ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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中共の「孔子学院」、米国等で締め出しの動き

2015-01-22 10:44:14 | 国際関係
 共産中国は、対外宣伝工作に力を入れている。公式用語では「外宣工作」という。共産党が国家戦略のもとに直接指導して行う外国・外国人向けの宣伝活動を意味する。党中央対外宣伝弁公室が外宣工作の総元締めとなっている。その責任者・王晨弁公室主任は、平成23年(2011)7月、共産党機関誌『求是』に寄稿して「外宣工作」について書き、「外宣は党と国家にとっての大局的・戦略的工作である」と述べ、外宣工作の重要性を強調している。こうした「大局的・戦略的工作」の一環として、世界各国に作られたのが、孔子学院である。
 孔子学院は、シナの言語や文化の普及を目的に、平成16年(2004)に韓国で初めて開校された。わが国では、17年(2005)に立命館大学に設立された「立命館孔子学院」が最初である。日中の大学が提携する形で、わが国の大学内で運営されている。立命館大は北京大、桜美林大は上海の同済大、関西外語大は北京語言大と提携し、シナ語やシナ文化の教育が行われている。昨年11月現在で日本に14カ所、日本を含めて約110カ国に430カ所ほどの孔子学院が開設されているという。
 平成21年(2009)7月北京の孔子学院本部で開かれた会合で、中国教育部(註 省にあたる)の●(註 赤におおざと)平副部長(副大臣)は「孔子学院はわが国の外交と外宣工作の重要なる一部分である」と明言した。
 運営機関は中国教育部の傘下にある「漢弁」だが、資金、教員、教材は中国共産党政府が全面的に提供している。ここまで見え見えの外宣工作施設を、わが国をはじめとする世界各国が受け入れ、中国共産党の工作を許してきたことは、あまりに無警戒だった。
 だが、ようやく孔子学院の危険性を感知し、これを排除しようとする動きが起こっている。残念ながらわが国ではない、米国やカナダにおいてである。
 米国では、全米に約100か所の孔子学院が設立されている。米国大学教授協会(AAUP)は昨年6月、全米の大学に対して孔子学院の契約の継続を検討するよう申し入れた。中国政府の意向を強く反映している運営体制が、大学における学問の自由を脅かすというのが理由である。これを受け、シカゴ大学、ペンシルバニア大学等で孔子学院を閉鎖する動きが広がっている。シカゴ大学では、孔子学院の閉鎖を求める請願運動への教授らの署名が110人分に上ったという。
カナダでも、カナダ大学教員協会が同国の諸大学に孔子学院の契約更改を見合わせるよう勧告している。2年前にオンタリオ州の大学が、中国政府と対立関係にある宗教団体「法輪功」を信仰している中国人を講師として採用しないのは差別だとして、孔子学院を閉鎖した。トロントでは、中国系の移民が中心となって教育委員会に対して孔子学院との契約を破棄するよう抗議をしたと報じられる。
 これらの国々では、孔子学院は、中国当局の「スパイ機関」という疑念が強まっているようである。米国ワシントン首都圏には孔子学院が3カ所あり、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院(SAIS)ライシャワー東アジア研究所の所長・ケント・カルダー教授は、近隣のシンクタンクや大使館に対する活動拠点ではないかと見ている。また、カナダの情報機関、安全情報局の元高官も、孔子学院が情報収集の役割を担っている疑いがあると指摘していると報じられる。
 問題はわが国である。日本国内には、孔子学院が14カ所ある。日本の次代を担う青年が、大学内の孔子学院で教育を受けている。わが国の私学経営者及び大学教員組織は、孔子学院をどう見て、どう対処するか。日本国政府に対しては「学問の自由」を主張する大学関係者たちが、中国共産党に対して「学問の自由」を主張し得るか、注目されるところである。大学関係者は、まず米国等で孔子学院が排除されつつある事態に目を向け、自らの大学内で何が行われているかを把握すべきだろう。
 以下は、関連する報道記事。

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●J-CASTニュース 平成26年10月3日

http://www.j-cast.com/2014/10/03217606.html
J-CASTニュース
日本にもある中国政府肝いりの「孔子学院」 北米で次々閉鎖、「スパイ機関」の疑い濃厚
2014/10/ 3 19:44

 中国政府が、中国語や文化教育を広めるため世界各地で設置している「孔子学院」。日本でも、立命館大学や桜美林大学など数校の大学キャンパス内に開設されている。
 最近になって米国では、孔子学院の閉鎖が相次いでいる。かねてから根強かった、中国当局の「スパイ機関」という疑念が強まっているようだ。

大学名はついているが中国政府が資金提供、講師派遣
 「孔子学院の日」には習近平主席が祝辞を寄せた
孔子学院は2004年に韓国で初めて開校。日本では2005年設立の「立命館孔子学院」が最初だ。日中の大学が提携する形で、日本の大学内で運営されている。例えば立命館大は北京大と、桜美林大は同済大(上海)と、関西外語大は北京語言大とそれぞれ提携し、中国語や中国文化の教育が行われている。早稲田大学のように、研究事業を主目的とする孔子学院を開いた例もある。
 2013年度時点で、世界120か国・地域で440校の孔子学院が運営されているが、ここに来て米国で閉鎖決定が相次いだ。口火を切ったのはシカゴ大学だ。2014年10月2日付の米ウォールストリートジャーナル日本語電子版によると、同大は9月29日、孔子学院との5年契約を更新しなかった。米国大学教授協会(AAUP)が6月、全米の大学に対して孔子学院の契約の継続を検討するよう申し入れていた。中国政府の意向を強く反映している運営体制が、大学における学問の自由を脅かすというのだ。
 10月に入ると、今度はペンシルベニア州立大学も年内の提携打ち切りを明らかにした。ロイター通信によると同大学は、中国政府の中国語教育管轄部門であり孔子学院の母体である「漢弁」との方針の違いであると説明したそうだ。両大学とも契約を更新しない具体的な理由は明らかにしていないが、孔子学院が中国政府と密接につながり、語学や文化といった「ソフトパワー」による宣伝活動を進めていることに、教員たちが不満を持っていたという。
 中国事情に詳しいジャーナリストの福島香織氏が、9月30日放送の「荒川強啓デイ・キャッチ!」(TBSラジオ)で孔子学院について詳しく解説した。米国では「スパイ機関」との批判は以前から出ていたようだ。
 「立命館孔子学院」のように大学名が押し出されているが、大学側は施設を貸しているにとどまるという。実態は中国政府が資金を提供して全面的に支援し、独自の教材を使って中国から派遣された講師が教育する。そのため米国では「大学の中立性を損なう」との非難が起きた。大学の「仮面」をかぶっているが、中国の宣伝活動をしているに過ぎないという見方だ。

米に続き、カナダでも、孔子学院「排斥」の動き
 日本には、ブリティッシュカウンシル(英国)、ゲーテ・インスティトゥート(ドイツ)、セルバンテス文化センター(スペイン)のように、各国政府の文化機関が語学教育プログラムを提供している例がある。ただしいずれも、独立した語学学校の形態だ。孔子学院のように、日本の大学と結びついて大学名を冠した学校を開設しているケースは珍しい。
 受講生にとってはメリットもある。安価な授業料だ。立命館孔子学院の場合、在校生だけでなく一般希望者や他大学の学生も受講可能で、例えば中国語講座の入門クラスを見ると、計14回の授業で一般が2万6000円、他大生は2万円となる。民間の語学学校で類似のカリキュラムを調べたところ、計6回で3万円強や、計30回で約8万円などが見つかった。内容や授業時間は多少違うかもしれないが、単価で比べると孔子学院の授業料が格安なのが分かる。
 純粋に語学を学ぶ身であれば好都合だろう。だが背景には、中国政府が自国の文化や思想を広めるために大金を投じている現実がある。こうした動きに危険な匂いを感じたからこそ、米大学は相次いで閉鎖を決めたとも言える。
 カナダでも、孔子学院「排斥」の動きが出ている。トロントでは、中国系の移民が中心となって教育委員会に対して孔子学院との契約を破棄するよう抗議をしたと、カナダCBCニュースが10月2日に報じた。1年前にはオンタリオ州の大学が、中国政府と対立関係にある宗教団体「法輪功」を信仰している中国人を講師として採用しないのは差別だとして、孔子学院を閉鎖した。思想や文化に加え、宗教も絡んで、反発の声が高まっているようだ。
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