ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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北朝鮮人権法とスパイ防止法

2006-06-19 17:22:59 | 国際関係
 北朝鮮人権法の成立について一昨日書いたが、同法が有効に生かされるためには、憲法・刑法及びスパイ防止法の整備が必要である。これらの整備なく、同法だけでは真に有効なものとならない。そのことについて、以下に私見を書きたい。

 日本は、「スパイ天国」と呼ばれる。外国のスパイが、やすやすと国家機密から企業情報、個人情報に至るまでを収集できる。それは、憲法と刑法に重大な欠陥があり、諜報活動を取り締まる法律が存在しないからである。
 憲法の欠陥は、第9条において国防に規制がかけられていることが根本問題である。そして第9条の規定と相即して、国民に国防の義務がない。そのため、国民に国防教育が行われていない。一般の大学には軍事学の科目がない。だから、国民は国防上、スパイを防止することがいかに重要なことかを学ぶ機会がない。
 刑法については、明治41年に制定された刑法第85条には、「敵国のために間諜をなし、又は、敵国の間諜を幇助したる者は、死刑又は無期もしくは5年以上の懲役に処す。軍事上の機密を敵国に漏洩したる者また同じ」と規定されていた。スパイ行為と機密漏洩を防ぐものである。ところが大東亜戦争敗戦後、占領下の昭和22年にこの条文は削除された。当然、GHQの指示による。それが独立回復後も、現在までそのままになっている。
 わが国は独立主権国家として、憲法を改正して国防を整備し、また刑法第85条の復活をすることが必要である。そのうえで、個別法としてスパイ防止法を制定して、具体的に規定する必要がある。

 先進国でスパイ防止法を定めていないのは、日本だけである。現在、諜報活動の防止に関する法律は、①日米安保条約の実施に伴う米軍関係の刑事特別法、②日米相互防衛援助協定に伴う秘密保護法、③公務員法等の守秘義務規定があるだけである。これでは、スパイ活動の防止にはきわめて不十分である。その結果、スパイ天国と呼ばれるような状態になっているわけである。
 国家及び国民に重大な損失を与える恐れのある軍事機密、外交機密は、保護されねばならない。国家及び国民の安全を脅かす機密情報の漏洩は、犯罪として厳重に処罰されなければならない。そのためには、スパイ行為自体を禁止する個別の法律が必要である。

 例えば、ドイツの場合、「連邦憲法擁護法」(別名・スパイ防止法)により、憲法擁護庁と連邦情報庁が設置されている。国の安全を脅かす自国民および外国人による危険な活動を監視したり、諜報手段を用いて政治・経済・軍事・軍事技術分野の諸外国に関する情報を収集し分析したりしている。こうすることで国家破壊工作から自国と国民を保護している。
 一方、日本にはこれに相当する取締法も機関もない。かつて昭和60年、自民党が議員立法として「スパイ防止法案」を国会に提出した。ところが、左翼の政党や有識者、マスコミらが「危険な法律」だとして喧伝したため、世論は反対に向かい、法案は廃止となった。

 この法案は「国家秘密に係るスパイ行為等の防止に関する法律案」といった。「外国のために国家秘密を探知し、又は収集し、これを外国に通報する等のスパイ行為等を防止することにより、我が国の安全に資すること」を目的とした。第二条に「国家秘密」について、「防衛及び外交に関する別表に掲げる事項並びにこれらの事項に係る文書、図画又は物件で、我が国の防衛上秘匿することを要し、かつ公になっていないものをいう。」として、具体的な事項を掲げたものだった。
 以後、20年以上たつが、こうした法律は作られないままである。逆に、情報公開法が制定されたので、情報開示の進むなか、機密情報の保護が一層しにくい状態となっている。国防及び外交上、明らかにしてよい一般的な情報と、機密を守らねばならないものとを峻別しなければならない。

 このたび北朝鮮人権法が制定されたが、北朝鮮による日本人の拉致は、外国のスパイ活動を防止できないわが国の弱点を露呈したものである。日本人拉致は、金日成・金正日に指令を受けた特殊工作員が日本に入国し、国内にいる協力者と連携して、実行したものである。拉致された日本人の多くは、北朝鮮で日本語の教師としてスパイ養成に協力させられてきた。
 わが国にスパイ防止法があり、そのもとに統一的な防諜機関が作られていれば、外国工作員や在日外国人及び同調する日本人の行動やその組織を監視し、相当程度、拉致を防止できたものと思う。

 今日のわが国は、依然として諜報活動に対して無防備な状態にある。スパイ防止法の立法化を急ぐ必要がある。これは日本の国防上、不可欠であるだけでなく、同盟国に対しての責務でもある。
 また、今後、北朝鮮からの脱北者を受け入れる場合において、その中に工作員や反日活動を志す者が含まれている可能性がある。わが国は国家主権を行使し、対象者の調査と監視を実行しなければならない。制定すべきスパイ防止法は、その根拠法ともなるものである。
 人道の問題と国防の問題は、しっかり分けて考えなければ、国家の安全と国民の安全は守れないことを肝に銘じたい。

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