ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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皇位継承19~歴代天皇が受けた帝王学教育

2021-11-30 09:32:43 | 皇室
●歴代天皇が受けた帝王学教育

 ここで歴代天皇が受けた帝王学教育を振り返ってみよう。

◆昭和天皇の帝王学教育
 昭和天皇は、明治天皇の孫である。明治天皇は、明治40年(1907年)1月に乃木希典陸軍大将を学習院院長に任命された。学習院に入学する自身の孫たちの養育を乃木に託された。乃木は質実剛健・質素勤勉を旨とする教育に努めた。昭和天皇は明治41年(1908年)4月に学習院に入学し、乃木のもとで厳しい教育を受けた。後年、乃木について「自身の人格形成に最も影響があった人物」と語っておられる。
 昭和天皇は、皇太子の時代に数え16歳から21歳まで、杉浦重剛に学ばれた。杉浦は「真の人格者」と尊敬された偉大な教育者だった。学習院初等科で教鞭をとった杉浦は、将来の天皇に天皇の倫理を説く重任に当たった。その際、講義のために書いたのが、『倫理御進講草案』(三樹書房)である。
 杉浦は『草案』の序文において、御進講の基本方針を次のように掲げた。
 「今進講に就きて大体の方針を定め、左にこれを陳述せんとす。
 一、三種の神器に則り皇道を体し給ふべきこと。
 一、五條の御誓文を以て将来の標準と為し給ふべきこと。
 一、教育勅語の御趣旨の貫徹を期し給ふべきこと」
 第一における三種の神器に関して、杉浦は、神話に現れ、歴代天皇に継承されてきた神器を「知仁勇」の象徴と解釈して、天皇後継者に倫理教育を行った。第二・第三における五箇条の御誓文と教育勅語は明治天皇によるものであり、昭和天皇にとっては祖父の遺訓ともいえる。杉浦は、それらを教授した。
 昭和天皇は、乃木・杉浦というその時代を代表する教育者を通じて、天皇の帝王学を学ばれた。

◆上皇陛下の帝王学教育
 昭和天皇は皇太子(現在の上皇陛下)の教育に心を注がれた。上皇陛下は、皇太子時代には東宮御学問所において、当代随一といわれる学者や有識者から様々な分野について個人教授を受けられた。東宮御教育常時参与となった小泉信三・元慶應義塾長からは、福沢諭吉の『帝室論』やハロルド・ニコルソンの『ジョージ5世伝』を学び、アメリカ人家庭教師のエリザベス・バイニング夫人からは、英語と欧米式のマナーを学ばれた。
 敗戦後、GHQの方針で東宮御学問所での教育が行なわれなくなると、一般国民が多く入学する学習院で学校教育を受けられた。しかし、それ以外に学者・有識者から個人指導を受けられた。

◆今上天皇の帝王学教育
 今上天皇陛下は、幼い頃から天皇となるべく帝王学を学ばれた。第一は、父である上皇陛下から直接教えを受けられた。これが最も重要である。第二は、一流の学者や知識人から様々な知識を学び、教養を身につけられた。
 今上天皇陛下は、宮中祭祀を司る天皇(父である上皇陛下)の厳粛な姿を間近で見ることによって、祭祀を通じて国家・国民の安寧を祈るという天皇の役割を学び、受け継いでおられる。また、当時皇太子だった上皇陛下は、息子・浩宮親王殿下に対し、学習院に通う車中で、新聞で読んだその日の出来事について話すよう命じていたと伝えられる。そうした直接教育は、今上天皇陛下の見識を広め、また深いものに育てたと言えよう。
 また、今上天皇陛下は、幼少期に10年間、ご養育掛りを務めた浜尾実元東宮侍従から様々な教育を受けられた。皇室全般に関わること、御所での生活、国民との接し方、公的な仕事、礼儀作法等に及んだ。また、学者や知識人から個人教授を受けられた。12歳の誕生日前に、漢学の権威である宇野哲人・東京大名誉教授に「論語」を学ばれたり、15歳の誕生日前に、王朝和歌の研究者である橋本不美男・宮内庁図書調査官から「徒然草」の写本の講義を受けられたりした写真がある。こうした個人教授は大学時代も続いた。また、美術や歴史などの専門家らが集うサロンのような勉強会が行われたという。

 次回に続く。

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