ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

中国の日本併合を防ぐには10

2006-12-13 09:57:14 | 国際関係
●スパイ行為への取締りが必要

 憲法改正と日米安保の攻守同盟化とともに、わが国が実行すべきことがある。それは、諜報活動への対策である。現代における戦争は、軍事力を行使して戦う実際の戦闘以上に、情報の盗取や世論の操作等による心理戦が重要になっている。
 中国は、この心理戦に極めて長けた国である。権謀術数は、シナ文明の特徴とさえなっている。さらに共産主義の「目的のためには手段を選ばず」という謀略の技術が加わった。一方、わが国は、もともと正直・素直な国民性であるところに、大東亜戦争の敗戦後、通牒利敵行為の取り締まりが極度に弱くなり、「スパイ天国」とまで言われている。
 スパイ行為への無防備状態が、旧ソ連の左翼運動への支援や北朝鮮による日本人拉致を許してきた。私は、それ以上に重大な損害を受け続けているのは、中国の特務機関による対日工作だろうと想像している。政治家・外交官・自衛官等が、金銭や女色の罠にかかり、どれほど国益を損なっているかわからない。
 中国の日本併合という有史以来の危機に対処するには、通牒利敵行為への厳しい取締りが必要である。
 なお、私は、中国による『日本解放綱領』という文書について、数年前からネットに書いてきた。この文書をご存じない方があったら、文末の参考資料をご参照願いたい。

●刑法の通牒利敵条項の回復

 通牒利敵行為への対処のために、まずなすべきことは、刑法第85条、86条の復活である。以下の記述は、中川八洋氏の『国が亡びる~教育・家族・国家の自壊』(徳間書店)に多くを負う。
 刑法は、第82条の次が第87条となっている。この間の4条は削除されている。第二編「罪の」第三章「外患に関する罪」という章にあった条項である。まず章の全体を示してみよう。

―――――――――――――――――――――――――――――――
第三章 外患に関する罪
(外患誘致)
第八十一条  外国と通謀して日本国に対し武力を行使させた者は、死刑に処する。
(外患援助)
第八十二条  日本国に対して外国から武力の行使があったときに、これに加担して、その軍務に服し、その他これに軍事上の利益を与えた者は、死刑又は無期若しくは二年以上の懲役に処する。
第八十三条  削除
第八十四条  削除
第八十五条  削除
第八十六条  削除
(未遂罪)
第八十七条  第八十一条及び第八十二条の罪の未遂は、罰する。
(予備及び陰謀)
第八十八条  第八十一条又は第八十二条の罪の予備又は陰謀をした者は、一年以上十年以下の懲役に処する。
第八十九条  削除
―――――――――――――――――――――――――――――――

 便宜のために算用数字で書くが、この第81条・第82条をもって、外患罪という。未遂・予備・陰謀も罰する。こうした重要なことを定めた章の中で、第83~86条が削除されている。「通謀利敵」と題された条項である。この四条は、昭和22年、GHQの命令によって削除となった。そのまま今日まで復活されていない。原文は以下のものである。

―――――――――――――――――――――――――――――――
(通謀利敵)
第八十三条 敵国ヲ利スル為、要塞、陣営、艦船、兵器、弾薬、汽車、電車、鉄道、電線其他軍用ニ供スル場所又ハ物ヲ損壊シ若クハ使用スルコト能ハサルニ至ラシメタル者ハ死刑又ハ無期懲役ニ処ス
(同前)
第八十四条 帝国ノ軍用ニ供セサル兵器、弾薬其他直接ニ戦闘ノ用ニ供ス可キ物ヲ敵国ニ交付シタル者ハ無期又ハ三年以上ノ懲役ニ処ス
(同前)
第八十五条 敵国ノ為メニ間諜ヲ為シ又ハ敵国ノ間諜ヲ幇助シタル者ハ死刑又ハ無期若クハ五年以上ノ懲役ニ処ス
(同前)
第八十六条 前五条ニ記載シタル以外ノ方法ヲ以テ敵国ニ軍事上ノ利益ヲ与ヘ又ハ帝国ノ軍事上ノ利益ヲ害シタル者ハニ年以上ノ有期懲役ニ処ス
―――――――――――――――――――――――――――――――

 敗戦によってGHQが占領していた間は、日本が主権を喪失していた。占領期間は、国を守る国家組織は存在してはならず、軍事的武装解除を定める条約として、GHQは現行憲法第9条二項を命令した。また、刑法第83条、第84条は、軍事に関するものゆえ、削除させられた。同時に、外国の人の国内での諜報活動や外国への日本国民の通牒から国を守る対抗諜報(防諜)等の行動も組織も禁止された。それが、第85条、第86条の削除の理由である。
 アメリカは、占領解除と同時に、日本が刑法第83~86条をすぐ復活できるように、削除のままにした。ところが、独立回復後、左翼の学者らが、通牒利敵条項の復活を阻止してきた。そのうえ、保守の政治家も条項を復活することを忘れたまま、現在に至っている。これらの条項の復活なしは、わが国は独立主権国家としての主権を完全に回復したとは言えない。

 私は、特に第85条、第86条の復活は重要だと思う。復活の際は、現行刑法に合わせて、一部の用語を修正し、以下のようになるだろう。

―――――――――――――――――――――――――――――――
第八十五条 敵国のために間諜をなし、又は敵国の間諜を幇助した者は、死刑又は無期若くは五年以上の懲役に処する。
2 軍事上の機密を敵国に漏泄した者についても、前項と同様とする。
第八十六条 第八十五条に記載した以外の方法を以て敵国に軍事上の利益を与え、又は日本国の軍事上の利益を害した者は、二年以上の有期懲役に処する。
―――――――――――――――――――――――――――――――

 憲法を改正し、自ら国を守る体制を取り、また他国と対等の軍事同盟を締結するに当たっては、上記の条項の復活は、不可欠である。こうした刑法改正の上に、はじめてスパイ防止法の制定が意味を持つ。次回、核の問題について私見を述べるが、とりわけ核の研究に関する通牒利敵行為は、極めて厳しく罰しないといけない。
 ここまで述べた方策を実行して初めて、核に関する検討ができると私は思う。言い換えれば、上記の方策も取れずに、核保有を論じるのは拙速だと考える。

 次回に続く。

参考資料
・拙稿「『日本解放綱領』の残影~中国の対日政治工作」
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion07c.htm

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2 コメント

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TBありがとうございます! (葉隠)
2006-12-14 00:50:59
 歴史的観点からのご意見感心して読ませていただきました。
 いわゆる「スパイ防止法」に関する部分には全面的に同意します。
 「国家の備え」とは軍備と諜報の両面の備えがあって初めて成立するものと思います。
 かって日本は情報を軽視して大東亜戦争において大敗しました。二度と同じ過ちを繰り返してはならないと思います。
 
>葉隠さん (ほそかわ)
2006-12-14 10:29:27
>かって日本は情報を軽視して大東亜戦争において大敗しました。二度と同じ過ちを繰り返してはならないと思います。<

 同感です。

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