました。
 体調崩されておられませんか?
 


 おとなも、こどもの風邪をもらいます。
 こどもから夏風邪がうつること、多々、あります。
 そのような場合、お子さんとご一緒に、親御さんも診察いたしますので、お気軽にお声掛けください。



 
 なおったお子さんには、日曜日に、登園許可証も記載します。
 月曜日朝一番から登園できますように、ご利用ください。



 合わせて、平日なかなか時間が作れない場合でも、休日も、予防接種を実施いたしますので、ご利用ください。
 
 
 お大事に。

こども元気クリニック・病児保育室
中央区月島3-30-3
電話 03-5547-1191

小坂和輝
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民間対個人の紛争解決において、国を規律する憲法をルールとして直接に適用できるのか。

2014-09-19 23:00:00 | 憲法学
 民間対個人の紛争解決において、国を規律する憲法をルールとして直接に適用(直接適用説)できるのか。

 
 例)

 直接適用:民間団体がなした個人の差別的対応は、憲法14条に反し違憲違法である。

 間接適用:民間団体がなした個人の差別的対応は、憲法14条に反し公序良俗に反するから、違法である(民法90条)。



 最高裁が判事するところは、学説上の直接適用説と間接適用説のいずれに属するか。

 学生時代の運動歴を理由に新入社員の本採用を拒否したことが、憲法19条、14条に反するとして争われた三菱樹脂事件(最高裁大法廷昭和48年12月12日)において、最高裁のとる立場(間接適用説)が述べられています。


回答:

  「憲法の各規定は・・もっぱら国または公共団体と個人との関係を規律するものであり、私人相互の関係を直接規律することを予定するものではない。このことは、基本的人権なる観念の成立および発展の歴史的沿革に徴し、かつ、憲法における基本権規定の形式、内容にかんがみても明らかである。」

  「私的支配関係においては・・・立法措置によってその是正を図ることが可能であるし、また、場合によっては、私的自治に対する一般的制限規定である民法1条、90条や不法行為に関する諸規定等の適切な適用によって・・・適切な調整を図る方途も存するのである。」


〇憲法の人権規定の私人間効力に関する諸学説

(1)不適用説
   憲法の人権保障は、私人間の問題とはおよそ無関係

(2)間接適用説(通説・三菱樹脂事件判例)
   民法の公序良俗規定(90条)を通じて間接的に適用

(3)直接適用説
  甲説:自然法上の原理を含む人権+自由民主主義的民主政治の要件と認められる人権
  乙説:制度的保障+原則的規範
  丙説:基本権の革新的領域+侵害者が社会的権力の場合の類推適用
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裁判員制度:憲法は,刑事裁判における国民の司法参加を許容(最判H23.11.16)

2014-09-18 23:00:00 | 裁判員裁判制度




事件番号

 平成22(あ)1196



事件名

 覚せい剤取締法違反,関税法違反被告事件



裁判年月日

 平成23年11月16日



法廷名

 最高裁判所大法廷



裁判種別

 判決



結果

 棄却



判例集等巻・号・頁

 刑集 第65巻8号1285頁




原審裁判所名

 東京高等裁判所



原審事件番号

 平成22(う)393



原審裁判年月日

 平成22年6月21日




判示事項

 1 刑事裁判における国民の司法参加と憲法
2 裁判員制度と憲法31条,32条,37条1項,76条1項,80条1項
3 裁判員制度と憲法76条3項
4 裁判員制度と憲法76条2項
5 裁判員の職務等と憲法18条後段が禁ずる「苦役」



裁判要旨

 1 憲法は,刑事裁判における国民の司法参加を許容しており,憲法の定める適正な刑事裁判を実現するための諸原則が確保されている限り,その内容を立法政策に委ねている。
2 裁判員制度は,憲法31条,32条,37条1項,76条1項,80条1項に違反しない。
3 裁判員制度は,憲法76条3項に違反しない。
4 裁判員制度は,憲法76条2項に違反しない。
5 裁判員の職務等は,憲法18条後段が禁ずる「苦役」に当たらない。



参照法条

 (1〜4につき) 憲法76条 (1,2につき) 憲法31条,憲法32条,憲法37条,憲法80条 (1につき) 憲法前文第1段,憲法33条,憲法34条,憲法35条,憲法36条,憲法38条,憲法39条,憲法78条,憲法79条,大日本帝国憲法24条,裁判所法3条3項 (2〜5につき) 裁判員の参加する刑事裁判に関する法律1条,裁判員の参加する刑事裁判に関する法律2条1項,裁判員の参加する刑事裁判に関する法律2条2項,裁判員の参加する刑事裁判に関する法律2条3項,裁判員の参加する刑事裁判に関する法律6条,裁判員の参加する刑事裁判に関する法律9条,裁判員の参加する刑事裁判に関する法律16条,裁判員の参加する刑事裁判に関する法律51条,裁判員の参加する刑事裁判に関する法律66条,裁判員の参加する刑事裁判に関する法律67条,裁判員の参加する刑事裁判に関する法律第16条第8号に規定するやむを得ない事由を定める政令 (5につき) 憲法18条後段

***************************
判決文全文

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/769/081769_hanrei.pdf

- 1 -
主 文
本件上告を棄却する。
当審における未決勾留日数中390日を第1審判決の懲
役刑に算入する。


理 由
第1 弁護人小清水義治の上告趣意のうち,裁判員の参加する刑事裁判に関する
法律(以下「裁判員法」という。)の憲法違反をいう点について
1 所論は,多岐にわたり裁判員法が憲法に違反する旨主張するが,その概要
は,次のとおりである。①憲法には,裁判官以外の国民が裁判体の構成員となり評
決権を持って裁判を行うこと(以下「国民の司法参加」という。)を想定した規定
はなく,憲法80条1項は,下級裁判所が裁判官のみによって構成されることを定
めているものと解される。したがって,裁判員法に基づき裁判官以外の者が構成員
となった裁判体は憲法にいう「裁判所」には当たらないから,これによって裁判が
行われる制度(以下「裁判員制度」という。)は,何人に対しても裁判所において
裁判を受ける権利を保障した憲法32条,全ての刑事事件において被告人に公平な
裁判所による迅速な公開裁判を保障した憲法37条1項に違反する上,その手続は
適正な司法手続とはいえないので,全て司法権は裁判所に属すると規定する憲法7
6条1項,適正手続を保障した憲法31条に違反する。②裁判員制度の下では,裁
判官は,裁判員の判断に影響,拘束されることになるから,同制度は,裁判官の職
権行使の独立を保障した憲法76条3項に違反する。③裁判員が参加する裁判体
は,通常の裁判所の系列外に位置するものであるから,憲法76条2項により設置
が禁止されている特別裁判所に該当する。④裁判員制度は,裁判員となる国民に憲
- 2 -
法上の根拠のない負担を課すものであるから,意に反する苦役に服させることを禁
じた憲法18条後段に違反する。
しかしながら,憲法は,国民の司法参加を許容しているものと解され,裁判員法
に所論の憲法違反はないというべきである。その理由は,次のとおりである。
2 まず,国民の司法参加が一般に憲法上禁じられているか否かについて検討す
る。
(1) 憲法に国民の司法参加を認める旨の規定が置かれていないことは,所論が
指摘するとおりである。しかしながら,明文の規定が置かれていないことが,直ち
に国民の司法参加の禁止を意味するものではない。憲法上,刑事裁判に国民の司法
参加が許容されているか否かという刑事司法の基本に関わる問題は,憲法が採用す
る統治の基本原理や刑事裁判の諸原則,憲法制定当時の歴史的状況を含めた憲法制
定の経緯及び憲法の関連規定の文理を総合的に検討して判断されるべき事柄であ
る。
(2) 裁判は,証拠に基づいて事実を明らかにし,これに法を適用することによ
って,人の権利義務を最終的に確定する国の作用であり,取り分け,刑事裁判は,
人の生命すら奪うことのある強大な国権の行使である。そのため,多くの近代民主
主義国家において,それぞれの歴史を通じて,刑事裁判権の行使が適切に行われる
よう種々の原則が確立されてきた。基本的人権の保障を重視した憲法では,特に3
1条から39条において,適正手続の保障,裁判を受ける権利,令状主義,公平な
裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利,証人審問権及び証人喚問権,弁護人依頼
権,自己負罪拒否の特権,強制による自白の排除,刑罰不遡及の原則,一事不再理
など,適正な刑事裁判を実現するための諸原則を定めており,そのほとんどは,各
- 3 -
国の刑事裁判の歴史を通じて確立されてきた普遍的な原理ともいうべきものであ
る。刑事裁判を行うに当たっては,これらの諸原則が厳格に遵守されなければなら
ず,それには高度の法的専門性が要求される。憲法は,これらの諸原則を規定し,
かつ,三権分立の原則の下に,「第6章 司法」において,裁判官の職権行使の独
立と身分保障について周到な規定を設けている。こうした点を総合考慮すると,憲
法は,刑事裁判の基本的な担い手として裁判官を想定していると考えられる。
(3) 他方,歴史的,国際的な視点から見ると,欧米諸国においては,上記のよ
うな手続の保障とともに,18世紀から20世紀前半にかけて,民主主義の発展に
伴い,国民が直接司法に参加することにより裁判の国民的基盤を強化し,その正統
性を確保しようとする流れが広がり,憲法制定当時の20世紀半ばには,欧米の民
主主義国家の多くにおいて陪審制か参審制が採用されていた。我が国でも,大日本
帝国憲法(以下「旧憲法」という。)の下,大正12年に陪審法が制定され,昭和
3年から480件余りの刑事事件について陪審裁判が実施され,戦時下の昭和18
年に停止された状況にあった。
憲法は,その前文において,あらゆる国家の行為は,国民の厳粛な信託によるも
のであるとする国民主権の原理を宣言した。上記のような時代背景とこの基本原理
の下で,司法権の内容を具体的に定めるに当たっては,国民の司法参加が許容され
るか否かについても関心が払われていた。すなわち,旧憲法では,24条において
「日本臣民ハ法律ニ定メタル裁判官ノ裁判ヲ受クルノ権ヲ奪ハルヽコトナシ」と規
定されていたが,憲法では,32条において「何人も,裁判所において裁判を受け
る権利を奪はれない。」と規定され,憲法37条1項においては「すべて刑事事件
においては,被告人は,公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。」
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と規定されており,「裁判官による裁判」から「裁判所における裁判」へと表現が
改められた。また,憲法は,「第6章 司法」において,最高裁判所と異なり,下
級裁判所については,裁判官のみで構成される旨を明示した規定を置いていない。
憲法制定過程についての関係資料によれば,憲法のこうした文理面から,憲法制定
当時の政府部内では,陪審制や参審制を採用することも可能であると解されていた
ことが認められる。こうした理解は,枢密院の審査委員会において提示され,さら
に,憲法制定議会においても,米国型の陪審制導入について問われた憲法改正担当
の国務大臣から,「陪審問題の点については,憲法に特別の規定はないが,民主政
治の趣旨に則り,必要な規定は法律で定められ,現在の制度を完備することは憲法
の毫も嫌っているところではない。」旨の見解が示され,この点について特に異論
が示されることなく,憲法が可決成立するに至っている。憲法と同時に施行された
裁判所法が,3条3項において「この法律の規定は,刑事について,別に法律で陪
審の制度を設けることを妨げない。」と規定しているのも,こうした経緯に符合す
るものである。憲法の制定に際しては,我が国において停止中とはいえ現に陪審制
が存在していたことや,刑事裁判に関する諸規定が主に米国の刑事司法を念頭にお
いて検討されたこと等から,議論が陪審制を中心として行われているが,以上のよ
うな憲法制定過程を見ても,ヨーロッパの国々で行われていた参審制を排除する趣
旨は認められない。
刑事裁判に国民が参加して民主的基盤の強化を図ることと,憲法の定める人権の
保障を全うしつつ,証拠に基づいて事実を明らかにし,個人の権利と社会の秩序を
確保するという刑事裁判の使命を果たすこととは,決して相容れないものではな
く,このことは,陪審制又は参審制を有する欧米諸国の経験に照らしても,基本的
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に了解し得るところである。
(4) そうすると,国民の司法参加と適正な刑事裁判を実現するための諸原則と
は,十分調和させることが可能であり,憲法上国民の司法参加がおよそ禁じられて
いると解すべき理由はなく,国民の司法参加に係る制度の合憲性は,具体的に設け
られた制度が,適正な刑事裁判を実現するための諸原則に抵触するか否かによって
決せられるべきものである。換言すれば,憲法は,一般的には国民の司法参加を許
容しており,これを採用する場合には,上記の諸原則が確保されている限り,陪審
制とするか参審制とするかを含め,その内容を立法政策に委ねていると解されるの
である。
3 そこで,次に,裁判員法による裁判員制度の具体的な内容について,憲法に
違反する点があるか否かを検討する。
(1) 所論①は,憲法31条,32条,37条1項,76条1項,80条1項違
反をいうものである。
しかし,憲法80条1項が,裁判所は裁判官のみによって構成されることを要求
しているか否かは,結局のところ,憲法が国民の司法参加を許容しているか否かに
帰着する問題である。既に述べたとおり,憲法は,最高裁判所と異なり,下級裁判
所については,国民の司法参加を禁じているとは解されない。したがって,裁判官
と国民とで構成する裁判体が,それゆえ直ちに憲法上の「裁判所」に当たらないと
いうことはできない。
問題は,裁判員制度の下で裁判官と国民とにより構成される裁判体が,刑事裁判
に関する様々な憲法上の要請に適合した「裁判所」といい得るものであるか否かに
ある。
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裁判員法では,裁判官3名及び裁判員6名(公訴事実に争いがない事件について
は,場合により裁判官1名及び裁判員4名)によって裁判体を構成するとしている
(2条2項,3項)。裁判員の選任については,衆議院議員の選挙権を有する者の
中から,くじによって候補者が選定されて裁判所に呼び出され,選任のための手続
において,不公平な裁判をするおそれがある者,あるいは検察官及び被告人に一定
数まで認められた理由を示さない不選任の請求の対象とされた者などが除かれた
上,残った候補者から更にくじその他の作為が加わらない方法に従って選任される
ものとしている(13条から37条)。また,解任制度により,判決に至るまで裁
判員の適格性が確保されるよう配慮されている(41条,43条)。裁判員は,裁
判官と共に合議体を構成し,事実の認定,法令の適用及び刑の量定について合議す
ることとされ,法令の解釈に係る判断及び訴訟手続に関する判断等は裁判官に委ね
られている(6条)。裁判員は,法令に従い公平誠実にその職務を行う義務等を負
う一方(9条),裁判官,検察官及び弁護人は,裁判員がその職責を十分に果たす
ことができるよう,審理を迅速で分かりやすいものとすることに努めなければなら
ないものとされている(51条)。裁判官と裁判員の評議は,裁判官と裁判員が対
等の権限を有することを前提にその合議によるものとされ(6条1項,66条1
項),その際,裁判長は,必要な法令に関する説明を丁寧に行うとともに,評議を
裁判員に分かりやすいものとなるように整理し,裁判員が発言する機会を十分に設
けるなど,裁判員がその職責を十分に果たすことができるように配慮しなければな
らないとされている(66条5項)。評決については,裁判官と裁判員の双方の意
見を含む合議体の員数の過半数の意見によることとされ,刑の量定についても同様
の原則の下に決定するものとされている(67条)。評議における自由な意見表明
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を保障するために,評議の経過等に関する守秘義務も設け(70条1項),裁判員
に対する請託,威迫等は罰則をもって禁止されている(106条,107条)。
以上によれば,裁判員裁判対象事件を取り扱う裁判体は,身分保障の下,独立し
て職権を行使することが保障された裁判官と,公平性,中立性を確保できるよう配
慮された手続の下に選任された裁判員とによって構成されるものとされている。ま
た,裁判員の権限は,裁判官と共に公判廷で審理に臨み,評議において事実認定,
法令の適用及び有罪の場合の刑の量定について意見を述べ,評決を行うことにあ
る。これら裁判員の関与する判断は,いずれも司法作用の内容をなすものである
が,必ずしもあらかじめ法律的な知識,経験を有することが不可欠な事項であると
はいえない。さらに,裁判長は,裁判員がその職責を十分に果たすことができるよ
うに配慮しなければならないとされていることも考慮すると,上記のような権限を
付与された裁判員が,様々な視点や感覚を反映させつつ,裁判官との協議を通じて
良識ある結論に達することは,十分期待することができる。他方,憲法が定める刑
事裁判の諸原則の保障は,裁判官の判断に委ねられている。
このような裁判員制度の仕組みを考慮すれば,公平な「裁判所」における法と証
拠に基づく適正な裁判が行われること(憲法31条,32条,37条1項)は制度
的に十分保障されている上,裁判官は刑事裁判の基本的な担い手とされているもの
と認められ,憲法が定める刑事裁判の諸原則を確保する上での支障はないというこ
とができる。
したがって,憲法31条,32条,37条1項,76条1項,80条1項違反を
いう所論は理由がない。
(2) 所論②は,憲法76条3項違反をいうものである。
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しかしながら,憲法76条3項によれば,裁判官は憲法及び法律に拘束される。
そうすると,既に述べたとおり,憲法が一般的に国民の司法参加を許容しており,
裁判員法が憲法に適合するようにこれを法制化したものである以上,裁判員法が規
定する評決制度の下で,裁判官が時に自らの意見と異なる結論に従わざるを得ない
場合があるとしても,それは憲法に適合する法律に拘束される結果であるから,同
項違反との評価を受ける余地はない。元来,憲法76条3項は,裁判官の職権行使
の独立性を保障することにより,他からの干渉や圧力を受けることなく,裁判が法
に基づき公正中立に行われることを保障しようとするものであるが,裁判員制度の
下においても,法令の解釈に係る判断や訴訟手続に関する判断を裁判官の権限にす
るなど,裁判官を裁判の基本的な担い手として,法に基づく公正中立な裁判の実現
が図られており,こうした点からも,裁判員制度は,同項の趣旨に反するものでは
ない。
憲法76条3項違反をいう見解からは,裁判官の2倍の数の国民が加わって裁判
体を構成し,多数決で結論を出す制度の下では,裁判が国民の感覚的な判断に支配
され,裁判官のみで判断する場合と結論が異なってしまう場合があり,裁判所が果
たすべき被告人の人権保障の役割を全うできないことになりかねないから,そのよ
うな構成は憲法上許容されないという主張もされている。しかし,そもそも,国民
が参加した場合であっても,裁判官の多数意見と同じ結論が常に確保されなければ
ならないということであれば,国民の司法参加を認める意義の重要な部分が没却さ
れることにもなりかねず,憲法が国民の司法参加を許容している以上,裁判体の構
成員である裁判官の多数意見が常に裁判の結論でなければならないとは解されな
い。先に述べたとおり,評決の対象が限定されている上,評議に当たって裁判長が
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十分な説明を行う旨が定められ,評決については,単なる多数決でなく,多数意見
の中に少なくとも1人の裁判官が加わっていることが必要とされていることなどを
考えると,被告人の権利保護という観点からの配慮もされているところであり,裁
判官のみによる裁判の場合と結論を異にするおそれがあることをもって,憲法上許
容されない構成であるとはいえない。
したがって,憲法76条3項違反をいう所論は理由がない。
(3) 所論③は,憲法76条2項違反をいうものである。
しかし,裁判員制度による裁判体は,地方裁判所に属するものであり,その第1
審判決に対しては,高等裁判所への控訴及び最高裁判所への上告が認められてお
り,裁判官と裁判員によって構成された裁判体が特別裁判所に当たらないことは明
らかである。
(4) 所論④は,憲法18条後段違反をいうものである。
裁判員としての職務に従事し,又は裁判員候補者として裁判所に出頭すること
(以下,併せて「裁判員の職務等」という。)により,国民に一定の負担が生ずる
ことは否定できない。しかし,裁判員法1条は,制度導入の趣旨について,国民の
中から選任された裁判員が裁判官と共に刑事訴訟手続に関与することが司法に対す
る国民の理解の増進とその信頼の向上に資することを挙げており,これは,この制
度が国民主権の理念に沿って司法の国民的基盤の強化を図るものであることを示し
ていると解される。このように,裁判員の職務等は,司法権の行使に対する国民の
参加という点で参政権と同様の権限を国民に付与するものであり,これを「苦役」
ということは必ずしも適切ではない。また,裁判員法16条は,国民の負担を過重
にしないという観点から,裁判員となることを辞退できる者を類型的に規定し,さ
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らに同条8号及び同号に基づく政令においては,個々人の事情を踏まえて,裁判員
の職務等を行うことにより自己又は第三者に身体上,精神上又は経済上の重大な不
利益が生ずると認めるに足りる相当な理由がある場合には辞退を認めるなど,辞退
に関し柔軟な制度を設けている。加えて,出頭した裁判員又は裁判員候補者に対す
る旅費,日当等の支給により負担を軽減するための経済的措置が講じられている
(11条,29条2項)。
これらの事情を考慮すれば,裁判員の職務等は,憲法18条後段が禁ずる「苦
役」に当たらないことは明らかであり,また,裁判員又は裁判員候補者のその他の
基本的人権を侵害するところも見当たらないというべきである。
4 裁判員制度は,裁判員が個別の事件ごとに国民の中から無作為に選任され,
裁判官のような身分を有しないという点においては,陪審制に類似するが,他方,
裁判官と共に事実認定,法令の適用及び量刑判断を行うという点においては,参審
制とも共通するところが少なくなく,我が国独特の国民の司法参加の制度であると
いうことができる。それだけに,この制度が陪審制や参審制の利点を生かし,優れ
た制度として社会に定着するためには,その運営に関与する全ての者による不断の
努力が求められるものといえよう。裁判員制度が導入されるまで,我が国の刑事裁
判は,裁判官を始めとする法曹のみによって担われ,詳細な事実認定などを特徴と
する高度に専門化した運用が行われてきた。司法の役割を実現するために,法に関
する専門性が必須であることは既に述べたとおりであるが,法曹のみによって実現
される高度の専門性は,時に国民の理解を困難にし,その感覚から乖離したものに
もなりかねない側面を持つ。刑事裁判のように,国民の日常生活と密接に関連し,
国民の理解と支持が不可欠とされる領域においては,この点に対する配慮は特に重
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要である。裁判員制度は,司法の国民的基盤の強化を目的とするものであるが,そ
れは,国民の視点や感覚と法曹の専門性とが常に交流することによって,相互の理
解を深め,それぞれの長所が生かされるような刑事裁判の実現を目指すものという
ことができる。その目的を十全に達成するには相当の期間を必要とすることはいう
までもないが,その過程もまた,国民に根ざした司法を実現する上で,大きな意義
を有するものと思われる。このような長期的な視点に立った努力の積み重ねによっ
て,我が国の実情に最も適した国民の司法参加の制度を実現していくことができる
ものと考えられる。
第2 その余の上告趣意について
弁護人のその余の上告趣意は,単なる法令違反,事実誤認,量刑不当の主張であ
って,適法な上告理由に当たらない。
よって,刑訴法414条,396条,刑法21条により,裁判官全員一致の意見
で,主文のとおり判決する。
検察官岩橋義明,同上野友慈 公判出席
(裁判長裁判官 竹崎博允 裁判官 古田佑紀 裁判官 那須弘平 裁判官
田原睦夫 裁判官 宮川光治 裁判官 櫻井龍子 裁判官 竹内行夫 裁判官
金築誠志 裁判官 須藤正彦 裁判官 千葉勝美 裁判官 横田尤孝 裁判官
白木 勇 裁判官 岡部喜代子 裁判官 大谷剛彦 裁判官 寺田逸郎)
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このような対応の差に、合理的な説明がつくのだろうか?

2014-09-17 23:00:00 | 政策・マニフェスト

 子ども達の給食も、検出限界値を1Bq/㎏以下にできるはずなのに、、、、
 
 あからさまな対応の差に、驚きました。

 

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