ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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皇位継承13~皇女制度案の問題点

2021-11-14 10:36:48 | 皇室
4.皇女制度案の問題点

●政府は皇女制度案を検討

 秋篠宮眞子内親王殿下(当時)のご結婚問題と関連した動きだったのかどうかは明らかでないが、政府は皇女という新たな制度を設ける案を検討していると報じられてきた。
 皇族女子は民間人と結婚すれば、皇籍を離れる。数年のうちに皇族女子の婚姻が続き、皇族方のご公務の分担が厳しくなると予想される。皇族が減少する中で、皇室活動を維持しつつ皇族方のご公務の分担を軽減することが、先延ばしできない重要な課題となっている。
 この課題への対応策の一つとして、以前から尊称保持案が出ている。皇族女子が婚姻後も内親王または女王の尊称を保持することにより、皇籍離脱してもご公務を担える立場にあることを公的に保障しようとするものである。それによって皇族としての経験を生かし、婚姻後も皇室活動を継続して、天皇家を支えていただくことができるという案である。
 尊称保持者は、身分は民間人であり、戸籍は配偶者の籍に入り、子供も民間人である。女系天皇にはつながらず、皇室の男系継承の伝統を崩壊させる恐れはない。
 尊称保持案は、歴史的前例にならう方法である。旧皇室典範は、第44条に次のように定めていた。
 「皇族女子ノ臣籍ニ嫁シタル者ハ皇族ノ列ニ在ラス但シ特旨ニ依リ仍内親王女王ノ称ヲ有セシムルコトアルヘシ」
 大意は、「皇族女子が臣籍の者と結婚した場合は、皇族の列から外れる。但し、特旨により、その内親王・女王の呼称を持つ場合がある」ということである。
 尊称保持案の実現には、皇室典範の改正を要する。旧皇室典範第44条の条文の主旨を踏まえた条文を新設することになるだろう。天皇から特旨を賜るのか、行政の会議体で決するのか、皇室会議で決するのか、制度設計が必要である。
 ただし、この方策が採られても現在おられる皇族女子が婚姻後も、一代限りでご公務を担うことができるだけであり、一時的な方策に過ぎない。今上陛下の妹、黒田清子様が昭和天皇の皇女、池田厚子様から引き継いで伊勢神宮祭主に就いておられるが、将来適任者がいなくなる問題も生じる。真に必要なのは、皇室の弥栄と皇位の安定的な継承を可能にする制度なのである。
 さて、現在出されている皇女制度案は、尊称保持案の修正案だと私は理解している。この案では、内親王または女王という尊称ではなく、皇女という名称を用いる。皇女の語は、歴史的には、天皇の娘を意味する。現状では、愛子内親王殿下のみに使い得る語だが、政府の皇女制度案はこの語を天皇以外の皇族の娘にも使おうとしているようである。
 政府の案では、一般の男性と結婚して皇籍を離れた女性に「皇女」の尊称を贈り、特別職の国家公務員として公務を続けていただくというものである。国家公務員となった女性を皇室に留まらないので、女性天皇や女系天皇の容認にはつながらない。皇女の報酬は、年間600万円程度と考えられる。
 私見を述べると、本来、政府がなすべきことは、男系による安定的な皇位継承を確保する方法を、国民に提示することである。しかし、皇女案は、一時的な補助策でしかない。皇室の課題の根本的な解決にはならず、むしろ課題を先送りする恐れがある。

●小室眞子氏の結婚問題との関係

 皇女制度案は、皇女となる元皇族女子の配偶者によっては、深刻な問題を生じる。その具体的な事例となったのが、小室眞子氏の結婚問題である。
 眞子氏と小室圭氏の結婚話は、本来破談が望ましいものだった。本件については、拙稿「秋篠宮眞子内親王殿下の破滅的なご結婚に反対する」、拙稿「眞子様のご結婚強行は皇室への信頼を損なう」に書いた。
 小室家の様々な問題が露呈しながらも結婚への動きは止まらず、結局、本年10月26日に結婚となった。結婚に当たり、眞子氏と小室氏は自治体に婚姻届けを提出し、眞子氏は皇籍から離脱した。一般の結納に当たる「納采の儀」「朝見の儀」など、結婚に関連する儀式は行なわなかった。戦後の皇室で初めてである。眞子氏は、皇室を離れる際に支給される一時金(約1億3700万円)を辞退する意向を表わし、政府はそれを受け入れた。小室圭氏・眞子氏は11月14日に渡米し、ニューヨークでの生活を開始した。
 私は、正式な儀式を行わなかったこと、一時金を辞退されたことは、当然であったと思う。また、小室眞子氏は今後、皇女などの特別公務員にもなるべきではないと考える。国民の多くが祝福できない結婚をした眞子氏が皇女となったならば、皇室のあり方が問われる。また皇女となった眞子氏に対し、国民の多くが敬いの心を持ち、その活動を有難く思わないだろう。
 眞子氏自身がご公務を通じて、税金から年収600万円ほどを受け取ることはよいとしても、もし小室圭氏が眞子氏の収入に頼る生活をするならば、国民の多くは不満と反発を募らせるだろう。二人のあり方への疑問は、秋篠宮皇嗣殿下ご夫妻、さらには皇室全体への疑問につながるだろう。
 また、別の問題として、小室圭氏は皇女の夫という特別の立場となってしまう。民間人でありながら、準皇族となる。そのことを国民の多くは全く受け入れることができないに違いない。
 仮に政府が考えるような皇女制度策が採られたとしても、現在おられる未婚の皇族女子が、みな民間人と結婚されれば、一代限りでお役目を終える。悠仁親王殿下がやがて皇位を継承する時が来た時には皇族の数は極少なくなってしまう。最悪の場合、男系男子の皇族は悠仁親王殿下お一人となってしまうかもしれない。皇女制度では、いずれ皇位の安定的な継承は困難になることは、明白である。
 皇女制度案は、女性天皇・女系天皇にはつながらないという見方があるが、そうとはいえない。政府案における皇女は、民間人となった元皇族女子である。皇女は皇族ではないから女性天皇になることはない。また、男系の女子であるから女系天皇になることもない。その点では、皇女制度案は、女性天皇・女系天皇につながるものではない。
 ただし、注意すべきは、皇室典範を改正すれば、皇女を皇族に復帰させ、女性の天皇にすることが可能になることである。その皇女が結婚していれば、夫はもともと民間人でありながら天皇の夫となり、「皇配殿下」などと呼ばれるだろう。またその夫婦の子供は、同じく本来、民間人でありながら天皇の子であり、「親王殿下」「内親王殿下」と呼ばれることになるだろう。それゆえ、皇女制度案は女性天皇・女系天皇につながらないという見方は、必ずしも正しくない。小室圭氏と結婚した眞子氏が皇女となった場合、皇室は歴史上かつてない極めて大きな問題をはらむことになる。
 先に述べた女性宮家にせよ、この項目で述べた皇女にせよ、われわれ日本国民は、小室眞子氏の結婚問題をきっかけとして、皇室に関する根本問題の解決に最善を尽くすべきである。それは、日本のためであり、ひいては自分や自分の子孫のためでもある。
 ここで小室眞子氏について書いたことは、天皇家の愛子内親王殿下、秋篠宮家の次女・佳子内親王殿下にも、そのまま当てはまる。愛子様、佳子様が旧皇族の男系男子孫以外の民間人とご結婚された場合、女系継承をはじめ女性宮家、皇女、夫と子の身分等、小室眞子氏に関して起こった問題と同じ問題が生じるのである。

 次回に続く。

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