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法律が明文で規定していないことを、最高裁判決で手当てした例:共有物分割での価格賠償

2013-01-30 09:38:26 | シチズンシップ教育

 法律が明文で規定していないことを、最高裁判決で手当てした例。

 この最高裁判決が出るまでは、どんなに不合理(遺産分割で、一旦共有になったものをその後分ける場合は、共有物分割の手法しかとれない)でも、共有物分割は、現物分割がととのわなければ、競売にかけてその代金を分割する方法しか取れませんでした。

 画期的な判決のひとつだと思います。



*遺産分割:価格賠償を認める。

遺産分割とは、民法906条。
遺産の分割の基準)
第九百六条  遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。

家事審判規則109条
http://www.courts.go.jp/vcms_lf/120403Kashinki.pdf#search='%E5%AE%B6%E4%BA%8B%E5%AF%A9%E5%88%A4%E8%A6%8F%E5%89%87'
第百九条 家庭裁判所は、特別の事由があると認めるときは、遺産の分割の方法として、
共同相続人の一人又は数人に他の共同相続人に対し債務を負担させて、現物をもつてする
分割に代えることができる。
(昭二三最裁規三八・一部改正)


*共有物分割:価格賠償を原則認めていない。民法258条で、まずは、現物分割をしようとするが、できない場合は、競売。

(裁判による共有物の分割)
第二百五十八条  共有物の分割について共有者間に協議が調わないときは、その分割を裁判所に請求することができる。
2  前項の場合において、共有物の現物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができる。


共有物分割で、価格賠償ができないと不都合な場合があり、できる場合を最高裁(平成8年10月31日最高裁第一小法廷)は判事しました。

理由:共有物分割の訴えは、いわゆる形式的形成訴訟に属し、その本質は非訟事件であって遺産分割事件と異なるものではない。そして、遺産分割事件については家事審判規則109条により価格賠償の方法が認められているところ、民法は、共有物分割訴訟の非訟事件としての性質上、現物分割の一態様として価格賠償の方法を許しているものと解されるからである。


どういう要件をみたせば、共有物分割において、価格賠償ができるかの考え方は、以下の図。






****最高裁ホームページ****
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319120851613617.pdf
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=52485&hanreiKbn=02

主    文
     原判決中、共有物分割請求に関する部分を破棄する。
     前項の部分につき本件を広島高等裁判所に差し戻す。


         理    由

 上告代理人川岸伸隆の上告理由について
 一 原審の確定した事実関係の概要及び記録によって認められる本件訴訟の経過
等は、次のとおりである。
 1 亡D、亡E夫婦の長女である上告人A、その夫であり同夫婦の養子であるF
及び二女であるG(承継前の被上告人。以下「G」という。)の三名は、昭和四〇
年七月八日、H信用組合から原判決添付物件目録記載の各不動産(以下「本件不動
産」という。)を持分各三分の一の割合で買い受けた。本件不動産は、かつて亡D
及びその先代が所有していたものであり、一時H信用組合に所有権が移転していた
のを、右三名が共同して買い戻したものであった。
 2 Fは、昭和六一年一一月三日に死亡し、同人の右持分は、上告人A及び子で
あるその余の上告人らがそれぞれ法定相続分に従って取得した。その結果、本件不
動産についての共有持分は、上告人Aが一八分の九、その余の上告人らが各一八分
の一、Gが一八分の六となった。
 3 本件不動産のうち原判決添付物件目録記載一ないし三の土地上には、ほぼ一
杯に同目録記載四の建物(以下「本件建物」という。)が存在しており、しかも、
本件建物は、構造上一体を成していることから、上告人らとGの持分に応じた区分
所有とすることができず、したがって、本件不動産を現物分割することは不可能で
ある。
 4 Gは、昭和四八年以来、本件建物に居住し、本件建物に接する平家建ての建
物において薬局を営み、その営業収入によって生活してきたが、そのことについて
- 1 -
は、上告人らとの間に特段の争いもなく推移してきた。他方、上告人らは、それぞ
れ別に居住していて、必ずしも本件不動産を取得する必要はない。
 5 上告人らは、Gが本件不動産の分割協議に応じないため、本件不動産の共有
物分割等を求める本件訴えを提起したものであるが、本件不動産の分割方法として、
競売による分割を希望している。これに対し、Gは、自らが本件不動産を単独で取
得し、上告人らに対してその持分の価格を賠償する方法(以下「全面的価格賠償の
方法」という。)による分割を希望していた。
 6 原審で実施された鑑定の結果によれば、本件不動産の評価額は合計八二六万
三〇〇〇円であり、仮にこれを競売に付したとしても、これより高価に売却するこ
とができる可能性は低い。
 二 原審は、(1) 民法二五八条による共有物分割の方法として、全面的価格賠
償の方法を採ることも許される旨を判示した上で、(2) 右一の事実関係等の下に
おいては、本件不動産の分割方法として全面的価格賠償の方法を採用するのが相当
であるとし、競売による分割を命じた第一審判決を変更して、本件不動産をGの単
独所有とした上、Gに対して上告人らの持分の価格の賠償を命じた。所論は、原審
の右(1)、(2)の判断に民法二五八条の解釈適用の誤りがあるというものである。
 三 そこで検討するに、原審の右(1)の判断は是認することができるが、右(2)
の判断は是認することができない。その理由は次のとおりである。
 1 民法二五八条二項は、共有物分割の方法として、現物分割を原則としつつも、
共有物を現物で分割することが不可能であるか又は現物で分割することによって著
しく価格を損じるおそれがあるときは、競売による分割をすることができる旨を規
定している。ところで、この裁判所による共有物の分割は、民事訴訟上の訴えの手
続により審理判断するものとされているが、その本質は非訟事件であって、法は、
裁判所の適切な裁量権の行使により、共有者間の公平を保ちつつ、当該共有物の性
- 2 -
質や共有状態の実状に合った妥当な分割が実現されることを期したものと考えられ
る。したがって、右の規定は、すべての場合にその分割方法を現物分割又は競売に
よる分割のみに限定し、他の分割方法を一切否定した趣旨のものとは解されない。
 そうすると、共有物分割の申立てを受けた裁判所としては、現物分割をするに当
たって、持分の価格以上の現物を取得する共有者に当該超過分の対価を支払わせ、
過不足の調整をすることができる(最高裁昭和五九年(オ)第八〇五号同六二年四
月二二日大法廷判決・民集四一巻三号四〇八頁参照)のみならず、当該共有物の性
質及び形状、共有関係の発生原因、共有者の数及び持分の割合、共有物の利用状況
及び分割された場合の経済的価値、分割方法についての共有者の希望及びその合理
性の有無等の事情を総合的に考慮し、当該共有物を共有者のうちの特定の者に取得
させるのが相当であると認められ、かつ、その価格が適正に評価され、当該共有物
を取得する者に支払能力があって、他の共有者にはその持分の価格を取得させるこ
ととしても共有者間の実質的公平を害しないと認められる特段の事情が存するとき
は、共有物を共有者のうちの一人の単独所有又は数人の共有とし、これらの者から
他の共有者に対して持分の価格を賠償させる方法、すなわち全面的価格賠償の方法
による分割をすることも許されるものというべきである。

 したがって、これと同旨の原審の前記(1)の判断は、正当として是認することが
でき、原判決に所論の違法はない。所論引用の前記大法廷判決は、価格賠償をもっ
て現物分割の場合の過不足を調整することができる旨を判示しているにとどまり、
右の判断はこれに抵触するものではない。この点に関する論旨は採用することがで
きない。
 2 次に、本件について全面的価格賠償の方法により共有物を分割することの許
される特段の事情が存するか否かをみるに、本件不動産は、現物分割をすることが
不可能であるところ、Gにとってはこれが生活の本拠であったものであり、他方、
- 3 -
上告人らは、それぞれ別に居住していて、必ずしも本件不動産を取得する必要はな
く、本件不動産の分割方法として競売による分割を希望しているなど、前記一の事
実関係等にかんがみると、本件不動産をGの取得としたことが相当でないとはいえ
ない。
 しかしながら、前記のとおり、全面的価格賠償の方法による共有物分割が許され
るのは、これにより共有者間の実質的公平が害されない場合に限られるのであって、
そのためには、賠償金の支払義務を負担する者にその支払能力があることを要する
ところ、原審で実施された鑑定の結果によれば、上告人らの持分の価格は合計五五
〇万円余であるが、原審は、Gにその支払能力があった事実を何ら確定していない。
したがって、原審の認定した前記一の事実関係等をもってしては、いまだ本件につ
いて前記特段の事情の存在を認めることはできない。

 そうすると、本件について、前記特段の事情の存在を認定することなく、全面的
価格賠償による共有物分割の方法を採用し、本件不動産をGの単独所有とした上、
Gに対して上告人らの持分の価格の賠償を命じた原判決には、法令の解釈適用の誤
り、ひいては審理不尽、理由不備の違法があるというべきであり、この違法が原判
決の結論に影響を及ぼすことは明らかである。論旨は右の趣旨をいうものとして理
由があるから、原判決中、共有物分割請求に関する部分は破棄を免れず、更に審理
を尽くさせるため、本件を原審に差し戻すこととする。
 よって、民訴法四〇七条一項に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判
決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    遠   藤   光   男
            裁判官    小   野   幹   雄
            裁判官    高   橋   久   子
- 4 -
            裁判官    井   嶋   一   友
            裁判官    藤   井   正   雄
-

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