【奈良市杉岡華邨書道美術館との初の合同展】
奈良市写真美術館で「入江泰吉と杉岡華邨―写真と書で綴る万葉の世界」が開かれている。大和路の風物を撮り続けた写真家・入江泰吉(1905~92)と、奈良県出身の書家でかな書の第一人者・杉岡華邨(1913~2012)。本展は奈良市杉岡華邨書道美術館との初めての合同展で、「万葉の世界」をテーマとして2人の作品を3部構成で紹介している。
第1部では万葉集の舞台を撮った入江のモノクロ写真と、万葉集の歌を書いた杉岡の作品を並べて展示する。五重塔を背に桜が満開の入江の作品「春の古都」には「あをによし奈良の都は咲く花の にほふがごとく今盛りなり」(小野老)、写真「春の三輪山」には「三輪山をしかも隠すか雲だにも 心あらなも隠さふべしや」(額田王)、「勝間田池」には「勝間田の池は我知る蓮(はちす)なし 然(しか)言ふ君が鬚(ひげ)なきごとし」(作者不明)=上の写真。
第2部では万葉風景をテーマにした入江のカラー写真、第3部では万葉歌の杉岡の代表作を展示している。第3部の杉岡の作品は第1回日展で特選に輝いた「香具山」や第10回日展文部大臣賞の「酒徳」、初期の細字作品「大和三山」なども含む17点。杉岡は生前「万葉集が人の心を打つのは当時の人が真剣に生きた証を率直に歌に詠んだから」と語っていたという。第3部では大和三山を撮った入江の作品4点も展示している。(上の写真は㊧「飛鳥大原の里初夏」、㊨「錦繍倉橋川」)
杉岡華村書道美術館は杉岡から奈良市に作品が寄贈されたのを機に2000年、ならまちの一角に開館した。同美術館では古都奈良を多く詠んだ歌人・会津八一(1881~1956)に焦点を当て「入江泰吉と杉岡華邨―写真と書で綴る会津八一の世界」を同時開催中。いずれも1月12日まで。
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